オフロードバイクに夢中な2人の息子と父親の絆を支える、日産 キャラバン
2022/11/15
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
2台のバイクを積むならやっぱりワンボックスが便利
神奈川県厚木市猿ケ島。相模川の河川敷にあるこの場所は、オフロードスポーツを楽しむ人の聖地となっている。リフトアップしたジムニーが石をはじきながらガレ場を下り、モトクロスバイクがコブをジャンブで越えていく。ここは公道ではないので、運転免許がなくても走ることができるため、一生懸命バイクを操る小さな子供たちの姿も。その様子を遠くから眺める男性がいた。それが今回紹介する浜田さんだ。
話を聞くと、浜田さんも子供の頃からオフロードバイクに乗っていたという。
「最初は幼稚園の頃に親父が50ccの小さいバイクを手に入れてきて『乗ってみるか?』と。まだ規制が緩かったから、近所の河原で走ることができたんですよ。バイクにまたがってビビりながらアクセルをひねったらすごい力で前に進む。怖かったけれど、すごいと思いましたね」
そのときはすごいで終わってしまったが、浜田さんは小学校中学年頃から本格的にバイクに乗るようになる。当時はバイクに乗る子供が少なかったこともあり、周りの大人たちが面白がって乗り方を教えてくれたそうだ。浜田さんはメキメキと腕を上げ、競技にも参加するようになった。中学3年では全日本選手権に出場するほどのライダーに成長した。
高校に入ると競技からは遠ざかったが、結婚して2人の子供が生まれ、成長していくのを見て「バイクに乗せてみたい」と思うようになったそうだ。
しかし、2人のお子さんは外で遊ぶよりゲームの方が楽しい今どきの小学生。アウトドア好きの浜田さんがキャンプに誘っても面倒だという。ましてやキャンプよりハードルが高いバイクなんて嫌がるのは間違いない。そこで浜田さんは同じクラスのお父さんに「一緒にバイクをやらせてみよう」と声をかけた。
「友達がいると競い合ったりできるから面白いだろうと思って。僕の狙いはうまくハマって、一緒に楽しんでいますよ」
浜田さんは自営で輸入車を多く扱う整備工場を経営している。独立してからずっと週末も休まず働いてきたが、子供たちがバイクを始めてから週末は工場を閉め、一緒に河川敷にでかけている。頻繁にバイクに乗りに行くようになったことで必要に迫られたのが2台のバイクを積載するトランスポーターだ。浜田さんが普段乗りで使っているのは2代目トヨタ ハイラックスサーフと初代スズキ アルトラパンターボ。これにはバイクを積載することができない。
「最初はピックアップトラックの荷台に積もうと思って友人から借りてみたのですが、バイクを2台積んで3人で出かけるのはちょっと手狭で、やっぱりワンボックスしかないなと思いました。でもハイエースは低年式でも高いんですよね。トランポの予算は抑えたかったのでキャラバンにしました」
大きなサイドオーニングはバイクを楽しむうえでのマストアイテム
浜田さんが見つけたキャラバンは2005年式のDXで、走行距離は10万kmにギリギリ届かないくらいのもの。車両本体価格は30万円だった。実車を見たらフロントに大きな凹みがあったが、乗りつぶすつもりだし直せば問題ないと購入を決意した。
15年以上乗られていたキャラバンは白いボディがくすんでいて、しかも前に乗っていた会社の社名を塗装で隠しているのがわかる状態。いくらバイクを運ぶのが目的とはいえさすがにこのままだとカッコ悪いと感じ、納車後に友人に頼んで流行のマットなグレーにオールペンしてもらった。
そしてもうひとつこだわったのが、納車後すぐにオーダーしたサイドオーニング。これがあるだけでアウトドアっぽさが引き立ってくるし、バイクを楽しむ際の基地としての実用性も高まる。浜田さんにお会いした日はあいにくの天気だったが、子供たちがバイクを楽しんでいる間に浜田さんはサイドオーニングの下で昼食のカレーを作っていた。
ちょうど料理が終わった頃に子供たちはキャラバンに戻ってきて、おいしそうにカレーを頬張る。
「バイクに乗る前は2人ともなんかふにゃふにゃした子供だったけれど、今はすごくたくましくなりました。2人が走っているのを見ていると『もっとこうやって乗ったらいいのに』という部分はたくさんある。でも、よほど危ないとき以外はあえて口を出さないようにしています。失敗してもいいから自分で答えを見つけてほしいなと思って。僕の親父もバイクに関してはほとんど何も言わなかった。僕と同じ気持ちだったのかな」
浜田さんもかつて競技に本気で取り組み、大人になってからもたまにバイクに乗っていた。ドロドロになりながら夢中で走る2人の姿を見て、一緒に走りたくならないのだろうか。
「最初は一緒に乗っていたのですが、去年の夏に鎖骨を折っちゃったんですよ。あと、今年の4月に大きな病気をして、医者から『バイクが体に負担をかけて倒れるかもしれない』と言われていて。だから僕自身がバイクに乗るのは諦めました」
子供たちと一緒に走るのが夢で始めたのにそれがかなわなくなってしまったと寂しげに笑う。だが、いいこともあった。バイクを始めてから外に行くのが楽しくなり、今では自分たちからキャンプに行きたがるようになったという。
「何度かこの車で車中泊もしました。でもそのときは子供たち2人が車の中を占拠して、僕は外のテントに追いやられました。『いびきがうるさいから一緒に寝るのは嫌だ』って(笑)」
バイクの技術も上達し、たくましく育っている兄弟は、浜田さんにとって自慢の息子に違いない。2人とも運転免許を取れる年齢ではないので、まだまだ父親のサポートが必要だ。仕事が忙しい中で時間を作るのは大変だが、2人が夢中で走っているのを見ると疲れは一気に吹き飛ぶという。
3人で走る夢はかなわなくなったが、かけがえのない時間を存分に楽しんでほしい。
浜田さんのマイカーレビュー
日産 キャラバン(2代目)
●年間走行距離/10,000km
●マイカーの好きなところ/多少の傷は気にならないから、外遊びに行ってガシガシ使えるところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/アウトドアライクな見た目なので大都会に行くのはちょっと気が引ける
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/アウトドアやギアとして車を使いたい人
自動車ライター
高橋満(BRIDGE MAN)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL