ピーター・バラカンが語るラジオとクルマ。そして聴くべき音楽とは?
2018/06/05
ドライブ中、ふいにつけたラジオから流れてきた音楽に心奪われることがある。車内に響く音楽は、流れる景色と調和して不思議な高揚感を生み出してくれる。
ジャズにブルース、R&Bにロックまで、ラジオパーソナリティーとして古今東西の様々な音楽を紹介してきたピーター・バラカンさん。彼が理想とするのは未知の音楽との邂逅であり、それをクルマとラジオが実現してくれるという。そんなバラカンさんならではの「音楽との接し方」について語ってもらった。
ラジオは知らない音楽とも出会える場所
ラジオは音楽との出会いの場だと、僕は思っているんです。クルマでラジオを聴く人は多いと思いますし、カーラジオから自分の好きな曲が流れてくると気持ちが盛り上がるはず。ドライブも楽しくなりますよね。一方で、まったく知らないのに、「いいな」と思える曲が流れることもある。
これって、ラジオならではだと思うんです。ラジオだからこその出会い。それが、僕はすごく好きなんです。
この前もラジオの放送中に「今クルマで遠出していて、家に帰る途中でこのラジオを聴いています」というメールをいただきました。次にかける曲はもうすでに選曲してあったのですが、ちょうどクルマで聴いたら気持ちがいい曲で。メールをくれた人のことを考えて、そういう風に番組では紹介しました。
そもそも、僕はラジオでは自分の好きな曲しかかけません。「Barakan Beat」を放送しているInterFMにはそこまでライブラリがないのもあって、曲はあらかじめ家で選び、すべて持参しています。だから、途中でリクエストが来ても、持っていったCDの中にその曲があれば対応できますが……まぁ限られていますから(笑)。
なんにせよ、自分が良いと思っている曲を紹介する。リスナーに対して説得力が出るし、ラジオだからこその出会いにもつながると思っています。
クルマの中は、良い形で音楽が耳に入ってくる
僕もクルマでは音楽をよく聴いています。仕事関係で聴かなければいけないCDが山ほどあるし。だいたい3枚から4枚くらいを持ち込んで、聴いていて「ちょっと違うな」と思ったら、別のCDに入れ替える。自分の好きな音楽を楽しむというより、良い曲を探す。どうしても仕事っぽくなってしまいます。
でも、多くの人にとっては、車内は純粋に音楽を楽しむ場になりえると思います。クルマって、音楽に集中するにはとてもいい空間。きっと皆さん、家や職場だと他のことに追われて、音楽に集中できないはず。僕もそう(笑)。でも、クルマに乗っているときは、他にやることがないから集中できる。
もちろん周りの状況はしっかり確認しながら運転する必要がありますが、すごい良い形で音楽が耳に入ってくるのは間違いない。クルマなら音楽と、より素敵に出会えるんです。
音楽も、音楽の楽しみ方も自由! 好きな曲を好きな風に聴こう
そして音楽は、自分が好きなものを聴けばいい。僕自身も昼や夜、季節やシチュエーションにこだわって音楽を聴いているわけじゃない。朝からジャズを聴くことだってある。「あ、今これ聴きたいな」って。それだけなんです。
だから、ラジオでランダムに流れてくるものを楽しむのもいい。もし、この文章を読んでいる人たちが、今の僕が選んだ曲を聴いてみたいと思ったなら、この4枚のアルバムをオススメします。
・Little Feat(リトル・フィート)『Dixie Chicken』(1973年)
・Donny Hathaway(ドニー・ハサウェイ)『Live』(1972年)
・The Derek Trucks Band(デレク・トラックス・バンド)『Songlines』(2006年)
・Mavis Staples(メイヴィス・ステイプルズ)『If All I Was Was Black』(2017年)
リトル・フィートとドニー・ハサウェイの両アルバムは70年代だけど、いまだに僕の最愛聴盤。デレク・トラックスは天才ギタリストで、好きになってからずっと聴いている。メイヴィス・ステイプルズは昔から活躍している人ですけど、このアルバムは新作で、すごく聴きました。
選んだ基準は心に響く歌と作曲の良さ、演奏のうまさ。これは、すべてのアルバムに共通している。興味があれば、ぜひ聴いてみてください。
PROFILE
ピーター・バラカン:ブロードキャスター。ロンドン出身。1974年に来日し、シンコー・ミュージックやYMOのマネジメント事務所などを経て独立しフリーランスで活躍している。ラジオでは「Barakan Beat」(InterFM)、「Weekend Sunshine」(NHK-FM)、「Lifestyle Museum」(Tokyo FM)に、テレビでは「Japanology Plus」(NHK BS-1)にレギュラー出演中。