俳優・中尾明慶は「その先のライフスタイル」を想像し、クルマを選ぶ|Carsensor IN MY LIFE


自分以外の何者かになれる職業、役者。ジェームズ・ディーンやスティーブ・マックイーンの名を挙げるまでもなく、名優にはクルマ好きが少なくない。若手実力派俳優、中尾明慶さんもそのひとり。公私ともに充実した時間をさっそうと駆け抜ける中尾さんが、どのようなクルマ選びをしてきたかに迫った。

より多くの経験が、役者としての糧になる

BMW M2クーペ

「やっぱり、このサイズ感と後輪駆動マニュアル、いいですよね」

気になる1台だというBMW M2クーペを前に、中尾さんは少々ハイテンション。明るくて屈託がない。場の空気を一気に和ませるような笑顔は、映画やドラマの印象そのまま。そんな中尾さんは普段、愛車で移動することが多い。

「クルマに乗っているときは音楽もかけません。運転に集中。そうすると余計なことを考えなくていいので、頭をリフレッシュできる。新鮮な気持ちで芝居に臨めるし、セリフを覚えるのにもちょうどいいんです」

職場ではスタッフをはじめ、多くの人に囲まれている。家に帰れば家族がいる。どちらも幸せなことだが、集中力を維持したまま仕事に取り組むには、ひとりの時間も必要。だからクルマの中は、中尾さんにとって貴重な空間なのだ。

BMW M2クーペ

そんな中尾さんのクルマ選びは、生き方を色濃く反映している。

クルマとの付き合いが始まったのは18歳の頃。免許を取得して、すぐに中古のVW ゴルフを手に入れた。運転の練習用にクセが少なく扱いやすいクルマを選んだ。「行動範囲が一気に広がって、自由にどこにでも行ける喜びは大きかった」という。

そして、クルマ選びの転機になったのが、ゴルフの次に乗ったアメ車の高級セダン、クライスラー 300C。そこからの所有歴はキャデラック CTS、ダッジ チャレンジャー、ダッジ バンとアメ車続き。個性的なクルマばかりだ。

「実はアメ車好きの先輩がアドバイスをくれたんです。『ちょっと無理してでも、一番欲しいクルマを買え! そうやって自分にプレッシャーをかけろ。そしたら頑張って、上を目指せる!』って(笑)」

その考えが絶対に正しいとは中尾さんも思っていないし、そのプレッシャーが功を奏したのかどうかは証明できない。しかし、クルマを乗り換える度に仕事が増え、キャリアを積み重ねることができたのは事実だった。

BMW M2クーペ

「これからもクルマは『身の丈よりちょっと上』を選びたいですね」

そう語るのには、当然ワケがある。クルマがモチベーションになるというだけではない。クルマにポジティブな影響を受けたことも、理由のひとつだ。

例えばダッジ チャレンジャー。中尾さんにとって“憧れ”のクルマだった。1970年代の映画『バニシング・ポイント』を観て以来、ずっと乗りたかったという。だだっ広い一本道を、V8エンジンを轟かせながらひた走る。劇中のそんな姿に、中尾さんは魅せられた。

念願のチャレンジャーで、中尾さんは様々な“挑戦”をする。仙台にあるサーキットまで自走し、ドラッグレースに出場。また自走して帰った。

「古いクルマだったから無事に往復できるかヒヤヒヤしましたが、意外に何事もありませんでした(笑)。で、肝心のレースはすごく楽しかった。400mの直線コースをアクセル全開で走った時は、映画のワンシーンを再現しているようで本当に気持ち良かったなぁ」

さらに、ファンミーティングなどにも参加。同じ趣味を持つ人たちとの縁も広がり、旧車やアメ車文化にどっぷりハマった。家族ができ、子どもが生まれたことでチャレンジャーは手放したが、「また乗りたいですね……」と感慨深そうに語った。

自身の変化を促すクルマを好むのは、なんとも役者らしい。

いつも、その先にあるものを想像することから始めてきた

BMW M2クーペ

クルマ好きなだけあって、暇な時間には気になるクルマをスマホで検索するのが中尾さんの日課だ。

「クルマを選ぶ時はいつも、それでドコに行くか、何をするか、その先にあるライフスタイルに想像力を働かせています。例えばアメ車のバンを買ったら、荷室に自転車を積んで友達や家族とキャンプに行きたい。そして夕方になったらBBQ。その後、夕陽を見ながら湖のまわりを自転車で走りたいな」

スタイリングや性能も大事だが、自分の人生をどう豊かにしてくれるのか? それを突き詰めるのが中尾さん流のクルマ選びだ。

「ちなみに目下の夢は、息子と2人でドライブに出掛けることです。行き先はどこでもいい。男同士で語らいながら、遠くまでクルマを走らせたい。男どもが出掛けてくれれば、妻も羽根を伸ばせるし、喜んでくれるんじゃないかな(笑)」

BMW M2クーペ

そんな中尾さんだが、テレビ東京の自動車情報番組『SUPER GT+』の出演を通して、最近ではクルマに求めるものが少し変わった。

「SUPER GT+ではメインMCを務めて現在7年目になるのですが、貴重な体験をさせてもらっています。プロドライバーが運転するレーシングカーの助手席に乗せてもらったり、僕が運転するのを横で見てもらったり……。先日も発売されたばかりのシビック タイプRとインプレッサWRX STI Type Sを乗り比べる、という企画がありました。似たようなクルマでも、個性はまったく異なる。走る、止まる、曲がるという動作の違いがわかるようになりました」

これまで「クルマは楽しければいい」と思っていたが、性能の差だけではない“味わい”の違いもあることを知った。それ以来、クルマ選びの価値観も変わったという。

BMW M2クーペ

これまでの経験を踏まえ「次に乗るクルマ選ぶとしたら?」と中尾さんに尋ねてみると「今なら本命はBMW M2クーペやAMG Aクラス」と答えてくれた。これまでの愛車遍歴からすると真逆のセレクトだ。

「1台のクルマを乗り続けるのは、もちろんカッコ良い。けど、僕はできるかぎりたくさんのクルマに乗りたい! ライフステージの変化にあわせて、その時々の環境や自分に最も似合うクルマに選びたいですね」

クルマ選びは自己実現を図るための手段のひとつ。中尾さんは上手にクルマと向き合い、役者として、父として、今後も成長していく。

俳優・中尾明慶は「その先のライフスタイル」を想像し、クルマを選ぶ

「楽しい」と「良い」のウェルバランス


運動性能に優れているのと、楽しさは必ずしもイコールじゃない。クルマとしては良くできているけど、走るとツマらない。その逆もたくさんありますよね。今、惹かれているのはコンパクトでパワフル、しかもダイレクト感のあるクルマです。もちろん、今も“アメリカンV8”のような楽しさ&スタイル重視のクルマも好きです(笑)。

文/田端邦彦 写真/島村緑 スタイリスト/清水勇一 ヘアメイク/HALU(グローブス)

PROFILE

中尾明慶:1988年6月30日生まれ。東京出身の俳優。テレビドラマ、映画、舞台などで活躍している。現在、10月期連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ)に出演中。他にも出演作として10月28日(土)に映画『リンキング・ラブ』、2018年2月に映画『今夜、ロマンス劇場で』の公開も控える。