被災した車は廃車にすべき? 対処や手続きを5ステップで解説
STEP1:まず車両保険に入っているか確認
もしも車両保険に加入している車が地震・津波・噴火以外の自然災害で損傷したら、最初にすべきは「損傷箇所を写真などで記録しておくこと」と「保険会社に連絡すること」です。自然災害で車が被災しても、車両保険は適用できないと思っている方も多いでしょう。
地震などで全損した場合に一時金が支払われる特約が別途用意されている車両保険もありますが、ほとんどの車両保険では地震やそれに起因する津波、噴火による被害の場合には適用されません。その理由は次のように説明されています。
火災や交通事故等の損害とは異なり、発生時期・頻度を予測することが非常に難しいだけでなく広域に巨大な災害を引き起こし損害額が甚大になる可能性があるため、保険制度として安定した運用を可能にする保険料の算定が困難だからです(引用:三井ダイレクト損保「地震(自然災害)による損害」)
ただ逆にいうと、それ以外の自然災害には保険が適用されるということ。水害による冠水や土砂崩れ(地震に起因するものを除く)、雹害、落雷、高潮による被害などでは、車両保険が使えるのです。
災害の種類 | 車両保険補償 |
---|---|
台風 | ○ |
大雨 | ○ |
洪水 | ○ |
落雷 | ○ |
地震 | × |
津波 | × |
竜巻 | ○ |
高潮 | ○ |
噴火 | × |
大雪 | ○ |
雪崩 | ○ |
雹・霰 | ○ |
STEP2:車両を整備工場に運ぶ
被災した車が道路上で立ち往生した場合は、速やかに移動する必要があります。被害の程度は様々ですが、いずれにしても最寄りの整備工場などに入庫させるべきでしょう。一見、損傷が少ないようでも内部に重大な損害を受けているかもしれないからです。
特に冠水した車では、エンジンを不用意にかけると漏電したり、火災が発生したりする危険があります。無理に自走せず、レッカー車を手配した方が安全なのは間違いありません。レッカーにかかる費用は通常時で1.5~2万円が相場。JAFや、任意保険に付帯されているロードサービスを利用するのも手でしょう。
車両が見つからない場合
津波や水害で車両が流れてしまい、どこに行ったのか見つからないケースもあることでしょう。その場合は廃車、正確には「永久抹消登録をする必要があります。
本来は永久抹消登録は事前に解体する必要があるので車両がないと申請できないのですが、自然災害の場合は例外。市町村役場で「罹災証明書」を発行してもらうことで、車両がなくても廃車可能。抹消登録申請書と車検証などの必要種類を提出してください。
また、罹災証明書があれば車両だけでなく必要書類がなくても問題ありません。ただし、災害の種類や規模によって対応は変わるので注意。例えば東日本大震災のときは、普通自動車で必要書類が見つからない場合、下記のように対応していました。
自動車検査証を紛失した場合
申請者からの情報、納税証明書などにより自動車登録番号または車台番号のいずれかが分かり、自動車を特定できれば申請を受け付けていました。
印鑑登録証明書と実印を紛失した場合
所有者の署名および本人確認書面(免許証などの身分証明書)の提出、または提示をもって、印鑑登録証明書と実印の代わりにできました。
STEP3:整備工場で修理できるか判断してもらう
整備工場で修理可能か確認してもらい、修理できるなら見積書を出してもらいましょう。車両保険が適用できる場合は、見積内容を保険会社に報告します。
修理可能なら乗り続けられますが、注意しておきたいポイントもあります。それは冠水した車は修理しても「冠水歴」が記録されること。売却時の査定が大幅に下がる可能性があります。事故で車の骨格部分を損傷、修理した車に修復歴が付くことはよく知られていますが、冠水歴も修復歴と同様で、売買時に明示することが求められます。
つまり、これは「一度冠水した車は修理しても、外から見えない部分にダメージが残っている可能性がある」という事実を意味しています。自分で乗り続ける場合にも、トラブルのリスクがあることを理解しておいてください。
なお雹などで被害を受けた場合、ボディ外板だけの修理なら「修復歴あり」にはなりません。しかし、ボディパネルを外して板金するなど、修理内容によっては「修復歴あり」になることがあります。その場合、査定額が下がることは避けられません。むしろ修理しないままの方が高く売れた……というケースもあり得ます。
もちろん今後も長く乗るつもりなら修理を依頼すべきです。しかし1~3年以内に乗り替える予定なら、修理せずに廃車ないし売却する方が出費が少ない可能性もあります。もし迷ったなら査定業者を呼んで査定。修理するか、しないか判断するのもひとつの手でしょう。
STEP4:廃車か売却か判断して業者を手配
修理工場に「修理不可能」と判断された場合でも、すぐに廃車の手配をするのは早計。なぜなら、廃車専門の買取店が存在するからです。
廃車専門の買取店は、不動車でも冠水車でも買い取ってくれる場合がほとんど。ユーザーの作業は車両と必要書類を買取店に渡すだけだけで、通常の売却と手間は変わりません。
買取額は車種や年式、損傷の状態によって異なりますが、多くの場合は無料~数万円程度の価格が付きます。たとえわずかな金額でも、自分で廃車する場合には費用が発生するのですから相談してみる価値アリ。インターネットで「廃車」「買い取り」などと検索すれば、廃車専門の買取店はすぐに見つかるはず。
一方、雹害などで損傷しても自走できる車両、あるいは不動でも損傷の程度が軽い車両なら、通常の買取店でも売却可能。複数の見積もりをまとめてとるなら、カーセンサーの一括査定がオススメです。申込みフォームで「車の状態」欄に「走らない」を選択すれば、不動車を査定してくれる業者が表示されます。
そして査定の結果を受けて買取店で売るのなら、そのまま必要書類を提出して手続き。最後に費用との差額を受け取って終了となります。
STEP5:廃車専門店にも売れないなら廃車手続き
廃車の買取店にも売れない場合、自分で廃車の手配をするしかありません。廃車にせず放置してしまうと自動車税や重量税、自賠責保険などの費用が発生し続けます。
一般的にいわれる廃車とは永久抹消登録のことで、まずは車を解体しないといけません。インターネットなどで最寄りの解体業者を探し、解体を依頼。または、修理の可否を判定してもらった整備工場に解体業者を手配してもらえます。
解体業者は車をスクラップにするだけでなく、永久抹消登録の手続きも代行してくれます。廃車の費用は、スクラップ代と永久抹消登録の代行費を合わせて2~5万円程度が目安。不動車の場合、さらに整備工場から解体業者までの陸送代1万5000~2万円も発生します。
廃車に必要な書類と手続き
買取店と解体業者いずれの場合でも、廃車の手続きと必要書類は通常の売却と大きく変わりません。
業者に手続きを代行してもらう場合
自動車検査証(車検証)
車検証がなければ永久抹消登録することができません。車両保険が適用される場合には提出が求められるので、あらかじめコピーを取っておきましょう。なお普通自動車で自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が違う場合、以下の書類も必要です。
- 住所変更が一度あった場合:住民票(法人の場合は登記簿謄本)
- 住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票
- 結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本(履歴事項全部証明書)
印鑑登録証明書
実印の印影が示された証明書のことです。市区町村役場で発行してもらえます。軽自動車の場合は不要です。
実印
委任状に捺印するために必要です。所轄の市区町村で登録した印鑑が求められます。軽自動車は認印で問題ありません。
ナンバープレート
ナンバープレートのない車両は永久抹消登録できません。車両に付いたままでも、取り外した状態でも可です。
自賠責保険証明書(陸送の場合のみ)
解体業者などが車を引き取って移動する際に必要になります。レッカーで移動する場合には必要ありません。
リサイクル券
自動車リサイクル制度に基づいてリサイクル料金を支払ったことを証明するものです。
委任状
実印で捺印し、所有者本人が依頼したことを証明する書類。代行業者などに用紙があり、記入します。
自分で手続きを行う場合
廃車の手続きは慣れていないと、かなり手間。ほとんどの人は業者に依頼されると思いますが、念のため所有者自身で手続きする場合もご説明します。永久抹消登録するには業者に車両を解体してもらったうえで前述の書類に加えて、下記も用意。管轄の陸運支局に提出してください。
抹消登録申請書
車両を解体したことを証明し、永久抹消登録の手続きをするための書類。「移動報告番号」と「解体報告記録がなされた日」を記入する欄があるので、あらかじめ解体を依頼した業者に確認しておきましょう。
手数料納付書
永久抹消登録に必要な手数料を納めたことを証明する書類です。
自動車税・自動車取得税申告書
廃車以後、自動車税が発生しないように申告するための書類です。
廃車に必要な書類を失くした場合の対応
地震や水害など大きな自然災害に見舞われた場合、廃車に必要な書類を紛失してしまうのはよくあること。各書類を紛失した場合は、下記のように手続きしてください。
自動車検査証(車検証)を紛失した場合
車を管轄する陸運支局で、紛失した理由書と手数料納付書、申請書に記載して提出。いずれも陸運支局に用意されています。費用は自動車登録印紙300円と申請用紙50円。通常であれば1時間程度で取得できます。車検証が汚れたり破れたりしている場合、返納したうえで再発行を申請します。
自賠責保険証明書を紛失した場合
加入した保険会社に申請することで再発行可能です。即日発行可能ですが、宅配してもらう時間がかかります。
印鑑登録証明書を紛失した場合
印鑑登録証があれば、市区町村役場で再発行できます。印鑑本体や印鑑登録証自体を紛失した場合には、新しい印鑑で再度登録する必要があります。即日取得可能です。
リサイクル券を紛失した場合
リサイクル券を紛失してしまうと再発行できせんが、「自動車リサイクルシステム」のインターネットサイトで「リサイクル料金検索」のボタンを押し、「自動車リサイクル料金の預託状況」を確認、印刷することでリサイクル券の代用になります。
CREDIT
写真: | Adobe Stock、写真AC、田端邦彦、編集部 |
文 : | 田端邦彦(ACT3) |
参考: | 日本自動車査定協会 国土交通省「永久抹消登録及び解体届出」 |