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津波が発生したときの避難法。命と車を守る対処と日頃の備え

津波が発生したときの避難法。命と車を守る対処と日頃の備え
地震大国の日本では、津波による被害への警戒も欠かせません。東日本大震災では、マグニチュード9.0という国内観測史上最大の地震によって発生した大津波により、甚大な被害がもたらされました。津波は想像を超える速さで襲ってきます。緊急時に自分を助けてくれるのは知識と正しい対処。日頃からできることや発生時の避難法を覚えておきましょう。

覚えておきたい津波に関する警報の種類

津波による被害を受けた街並み


沿岸部に暮らしている場合や海岸の近くを訪れている際に、大地震が発生したらすぐに避難が必要です。弱い揺れでも長く続くようなら十分に警戒し、ニュースや気象情報などで情報を確認しましょう。 ただし警報は津波の規模によって3つに分類され、対応も異なってきます。そのため警報の種類を覚えておくことが適切な避難行動にもつながってきます。

沿岸部では「津波注意報」でも避難する

覚えたい警報1:津波注意報

予想される津波の高さがおよそ1mの場合に発令。海に入っている場合はすぐに海から上がって海岸から離れましょう。海水浴シーズンは特に気をつけましょう。津波注意報が解除されるまでは、海岸に近づかないでください。

覚えたい警報2:津波警報

予想される津波の高さがおよそ3mになると発令。沿岸部や川沿いにいる場合、すぐに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。津波は6時間以上繰り返し襲ってくるので、津波警報が解除されるまで安全な場所から離れないようにしましょう。

覚えたい警報3:大津波警報

予想される津波の高さが3mを超える場合に発令。しかし地震発生から津波の高さを予測し、警報が発令されるまでにはタイムラグがあります。とりわけ沿岸部では大きな揺れを感じたらすぐに高いところへ避難できるよう、日頃から心掛けておくことが大切。大津波警報が解除されても、余震で津波が起こることがあるので注意しましょう。

津波から自分と愛車を守るための備え

津波避難所の標識


自身の安全はもちろん車を守るためには、日頃の積み重ねが重要です。いざという時にパニックにならないよう、津波に対する防災を実践ください。

津波の特徴を知っておく

津波は繰り返し襲来し、第二波以降に高さが最大になる可能性があります。第一波を避けても第二波に飲み込まれたり、余震により再度津波が発生したりするケースもあります。警報や注意報が解除され、安全が確認されるまでは被災地域に立ち入らないようにしましょう。特に岬や湾などの入り組んだ地形は、津波の高さが高くなりやすい傾向があるので、警戒が必要です。

さらに、津波は大量の海水が巨大な塊となって押し寄せるため、沿岸でもその力は衰えません。通常の波とは異なり、海面全体が数10kmにわたって盛り上がって襲来するため、津波の高さが数10cmと低くても流速が大きくなり、大人でも立っていられないほどです。大小に関わらず津波は危険なのです。

海岸付近では津波標識を確認しておく

津波の危険がある場所には津波注意のほか、過去の津波の高さ、津波避難場所や津波避難ビルを示す津波標識が設置されています。レジャーやドライブなどで海岸付近を訪れた際は、念のためこれら津波標識を確認しておきましょう。

また、津波は河口から上流側へ遡上するため、海岸から離れていても川沿いでは早く津波が襲来するので注意が必要。地震による強い揺れを感じたら、川の流れに対し直角に進み、できるだけ高い土地へ避難しましょう。

避難経路や避難場所を確認しておく

自宅や勤め先が海に近い場合は、自治体のホームページなどでハザードマップを確認しておきましょう。避難場所までのルートを実際に歩いたり車で走ったりして、有事の際にスムーズに避難できるようにしておくことも大切です。

各自治体が指定する避難場所が遠くてルートが危険な場合は、より身近にある安全な場所を探しておくこと。やはり、津波からの避難は基本的には高所が有効です。

二次災害に備えて防災用品を用意しておく

大きな津波が発生するような大災害では、電気や水道などのライフラインが長期間止まってしまう可能性があります。こうした事態に備え、車内やトランクに水や食糧、薬やティッシュなどを備蓄しておくと安心感が高まるでしょう。

津波発生時の安全な避難法

浸水した堤防と道


津波のスピードは水深が深いほど速く、水深5000mの沖合ではジェット機並の時速800kmにも達します。陸地に近づくにつれて津波は高くなり、逆に遅くなりますが、それでも時速36kmほどあります。

津波警報が発令されたら事前に確認しておいた避難経路を通り、できるだけ高い安全な場所へ避難。高所に移動してもここなら安心と気を抜かないことも大切です。

いざという時は車をおいて避難する

車を運転していない時に大地震が発生した場合は、避難に車を使わないことが原則です。多くの人が避難するために車を使用すると、渋滞や交通事故の恐れが高まり、徒歩による避難を妨げかねないからです。

しかし東日本大震災後に自動車避難の在り方が見直され、津波から避難する場合は車の使用が認められました。やむを得ず運転する場合は道路の損壊、信号機の作動停止、道路上の障害物、交通事故などに十分注意しましょう。丘陵地や山間部へ向かう道を避難する場合は、途中で停車・駐車すると後続の車が避難できません。十分海から遠く、高いところまで走行して、後から来る車の避難を助けましょう。

ただし車での避難が最良とは限りません。東日本大震災では、車で避難中に津波に巻き込まれるケースが数多く発生。平均2.4kmしか移動できませんでした。渋滞や建物の倒壊で思うように進めない場合は、車を置いて高い場所へ避難するなど命を守る行動を優先しましょう

車で避難する際は冠水・浸水に注意

避難する車が津波に浸水されるケースもあります。2016年10月に改訂された「千葉県津波避難計画」では、浸水の危険度を以下のように分類しています。

浸水深 対応
10cm以下 車の走行には問題ない
10~30cm ブレーキ性能が低下。安全な場所へ車を移動する
30~50cm エンジンが停止。車から退出しなければならない
50cm以上 車が水に浮く。車とともに流出される危険がある

浸水深50cm以上だとパワーウィンドウ付きの車の場合、車内に閉じ込められる可能性もあります。運転中に津波が発生したら川沿いや沿岸のほか、高架下や立体交差のアンダーパスなど周囲より低い場所には絶対に進入せず、迂回するようにしましょう。

津波に車が流された際の対処法

津波による被害を受けた車


津波や高潮などで車が海水に浸かると、海水に含まれる塩分で電気配線などがショート。その熱で発火する恐れがあります。海水が引いた後も、塩分により配線等の腐食が進むため、注意が必要です。

冠水・浸水した車はむやみに動かさない

車が浸水・冠水してしまった場合、キースイッチが切れていても、バッテリーが接続されていれば電流が流れています。そのため、エンジンやヘッドライトなど電気系統の漏電で火災が発生する可能性があります。

特にハイブリッド車や電気自動車は危険性大。最大約400Vの高電圧バッテリーや高電圧部品が使われており、露出した高電圧ケーブルなどに触れると感電して死亡、または重傷を負う恐れがあります。浸水・冠水した車を扱う場合は、下記に注意してください。

  • 手順1:いきなりエンジンを回さない
  • 手順2:ボンネットを開けて水に浸かっているか確認する
  • 手順3:浸かっていたら、火災防止のためバッテリーのマイナス端子を外す
  • 手順4:外した端子が、バッテリーと接触しないよう絶縁処置をする
  • 手順5:ハイブリッド車や電気自動車は、むやみに触らない

ただし、基本的にはJAFなど「車のプロ」に任せましょう。どんな危険があるか分からないので、細心の注意を払って対応してください。

一方で車が動かせず修理できない、あるいは土砂災害や津波などで車が見つからないといった場合は廃車手続きが必要。その際は、各自治体に「被災証明書」を発行してもらってから対応ください。

支援金や車両保険の適用について調べる

車が被災したら、条件に当てはまれば国や各市区町村の補助金を受け取れます。自分の場合は制度の適用されるのか、どの制度なら申請できるのかは各地自治体に確認してください。

また車両保険は、基本的に津波は適用外となります。ただ地震・津波被害を一部補償する特約が用意されている会社もあります。経済状況に応じて、加入しておくと安心でしょう。

監修
河田恵昭

河田恵昭(かわた よしあき)。京都大学名誉教授。関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授。日本政府中央防災会議防災対策実行会議委員。人と防災未来センター長。日本における自然災害に関する第一人者であり、防災・減災・縮災の重要性を説いている