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運転中に雹が降ったときの対応と、雹から車を守るための備え

運転中に雹が降ったときの対応と、雹から車を守るための備え
雹(ひょう)や霰(あられ)は、ときに車や人に大きな被害を与えることがあります。雹や霰が急に降ってきたら、どう対処したら良いのか? 普段から準備できることはあるのか? 雹害の対策について解説します。

知っておきたい雹の予備知識

道路に降りつける雹


雹や霰は激しい上昇気流をもつ積乱雲内の水滴が吹き上げられ、凍結と融解を繰り返して氷の粒が大きくなって地表に落下したものです。

雹と霰の違いは氷粒の大きさ。直径5mm以下のものが霰、5mm以上のものが雹と呼ばれます。雹の平均的なサイズは5mm~2cmほどですが、ときに5cmを超える巨大な雹もあります。

雹と霰、いずれも積乱雲によってもたらされる自然現象で、多くは豪雨や雷を伴います。2018年12月にオーストラリアのシドニーで発生した雹害では、最大で直径8cmの雹が降り、建物や車に甚大な被害をもたらしました。

雹が降りやすい時期と場所

雹は北海道、東北、北関東の内陸部、日本海側で多く見られる現象。積乱雲は真夏に多く発生しますが、気温が高いと氷は地表に到達する前に解けるため、雹や霰にはなりません。そのため内陸部で雹が降りやすいのは、5~7月頃までとなります。

2000年5月には北関東で大規模な雹害が発生。「ミカン大」の雹が降ったといわれ、群馬県と茨城県の両県で負傷者160人、約3万3000台の自動車、約4万5000棟もの建物が損傷を受けました。

一方、日本海側では冬にも積乱雲が発達するため、降雹も冬期に集中します。雹の発生は地域差が大きく、西日本ではあまり発生しません。

雹によって引き起こされる事故

雹は大きな粒ほど落下速度が速く、到達速度が時速100kmを超えることも。そのため、雹害は大きな被害を生むケースもあります。

人の頭部に当たれば命にかかわることもありますし、車に直撃すればガラス窓が割れたり、ボディに無数のキズやヘコミがついたりすることもあるでしょう。

さらに、雹や霰が路上に積もると滑りやすくなり、スリップによる交通事故の危険も。雹と豪雨が同時に襲来し、雹が排水溝に詰まって道路が冠水した事例もあります。雹が降ってきたら、落雷や竜巻が発生しないか警戒する必要があります。

降雹を避けるための情報収集

国土交通省「わがまちハザードマップ」

(引用元:気象庁「高解像度降水ナウキャスト」

現在の気象観測技術で降雹を正確に把握、予想することは難しいといわれています。そのため、積乱雲の接近を早めに知ることが雹害を避けるポイントとなります

天気予報で「雷を伴う雲」「大気の状態が不安定」「竜巻などの激しい突風」といった言葉が使われたり、雷注意報が発報されたりした場合は、雹が降る可能性があります。

「周囲が急に暗くなってきた」「雷鳴が聞こえた」「ひんやりした風が吹いた」なども積乱雲が近くにあるサイン。そのようなときは、雹害だけでなく落雷や水害の発生も考えられるので、できるだけ外出を控えましょう。

雹を降らせる雲の位置を調べる

出かける前に雨雲の接近を正確に知るには、気象庁が提供する「高解像度降水ナウキャスト」を活用するのがオススメ。5時間前から現在までの観測データ、および1時間先までの降水予報が5分刻みで表示され、雲の動きが分かります。

マップは拡大縮小できるので、出かけ先ピンポイントの天候を知るのにも便利。雷と竜巻の情報も提供されています。雹の表示はありませんが、強い雨(地図上では黄色から赤で表示)や雷を伴う雨雲が接近したら、雹になる恐れもあると判断できます。

他にも、スマホ用アプリでは「Yahoo!天気」が同様の機能を備えています。

雹が降りそうなときの対策

雹が降りそうな積乱雲


天気予報や周囲の異変などで積乱雲が近づいてきたと分かったら、できるだけ外出を控えるのが鉄則。特に、前述の雹が降りやすい時期に多発地帯にいる場合は、下記のような対策を取りましょう。

頑丈な屋根の下へ避難する

まずは安全に避難できそうな場所を探すこと。コンクリート製や鉄製の頑丈な屋根がある建物(大型スーパーやデパートの屋内駐車場など)が見つかれば、そこに駐車してください。大粒の雹が降った場合、カーポートやプレハブなどの屋根は突き破られる可能性があるので要注意です

また、ガラス窓の近くは、雹で割れたガラスが飛散する可能性があるため避けましょう。積乱雲は豪雨や落雷をもたらす危険もあるので、冠水しそうな場所や樹木の近くもNGです。

自分が屋外にいる場合は、建物内もしくは車内へと避難してください。激しい雹が降ってきたら、傘を差しても効果は望めません。

毛布や布団で車体を覆う

頑丈な建物内に車を入れることができない場合、もし近くに厚手の毛布や布団、段ボールなどがあれば、それらで車のボディを覆いましょう。十分とは言えませんが、降雹の衝撃を和らげられます。

運転中に雹が降ってきたときの対応

激しく降る雹


積乱雲は急速に発達、移動するため、運転中に「さっきまで晴れていたのに、突如として雹が降ってきた!」ということもあり得ます。車の屋根やボンネットを打ち付ける大きな音に驚かされますが、冷静に対処することが大切です。

建物内が無理なら路肩で待機する

激しい降雹では視界が悪くなり、スリップする危険もあります。そのまま運転し続けるのは危険です。すみやかに頑丈な建物内へと避難しましょう。

周囲に避難できる建物が見当たらない場合は、交通状況を確認しながら減速。ハザードランプをつけて路肩に停車してください。

降りやんでもしばらくは移動しない

停車したらむやみに車外に出ず、積乱雲が通り過ぎるまで車内で待機すること。降雹でケガをしたり、落雷や交通事故に遭ったりする可能性があります。

一般的な降雹時間は5~30分程度。長くとも1時間以内には降りやみます。しかし、雹が収まっても、道路が冠水していたり、雹が積もっていたりするかもしれません。時間をおいて、雷や竜巻がやって来ることもあり得ます。周囲の状況をよく観察し、安全が確認できてから出発しましょう。

車が雹害を受けた際の対処

雹害を受けた車


もしも車に雹害を受けてしまったなら、雷雲が過ぎ去ってから落ち着いて被害状況を確認しましょう。エンジンやサスペンションなどの機関部分が損傷していることは希ですが、フロントガラスが割れていたり、ヒビが入っていたりすることは少なくありません。

なお、ガラスが割れたりヒビが入ったりした状態で走ると道路交通法違反となります。当然、車検も通らないので、乗り続ける場合はすぐ修理に出しましょう。

雹害にも自動車保険は適用される

激しい降雹の直撃を受けた場合、車のボンネットや屋根には少なくとも100ヵ所以上のヘコミやキズが付くといわれています。修理せずに手放してしまうのも手ですが、査定額から修理代相当の費用が差し引かれます。

車両保険に加入しているなら、雹害による修理代の相当額が補償されます。保険の申請に「雹が発生した日時と場所」の情報が必要となるので、忘れ図にメモしておきましょう。

修理方法は業者とよく相談する

修理することを選んだ場合、屋根やピラーなど骨格にあたる部分のパネルを脱着もしくは交換修理すると「修復歴あり」になるので注意が必要。

完璧に修理したとしても「修復歴あり車」となると、車を売却する際の査定額は大きく下がります(減額割合は車種や走行距離などの条件で異なります)。通常の鈑金塗装同等の金額で、脱着せずに修理する方法で対応してくれる業者を探してみるのが良いでしょう。

監修
河田恵昭

河田恵昭(かわた よしあき)。京都大学名誉教授。関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授。日本政府中央防災会議防災対策実行会議委員。人と防災未来センター長。日本における自然災害に関する第一人者であり、防災・減災・縮災の重要性を説いている