運転中に濃霧に遭遇したときの対応と、事故を起こさないための注意点
知っておきたい霧の予備知識
霧は、水蒸気を多く含んだ大気が冷えて水分が飽和状態に達し、小さな水滴となって空中を浮遊する現象です。原理としては「雲」と同じ。透明な水蒸気と違って水滴は光を遮るため、濃霧になると視界一面が真っ白に。空気が暖まると水滴は水蒸気に戻り、自然と霧が晴れます。
発生の理由は、いくつも考えられます。例えば、海や川の暖かく湿った空気が標高の高い所に移動した結果だったり、雨後の湿った空気が地面の放射冷却で冷やされた結果だったりします。
霧には3段階ある
気象庁では、視程(水平方向に見通せる距離)が1km未満の状態を「霧」と呼んでいます。「濃霧」は霧が濃くなり、視程100m未満(陸上の場合)になった状態。車の運転などに支障をきたすため、「濃霧注意報」が発令されることがあります。
「靄(もや)」も霧と同じ現象ですが、視程が1km以上10km未満で、霧よりも視界が悪くない状態です。なお薄く漂う霧を「霞(かすみ)」と呼ぶこともありますが、気象用語では用いられません。
霧が発生しやすい時期と場所
濃霧が発生しやすい場所は、盆地や標高の高い山間部など。時間帯では気温が変化する夜~朝、夕方~夜にかけて多く見られます。
季節としては、内陸部は秋に、北日本や高地は夏に発生しやすくなります。秋のレジャーシーズンや、山へドライブに出かけるときは遭遇する確率が高まるので、特に注意しましょう。
ただ、霧は地形や気象環境による影響が大きく、どのような場所で発生しやすいか一概には言えません。北海道・釧路市のように年間を通して霧が出る地域もあります。一方、都市部で濃霧が発生することは希です。
霧によって起きる事故
濃霧による視界不良は、大きな事故を引き起こしかねません。車線をまたいで対向車と衝突する事故や、路肩に停車している車両に気づかず追突する事故などが想定されます。加えて、霧によって路面が濡れるため、晴天時よりスリップしやすくなります。
濃霧が発生しているときに起きた交通事故における死亡事故割合は、交通事故全体平均値の約2.5倍(公益財団法人交通事故総合分析センター「平成28年 交通事故統計表データ」)。正面衝突など、被害の大きな事故が多くなっています。
ドライブ前にしておきたい霧対策
(引用元:気象庁「濃霧注意報」)
濃霧注意報は「濃霧のため、交通機関に著しい障害が起こると予想される場合」に発されるもの。出かける前、走行ルートに濃霧注意報が出ていないか気象庁のサイトで確認しておきましょう。
ヘッドライトやフォグランプがきちんと点灯するか、運転前に点検するのも忘れずに。
(引用元:日本気象協会「ひまわり霧情報」)
「ひまわり霧情報」を参考にする
日本気象協会が提供している「ひまわり霧情報」は、広い範囲で霧の発生状況を知ることのできるサービス。日本列島全体の地図に、霧が発生している所、霧の濃さが表示されます。地図を拡大する機能はないので大ざっぱにしか知ることができませんが、出かける際の参考にはなるでしょう。
運転中に霧が発生したときの対応
霧に遭遇したら一般道、高速道路を問わず、すぐに停車できる速度までスピードを落とすこと。時速10km程度を目安に減速し、前走車との車間距離を十分に空けてください。
濃霧の場合は、運転を続けることはとても危険です。駐車場やSAなど、安全な場所に速やかに退避しましょう。もちろん、急ブレーキは他車から追突される可能性があるためNG。徐行しながら安全に止められる場所まで移動してください。
フォグランプやリアフォグランプも点灯する
車にフォグランプやリアフォグランプが装備されている場合は、点灯しましょう。フォグランプは近い範囲を広く照らす配光特性、乱反射しにくい色になっており、霧の中で視界を得るのに有効です。
リアフォグランプは後続車に自車の存在を知らせてくれ、追突のリスク回避に役立ちます。ただし、これらは霧の中で使用することが前提。晴天下では他車から眩しく見えます。霧が晴れたら忘れずに消灯してください。
霧中での視線は手前に
霧の中では、通常走行時のように遠くを見ようとすると自車の場所が分からなくなり、車線を大きく逸脱してしまうことがあります。道路上の白線や、ガードレール上の反射板や縁石の上に反射材といった視線誘導標など、近くの物に視線をおきながら徐行しましょう。
濃霧に遭遇したらヘッドライトを点けて徐行する
霧に遭遇したら、必ずヘッドライトを点灯すること。視界を確保したり、道路上の反射板を照らしたりする目的だけでなく、他車や歩行者に自車の存在を知らせる効果もあります。 その際、ヘッドライトは必ず下向き(すれ違い用前照灯、ロービーム)に。霧の中でライトを上向き(ハイビーム)にすると乱反射し、かえって視界が悪くなります。
先進安全装備を信用しすぎない
先行者追従クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備は、カメラやレーダーなどで周囲の状態を認識しています。そのため、濃霧では正しく機能しなかったり、急に機能が解除されたりする可能性があります。濃霧に遭遇したら先進装備を過信せず、必ず減速して危険がないか自分自身で安全を確保しましょう。
車を止める際は路肩に止めない
道路上や路肩への停車は追突される恐れがあります。自分が見にくいということは、他車からも発見されにくいということ。カーブの途中や交差点付近は、特に危険です。車外に出るのも絶対にNG。濃霧に遭遇したら徐行し、安全な場所に停車するのがセオリーです。
監修
河田恵昭(かわた よしあき)。京都大学名誉教授。関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授。日本政府中央防災会議防災対策実行会議委員。人と防災未来センター長。日本における自然災害に関する第一人者であり、防災・減災・縮災の重要性を説いている