【令和3年7月熱海伊豆山土砂災害】車や車庫が被災したときのお金と手続き
この記事では「令和3年7月熱海伊豆山土砂災害」により、車両保険の適用や熱海市や静岡県による特例措置、補助金などに関する情報をまとめました。
※記事の更新日は2021年9月22日(水)です。情報は随時更新されることがあります。
車と車庫の状況から対処をチェック
上記フローチャートは被災状況ごとの対処を示しています。例えば、車や車庫が被災した場合、まず市役所に被災を届け出ます。次に、車が手元にある場合は修理か廃車かを決定。車が土石流などで紛失した場合は廃車手続きをします。このように、ご自分のすべき対処を確認ください。
被災状況を熱海市に届け出る
車や車庫が被災したら、市役所に「罹災(りさい)証明書」もしくは「被災証明書」を届け出ます。補助金などの手続きには「被災の状況を証明する書面」が必要なためです。
車の被害には被災証明書、車庫には罹災証明書が必要
被災を証明する書類は「罹災証明書」「被災証明書」「罹災届出証明書」の3種類。いずれも市役所で発行してもらいます。
車関係の手続きでは被災証明書もしくは罹災届出証明書が必要。場合によっては証明書なしでも済みます。一方で、車庫の修繕費など住宅への補助金を申請するためには罹災証明書が求められます。
罹災証明書
住居を対象に、災害で受けた被害の程度を証明する書類。申請後、市職員による現地調査や被害認定を経て交付されます。発行されるまでには、ある程度の日数を要します。
罹災届出証明書
「被害があったことを確かに届け出ました」という証明書。罹災証明書が発行されるまでの代用として使われます。市役所で即日発行できます。
被災証明書
車や独立したカーポートなど住居以外の物が、自然災害の被害を受けた事実を証明する書類です。
罹災証明書および被災証明書の申請に必要なもの
被害を受けた対象物や被害の程度などによって異なりますが、罹災証明書や被災証明書の申請に必要な書類は以下のとおり。なお、いずれの証明書でも発行は無料となります。
- 申請書(各自治体の窓口にあります)
- 身分証明証(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 被災の状況や範囲が分かる写真
- 修繕に係る見積書(事業者の印鑑があるもの)
- 印鑑
同居の親族以外の方が申請する場合、上記の書類に加えて委任状(申請窓口に備え付け)が必要です。詳しくは熱海市役所に確認ください。
罹災証明書と被災証明書の最新情報を調べる
今回の災害に関する各証明書の申請期限が閲覧時点で終了している場合もあります。申請する予定のある方は、熱海市役所の市民協働推進室(TEL:0557-86-6201/0557-86-6191)にお問い合わせください。
車に関わる税金が特例で減免される
土砂災害によって廃車した場合や、被災した車を修理した場合、静岡県に自動車税の特例を申請できます。申請の対象と内容は下記のとおり。個別での申請となるため、熱海財務事務所の管理課(TEL:0557-82-9060)に相談ください。
【減免される車に関わる県税1】自動車税種別割
車が使用不能となり、解体処理して廃車した場合、災害があった翌月から、抹消登録をした月までの月割税額を減免。一方で、被災した車を修理した場合、修理費用から保険金や損害賠償金などを控除した金額が自動車税の年税額を超えたら、年税額の50%が減免されます。
【減免される車に関わる県税2】自動車税環境性能割
自動車が使用不能となり、解体処理して廃車した場合、同一の車種別番号と用途区分の車に買い替えたなら税金が全額減免。被災した車よりも小型の車に買い替えた場合でも適用されます。申請するには、災害がやんだ日から3ヵ月以内に被災した車を抹消登録する必要があります。
【減免される車に関わる県税3】各税金の延滞金
被災したことで県税の納付や納入が難しい場合は、延滞金が減免できます。
「災害援護資金」制度で生活資金を借りられる
「災害援護資金」制度を利用すれば、生活の再建に必要な資金を借りることができます。対象となるのは、災害によって負傷した人、または住居や家財の損害を受けた人です。被災したのが車でも車庫でも適用されます。
借りられる金額は被害状況や条件によります。しかし、返済期間や利率が低い貸付制度なので、当面の資金を必要とされている人は利用を検討すべきでしょう。
災害援護資金の申請は熱海市役所の窓口で行います。申請方法については熱海市役所の長寿総務室(TEL:0557-86-6323)にお問い合わせください。
災害援護資金の概要
受給者:災害救助法を適用された災害で、負傷または住居や家財に被害を受けた者
貸付限度額:最大350万円(被害の程度によって異なる)
所得制限:アリ(昨年の総所得金額で判断)
利率:年3%(据置期間中は無利子)
据置期間:3年
償還期間:10年
・災害援護資金の詳細はこちら
車が被災したら車両保険などで修理する
車が土砂災害や浸水の被害に遭った場合、修理可能なケースと、不可能なケースがあります。ドア下端から上まで水や土砂に埋まってしまった場合、車両火災が起きる危険性が高く、一般的に修理するのは困難です。外見だけでは判断できないため、必ず整備工場で点検してください。
車など家財の被害に対して行政から受けられる補助金はありません。しかし、自動車保険(任意保険)の車両保険に加入しているなら、土砂災害と水害による被害は適用範囲内なので利用可能。車を修理する場合は、レッカー代と合わせて費用が補償されます。
一方で、車が行方不明になった場合は、全損と同等の金額が受け取れます。ただし、補償内容によっては「自宅車庫に駐車中の被害には適用されない」こともあります。
保険金の申請には多くの場合、罹災証明書や被災証明書は求められませんが、必要書類は保険各社によって異なります。補償の適用と合わせて、加入している保険会社に確認ください。
必要書類を紛失、破損してしまった場合
車検証などの書類が土砂や浸水によって紛失、あるいは破損している場合、再発行してもらわなくてはなりません。各書類の再発行の手続きは下記を参考にしてください。
自動車検査証(車検証)
管轄の運輸支局で理由書と手数料納付書、第3号様式申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出。即日で再発行できます。費用は手数料(印紙代)の300円。汚れた車検証が手元に残っている場合、その車検証を返納します。
自賠責保険証明書および自動車保険証書(任意保険)
加入している保険会社に申請して再発行します。費用は郵送料のみです。
印鑑登録証明書
市役所にて即日で再発行できます。費用は1通につき300円。印鑑登録証(カード)自体を紛失してしまった場合、印鑑登録を廃止申請した後に再登録する必要があります。
リサイクル券
リサイクル券は紛失すると再発行できません。ただし、「リサイクル料金検索」で「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷すれば、リサイクル券の代わりにできます。
車が被災したら解体して廃車にする
廃車しない場合、税金や自賠責保険、車検の義務が発生し続けてしまいます。逆に廃車をすれば車検の残期間分が還付されます。車が被災して使用不可になった場合は必ず廃車手続きをしましょう。
手元に車がある場合、解体業者に解体を依頼して、永久抹消登録か解体返納を行います。費用は業者によって異なりますが、一般的には解体費用は1万~3万円、手続き代行費用(法定費用含む)は1万~2万円、レッカー代は1万~2万円となります。ただし、土砂に埋まっている場合、別途費用がかかる可能性もあります。
廃車にする場合も被災証明書などを申請し、永久抹消登録の申請時に必ず提出すること。通常の廃車では車両重量税の還付対象となる期間の始まりは「抹消登録された日」ですが、被災証明書などがあれば「災害が発生した日」までさかのぼることができます。詳しい廃車の仕方は下記の記事にまとめていますので、こちらを確認ください。
・被災した車は廃車にすべき? 対処や手続きを5ステップで解説
自動車重量税の還付制度は災害が発生した日から5年以内に申請すれば還付金の受け取り可能。生活が落ち着いてからでも申請できます。
車が行方不明になったら廃車の手続きをする
土砂によって車が流されたり、埋もれたりして行方不明になった場合も、廃車の手続きは必要です。手続きの方法は車が手元にある場合と同じです。ただし今回の災害の場合、被災したら「自動車の抹消登録申請時の特例的措置」が適用されます。
通常、車がない場合の抹消登録では車検証が必要です。しかし、特例的措置では自動車登録番号(ナンバー)と車体番号のどちらかが分かり、車両を特定できれば申請できます。
また、罹災証明書と被災証明書を手に入れるのが難しい場合は、代わりに申立書を書けば申請が受理されます。国土交通省「令和3年7月の梅雨前線に伴う大雨による 自動車の抹消登録申請時の特例的取扱について」より入手できます。
災害で行方不明になった車が後日発見された場合、撤去や解体作業は原則的に市もしくは県が行います。所有者が費用を請求されることはありません。処分が行われた後の永久抹消登録は所有者自身で行います。
車や車庫が被災したら補助金などを申請する
土砂災害で車や車庫に被害を受けた方は、条件によってローンや税金が減免。車庫が被災した場合は、行政機関から補助金を受け取れます。ただし、車庫は住居と一体型が対象。車庫単体の建物やカーポートは対象外です。
雑損控除を受ける
「雑損控除」とは、自然災害によって住宅や家財が損失した場合に受けられる制度。自動車も「生活に必要な資産」と認められた場合は対象となります。生活に必要かどうかは、保有の目的や使用状況などを踏まえて総合的に判断されます。
適用される条件は、損害額からもらった保険金を引いた額が所得の10%を超えていること。その超過分の金額が所得から控除されます。なお車の損失額は「(車両の取得価額-減価償却費)×被害割合」で算出されます。
制度を利用するには確定申告が必要となります。申請するなら、近くの税務署や税理士などに相談すると良いでしょう。
被災ローン減免制度を利用する
土砂災害で住宅ローンや自動車ローンなどの支払いが困難となった場合、要件を満たしている方は「被災ローン減免制度」を利用できます。これは、義援金や支援金などに加えて最大500万円の資産を残しながら、ローンの全額あるいは一部を免除してもらえる制度です。
利用する場合は、借入残高が最も多い金融機関に相談。申し出が受理されたら、地元の弁護士会を通じて手続きを進めます。ローンの支払いが難しい人は、まず「静岡県弁護士会 沼津支部(TEL:055-931-1848)」に相談ください。
被災ローン減免制度の主な要件例
- 被災したことでローンの支払いが困難になった
- 被災前はきちんと滞りなくローンを返済していた
- 世帯年収が730万円未満
- (住宅ローンの場合)返済額および新しい住居費が世帯年収の40%以上
- 個人名義での債務である(法人は対象外)
被害を受けた車庫を応急修理する
「災害救助法」では住宅の応急修理費用として、罹災証明で「準半壊」と認定された場合は上限30万円、「半壊~全開」と認定された場合は上限59万5000円が支給されます。対象となるのは持ち家のみで、賃貸物件は適用されません。
ただ、補助金を給付するには災害が発生した日、今回の場合は7月3日から1ヵ月以内に修理と申請をすることが条件。期限を超えての修理は対象外となりますので、注意ください。
被害を受けた車庫を修理、車庫を建て替える
今回の災害では、被災地域に災害救助法に加えて「被災者生活再建支援法」も適用されました。これは、住宅を補修したり新たに購入したりする場合、被害の程度に応じた基本支援金を受給できる制度。全壊で100万円、大規模半壊で50万円の支援金を受けられます。
さらに、再建方法に応じた加算支援金も支給。こちらは、補修で100万円、購入で200万円と定められています。なお、被災者生活再建支援法は持ち家だけでなく、賃貸物件でも適用されます。
申請は熱海市役所の窓口で行います。期間は基礎支援金が災害発生日から13ヵ月以内、加算支援金が37ヵ月以内。事前に罹災証明書を取得する必要があるので、利用したい方は早めに手配しましょう。
被災者生活再建支援制度の概要
受給者:災害救助法が適用された災害で、住宅が全壊または大規模半壊した世帯
支給額:最大で基礎支援金100万円+加算支援金200万円(被害の程度や再建方法などによって異なる)
所得制限:アリ
・被災者生活再建支援制度の詳細はこちら
被害を受けた車庫を火災保険で修理する
土石流など自然災害によって車庫やカーポートが破損・倒壊した場合は、持ち家の火災保険を利用できます。車庫とカーポートは「建物の付属設備」として位置付けられているからです。当然、賃貸物件の火災保険では対象外となります。
申請の期限は、損害を受けてから3年以内。修理済みでも申請可能です。保険金の額は契約の内容や、車庫とカーポートの修理費によって異なります。補償の対象内かどうかと合わせて、加入している保険会社にご確認ください。
CREDIT
写真: | AdobeStock |
文: | 田端邦彦(ACT3) |
参考: | 内閣府・防災情報「災害に係る住家の被害認定」 国税庁「被災自動車に係る自動車重量税の還付申請手続(自然災害関係)」 国税庁「自然災害により被害を受けた被災自動車に係る自動車重量税の還付に関するQ&A」 国土交通省「自動車検査証の有効期間を伸長します」 |