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自然災害による車両火災に要注意! 火災の原因と対策を解説

自然災害による車両火災に要注意! 火災の原因と対策を解説
日本全国で年間1500件前後も発生している車両火災。多くは点検・整備不良が原因ですが、高潮や津波などによる水没も原因になっています。自然災害による車両火災のリスクについて紹介。防止策や、車が燃えてしまった車の対処、その後の処理について解説します。

自然災害が引き起こす車両火災

大雨で冠水してしまった車


車両火災を引き起こす自然災害の中で最も注意したいのが、高潮や津波です。

例えば、2011年の東日本大震災では津波で水没した車両から45件の火災が発生。2018年に発生した台風21号では、高潮によって23件の車両火災が引き起こされ、計232台もの車が炎上しました。中でも、兵庫県西宮市の中古車オークション会場で発生した車両火災は100台以上に延焼。近年発生した車両火災の中でも大規模な被害事例となっています。

自然災害による車の水没はそれだけでも大きな被害ですが、車両火災が起きることでさらに被害が拡大。他の車や建物に延焼するなど、人命にかかわる二次災害となる恐れがあります。

水没によるショートで車両火災が発生

近年の風水害では多くの車両火災が発生しているため、その原因は詳細に分析。結果として、ほとんどは「トラッキング現象」が原因だと判明しました。

トラッキング現象とは、本来絶縁されているバッテリーなどの電極間に電気を通す物質が入り込んで電気経路が作られ、ショートして出火する現象のこと。

家庭ではコンセントにたまったホコリなどが原因で出火するケースが多いのですが、水没した車両の場合は水が原因となります。特に海水は電気を通しやすく、トラッキング現象が発生する可能性が高くなります。そのため、津波や高潮による水没で車両火災が多く発生するのです。

車両火災の様子
 

車両火災は水没直後に起こるとは限らない

車両火災が発生するのは、水没の直後とは限りません。台風21号による兵庫県神戸市の車両火災では、エンジンがかかっていない状態からの出火が多く報告されました。

「エンジンを切っておけば安心」と思いがちですが、エンジンオフの状態でも車には常に電気が流れています。その電流がトラッキング現象を引き起こし、車両火災の原因となります。

中には水没から数週間、1ヵ月以上経ってから出火した事例も。日頃から車を丁寧にメンテナンスしていたとしても一度浸水してしまったら、いつ車両火災が発生してもおかしくないのです。

自然災害による車両火災を防ぐ方法

水没しかけている車


自然災害による車両火災を防ぐには、車を水没させないことが第一。高潮や津波が発生したときには浸水している場所に近づかず、高台に逃げましょう。冠水した道路は見た目で水深を判断することが難しく、思いのほか深いことがあります。

水没を防ぐ方法については以下の記事をご参考ください。

■参考記事
・命と車を守る台風対策。水没や横転などを防ぐ備えと運転時の注意点
・津波が発生したときの避難法。命と車を守る対処と日頃の備え

トラッキング現象を防ぎ、電流を遮断する

車が水没してしまったら、すぐに停車してエンジンを切って避難行動を取ります。車を移動させる必要がある場合は、エンジンをオフにしたままシフトレバーをニュートラルに入れ、車を手で押して近くの路肩などに移動させましょう。

周囲の水が引き、安全が確保されている状況になったら、エンジンルーム内に水が浸入していないか確認してください。

もしエンジンルーム内に水が浸入していたら、救援が到着するまでにトラッキング現象を防ぐため、バッテリーのマイナス側ターミナル(配線とバッテリーの接続部)を端子から外します。取り外し方は下記のとおり。

なお、工具を持っていない人や整備になれていない人は、自分で対応しないこと。無理をすると非常に危険なので、JAFなどのロードサービスを呼ぶのが無難です。

浸水した際にバッテリー端子を外す手順

バッテリーの端子を確認


まずは感電防止のため、バッテリーの端子を確認してください。バッテリー上面にプラスとマイナスのマークが表示されています。ちなみに多くの場合、バッテリーのプラス端子にカバーが付いています。

バッテリーのマイナス端子を引き抜く


ターミナルを固定しているボルトを緩め、バッテリーのマイナス端子を引き抜きます。その際、間違ってもプラス側のターミナルを外さないこと! 誤ってプラス側のターミナルを外すと、ショートしたり感電したりする危険性があります。

ターミナルをバッテリー本体に固定


バッテリー端子とターミナルが接触するのを防ぐため、ガムテープなどの絶縁物質で金属部を巻いて、ターミナルをバッテリー本体に固定してください。

車内に浸水したら車両火災のリスク大

高潮や津波で水たまりに侵入してしまった場合でも、すべての車両が火災を起こすわけではありません。海水に浸かっても車内まで浸水していないなら、規定の整備を行った後なら使用可能となるケースもあります。

一方で、ドア下端以上の深さがある水たまりに侵入し、車内まで水が入り込んでしまったら残念ながら、その車は使用できません。点検整備したとしても、車両火災のリスクを完璧に取り除くことは不可能だからです。

もちろん、冠水したことを隠して車を売却するのは、他の人を危険にさらすのでNG。加えて、故意に不具合を隠すと瑕疵担保責任を問われ、最悪損害賠償を請求されることもあります。

もしも車両火災が起こった場合を想定して、車内に可燃物を置かないことも大切。ライターやスプレー缶、ガスカートリッジなどは、火災発生時に爆発して被害を拡大する恐れがあります。さらに、それ自体が発火して火災を引き起こす原因となるので、日頃から注意が必要です。

車両の点検
 

整備工場に入庫して点検してもらう

車内やエンジンルーム内に水が侵入した場合でなくも、深い水たまりを走行したら整備工場で必ず点検してもらうこと。車両火災の危険があるかどうかは、プロの整備士でないと判断できません。冠水したら速やかにレッカーを手配。ディーラーや整備工場に入庫させてください。

車両火災が起きたときの対応

車両火災の消火活動


運転中に車両火災が発生したら、すぐに停車。「ハザードランプを点灯させる」「発炎筒をつける」など、周囲の車や人に危険を知らせる措置を取りましょう。

続いて携帯電話などで119番に通報し、消防車を呼びます。トンネル内で携帯電話が通じない場合は、押しボタン式通報装置か非常電話で通報しましょう。火の勢いが弱い場合や、比較的な安全な場所から出火した場合は、命の危険がない範囲で初期消火を行います。

ただ、浸水による車両火災は電装系からの出火が多く、車体全体どこでも火元になる可能性があります。ガソリンやオイルに引火する危険がある場合は、消火よりも避難を優先すること。特に、エンジンルームなどから煙や焦げ臭いニオイが発生した場合は、速やかに安全な場所まで退避してください。

エンジンルームから出火した場合、状況を確認しようとボンネットを開けるのは危険です。一気に酸素が流入することで火が大きく上がったり、ボンネットが高温になっていたりするためです。絶対にボンネットは開けないでください。

初期消火を行う際は絶対に無理をしない!

消化剤や水は火元に向け噴出するのが初期消火の基本です。トンネル内には消火栓が設置されている箇所があるので、近くにあれば利用しましょう。消火器などがない場合には、上着で炎を覆う、ペットボトルの飲料水をかけるなども、初期消火なら有効となる可能性があります。

注意してほしいのは、初期消火にかけられる時間は出火してから2~3分であること。間に合わず火の手が大きくなってしまったら自力での消火は不可能です。燃料タンクに引火して爆発する可能性があるため、車から遠く離れて消防車の到着を待ちましょう。

炎上した車の処理

全焼した車


車両火災が発生したら、ほとんどの場合は廃車となります。消防署などの調査が済んだ段階で、解体業者に車両の引き取り、および抹消登録を手配します。

抹消登録には「一時抹消登録」と「永久抹消登録」の2種類があります。車両火災の場合は修理できる可能性はほぼないので永久抹消登録となります。

廃車の手続きについてはカーセンサー内の記事「廃車とは? 必要な書類と手続き、廃車すべきかどうかもチェック」を参考してください。

例外的ですが、廃車専門の買取業者の中には、車両火災も取り扱う業者もいます。インターネットで「車両火災 廃車 買取」などと検索すれば業者が見つかるでしょう。全焼の場合は処分に費用がかかりますが、再利用できる部品が残っているなら廃車費用を軽減できるかもしれません。

自動車保険は車両火災の原因によっては適用される

自動車保険の車両保険に車両火災が適用されるかは、原因によります。故障などが原因の場合は、法定点検を怠っていた場合などを除いて、原則的に適用となります。

一方で、自然災害の場合は災害の種類によって異なります。台風による高潮の場合は適用されますが、津波の場合には適用されません。ただし、地震特約を付けている場合は、一時金を受け取れる可能性があります。契約内容を確認すると良いでしょう。