【令和2年7月豪雨】車や車庫が被災したときのお金と手続き
この記事では令和2年7月豪雨により、車や車庫への浸水被害を受けた方に向けて、適用される保険や補助金、車検期間の延長など特例措置に関する情報をまとめました。掲載する自治体は内閣府により災害救助法の対象に指定した地域です。
※記事の最終更新日は2020年7月19日(日)。情報は随時更新されることがあります。
車と車庫の状況から対処をチェック
まずは上記の図ご覧ください。例えば車のみ被災した場合、役場に被災の届け出を出し、車が手元にあるなら修理か廃車かを決定。車が洪水などで流されて見つからなかった場合は廃車手続き、といったようにご自分のすべき対処を確認ください。
被災状況を役場に届け出る
車でも車庫でも被災した場合は、まず各市町村役場の窓口で「罹災証明書」もしくは「被災証明書」の届け出を行います。手続きをする、あらゆる場面で「被災の状況を証明する書面」が必要になるからです。
車の被害には被災証明書、車庫には罹災証明書が必要
被災を証明する書類には、以下の3種類があります。いずれも市町村役場で発行してもらいます。
住宅への支援金を受けるためには罹災証明書が必要になりますが、車関係の手続きは被災証明書もしくは罹災届出証明書で済む場合がほとんどです。住居と車や車庫、ともに被害を受けた場合には、被災証明書と罹災証明書の両方を届け出ておきましょう。
罹災証明書
住居を対象とし、災害によって受けた被害の内容を証明する書類。市町村職員による現地調査・被害程度の認定が行われ、被害が認められた場合に交付されます。発行されるまでには通常、ある程度の日数がかかります。
罹災届出証明書
罹災を届け出たことを証明する書類です。届け出た時点で即発行されます。
被災証明書
自然災害により住居、および車やカーポートなど住居以外の物が被災した事実を行政機関が写真などで確認し、証明する書類。自治体によっては被災証明書がなく、罹災届出証明書で兼ねている場合もあります。
罹災証明書および被災証明書の申請に必要なもの
罹災証明書も被災証明書も、届け出に必要なものは同じ。証明書の発行は無料です。
- 申請書(各自治体の窓口にあります)
- 身分証明証(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 被災の状況や範囲が分かる写真
- 修繕に係る見積書(事業者の印鑑があるもの)
- 印鑑
同居の親族以外の方が申請する場合は、下記に委任状(申請窓口に備え付け)も必要です。また、被災状況が分かる写真や見積書は不要な場合もあります。
罹災証明書と被災証明書の最新情報を調べる
今回の災害について、閲覧時点で申請期限が近づいている場合も、終了している場合もあります。申請する予定のある方は、各自治体にご確認ください。なお、WEBサイトでページのない自治体でも申請自体は受け付けています。
両証明書に関する特別ページを掲載している自治体
長野県: 飯田市
岐阜県: 高山市 恵那市 飛騨市 下呂市
島根県: 江津市
福岡県: 大牟田市 八女市 みやま市 久留米市
佐賀県: 鹿島市
熊本県: 八代市 人吉市 荒尾市 水俣市 玉名市 山鹿市 菊池市 天草市 南関町 和水町 小国町 芦北町 津奈木町 錦町 多良木町あさぎり町 水上村 山江村 球磨村
大分県: 日田市 由布市 九重町
鹿児島県: 鹿屋市 志布志市 垂水市
車に関わる税金が特例で減免される
今回の水害により自動車が廃車になった場合や、相当の被害を受けた場合などには、自動車税などの都道府県税の減免や、納税の猶予など特例が認められる可能性があります。自動車税の減免については、廃車にして買い替えた車にも適用されます。特例の内容や減免の適用条件、減免割合などは地域によって異なります。各都道府県の下記サイトにてご確認ください。
自動車税減免に関する各都道府県のサイト
長野県
岐阜県
島根県
福岡県
佐賀県
熊本県
大分県
鹿児島県
「災害援護資金」制度で生活資金を借りられる
被災したのが車でも車庫でも「災害援護資金」制度では、生活の再建に必要な資金を貸し付けています。補助ではありませんが、住居だけでなく車や車庫を含む家財の損害にも利用可能。対象となるのは、災害による負傷、住居や家財の損害を受けた人です。
条件によって異なりますが、返済期間や利率が低い貸付制度なので、当面の資金を必要とされている人は利用を検討してみるのもよいでしょう。
災害援護資金の申請は市区町村の窓口から。ただ、所得制限がありますので、詳しくは各市町村にお問い合わせください。
災害援護資金の概要
受給者:災害救助法の適用を受けた災害で、負傷または住居や家財に被害を受けた者
貸付限度額:最大350万円(被害の程度によって異なる)
所得制限(前年の総所得金額):アリ
利率:年3%(据置期間中は無利子)
据置期間:3年
償還期間:10年
・災害援護資金の詳細はこちら
車が被災したら車両保険などで修理する
水没してしまっても、修理可能であれば乗り続ける選択肢もあります。ただしドア下端から上まで浸水した場合には、カーペットなどの内装品に加え、コンピューターなどの電装品がダメージを受けている可能性があります。必ず整備工場で点検してもらいましょう。
そして水害による車への保険金は、自動車保険(任意保険)で車両保険にも加入している方の場合、原則的に適用されます。洪水によって車が流されて行方不明になった場合、廃車にする場合は全額を補償。修理する場合は修理代が補償されます。ロードサービス利用、レッカー代にも自動車保険が適用されます。ただし、補償内容によっては「自宅車庫に駐車中の被害には適用されない」ことがあるので注意ください。
保険金の申請に必要な書類も保険各社によって異なるので、加入している保険会社に確認しましょう。
なお、車の修理や買い替えにあたって行政から受けられる支援金はありません。
必要書類を紛失、破損してしまった場合
車が無事に残っていても、車検証などの書類が浸水被害を受けて紛失、あるいは破損している場合、再発行してもらう必要があります。各書類の再発行の手続きは下記のとおりです。
自動車検査証(車検証)
管轄の運輸支局で理由書と手数料納付書、第3号様式と呼ばれる申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出し、再発行してもらいます。車検証が汚れたり破れたりしている場合は、その車検証を返納します。
自賠責保険証明書および自動車保険証書(任意保険)
加入している保険会社に申請することで再発行できます。
印鑑登録証明書
市区町村役場で即日、再発行できます。印鑑登録証(カード)自体を紛失してしまった場合、印鑑登録を廃止申請した後、再度登録する必要があります。
リサイクル券
リサイクル券は紛失すると再発行できません。ただし「リサイクル料金検索」で「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷することでリサイクル券の代用となります。
車検の有効期間を延長できる
令和2年豪雨の発生にともない、国土交通省から「2020年8月3日までに車検の期限を迎える車の有効期間満了日が8月4日まで延長される」通達がありました。延長にあたり被災の有無は関係なく、所有者自身が申請する必要もありません。
ただし、対象は下記地域が使用の本拠である車のみ。また、地域によって適用される有効期間満了日も異なります。
・車検の有効期間延長について詳細に知りたいならこちら
車が被災したら解体して廃車にする
たとえ走行不可能であっても現車が手元にある場合は、通常の廃車時と同様、解体業者に解体を依頼し、永久抹消登録を行う必要があります。解体費用は多くの場合、有料です。
なお、この場合も被災証明書等を申請し、運輸支局での抹消登録時に必ず提出しましょう。通常の廃車時は、車両重量税の還付対象となる期間の起算日は「抹消登録された日」ですが、被災証明書等があると「災害が発生した日」までさかのぼることができるためです。
永久抹消登録に必要な手続き
廃車をしないと税金や自賠責保険の納付義務、車検の義務が発生し続けます。被災して車が乗れなくなったら必ず廃車手続きをすること。
廃車にするには、管轄の運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)で「永久抹消登録(軽自動車の場合は解体届出)」を行います。永久抹消登録とは、当該車両を今後永遠に使用できなくするための手続き。永久抹消登録を行うと当然、自動車税や自動車重量税の課税対象でなくなり、車検残期間分も還付されます。
自動車重量税の還付制度は災害が発生した日から5年以内に申請すれば還付金を受け取れます。生活が落ち着いてから手続きすればよいでしょう。
・廃車手続きを詳細に知りたいならこちら
永久抹消登録に必要なもの
水害を受けた車を永久抹消登録するために必要な書類は以下のとおり。なお、これの他に解体業者に解体を依頼するにはリサイクル券と自賠責保険証書(引き取りの場合のみ)も必要。自然災害による廃車の手続きに必要な書類は運輸支局によって異なるので、詳しくは管轄の運輸支局などに確認してください。
抹消登録申請書(軽自動車の場合は解体届出書)
陸運支局窓口にあります。すでに一時抹消登録をしている車の場合は、解体等届出書(永久抹消登録申請書と同一様式)が必要です。
自動車重量税還付申請書
前回の車検時に収めた自動車重量税の中から、車検残期間分の還付を受けるための申請書です。申請書には振込口座、マイナンバーの記載が必要です。ちなみに自動車税の還付(普通自動車のみ)については、申請する必要はありません。永久抹消登録後に還付の案内が届きます。
印鑑登録証明書
所有者の印鑑が登録されていることを証明する書類です。市区町村役場で発行でき、発行日から3ヵ月以内のものが必要となります。軽自動車は不要です。
所有者の実印
所有者本人が申請するときには、市町村役場に登録されている実印を申請書に押印する必要があります。代理人が申請するときには委任状に所有者の実印を押印。軽自動車は認印でも問題ありません。
被災証明書または罹災証明書、罹災届出証明書
災害によって廃車にすることを証明するための書類。車が行方不明になり、ナンバープレートなどがない場合には必ず提出することになります。証明書の発行が困難な場合には、申請人の申立書をもって代用可。また、コピーは不可となります。なお、被災地域以外で登録されている自動車で申請する場合は、被災時に当該地域にいたことが分かる具体的な記載が必要です。
自動車検査証(車検証)
車検証が手元に残っているなら、運輸支局に返納します。水害によって紛失してしまった場合には、被災証明書等があれば提出不要です。再発行の必要はありません。
ナンバーブレート(前後2枚)
解体業者による解体後にナンバープレートを受け取り、運輸支局に返納します。水害によって紛失してしまった場合は、被災証明書等があれば提出不要です。
「移動報告番号」と「解体報告記録がなされた日」のメモ書き
抹消登録申請書に記載する必要があります。「移動報告番号」はリサイクル券に記載されています。「解体報告記録がなされた日」は解体を依頼した業者に問い合わせるか、自動車リサイクルシステムのWEBサイトで使用済自動車処理状況を検索。車台番号下4ケタと登録番号を入力すると確認できます。
車が行方不明になったら廃車の手続きをする
洪水によって車が流され、行方不明になってしまった場合には、まず各自治体で被災証明書や罹災証明書を申請し、車の登録番号や車種を届け出ます。後日、車が発見されれば連絡がありますが、流されてしまうほどの被害を受けた場合、修理して再使用することは困難でしょう。
流された車が「災害による廃棄物」と見なされた場合、撤去や処分作業は原則的に市町村もしくは都道府県が行います。所有者が費用を請求されることはありません。処分が行われた後の永久抹消登録は所有者自身で行います。
車が見つからなった場合でも廃車手続きは、基本的に車が手元にある場合と同じ。ただ、手元に車がないので解体の依頼などはする必要がありません。
・廃車手続きを詳細に知りたいならこちら
車庫が被災したら補助金などを申請する
水害によって車庫に被害を受けた方は、条件によって市区町村などから補助を受けられることがあります。
原則的に住居(車庫単体の建物やカーポートを除く)を対象とし、「半壊以上」と罹災証明で認定された場合、修理や建て替えに係る費用の補助を受けられる可能性が高くなります。詳しくは各市町村にお問い合わせください。
被害を受けた車庫を修理、建て替える
「被災者生活再建支援法」では、住宅を補修したり新たに購入したりする場合、被害の程度に応じた基本支援金を支給。全壊で100万円、大規模半壊で50万円の支援金を受けられます。さらに再建方法に応じた加算支援金も支給。こちらは補修で100万円、購入で200万円と定められています。
被災者生活再建支援法は所有物件だけでなく、賃貸物件への適用も可能。支援金の使途は限定されていないので、何にでも使えます。
申請は市区町村の窓口で行い、期間は基礎支援金が災害発生日から13ヵ月以内、加算支援金が37ヵ月以内です。事前に罹災証明書を取得する必要があるので、利用したい方は早めに手配しましょう。
被災者生活再建支援制度の概要
受給者:災害救助法の適用を受けた災害で、住宅が全壊または大規模半壊した世帯
支給額:最大で基礎支援金100万円+加算支援金200万円(被害の程度や再建方法などによって異なる)
所得制限:アリ
・被災者生活再建支援制度の詳細はこちら
CREDIT
写真: | AdobeStock、編集部 |
文: | 田端邦彦(ACT3) |
参考: | アクサダイレクト「大雨や洪水の場合」 チューリッヒ保険「車両保険」 SBI損保「洪水による損害」 内閣府・防災情報「災害に係る住家の被害認定」 国税庁「被災自動車に係る自動車重量税の還付申請手続(自然災害関係)」 国税庁「自然災害により被害を受けた被災自動車に係る自動車重量税の還付に関するQ&A」 |