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新型コロナウイルスの予防にも!専門家に学ぶ、車に関する感染症対策

新型コロナウイルスの予防にも!専門家に学ぶ、車に関する感染症対策
2022年3月現在、新型コロナウイルス感染症はいまだ終息の気配が見えません。新たなパンデミックや多様な感染症に備えて何をするべきか? 車に乗る際の感染症対策について、感染免疫学と公衆衛生学の専門家である岡田晴恵先生に教わりました。
教えてくれた人
岡田晴恵

岡田晴恵。白鴎大学教授。専門は感染免疫学と公衆衛生学。感染症対策の専門家としてメディアに出演。専門書から児童書など執筆活動を通して感染症対策の情報を発信している。著書に『秘闘―私の「コロナ戦争」全記録―』などがある

 

車で移動するときの感染リスク

車は公共交通機関より感染リスクが低い


JAFやKINTOなど車に関する会社やメディアによるアンケート調査では、数字の差はあれど「コロナ禍になってマイカーでの移動が増えた」という結果が挙がっています。

実際、感染症に対しては、マイカーの方が電車やバスなどの公共交通機関よりもローリスク。公共交通機関は不特定多数の人が乗車しますし、換気や消毒などの感染防止対策も自由に行えないからです。対する、自家用車はドライバー1人、もしくは家族など身近な人が乗るだけ。接触する人数を最低限にでき、感染リスクも抑えられます。

ただ、それは「同乗者が感染していないこと」が前提の話。もしも同乗者が感染していた場合、車内は狭く、他者との距離を確保しにくいため、感染リスクが一気に高まります。

自分の車でも感染リスクはある!

マイカーを自分で運転する場合でも、誰かと同乗するなら「相手、もしくは自分自身が感染しているかもしれない」という前提のもとに行動する必要があります。

一方で、レンタカーやカーシェアなど不特定多数の人が利用する車に乗る場合は要注意。自分しか車に乗らなくても直前に乗っていた人が感染していた場合、感染リスクが高まります。

いかに車がローリスクであっても、これからの時代は感染症対策が必須。新型コロナウィルス感染症が収まったとしても、自分と大切な人を守るためには感染症に注意を払うべきでしょう。

車に乗るときの感染症対策

車内を除菌


新型コロナウイルスだけでなく、感染症は「接触感染」と「飛沫感染」、空気中にウイルスなどの微粒子が漂っている状態で起こる「エアロゾル感染」が基本的な感染ルートです。

車内だからといって特別な対策は必要ありません。換気や除菌など基本的な対策を、いかに徹底するかが大切です。

【対策1】車内を消毒する

車内に感染者がいた場合、ウイルスがしばらく残っている可能性があります。家庭内ではアルコール消毒液や薄めた塩素系漂白剤などが使えますが、車内ではプラスチックや金属、ゴム部分にそれらを使用すると変色や劣化などの原因となります。

そのため、家庭用洗剤など界面活性剤を使って車内を十分に洗浄します。その洗い方は下記のとおりです。

(1)水またはぬるま湯500mlに食器用洗剤などを入れて混ぜ、スプレー容器に移す
(2)清潔な布やキッチンペーパーに薄めた洗剤を吹き付け、洗浄したい部分を拭く
(3)5分程度そのままおいてから、水拭きで洗剤をしっかりと拭き取る
(4)乾いた布やキッチンペーパーでから拭きする


洗剤が残ると部品が劣化する原因になるので、きちんと水拭きで取り除いてください。

手で触る場所は重点的に除菌する

ドアハンドルやグリップ、シートベルト、シート表皮など素手で触る箇所は、念入りに洗浄すること。自分以外の人が運転した場合は運転席まわりのステアリングやシフトノブ、スイッチ類、レバー類などもしっかりと拭き取ってください。

【対策2】車内の空気を換気する

車の窓を開ける


乗車前後はすべての窓を開け放ち、車内の空気が完全に入れ替わるようにしましょう。走行中も全窓を開けて、空気が滞留しないようにするのがベター。高速走行中など窓を開けるのが難しい状況を除いたら、できるだけ頻繁に車内の空気を入れ替えましょう。

さらに、理化学研究所は「スーパーコンピューターの富岳で計算した結果、エアコンの外気導入モードで風量を強めると非常に効果的」と発表。エアコンで外気を取り入れながらマスクも着け続けるのが有効だと報告し、「内気循環モードでは効果がない」と付け加えています。

ただ、エアコンを外気導入モードにしたからといって過信しないことが重要。富岳による計算結果は有益ですが、エアコンの換気性能は車種によって異なります。古い車はもちろん、最新の車であっても窓を開けて確実に換気するようにしましょう。

温湿度の管理も意識する

感染症対策には温度を20~25℃、湿度を50~60%に調整するのが最適といわれています。温度はエアコンで、湿度は加湿器などでコントロールすると予防効果が多少なりとも高まります。

そうは言っても車内の場合は、温湿度の管理より換気を優先すること。窓を開けながらも、エアコンで適切な温度になるよう調整すると良いでしょう。

【対策3】同乗者全員がマスクを着用する

車内でもマスク着用


室内と同様に車内でも不織布マスクを必ず着けること。飛沫感染を防ぐ効果が期待できます。着用時は鼻と口すべてを覆いましょう。もちろん、運転者だけでなく同乗者にも着用してもらってください。

感染の疑いがある人を検査に連れて行くときなどは、とりわけ厳重に。大人の場合は不織布マスクを二重にし、結膜感染を防ぐためのゴーグルやメガネを着用。さらに手袋をはめるなど、運転に支障のない範囲で感染防止に努めましょう。

【対策4】乗車前後に手洗いする

手は細菌やウイルス、病原体が付着しやすい箇所。手洗いは重要な接触感染対策です。乗車前後に必ず手洗いをしましょう。

大切なのは、正しい方法で手洗いすること。手の表面だけでなく、手の甲、爪と指の間、親指の付け根などもしっかりと洗います。せっけんは界面活性剤として使用し、水でウイルスと一緒に「洗い流す」という意識を持ってください。

ドライブ中は近くに水道がない場合もあるでしょう。消毒用のアルコールを常に持ち歩き、折につけて手指を除菌してください。

外出先では、手洗いやマスク着用など基本的な感染症対策を徹底すること。「人混みにいかない」「周りの人と2m以上の距離を空ける」「商品にはなるべく触らない」「同居家族以外との会食では席で斜め向かいに座る」なども忘れずに。

症状がある人を車に乗せるときの対処

発症を疑われる家族を医療機関へ乗せて行く


自分や家族に「発熱している」「倦怠感がある」「咳がひどく出ていて、息苦しさを感じる」などの症状がある場合は、早急に医療機関で感染症の検査をしてもらいます。

マイカーで検査に連れて行く場合、医療機関に向かうのは最少人数にすること。感染症対策を厳重に行いながら、容態の悪化や急変に備えてください。

脱水症状に気をつける

経口補水液


発熱している患者は、脱水症状に陥りやすくなります。そのため、走行中も水分補給をこまめに行いましょう。

下痢を伴う場合は水分と同時に塩分も一緒に失われるので、経口補水液で補給。少しずつ、こまめに飲んだ方が患者への負担が少なくなります。喉が潤えば咳が出にくくなるので、その分同乗する人への感染リスクを減らすことができます。

症状が悪化したら救急車を手配する

病院への移動中でも発症者に以下の「ショック」症状が表れたときは、すぐに救急車を手配しましょう。また検査する医療機関と、容態が悪化した患者を治療する医療機関が異なるケースがあるためです。

  • 顔色が青白い
  • 呼吸が浅くて速い
  • 脈拍が弱くて速い
  • 皮膚が冷たく湿っている
  • ぐったりしている

119番で救急車を呼ぶときには、患者の状態や現在地などを「落ち着いて、はっきりと簡潔に状況を伝える」ことが大切。電柱の街区表示板やカーナビ、スマートフォンの地図アプリなどで確認しましょう。

判断に迷ったら#7119に電話

患者の容態が悪化や急変した場合、自家用車で病院に行くべきか、それとも救急車を手配すべきか判断に迷うケースがあるでしょう。そんなときは「#7119」で救急相談センターに連絡してください。

専門の医師や看護師が電話でヒアリング。緊急性によっては救急車を手配してくれます。ただ、番号が異なる地域もあるため、居住地の相談番号を事前に確認しておきましょう。

2022年2月現在、検査で陽性と判断された場合でも「若年層で症状が軽く、重症化リスクの低い感染者は医療機関を受診しなくても自宅療養の開始を認める」方針を厚生労働省が発表。感染者でも重症にならない限り、自宅療養が求められています。そのため、自宅療養中の対処を覚えておくと安心でしょう。

▼具体的な方法は下記をチェック
「新型コロナ自宅療養完全マニュアル・改訂版」(実業之日本社)
※2022年3月31日まで無償公開(流行状況によっては延長)

CREDIT
写真: 岡田晴恵、Adobe Stock、photoAC
文: 田端邦彦(ACT3)