▲新型エブリイワゴンは荷室や居住スペースを拡大しただけではなく、全グレードにターボ付エンジンを搭載することで力強い走りも実現している ▲新型エブリイワゴンは荷室や居住スペースを拡大しただけではなく、全グレードにターボ付エンジンを搭載することで力強い走りも実現している

素材を改良し、軽量化しながら安定性も獲得

エブリイには商用モデルと、乗用モデルのエブリイワゴンがある。最大のトピックは車重を軽量化したこと。通常よりも強度を上げつつ、薄肉化できる超高張力鋼板を使用することで先代よりも最大で40kgも軽くなっている。

そんなエブリイの乗用モデルであるエブリイワゴンのPZターボスペシャルという3DOHCエンジンにターボチャージャーが付いたトップグレードのFR仕様に試乗した。

トランスミッションは4AT。ギア比に差があるので、よほど粘り強いエンジンでないと回転数が落ちてしまうが……果たしてどうだろうか。トルクは最大で9.7kg-mと1L級の出力を誇るが、NAのように扱いやすい。パワーバンドも広く、4ATでも苦にならない。静粛性は良好だ。荷室が広いクルマは剛性が落ちるため、乗り心地も悪くなりがちだが、エブリイワゴンはボディの剛性が高く、乗り心地も予想以上にいい。商用モデルとは異なり、うまくロールさせながら走れて、乗用車に相応しいフィールといえる。

1475mmというタイトな車幅で1815mmという車高なので、重心が高く、操縦安定性が低いのではないかと思っていたが、コーナリングに差し掛かってもサスペンションがグッと溜めて、うまくいなしてくれるので、怖くはない。ウェットな路面状況でも終始安定している。ステアリングギアボックスもしっかりと改良されており、山間部のワインディングでのハンドリングはまずまずだ。ステアリングの操縦安定性は抜群で、キビキビとした走りも感じられる。

素材の使い方を変更することで、軽量化を実現し、かつ剛性感を向上させた。その結果、安定性と乗り心地の良さを獲得しているのだ。長期間にわたってモデルチェンジを繰り返し、開発に取り組んだだけのことはある。地味な装いの中に高いドライバビリティを隠し持っている1台だ。

▲ボディの形状は標準とハイルーフの2種類ラインナップしている。ハイルーフは標準タイプに比べて全高が95mm高い ▲ボディの形状は標準とハイルーフの2種類ラインナップしている。ハイルーフは標準タイプに比べて全高が95mm高い
▲ハイルーフタイプでは従来よりも室内高を35mm、室内幅を50mm拡大し、広々とした室内空間を実現。リアシートは180mmスライドできる ▲ハイルーフタイプでは従来よりも室内高を35mm、室内幅を50mm拡大し、広々とした室内空間を実現。リアシートは180mmスライドできる
▲最上級グレードであるPZ ターボスペシャルには助手席側のパワースライドドアの開閉と連動してステップが自動的に出現するオートステップが装備されている ▲最上級グレードであるPZ ターボスペシャルには助手席側のパワースライドドアの開閉と連動してステップが自動的に出現するオートステップが装備されている
▲ユーティリティナットを上下10ヵ所に新設定したラゲージスペースは、多彩な空間アレンジが可能。ネットラックやハンガー受けなどのアクセサリーも用意されている ▲ユーティリティナットを上下10ヵ所に新設定したラゲージスペースは、多彩な空間アレンジが可能。ネットラックやハンガー受けなどのアクセサリーも用意されている

【SPECIFICATIONS】
■グレード:PZターボスペシャル 標準ルーフ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直3DOHCターボ ■総排気量:658cc
■最高出力:47(64)/6000[kw(ps)/rpm]
■最大トルク:95(9.7)/3000[n・m(kg・m)/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:4AT
■全長×全幅×全高:3395×1475×1815(mm) ■ホイールベース:2430mm
■車両重量:970kg
■JC08モード燃費:16.2km/L
■車両本体価格:164万1600円(税込)

text/松本英雄 photo/奥隅圭之、篠原晃一