マツダ ロードスター▲コンパクトオープンスポーツ「ロードスター」が大幅改良。現代に求められる新たな安全法規に適合させつつ、ロードスターらしさを追求することで、“人馬一体”の走りの楽しさをさらに高めている

電子プラットフォームの刷新で中身はまるで“別物”

日本で最もエッジの効いたモデルは何かと問われたら、マツダ ロードスターと日産 GT-Rの2台だと躊躇うことなく答える。軽量級と重量級、両極にあるスポーツカーという対比も面白い。いずれにしても世界に誇れる2台であり、極端にこだわって開発した際の熱量と知見は今後の日本の自動車産業にとってとても重要な経験となるに違いない。

GT-RもMY24で大進化を遂げたが、モデルライフ9年目を迎えたロードスターもこのたび大幅な改良を受けた。ポイントはサイバーセキュリティ。近年、未来の自動運転を見据えた支援システムが充実してきた。筆者なども東京と自宅のある京都を週1ペースで往復するが、ADAS付きでないと”気分が乗らない“カラダになりつつある。機械なんて信用できない、という人もまだまだ多いけれど、確率論でいえば頼った方が絶対に安全だ。

ところが、そういった電気仕掛けの充実は別の問題を引き起こす。ハッキングである。もし、走行中の車がテロリストによってラジコンのごとく操られてしまったら? というわけで早急な対策が必要となり、サイバーテロに対抗するシステムの強化が義務づけられた。

困るのはロードスターのように電子プラットフォームの古いモデルだ。現代の車では専用のコンピューターネットワーク=電子プラットフォームが以前からのプラットフォームと同じくらい重要になっている。それを変えるということは、外見は同じでも中身がまるで違うということを意味する。今回のロードスターの改良はまさにそれ。ほとんどの予算を電子プラットフォームの改良に費やした。その他の目立った改良ポイント、ヘッドライトのデザイン変更や運転支援機能の強化、アシンメトリックLSDといった話題は“それがなかったらなかった”もの。だったらこっちもできてしまうよね、といういわば副産物である。
 

マツダ ロードスター▲エクステリアではデイタイムランニングランプとテールランプの形状が変更されている

今回の改良、ロードスターファンには悲喜こもごもではないだろうか。悲しいのは人気の990Sがラインナップから落ちた。電子プラットフォーム丸ごとの変更によって10kgを削ることができなくなったからだ。結局、最も軽いSで1010kgと+20kgになったのも、1トンを切れないのであればロードスターらしさを失わない範囲で装備を整えておこうといった副次的アイデア(センターコンソールまわりの質感アップなど)を実現したからだった。エンジンの特性も変わっているので、オープンデフのSを乗った印象で言うと以前との性能差を特に感じることはなかった。

嬉しいのは装備の充実や新機能の追加もさることながら(否、素晴らしいのですが後ほど)、今回の大幅改良によって現行型ロードスターの寿命が延びたということだろう。マツダとしてもND型を可能な限り生産したいはず。今、次世代を考えてしまうと電気の力を借りざるを得ない。そうすると重量増という問題が生じる。他の燃料を使うエンジンも含め新たな技術で勝負できる日が来るまでND型を作り続けたいというのが本音だろう。
 

マツダ ロードスター▲8.8インチのセンターディスプレイを装備。前方視界を確保しつつ、エアバッグ作動時の干渉を避けるため、画面の縁部分をできるだけ狭くしている
マツダ ロードスター▲全グレードに6速MTを用意。RSとソフトトップのSとNR-Aは6速MTのみとなる

では改良されたロードスターはどうだったか。オープンデフのS(6速MT)は相変わらずロードスターらしい軽妙さに溢れていた。これはこれで一つの完成形であると納得できる仕上がりだ。前述したように重量増も気にならない。

注目はやはり新グレード、S レザーパッケージ Vセレクションだ。アシンメトリックLSDが標準で、インダクションサウンドエンハンサーをオプションで装備する。ブラウンのトップがオシャレ。

低中速域の力強さと心地よい吸気サウンドが新たな魅力だ。ロードスター特有の軽快なフィールを決して損なうことなく、むしろ増長させるようセットされている。気持ちよく決まるシフトフィールと相まって、スポーツカーの醍醐味ここにありと改めて教えてくれる。実は試乗会の当日、韓国人のジャーナリストを隣に乗せて走ったのだが、ロードスターはもちろん他のマツダ車も韓国市場には導入されていない。それゆえ助手席で感じるロードスターの素晴らしさに彼は終始、嫉妬していた。日本人のお前がうらやましいと。

新しいLSDの威力を感じるのは、攻めた走りでコーナーに入って行ったとき。オープンデフのSではお尻がフワッとなってしまうのに対して、LSD付きでは路面との関係をきちっと保ったまま入っていく感覚がある。だから安心、怖くない。とはいえ、ロードスターらしい軽妙さが薄れてしまうのもまた事実。そこをどう考えるか。乗り心地も副産物的に良くなったように思えた。
 

マツダ ロードスターRF▲リトラクタブルハードトップを備えたRFもラインナップ

そして最後に2Lを積むRFだ。こちらも同じLSDが入り、サウンドエンハンサーも標準で備わる。クローズドではやはり腰高な印象が拭えない。けれども速度を上げていくとどんどん“ロードスター”になっていく。そのうえ、RFには300km以上のロングドライブをいとわないGTとしての魅力もあった。

今後、ソフトトップの2Lも登場する。また、しばらくはロードスターの動向から目が離せない。シアワセだ。
 

マツダ ロードスター▲ホイールは“スポーツカーとしての性能の高さや強さ、精緻さを表現した”デザインに変更
マツダ ロードスター▲ソフトトップモデルに搭載される1.5Lエンジンは、国内ハイオクガソリンに合わせた専用セッティングによりさらなる高効率化を実現させている
マツダ ロードスター▲RSにはRAYS社製16インチ鍛造アルミホイールをオプションで設定
マツダ ロードスターRF▲2016年に登場したロードスター RF。リアセクションは専用設計となる
マツダ ロードスター▲RFには最高出力184ps/最大トルク205N・mを発生する2Lエンジンを搭載

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文/西川淳 写真/柳田由人

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

兄弟モデル、アバルト 124スパイダーの中古車市場は?

アバルト 124スパイダー

ロードスターのプラットフォームを採用し、マツダの工場で生産された2シーターオープン。エンジンはフィアット製1.4Lターボを搭載する。ロードスターより全長が145mm長いエクステリアは、FCA(当時)がデザインを担当。1970年代のラリーカーであるフィアット アバルト 124ラリーをオマージュした、クラシカルなテイストに仕立てられている。

2024年3月上旬時点で、中古車市場には30台程度が流通。価格帯は250万~540万円となる。MT車も10台程度が流通している。レコードモンツァ エグゾーストシステムやレカロシートなどのオプションが装着されている物件もあるので、個性的なお気に入りの1台を探してみてはいかがだろうか。
 

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アバルト 124スパイダー × 全国
文/編集部、写真/Stellantisジャパン

【試乗車 諸元・スペック表】
●1.5 RS

型式 5BA-ND5RE 最小回転半径 4.7m
駆動方式 FR 全長×全幅×全高 3.92m×1.74m×1.24m
ドア数 2 ホイールベース 2.31m
ミッション 6MT 前トレッド/後トレッド 1.5m/1.51m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 0.94m×1.43m×1.06m
4WS - 車両重量 1040kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.14m
マニュアルモード -    
標準色

ジェットブラックマイカ、ディープクリスタルブルーマイカ、ジルコンサンドメタリック、エアログレーメタリック

オプション色

マシーングレープレミアムメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリック、スノーフレイクホワイトパールマイカ

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型式 5BA-ND5RE
駆動方式 FR
ドア数 2
ミッション 6MT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ジェットブラックマイカ、ディープクリスタルブルーマイカ、ジルコンサンドメタリック、エアログレーメタリック
オプション色 マシーングレープレミアムメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリック、スノーフレイクホワイトパールマイカ
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
-
最小回転半径 4.7m
全長×全幅×
全高
3.92m×1.74m×1.24m
ホイール
ベース
2.31m
前トレッド/
後トレッド
1.5m/1.51m
室内(全長×全幅×全高) 0.94m×1.43m×1.06m
車両重量 1040kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.14m
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エンジン型式 P5-VP[RS] 環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆
種類 直列4気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 40リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 1496cc 燃費(WLTCモード) 16.8km/L
└市街地:11.9km/L
└郊外:17.6km/L
└高速:19.7km/L
燃費基準達成 -
最高出力 136ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
152(15.5)/4500
エンジン型式 P5-VP[RS]
種類 直列4気筒DOHC
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 1496cc
最高出力 136ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
152(15.5)/4500
環境対策エンジン H30年基準 ☆☆☆☆
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 40リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 16.8km/L
└市街地:11.9km/L
└郊外: 17.6km/L
└高速: 19.7km/L
燃費基準達成 -