【試乗】新型 日産 GT-R|初期モデルとはまったく違う! すべてが洗練されたR35型の“集大成”
2023/10/07
マイナーチェンジと呼ぶには惜しいほどの進化
R35型GT-Rほどエッジの立った国産車はこれまでなかった。少なくともスポーツタイプの中ではそうで、これからも出てきそうにない。なぜならこの車は“重いから速い”。“軽さが命”というスポーツモデルの常識を見事に覆した世界でも珍しい車なのだ。
今でも鮮明に覚えていることがある。R35型がデビューしてしばらく経った頃、筆者はとあるアメリカンブランドのスポーツカーの試乗会で、エンジニアにGT-Rのすごさを誇らしげに語っていた。しばらく黙って聞いていたそのスポーツカー担当のエンジニアはおもむろにこう言ったものだ。「そんなことはあり得ない」。そりゃそうだ、ニュルのラップタイムを聞いてポルシェのエンジニアだって“そんな馬鹿な”と叫んだとか叫ばなかったとか。スペック(特に重量)と実性能(特に加速)のつじつまが合わないと彼らは真面目な顔で主張した。
多くのヨーロッパ系ジャーナリストたちも、興味深く耳を傾けてくれたもののその表情からは眉唾な印象がありありと読み取れた。「まぁ、実際に試してごらんなさい」。そう言って話を締めくくるほかなかったことを覚えている。
要するにそれくらい挑戦的なモデルだった。だからこそ2007年のデビュー以来、改良に改良を重ねつつ今の今まで現役、それも第一級のパフォーマンスを誇るモデルであり続けた。欧米のモノマネではないユニークなスタイリングと合わせて、国産スポーツカー界におけるそれは、金字塔というべきモデルであろう。
そんなR35型も年々厳しくなる音や環境の規制により販売できる地域が減るということもあって、昨年のMY23モデル発表時に“これが最後”とうわさされたことがあった。けれども2023年1月、そんなうわさを見事に覆すマイナーチェンジモデルとなるMY24モデルが登場。世界をアッと言わせたのだ。
スタンダードモデルの他に、究極のGTを目指したTスペックと至高のスポーツモデルを目指したニスモというグレード展開こそMY23モデルと変わらない。けれどもMY24モデルはデザインからサスペンション、パワートレインまで細かく手が入り、単にマイナーチェンジというには惜しいくらいの変更が施されている。
Tスペックを試して、R35型がついにここまで“変わったか”と感慨深かった。筆者がデビュー当時のR35型を購入したときは、常識を覆す性能と引き換えに様々な不都合、ミッションの音や乗り心地の硬さなどに耐えなければならなかった。ある意味、途轍もない高性能とは裏腹に、車として未完成なところがあったのだ。
ところがMY24モデルのTスペックには、乗っていて「?」と感じることがほとんどない。ミッションの段数やインパネのデザインに歴史を感じるものの、車体の動きや乗り心地、変速フィールが初期モデルとは大違い。一言で言えば洗練されている。動きはじめの重厚感は影を潜め、ハンドルはあくまでも軽やかに動き、それでいて地面を蹴る力は今まで以上に確実で莫大だ。ドライバーを突き上げる不快なショックはもはや消え失せ、低速域からきっちり乗用車らしい乗り心地を提供する。速度を上げていくにつれ、一体感が増していく。どんな速度、どんな道路環境でも自信を持って走っていけるというR35型の魅力に磨きをかけつつ……。
本当にいい車になった。これまで、その乗り味にへきえきとして乗り替えを決意したオーナーは多かったはずだが、彼らにこそもう一度試してもらいたい。残念ながらおいそれと買えるモデルではなくなったけれど。
ただ、初期のR35型で衝撃を受け、しばらく愛用した身には少なからず寂しさもある。あの重戦車のような乗り味をすっかり失った。もちろん車としては今の方がずっといい。洗練されているし完成度も高い。けれども個性という面では確実に薄まっている。極言すれば普通の車になった。
要するに工業製品の進化とはそういうものだ。特に性能における個性とはたいてい、未完成が原因となっている。それゆえ改良すればするほど、つじつまを合わせれば合わせるほど個性は失われていく。
そういえばR35型GT-Rのデビュー時、開発責任者はこう言っていた。「工芸品であるイタリアのスーパーカーに対する、工業製品の得意な日本メーカーの回答」。なるほど開発担当者は変わったけれどもR35型は工業製品として真っ当に進化したのだった。
▼検索条件
日産 GT-R× 全国自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
先代となる日産 スカイラインGT-R(R34型)の中古車市場は?
1989年に登場したR32型にはじまる第2世代の最後を飾り、1999年に登場。高剛性ボディや前後駆動配分を自動制御する4WDシステムなどを採用、最高出力280ps/最大トルク40kg・mの2.6L 直6ターボ(RB26型)エンジンを搭載した。よりスポーティなVスペックやGT性能を高めたMスペックなどもラインナップされている。ちなみに、ファイナルモデルとして2002年に登場した「ニュル」は、オーダーが殺到したため当初の300台限定予定から1000台限定へと変更されたほどの人気だった。
2023年9月後半時点で、中古車市場には40台ほどが流通。平均価格は2227万円、その価格帯は1180万~7980万円となる。世界的な人気の高まりで相場は高騰。ニュルをはじめとした限定モデルは一般の人には手の届かない価格まで上昇している。
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日産 スカイラインGT-R(R34型)× 全国【試乗車 諸元・スペック表】
●3.8 プレミアムエディション Tスペック 4WD
型式 | 4BA-R35 | 最小回転半径 | 5.7m |
---|---|---|---|
駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.71m×1.9m×1.37m |
ドア数 | 2 | ホイールベース | 2.78m |
ミッション | 6AT | 前トレッド/後トレッド | 1.6m/1.6m |
AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | 1.73m×1.48m×1.1m |
4WS | - | 車両重量 | 1760kg |
シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 4名 | 車両総重量 | 1980kg |
ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | 0.11m |
マニュアルモード | ◯ | ||
標準色 |
ダークメタルグレーメタリック |
||
オプション色 |
アルティメイトメタルシルバー4コートM、メテオフレークブラックP 2コートパール、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ミレニアムジェイドメタリック、ミッドナイトパープルマルチフレックスM |
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掲載コメント |
- |
型式 | 4BA-R35 |
---|---|
駆動方式 | 4WD |
ドア数 | 2 |
ミッション | 6AT |
AI-SHIFT | - |
4WS | - |
標準色 | ダークメタルグレーメタリック |
オプション色 | アルティメイトメタルシルバー4コートM、メテオフレークブラックP 2コートパール、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ミレニアムジェイドメタリック、ミッドナイトパープルマルチフレックスM |
シート列数 | 2 |
乗車定員 | 4名 |
ミッション 位置 |
フロア |
マニュアル モード |
◯ |
最小回転半径 | 5.7m |
全長×全幅× 全高 |
4.71m×1.9m×1.37m |
ホイール ベース |
2.78m |
前トレッド/ 後トレッド |
1.6m/1.6m |
室内(全長×全幅×全高) | 1.73m×1.48m×1.1m |
車両重量 | 1760kg |
最大積載量 | -kg |
車両総重量 | 1980kg |
最低地上高 | 0.11m |
掲載用コメント | - |
エンジン型式 | VR38DETT | 環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆ |
---|---|---|---|
種類 | V型6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 74リットル |
可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
総排気量 | 3799cc | 燃費(WLTCモード) |
7.8km/L
└市街地:5.2km/L └郊外:8.4km/L └高速:9.3km/L |
燃費基準達成 | - | ||
最高出力 | 570ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
637(65)/5800 |
エンジン型式 | VR38DETT |
---|---|
種類 | V型6気筒DOHC |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | - |
総排気量 | 3799cc |
最高出力 | 570ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
637(65)/5800 |
環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆ |
使用燃料 | ハイオク |
燃料タンク容量 | 74リットル |
燃費(10.15モード) | -km/L |
燃費(WLTCモード) | 7.8km/L
└市街地:5.2km/L └郊外: 8.4km/L └高速: 9.3km/L |
燃費基準達成 | - |