【試乗】新型レクサス LX(プロトタイプ)|一般道では試せない挙動でフラッグシップの本質をチェック
2022/05/01
走り、デザイン、内装の質をチェック!
4代目となる新型レクサス LX。発売後、世の中の評価は上々だ。
私はまだ公道で乗れていないのだが、発売直前にクローズドコースで試乗する機会をいただいた。ここでは、その際、富士スピードウェイのマルチパーパスドライビングコースで、ややハードに走らせてみた感想を中心にお伝えしたい。
レクサスはご存じのとおり、プレミアムモデルをうたっているブランドだ。LXはその旗艦モデルにあたる。
昨今は同様のラージ商品、いわゆる「プレミアムSUV」群の中でも、より高級感あるデザインと高い質感、他にない乗り心地にこだわった1台。
そのような前提を踏まえ、まず注目したのが骨格だ。ラダーフレームを使って最高峰を狙った、その心意気を評価したい。
軽量で制約も少ない、つまりスタイリングやハンドリングに有利な設計ができ、静粛性も高い「モノコックボディ」ではなく、強靭さが売りの「ラダーフレーム」を採用しているのだ。過酷な状況下を走るトラックなどに使われるほど、耐久性が素晴らしい反面、重量が増す、転用が難しいなどのデメリットもある。つまり、プレミアムSUV、しかも最高峰を目指すモデルに起用するのはなかなか難易度が高いということだ。
しかも、新型LXはラダーフレームとリアに強固なリジッドアクスルを採用している。いよいよソフトな乗り心を得るには難しいレイアウトなのだ。
レクサスは、LXを進化させるにあたって、まず耐久性と走破性にこだわったということだろう。もちろん、プレミアムSUVの最高峰としてふさわしい乗り心地を共存させながらだ。
以上のような構造を理解しながら、試乗コースへ出た。
V型6気筒エンジンは始動時の振動も少なく、ラダーフレーム感を感じさせない高い静粛性だ。Dレンジに入れて走り出すと10速ATの恩恵で、極めてスムーズな移行で速度が増す。乗り心地はまずまず。高速コーナーとタイトコーナーを組み合わせたコース(旧ドリフトコース)だったが、もう少し大きなうねりや速度が出せる道でないと、エアサスの本当の良さが発揮されないということか。
タイトコーナーで速度を上げ、攻めてみる。大きなボディかつ重心が高いにも関わらず、不安はない。実際のサイズより一回り小さく感じるようなハンドリングだ。万が一の急ハンドルをイメージした操作も試してみる。どっしりとしたフィーリングは変わらない。王者の風格だ。トルクの落ち込みも感じなかった。とても粘り強いエンジンである。2.6トンの巨体を軽々と走らせているのが3.4Lのターボなんて、知らなければわからないくらいだ。トルクがフラットで扱いやすい。
日本の一般道では、よりラグジュアリーな乗り心地と性能に期待が持てるだろうと感じた。
以上がクローズドコースでややハードに扱ってみた感想である。
プレミアムSUVなので、デザインにも触れておこう。
まずは外観。レクサスらしいロバストなフロントグリル……というよりもEVを見据えたフロントマスクなのか。強固なSUVにしてクリーンな印象を受ける。レクサスだからこそできるプレスラインは、質の良さを感じさせるポイントだ。特にフェンダーの形状は他社にはないフォルムがオリジナリティを感じさせる。コの字型に似たフェンダーアーチは、往年のトヨタ ランドクルーザーなどにも使われた形状をモノフォルムで再現したのだろうか。高級感がある。
次に内装。運転席からの見切りの良さは、悪路シーンにおいて“本物“である証拠か。特にエンジンフードの中央部のくぼみは前方の視認性を高めている。
全体の質感は、先代に比べれば他のレクサスのアイデンティティを導入し、高級感を感じるもののフラッグシップとしては、もう少し各部の素材と作りを高めてもよいとは思う。特に、オーナーが後部座席に乗るケースも多い車種だと考えると、後席の足元、手元の質感はもっとこだわれるはずだ。ぜひ今後は内装もレクサスの名に恥じない品質に仕上げていってほしい。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。