ジープ コマンダー▲日本で扱いやすいボディサイズに3列シートを備えたミドルクラスSUV。グランドチェロキー譲りのスタイルに、パワフルなディーゼルエンジンを搭載した

初のディーゼルエンジンを搭載した“新しい”ジープ

ジープ コマンダーと聞くと、10年ほど前に販売されていた縦長のヘッドライトをした3列シート7人乗りSUVを思い浮かべる人がいるかもしれない。

少々ややこしいのだが、新型コマンダーの特徴も、3列シート7人乗りであることだ。にも関わらず、過去のコマンダーの後継車ではないという。旧型コマンダーは当時のフラッグシップであり、新型はサイズ的に数年前に生産終了したチェロキーの穴を埋めるものとジープの広報担当は説明する。現行ラインナップでいえば、グランドチェロキーとコンパスの間に位置するモデルというわけだ。
 

ジープ コマンダー▲ヘッドライトと一体化した7スロットグリルを採用する、グランドチェロキー譲りのエクステリア
ジープ コマンダー▲ブラックペイントのルーフとルーフレールを採用しプレミアム感を演出

エクステリアデザインは、グランドチェロキーにも似たスクエアでモダンなもの。フロントマスクは、ジープのアイデンティティである7スロットグリルと横長のLEDヘッドランプが一体化されている。リアランプも横長でリアガーニッシュと一連のものとしてデザインされている。またジープの伝統である台形ホイールアーチも受けつがれている。

ボディサイズは全長4770mm、全幅1860mm、全高1730mm。競合する3列シート7人乗りSUVをいくつかピックアップしてみよう。輸入車の場合、メルセデス・ベンツ GLB(全長4640mm、全幅1835mm、全高1700mm)、プジョー 5008(全長4640mm、全幅1840mm、全高1650mm)、ランドローバー ディスカバリースポーツ(全長4610mm、全幅1905mm、全高1725mm)。国産車だと、日産 エクストレイル(全長4660mm、全幅1840mm、全高1720mm)や、三菱 アウトランダーPHEV(全長4710mm、全幅1860mm、全高1745mm)あたりになると思われる。

この数字を見ると、コマンダーはいずれのモデルよりも全長が長いことがわかる。ほんのわずかに思えるが、この差が3列目シートに座ったときのニースペースの広さに利いている。2列目シートには、前方に回転させて簡単に折りたためるタンブル機能を装備。リアドアは、3列目シートへアクセスしやすいように最大80°まで開くよう工夫されている。3列すべてのシートに、バックレストの角度を調整できるリクライニング機能を装備し、ヘッドクリアランスもしっかりと確保。身長170cmくらいまでであれば大人でもそれほど窮屈な思いをしなくてもすみそうだ。

インテリアに目を移すと、メーター類は10.25インチのディスプレイとなり、センターコンソール中央には、タッチパネル式の10.1インチモニターを配置する。ダッシュボードやドアの内張り、シートなど全体的に統一されたブラックまたはブラウン系のレザーを配している。さらに、フロントシートや2列目シートにはサイドサポートなどにキルティングデザインを施し、上質感を演出している。ステアリングを握ったままラジオ放送局の選択や、電話の発信、車内温度の設定などが行えるいまどきの車載ボイスコマンド機能も備わった。
 

ジープ コマンダー▲内装は2色を用意。ボディカラーがホワイトとレッドの場合はブラウン、ブラックとグレーではブラックの内装が組み合わせられる

パワートレインは、ジープブランドとしては初採用となる2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンに、最新の9速ATを組み合わせている。最高出力170ps、最大トルクは350N・mを発揮。旧型コマンダーが4.7Lや5.7LのV8エンジンを搭載してことを鑑みれば隔世の感があるが、クロスレシオ化された9速ATが、低速から高速域まで2Lディーゼルターボエンジンの性能をあますことなく使いきっている。

駆動方式はもちろん4WDで、「ジープアクティブドライブ」と呼ばれるものだ。このシステムはスロットルコントロール、トランスミッションシフト、トランスファーケース、トラクションコントロールなど12種類の車両マネジメントシステムを連動させることで、路面状況に応じて優れた走行安定性を実現する。走行状況に応じて、2WDと4WDを自動で切り替え、燃費効率を高める。シフトセレクター横には「セレクテレインシステム」のスイッチが配置されており、「SAND/MUD(砂・泥)」「SNOW(雪)」「AUTO(オート)」の3つのドライブモードが選択できる。またジープらしくオフロードでの走破性を高める「4WD LOCK」と「4WD LOW」というモードも用意されている。日常走行時はオートにしておけばいい。
 

ジープ コマンダー▲2L直4ディーゼルターボエンジンは最大トルクを1750~2250rpmという低回転域から発生させる

そして、ジープといえども、いまやADAS(先進運転支援システム)は必須アイテム。アダプティブクルーズコントロールをはじめ、走行中に車線内を維持するハイウェイアシストシステムや、車線逸脱を防ぐアクティブレーンマネジメント、衝突被害軽減ブレーキ(歩行者、サイクリスト検知機能付き)、サラウンドビューカメラシステムと最新機能を満載する。

いまのところパワートレインはこの2Lディーゼルターボのみで、グレードもリミテッドのみの設定となっている。メーカーオプションのサンルーフを除けば、ほぼフル装備の状態で、車両価格は597万円と円安の状況下でなんとか600万円を切る設定としている。3列シート7人乗りの高い実用性と優れたオフロード走破性、そしてアメリカンSUVらしい雰囲気を組み合わせた新型コマンダーは、日本の道にマッチする新しいジープなのだ。
 

ジープ コマンダー▲サイドサポートにダイヤモンドキルティング処理が施されたレザーシートを標準装備
ジープ コマンダー▲2列目シートは前方に回転させて簡単に畳めるタンブル機能が備え、3列目の乗降性を向上させている
ジープ コマンダー▲リクライニング機能が備わる2座の3列目シートは、50:50の分割可倒式を採用
ジープ コマンダー▲ラゲージ容量は7名乗車時で170L、3列目を倒した5名乗車時では481Lとなる
文/藤野太一 写真/茂呂幸正

ジープ コマンダー(初代)の中古車市場は?

ジープ コマンダー

ブランドで初めて3列シート7人乗りを採用した、2006年登場のフラグシップSUV。ジープのアイコン的デザインを取り入れた、ボクシーなスタイルが特徴的。3.7L V6と5.7L V8エンジンを搭載し、2tを超える車両重量を意識させない余裕の走りを見せる。悪路走破性も高く、グランドチェロキーと同等の実力を誇っている。

2022年12月現在、中古車は10台前後が流通しており、価格帯は100万円台に集中している。4.7Lと5.7Lはほぼ同じくらいの流通量で、ボディカラーもホワイト、シルバー、ブラックのみなので、物件選びのポイントは車両のコンディションとなるだろう。
 

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文/編集部、写真/Stellantisジャパン