【試乗】新型フェラーリ296GTB|その走りはまるでバーチャル!新世代の主力となるプラグインハイブリッドスーパーカー
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
タグ: フェラーリ / クーペ / プラグインハイブリッド / MR / 296GTB / EDGEが効いている / 西川淳 / c!
2022/03/08
2シーターV8ミッドシップの後継は6気筒エンジンと“2気筒分の”モーターを積む
マラネッロの市販ハイブリッドカーとしては第3弾となる296GTB。第1弾のラ フェラーリは限定車。第2弾のSF90シリーズがハイブリッドとしては量販初で、しかもプラグインだった。フロント2、リア1という3モーター構成のSF90シリーズはしかし、ロードカーラインナップでは12気筒モデルの上という夢の価格帯。本命はリア1モーターで同じくプラグインハイブリッドとしたこの296GTBということになる。
308GTB以来、半世紀近く続いた2シーターV8ミッドシップラインナップの後継、つまりロードカービジネスにおける主力だと思って差し支えない。伝統にのっとってその車名の意味を読み解けば、2.9Lの6気筒エンジンを積むGTクーペ、である。2気筒分に代わって電気モーターと大容量バッテリーを積み、パフォーマンス的にはF8トリブートを上回ってきた。6気筒だからと言って決して廉価版ではない、ということだ。
マラネッロ期待の新世代ニューモデルである。そのデビュー試乗会に選ばれた場所は、風光明媚で暖かいスペインはセビリアで、イタリア国外での開催は初とのこと。それだけ気合いも入っていた、というわけだった。
基本的にモノグレードだが、サーキット使用を前提とした「アセット・フィオラノ」というパッケージオプションも用意されている。軽量化にこだわった他、専用ダンピングシステムや、250LM風のカラーリングもチョイスできるなど人気のオプションである。
まずは、その「アセット・フィオラノ」でミニサーキットを攻めた。発表された時から心配していたのは、新開発120度V6のフィールとバッテリー重量増による悪影響の2つだったが、いずれも筆者の杞憂に終わった。
開発陣がピッコロV12と呼んでいたエンジンは、なるほど高回転域になればなるほどむせび泣くような音質になって、これまでのV8ツインターボよりかなり官能的だ。音圧や外部への伝播ではV8自然吸気に劣っているものの、その代わり洗練されたミュージックのようで、ドライブしながらいつまでも聞いていたいと思わせるサウンドだ。
パワーフィールも申し分ない。モーターのアシストは速度やギアによって綿密に制御されており、ターボチャージャーの存在を打ち消しながらさらにトルクをスムーズに上乗せするような感覚はもはや大排気量の自然吸気エンジンを駆っているかのようだった。
それゆえ、2速が適当なコーナーを間違って3速で抜けようとしても、それなりに速く脱出できる。これまた大排気量エンジンのようだ。
重いバッテリーは腰のすぐ後ろの床下にある。重心にあるため、動きを左右するような重さを感じない。むしろ腰回りに安心感があって、車体とドライバーとの一体感も増す方向に作用する。端的に言って、ギュッと引き締まった車に乗っている感じが強い。最近のミドシップフェラーリの中では最もフィット感のあるモデルだ。
制動を含めたシャシー制御も素晴らしい。
マネッティーノ(ドライブモード)をレース、eマネッティーノ(ハイブリッドパワートレーンモード)をクオリファイにして走ってさえいれば、面白いように曲がっていける。830psのRWDミッドシップカーという事実にビビることなく攻めていけた。まるで怖くないうえに、車の制御に頼っているという感覚にも乏しい。アンダーステアなどまるで出ないから、急に上手くなった、どころか、ほとんどバーチャルの世界で楽しんでいるかのようだ。それが証拠にCT Offモードへとスイッチすると、いきなりのオーバーステア大会。それはそれで楽しいけれど!
スタンダード仕様も一般道で試すことができた。300kmほど1人で走ったけれど、まるで飽きなかった。
アシはよく動き、フラットながら心地よい。何より街中ではEVとして使える。通りすがりの街中を無音で走り抜けると、道ゆく人たちが驚いた。痛快であった。
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
フェラーリ F8トリブートの中古車市場は?
2シーターV8ミッドシップの現行モデルがF8トリブート。内燃機関のみを搭載した最後のV8モデルとして、過去のV8モデルをオマージュしたデザインが用いられている。