BMW M3ツーリング▲自動車テクノロジーライター松本英雄氏が、BMW M3 コンペティション M xDrive ツーリングに試乗した際のレポートをお届け

縦置きユニットが生み出すパフォーマンス

縦置きユニットを搭載するBMWのステアリングを握ったことはあるだろうか。まだ知らない人は内燃機関が珍しくなる前に確かめた方がいいだろう。

正直言ってすべてのモデルにおいてダイレクトなフィールが約束されている。スポーツモデルではなくてもスポーティで、意のままに操るエッセンスが初めから導入されているということになる。少なくとも私の記憶ではそうである。

BMW M3ツーリング▲今回試乗したのは、2023年1月に日本導入された「M3 コンペティション M xDrive ツーリング」
BMW M3ツーリング▲ボディサイズは全長4805mm×全幅1905mm×全高1450mm

フロントから湧き上がるパワーを後輪に伝える動力伝達系は、最も歴史のあるレイアウトだ。BMWはそれらのレイアウトが理想だと考えて自動車作りをしてきたのである。

そのレイアウトを中心に全体的なフォルムをデザインしてきた結果、ダイナミックで洗練された形が継承されているのだ。デザイン力を利用したスタビリティにも早く導入している。

メルセデス・ベンツも高級車には縦置き基本リア駆動を採用しており、BMWも同様の考え方だ。

ただ、BMWとメルセデスの基本モデルの違いは、ゆったりと堂々とした縦置きユニットかハンドリングを重視に設計されてきたモデルなのか、ということだろうか。お互いのたもとには違いがある。

だからこそ、BMWの場合、市販モデルで特化したハイパフォーマンスを生むときには、M社(MシリーズをプロデュースするBMWの子会社)でこしらえたモデルは、より高い意のままの走りのステージへと誘えるのではないだろうか。

今回試乗したM3ツーリングは、そんなBMWの考えが詰まっている。

BMW M3ツーリング▲ホイールはフロントに19インチ、リアには20インチのM 鍛造 ダブルスポーク・スタイリング826Mを装着している

M3はご存じのとおり、名門BMWを代表するコンパクトなスポーツエグゼクティブモデルだ。エンジンメーカーでもあるBMWの名を恥じない名機の数々を搭載した3シリーズは、いわばM社の礎のモデルだと私は思う。

だからこそ、M3はBMWの意思を最もダイレクトに伝える重要なモデルなのだ。

量産ベースとは思えない高性能ワゴン

前置きが長くなってしまったが、M3ツーリングはただ単に510馬力のユニットを搭載したモンスターではないことを理解していただきたいのだ。

直列6気筒ほど王道かつ最善なユニットはない。静粛性の高さと官能的なハーモニックのエグゾーストノートと、出力の向上には欠かせない多気筒ユニットである。BMWはこのレイアウトをずっと突き詰めて、哲学を曲げずに高性能を追い求めてきた。

BMW M3ツーリング▲M3ツーリングが搭載する直列6気筒DOHC 3.0リッターツインターボエンジン。最高出力は375kW(510ps)/6250rpm、最大トルク650N・m(66.3kg・m)/2750-5500rpmを発生させる

ステーションワゴンというスタイルは開口部が広く、そして重量がかさむ。それでいて、M3ツーリングはセダンやクーペよりも時代に合った多目的要素を注入し、さらにバリューを求めたカスタマーに進言した本物のハイパフォーマンスモデルである。

BMW M3ツーリング▲ラゲージ要領は500L。後席を倒すことで1510Lまで拡張することが可能

実は、日本には正規輸入はされなかったが、V型10気筒のM5のツーリングモデルが1000台強ほど存在した。M社は十分そのときに手応えをつかんでいたのだろう。しかし、500馬力以上となれば四輪駆動がスタビリティには必須である。

シートはソリッドで最高のホールド感である。レーシングユニットから量産車モデルにチューニングされたユニットの音は、陳腐な言い方だが震えがくる。

BMW M3ツーリング▲インテリアではMスポーツシート、Mモデル専用デザインのメーターパネル、M専用ステアリングなどを使用
BMW M3ツーリング

加速すると爆発的な燃焼が繰り返される。精度よくチューニングされた燃焼は、加速によって圧力が上昇し、たまらないハーモニックな音を脳に叩きつける。

BMW M3ツーリング

ステアリングフィールもダイレクトであり、細かな操作で車の動きを路面に伝える。リアの開口部の剛性のうんぬんなど、全くと言っていいほどインフォメーションとして伝わってこない。

奥深いサスペンションセッティングは、ソリッドなシートであるからこそ車の動きが理解できる。小気味よいシフトアップダウンも意のままに大切な情報だ。

BMW M3ツーリング

しかし、マルチな情報すべてを理解しようとしてはいけない。情報と理解は似て非なるものだ。ひとつひとつ理解していたら正確に乗りこなすには時間が足らない。その情報をもとに、今まで培わったドライビングで正確なステアリングとアクセルワークをマルチタスクに行うのだ。

これほどまでにストイックな量産ベースのモデルがあるだろうか。経験によって意のままに体験できるファンタスティックなエステートが、M3 コンペティション M xDriveツーリングなのである。

BMW M3ツーリング
文/松本英雄、写真/篠原晃一

【試乗車 諸元・スペック表】
●BMW M3ツーリング コンペティション M xドライブ 4WD

型式 3BA-12GB30 最小回転半径 5.3m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.81m×1.91m×1.45m
ドア数 5 ホイールベース 2.86m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.62m/1.61m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1870kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 2145kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.12m
マニュアルモード
標準色

アルピン・ホワイトIII

オプション色

ブルックリン・グレーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、サンパウロ・イエローメタリック、アイル・オブ・マン・グリーンメタリック、ポルティマオ・ブルーメタリック、トロント・レッドメタリック、スカイスクレイパー・グレーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、オキサイド・グレーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズンポルティマオブルーメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、フローズン・ブラック・メタリック、フローズン・オレンジメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ピュア・グレーメタリック

掲載コメント

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型式 3BA-12GB30
駆動方式 4WD
ドア数 5
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 アルピン・ホワイトIII
オプション色 ブルックリン・グレーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、サンパウロ・イエローメタリック、アイル・オブ・マン・グリーンメタリック、ポルティマオ・ブルーメタリック、トロント・レッドメタリック、スカイスクレイパー・グレーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、オキサイド・グレーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズンポルティマオブルーメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、フローズン・ブラック・メタリック、フローズン・オレンジメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ピュア・グレーメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.3m
全長×全幅×
全高
4.81m×1.91m×1.45m
ホイール
ベース
2.86m
前トレッド/
後トレッド
1.62m/1.61m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1870kg
最大積載量 -kg
車両総重量 2145kg
最低地上高 0.12m
掲載用コメント -
エンジン型式 S58B30A 環境対策エンジン -
種類 直列6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 59リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 2992cc 燃費(WLTCモード) 9.8km/L
└市街地:6.8km/L
└郊外:10.1km/L
└高速:11.9km/L
燃費基準達成 -
最高出力 510ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
650(66.3)/5500
エンジン型式 S58B30A
種類 直列6気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 2992cc
最高出力 510ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
650(66.3)/5500
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 59リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 9.8km/L
└市街地:6.8km/L
└郊外: 10.1km/L
└高速: 11.9km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。