【試乗】新型メルセデス・ベンツ EQS SUV|フラットな走りと思いどおりの加速感! BEVでもメルセデスらしさを感じられる上質さ!
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
2023/08/11
空力に優れたキャブフォワードデザイン
「EQS SUV」は、メルセデス・ベンツのBEVラインナップに新たに加わった、3列シート7人乗りのラージサイズSUVだ。
モデルラインナップは、最大出力360ps/最大トルク800N・mの「450」と、544ps/858N・mの「580」の2種類で、駆動方式はいずれも4MATIC(4WD)だ。両モデルともに107.8kWhの新世代大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。一充電走行距離(WLTCモード)は、前者が593km、後者は589kmとなっている。
プラットフォームは先に登場したセダンのEQSと同じ電気自動車専用の「EVA2」を採用。ボディサイズは全長5130mm、全幅2035mm、全高1725mmで、GLSとGLEとのおよそ中間に位置する。ホイールベースは3210mmで、GLSと比べて75mmも長いこともあってゆとりのある空間を確保。2列目シートは身長180cmの男性が座ってもヘッドクリアランスにゆとりがあり、座面も前後に130mmスライド可、バックレストは前方に14度、後方に4度リクライニング可能な電動シート機能を標準装備する。そして、3列目は左右独立の2座タイプ。大人の男性でも座ることができるしっかりとしたつくりとなっている。3列目シートは、格納時は床下にフラットに収まり、ラゲージスペースに最大4つのゴルフバッグが積載可能なスペースに。さらに、2列目も合わせて格納すれば荷室容量は最大2020Lまで拡大する。
エクステリアはセダンのEQSと同様のキャブフォワードデザインを採用。それによって、大型SUVとしては異例のCd値0.26(GLSのCd値は0.32)を実現している。ヘッドライト上端に配されたLEDが山型のギザギザなデザインになっているのが、セダンのEQSとは異なるポイントだ。ボディサイドに配置されたランニングボードは乗降時のステップとしてだけでなく、空力改善にも寄与するという。リアコンビネーションランプは特徴的なリボンデザインになっている。
インテリアでは、インストルメントパネル全体が湾曲する一枚もののガラス板によって覆われた「MBUXハイパースクリーン」が特徴的だ(580に標準装備、450にはオプション)。これには、iPhoneなどが採用することで知られるゴリラガラス(強化ガラス)を採用している。
MBUXハイパースクリーンは、ドライバー正面の12.3インチディスプレイ、センターの17.7インチOLEDタッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイの3つによって構成されている。センターと助手席のディスプレイには触覚フィードバックが備わり、直感的に操作しやすいものだ。助手席用のディスプレイは、助手席の乗員を検知すると起動し、走行中でもテレビなどが視聴可能。ドライバーの目線も検知していて、走行中にドライバーが助手席用ディスプレイを見ていると判断すれば、画面を消すという安全に配慮した設計となっている。
近頃のラグジュアリーカーは、コロナ禍を経て車内の空気をいかにクリーンに保つかに創意工夫をこらしている。このEQS SUVでも大型HEPAフィルターを採用。PM2.5~0.3クラスの微粒子含め、粒子状物質を最大 99.65%以上除去するという。ディスプレイによって室内、室外の汚染状況をモニターすることも可能だ。
試乗車は「450」だった。アクセルペダルにそっと力を込めれば、瞬時にトルクが立ち上がりリニアに加速していく。とはいうものの、同乗する乗員を不快にさせるような暴力的な加速ではない。あくまでもスムーズでドライバーの意志にそうものだ。このあたりのチューニングは、さすがはメルセデスというべきところだ。
車両重量はおよそ2.9トンもあるので、さすがに軽快とはいえないもののバッテリーを床下に低く、前後アクスル間にバランスよく収めているため、コーナーでも大きくロールするようなことはなく、安定した姿勢で旋回していく。足回りには、可変ダンパーとエアサスペンションを組み合わせたAIRMATICを標準装備しており、コンフォートやスポーツ、ECO、Individualなどが選択可能なドライブモードに応じて減衰力を可変させる。今回の試乗では試せなかったが、オフロードモードも用意されている。これはアクセルペダルによるトルク特性曲線を他のモードに比べてフラットに維持することに加え、時速60km/hまでは車高を25mmアップするという。
回生ブレーキは、ステアリングに備わるシフトパドルを使って、減速度を3段階(D+、D、D -)で設定が可能で、最強のD -にしておけばワンペダルフィーリングが味わえる。また、「D Auto」モードにしておくことで、最も効率的な走行スタイルとなるように減速の強弱を自動で調整する。例えば先行車を検知すると、車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従してくれる。個人的にはこのモードが使いやすかった。
さらに、最大10度のリアアクスルステアリング(四輪操舵)を標準装備している。これは約60km/h以下では後輪が逆位相に操舵して小回り性能を高め、60km/hを超えると前輪と後輪が同位相に操舵することで、高速走行時の姿勢変化を抑制してくれるものだ。最小回転半径は5.1mとGLS比で0.7mも短縮しているため、全長5m超のボディサイズであることがほとんど気にならない。実際に狭い駐車場で試してみたが、全長約5.1mのEQS SUVは他のミッドサイズSUVより圧倒的に小回りが利いて驚いた(ちなみにその車の最小回転半径は5.7m)。ただし、ひとつ知っておきたいのは、縁石ぎりぎりに寄せて駐車しているケースで、後輪も舵を切ることを忘れて据え切り発進をしてしまうことで、ホイールを擦ってしまうケースが起きているというから要注意だ。
ADAS(先進運転支援システム)は最新のもので、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(前走車追従機能)とアクティブステアリングアシストを組み合わせて作動しておけば、高速走行時などはステアリングに手を添えているだけで前走車との最適な距離を維持し、自動で加減速しながら走行してくれる。少し前の世代のモデルではステアリングを握っているにも関わらずアラートが頻出することもあったが、このEQS SUVではかなり精度が上がっていると感じた。そして今回、発見だったのが高速道路で10km/hにも満たない低速でストップ&ゴーを繰り返すような渋滞時には、いわゆるハンズオフ機能のような走行が可能だったこと。東名高速道路下り、秦野中井IC手前で起きた事故渋滞に遭遇したのだが、その間の十数分間はステアリングを握ることなく、もちろんアクセル&ブレーキ操作もせずで、けれどもステアリングを握るよう促す警告も出ず、ゆるゆると自動走行してくれた。それについてはプレスリリースをはじめ、カタログや取り扱い説明書にも記載がないため詳細不明だが、ある特定の条件が揃った際に起動する隠し機能なのかもしれない。メルセデスは、年内にも米国市場で自動運転レベル3の機能を搭載したSクラスとEQSを発売するというから、EQS SUVにこうした機能が備わっていたとしても不思議はない。
電費は、外気温35℃オーバーで、東京から富士スピードウェイまで約110kmに3時間半以上という大渋滞を経て3.2km/kWh、帰路もそれなりの渋滞で、2時間10分かかって6.2km/kWhだった。高速の流れが良ければ7km/kWh台を表示することもあって、思いのほか悪くないという印象だ。
EQS SUVの直接的なライバルは、7人乗り電気自動車のテスラ モデルXか、内燃エンジン車なら身内のGLSということになる。いずれにせよ、ラグジュアリー性、3列目シートを備えた機能性、先進性、安全性、長い航続距離と、多くの人々が求める要素をギュッと凝縮した1台であることは間違いない。
内燃機関の3列シートSUV、メルセデス・ベンツ GLS(現行型)の中古車相場は?
2020年に日本に導入された、3列シートを備えたフラッグシップSUV。2代目となる現行型はエッジやラインを減らして面を強調した最新のメルセデスデザインを採用する。常に車高を一定に保つエアマチックサスペンションなどを備え快適な走りを実現させる他、オフロード性能を向上させるオフロードエンジニアリングパッケージといったオプションも用意。最高出力612psの4L V8ツインターボを積むハイパフォーマンスバージョンのメルセデスAMG GLS 63S 4MATIC +と、ラグジュアリーな4人乗り仕様で贅沢な室内空間を備えるメルセデス・マイバッハ GLS600 4MATICも用意されている。
2023年8月前半時点で、中古車市場にはおよそ70台が流通しているが、その多くはディーゼルエンジンを搭載したGLS 400dとなる。平均中古車価格は1220万円。オフロードエンジニアリングパッケージ装着車も8台ほどが流通していた。GLS 63Sは30台ほどが流通しており、平均中古車価格は2300万円となる。メルセデス・マイバッハ GLS600の流通量は40台。新車時車両本体価格は2729万円に対し平均中古車価格はいまだに2950万円以上を維持しているほど人気だ。