【試乗】新型 メルセデス・ベンツ EQB|俊敏な走りに普段使いの実用性も高いBEVの3列7人乗りが登場!
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
2022/09/17
進化した技術で走りも操作も違和感がない
メルセデス・ベンツの電気自動車ブランド“メルセデスEQ”。 その第3弾となるEQBが上陸した。第1弾がGLC相当のEQC、第2弾がGLA相当のEQA、に続いてのSUV第3弾である。このEQBは、GLBをベースとしており、最大の特徴は3列シート、7人乗りであることだ。
基本骨格はGLBと同じなので、スタイリングはほぼ変わらない。エクステリアデザインとしては、これまでのメルセデスEQに共通するフラットなブラックパネルのフロントマスクと、リアライトがライトスリップで一直線に結ばれた形状になっている。また、フロントフェンダーにはEQBのバッジがさり気なく配置されている。
ボディサイズは、全長 4685mm、全幅 1835mm、全高 1705mmと、こちらもほぼGLBと同じ。全長だけはEQBの方が45mm長くなっているのだが、サイズ表を確認すると、リアのオーバーハングを40mm延長している。これは、おそらくバッテリーなどによるラゲージスペースの減少を最小限に抑える工夫だろう。ラゲージ容量は、GLBの130~1680Lに対して、EQBは110~1620Lとなっている。
ホイールベースは2830mmと同寸で、3列シートを実現している。2列目シートは、60:40の2分割で140mmの前後スライド機構を備えており日常の使い勝手に優れる。3列目シートに座る乗員の身長は165cmを上限と定められているが、これはスペースだけでなく衝突時の安全性などにも考慮したうえでのものというから、このあたりのこだわりは安全のメルセデスたるゆえんだ。
インテリアデザインも基本的にGLBに準じたもの。もちろんBEV 特有のものとして、充電に関する設定やエネルギーフロー、電力消費率などのメニューがセンターディスプレイに表示される。見た目では判断がつかないが、走行の次にエネルギーを消費するというエアコンには、家庭用としてもお馴染みで、近頃のBEVでは主流になりつつあるヒートポンプ式を採用する。これは、主に暖房システムを使用した際のバッテリー消費を軽減することで、航続距離を延長しようという狙いがある。
ラインナップは、FWDと4WDがあり、ともに前後アクスル間のフロア部に容量66.5kWhのリチウムイオンバッテリーを配置している。
FWDの「EQB 250」は、フロントにモーターを搭載し、最高出力190ps、最大トルク385N・mを発揮。4WDの「EQB 350 4MATIC」は、フロントとリアにそれぞれに1基ずつモーターを搭載し、最高出力292ps、最大トルク520N・mを発揮する。250のフロントと350のリアには新設計の高効率な永久磁石同期モーターを採用しており、航続距離(WLTCモード)はEQB 250が520km、EQB 350 4MATICが468kmとなっている。最大100kWの急速充電にも対応しており、ちょっとしたドライブ旅行ならなんなくこなせるだろう。
試乗に用意されたのは、EQB350 4MATICだった。ステアリングの左奥に配置されているスタートボタンを押すと、目の前にあるスクリーンが一斉に起動する。コラム右側のレバーでDレンジをセレクトして、ブレーキペダルから足を離すとクリープする。このあたりの一連の操作はガソリン車のGLBとまったく同じもの。違うのはエンジンの音がしないことだ。
4MATICであるものの、基本的にはリアのモーターをメインに二輪駆動することで電力消費量を抑え、走行状況に応じて毎秒100回の頻度で前後アクスル間のパワーバランスを調整するという。もはや人間のセンシング能力は超えているので、二駆で走行しているのかそれとも四駆なのかはモニターを見ていなければ判断がつかない。
動き出しはきわめてスムーズで、トルク感たっぷりにシームレスに速度が高まっていく。走行モードは通常はコンフォートで、よりキビキビと走りたいときはスポーツを選べば、ステアリングの手応えが増し、アクセル操作に対してレスポンスが鋭くなる。ペダルを思いっきり踏み込めば、とても3列シートSUVとは思えない俊敏な加速をみせる。重量物であるバッテリーがフロア下に集約されているため、ロール感も少なく、背の高いSUVのはずなのにそれをまったく感じさせない。
回生ブレーキの強度は、ステアリングに備わるパドルを使いコースティングから軽度、中度、強度と4 段階で設定が可能。右がシフトアップ、左がシフトダウンの要領で、右側を操作すれば回生レベルが低減、左側で回生レベルが上昇する。回生ブレーキによって完全停止はせず、あくまで最後はドライバーの意思でブレーキ操作を行う。このあたりもメルセデスの安全哲学の表れだろう。ただし、慣れてしまえば市街地ではほぼワンペダル走行も可能だ。
価格は、EQB 250が788万円、EQB 350 4MATICが870万円。少々高いかなと思いきや、今なら国からのCEV補助金がそれぞれ65万円、自治体によって異なるが東京都在住の個人であればさらに60万円の補助金が用意されている。加えて環境性能割非課税、重量税免税、自動車税免税(東京都の場合、登録翌年度から5年分)と、かなりの優遇税制が受けられる。そして、同じ走行距離ならガソリン代より電気代の方が安価に収まる。
と思っていたら、次世代自動車振興センターより2022年9月2日公表で「CEV補助金の予算残・申請受付終了見込み」というお知らせが出た。どうやら日産 サクラや三菱 ekクロスEVなどが想定以上にセールス好調で予算が尽きてしまうようだ。申請受付終了見込みが10月中旬~下旬というから、今から急いでディーラーに駆け込んで相談するか、これはあくまで賭けだが、CEV補助金の補正予算が計上されるのを待つのか。いまBEVやPHEVを検討している人は、このあたりのニュースをマメにウオッチしておくことをオススメする。
ガソリンエンジンモデル、GLBの中古車市場は?
街中でも使いやすい手頃なサイズと広い室内空間で、ファミリーカーとしても人気のコンパクトSUV。2Lディーゼルターボを搭載した200d 4MATICを中心に、1.3Lターボエンジンのガソリンモデル(GLB 180)をラインナップ。また、AMGブランドでハイパフォーマンスバージョンのメルセデスAMG GLB 35 4MATICも用意されている。
中古車は200台前後が流通、その半数以上が200d 4MATICとなっている。新型として登場してからまだ2年ほどということと昨今の現行型中古車の相場上昇も相まって、平均価格はいまだに720万円前後にとどまっていることから、ある意味まったく価値が下がっていないと見ることもできる。