ポルシェ 911 ▲6気筒ではなく4気筒エンジンであるせいか、911よりも妙に格下扱いされがちなポルシェ 718ケイマン。しかし718ケイマンには、718ケイマンだけの“911にはない魅力”が多数備わっている。ではその魅力=いいところとは、具体的には何なのか? ポルシェ 718ケイマンの6個のチャームポイントを勝手にピックアップいたします!

911とは約1000万円もの価格差がある718ケイマンだが

「ポルシェ」というと真っ先に頭に浮かぶのは「911」でしょう。長い歴史と圧倒的なパフォーマンスを誇るポルシェ 911の各モデルについては、スポーティな車を好む人の多くが「……一生に一度は!」と思っているはずです。

しかしポルシェ 911は圧倒的な人気と圧倒的なパフォーマンスを誇る車だけあって、決して安くはありません。いや「安くはない」というか、正確には「高い車」です。

具体的には、新車の911カレラを買おうと思ったら一番安いやつでも1503万円で(しかも車両本体のみで!)、その中古車も総額1700万円以上は普通にします。そしてひとつ前の世代であっても、中古車価格は総額1000万円以上となるのが一般的。

となるとまぁそう簡単には買えないわけですが、同じ高年式のポルシェであっても「718ケイマン」であれば、総額700万円ぐらいからけっこういい物件を見つけることができちゃいます。

ポルシェ 718ケイマン▲こちらが3代目のポルシェ ケイマンに相当する「718ケイマン」

とはいえ718ケイマンは、「911こそがポルシェの王道!」と固く信じている人からは“下”に見られているというのも事実でしょう。

しかし、ポルシェ 718ケイマンというスポーツカーは、本当に911よりも“下”に位置している車なのでしょうか?

いやいや、筆者はそうは思いません! そういった側面がゼロであるとは言いませんが、それ以上に、「両者のポジショニングは“上下”ではなく“左右”の関係性である!」と考えています。要するに「キャラが違う」ということです。

では、走行少なめの物件であっても総額700万円ぐらいから狙えてしまうポルシェ 718ケイマンのキャラクター、すなわち「個性」あるいは「いいところ」とは、いったい何なのでしょうか?

次章以降、筆者が思う718ケイマンの「めっちゃいいとこ」をお伝えして行きたいと思います!。

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【モデル概要】4気筒ターボエンジンを基本とするミッドシップスポーツ

ポルシェ 718ケイマンは、2代続いたポルシェの2シーターミッドシップスポーツ「ケイマン」の後継モデルとして2016年4月に登場した、同じく2シーターのミッドシップスポーツ。

ただし、初代および2代目ケイマンが自然吸気の水平対向6気筒エンジンを搭載したのに対し、718ケイマンの基本エンジンは「ターボ付きの水平対向4気筒」に変更されました。

エンジン搭載位置と駆動方式はポルシェ 911が「リアエンジン・リアドライブ(RR)」であるのに対し、718ケイマンは前述のとおりミッドシップ。つまり車体の中央付近にエンジンを置き、後輪を駆動させる(MR)というものです。また乗車定員もポルシェ 911が(いちおう)4名であるのに対し、718ケイマンは2名となります。

ポルシェ 718ケイマン▲ポルシェ 718ケイマンのエクステリアデザイン。フロントバンパーのエアインテークが従来型よりも大型化されたことで、その表情はよりダイナミックになっている
ポルシェ 718ケイマン▲運転席の背後に搭載されるエンジンは、初代および2代目ケイマンでは自然吸気の6気筒水平対向だったが、718ケイマンではターボチャージャー付きの4気筒水平対向に変更されている(※6気筒自然吸気エンジンも途中から追加されたが)

ベースグレードである「718ケイマン」に搭載される水平対向4気筒ターボエンジンのスペックは、排気量2Lで最高出力は300ps。こちらの0-100km/h加速タイムは「スポーツクロノパッケージを装着したPDK(AT)車」の場合で4.7秒と発表されています。

ひとつ上のグレードである「718ケイマンS」に搭載されるのは、排気量2.5Lで最高出力350psの水平対向4気筒ターボで、こちらの0-100km/h加速タイムは4.2秒。最高速度は――試す場所などありませんが――ベースグレードもSも285km/hです。

そしてトランスミッションはコンベンショナルな6MTの他、ダブルクラッチ式ATである「7速PDK」も両グレードにラインナップされています。

デビュー当初からラインナップされたベースグレードとSの他にも、最高出力365psの「GTS」や、同420psの自然吸気6気筒エンジンを搭載する「GT4」、GTSを4Lの6気筒自然吸気エンジンにした「GTS 4.0」など、ポルシェ 718ケイマンにはその後様々なハイパフォーマンスグレードも追加されました。

しかし本稿は「ポルシェ 911よりも圧倒的にお安い718ケイマンの魅力とは?」という観点で進んでいるため、それらの値が張るハイパフォーマンスグレードについての詳細は、申し訳ございませんが割愛させていただきます。

ポルシェ 718ケイマン▲718ケイマンの運転席まわり。トランスミッションは6MTまたは7速PDK。中古車市場では2023年1月中旬現在、PDK比率が約65%となっている
ポルシェ 718ケイマン▲ポルシェ 911が4人乗り(実質的には2+2)であるのに対し、718ケイマンは2座式となる
 

【めっちゃいい1】頑張れば何とか手が届きそうなお値段

それではさっそくポルシェ 718ケイマンという車のキャラといいますか、「718ケイマンならではの魅力」について考えてまいりましょう。

718ケイマンならではの魅力とは、まず第一に「安い!」ということです。

「安いことが魅力である!」と言うと、なんだか底が浅いことを言っているように聞こえるかもしれません。まぁ確かに大して深いことは言えない筆者ですが、しかし「安い」ということ、言い方を変えるのであれば「手が届く」ということは、人生においては非常に重要なポイントのはず!

「たぶん絶対に手が届かないもの」とは、それが車であっても衣服であっても家屋であっても魅力的な異性または同性であっても、「存在していない」というのとほぼ同義です。物事は、まぁ「眺めて楽しむ」みたいな楽しみ方もなくはありませんが、基本的には、自分で体験してこそ価値や歓びが生まれます。

そういった意味で、乗り出し価格がおそらくは2000万円を超える新車のポルシェ 911カレラは、たとえどんなに魅力的な車であったとしても、筆者個人にとっては「存在してない」のと同じ。

しかし総額700万円ぐらいからイケる718ケイマンは、バリバリに「存在してる!」と感じられます。もちろん700万円は安いお金ではありませんが、頑張れば何とかなりそうな金額でもあります。

「ちょっと頑張れば“ポルシェ”に乗れる!」

……これ以上に素晴らしいフレーズを、筆者は寡聞にして知りません。

ちなみに「安い」と言えば、2Lのターボエンジンを搭載している718ケイマンのベースグレードは「自動車税が安い」という点も、ちょっとした魅力ポイントでしょう。

ポルシェ 718ケイマン▲この勇姿と存在感、そしてポルシェならではのパフォーマンスを、単なる憧れや夢ではなく“現実”として入手できる可能性が高いというのが、718ケイマンのまずは圧倒的な“いいところ”と言えるはず
 

【めっちゃいい2】「まずまず小ぶり」で道幅スイスイ

「安いというのは、実は非常に大切なことである!」という点について、熱く長く語りすぎてしまったかもしれません。すみません。以下はスピーディに進めましょう。

スポーツカーのボディサイズというのは「小さけりゃいい」というものではありませんし、大きめなスポーツカーには、大きめなスポーツカーならではのいいところもあります。

しかし現行型ポルシェ 911の全長4520mm×全幅1850mm×全幅1300mmというのは、特にその全幅は「……さすがにポルシェとしてはちょっと広すぎるのでは?」と感じますし、都内の狭い道でのすれ違いに若干苦労している現行型911のオーナーさんを見かけるたびに、その思いは強まっていきます。

しかし718ケイマンであれば、全長は現行型911より14cm以上短い4379mmで、全幅は約5cmタイトな1801mm。さすがに全幅1660mmだった964型911カレラ2ほどではありませんが、どんな道幅の場所であっても、ほぼストレスフリーでスイスイ走ることができちゃいます。

ポルシェ 718ケイマン▲996型911カレラ4Sとおおむね同程度のサイズ感となる718ケイマン。さすがに空冷時代の911ほどコンパクトなわけではないが、昨今の車の中では相対的に「まずまず小ぶり」と言えるサイズだ
 

【めっちゃいい3】「重すぎない」から加速や動きが◎

これもまた「軽けりゃすべてOK」という話でもないのですが、それでもやっぱり、スポーツカーの車重は「軽いに越したことはない!」と言うことはできます。例えば車両重量2tの車と1tの車では“慣性”がまったく異なってくるからです。

しかし現行型ポルシェ 911カレラは、時代の様々な要請に応えているうちに「1750kg」というけっこうなヘビー級になってしまいました。ですが718ケイマン6MT車の車両重量は「1335kg」。その差は実に415kg(!!)ですので、これはもうお相撲さん3人分か、ラグビー日本代表の選手4人分ぐらいの違いがあります。

力士3人またはラグビー選手4人が自分の車に同乗した際の加速や動きをイメージしてみれば、718ケイマンの車両重量が持つ価値が、よーくおわかりいただけるでしょう。

ポルシェ718ケイマン▲この車に、ドライバーに加えて「力士3人」が乗車したときのことをイメージしてほしい!(※実際は2シーターなので3人のお相撲さんは乗れませんが……)
 

【めっちゃいい4】フロントにもリアにも積める!

ポルシェ 911は車の後端にエンジンを搭載しているため、いわゆる「後部トランク」がありません。まぁその分、普通の車ではエンジンが置かれているフロント部分にトランクがあるのですが、それはさほど大きなものではありません。

しかしミッドシップレイアウトを採用している718ケイマンは、車両のフロント部分に911よりも少し大きな容量155Lのトランクがあるのに加え、リアにも270Lのトランクが用意されています。

前後トランクの合計容量は425Lですので、これはもう「トヨタ カローラ ツーリング以上の積載容量!」と言えるわけです。ちなみにカローラ ツーリングの荷室容量は395Lです。

ポルシェ 718ケイマン▲さすがに「抜群の積載性!」ということはないが、フロントに155Lの、リアに270Lのトランクが備わっているため、まあまあ普通に荷物を積載できるのも、ポルシェ 718ケイマンというスポーツカーの特徴だ
 

【めっちゃいい5】サイドのエアインテーク、カッコよすぎ

ポルシェ 911の場合、「あると妙にカッコよく見える」とされるボディサイドのエアインテークは「911ターボ」にしか存在していません。

しかしミッドシップレイアウトである718ケイマンは全車に素敵な穴(エアインテーク)が開いており、しかもそれはケイマンから718ケイマンになる際、より大きなサイズに変更されました。

ちょっとしたことではありますが、けっこう重要なポイントです(……と、個人的には思っています)。

ポルシェ 718ケイマン▲この“穴”があると、やはりなんだかんだで気分は盛り上がる!(……盛り上がりますよね?)
 

【めっちゃいい6】軽快さ がミッドシップならでは!

現行992型のポルシェ 911カレラと中古車同士で比べた場合、911よりも1000万円ぐらいお安く買える718ケイマンおよび718ケイマンSですが、両車の走行性能やフィーリングには、断じて1000万円分もの差はありません。

もちろん、超敏感な人が超厳密にチェックすれば「6気筒と4気筒の違い(主にエンジン回転の伸びやかさや音の違い)」を確実に感じ取るのでしょう。

しかし、筆者程度のドライバーとしては、そこについては「違うといえば違うかな? でもそこまで大幅に違うとは思えない」というのが正直な感想。

そして、リアエンジンの911には「大地をガシッとつかんだうえで蹴飛ばすような」というニュアンスの抜群のトラクション性能があり、ミッドシップの718ケイマンにはそれがないわけですが、しかし718ケイマンはその代わりにミッドシップならではの「軽快さ」があります。

また、ボディ後端に重たいモノ(エンジン)がないゆえの「コーナリング中の安心感」も比較的強いのが、ポルシェ 911と比較した場合の718ケイマンのエッジ(優位点)です。

ポルシェ 718ケイマン▲ベースグレードの「718ケイマン」であっても、レーサーではない一般的なドライバーでは扱いきれないほどの速さと俊敏性を備えている。それでいて、乗り心地も決して悪くないというのがステキだ

以上、筆者が思う718ケイマンのめっちゃいい点を6つ上げましたが、つまり718ケイマンとは、「ポルシェ 911と個性や特徴、そして性能は若干異なるけど、おおむね同様に素晴らしいスポーツカーである」ということです。

それなのに「4気筒だから……」みたいなつまらない理由で敬遠するのはもったいない! と思うわけですが、まぁその分だけ「お安く買える」という超絶メリットが生まれているわけです。

そのため、そこを上手に(?)利用しながら「素晴らしい乗り物を相対的にお安く手に入れ、そして人生を存分に楽しむ!」というのが、結局は一番なのでは? と思わずにはいられません。

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文/伊達軍曹 写真/ポルシェ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。