ルノー カングー ▲デザインも実用性も、そして走りも抜群に良いことから人気となっている2代目ルノー カングー。しかしその中古車平均価格は今、なぜかじわじわ上がっている

2代目の価格上昇は次期型のデザインとサイズ感のせい?

おしゃれでかわいい、しかし同時に走りや実用性に関しては「超一級品」であることから大人気を博している2代目ルノー カングー。

しかし、そんな2代目カングーも新車はもう販売終了となっており、本国では3代目の新型カングーがすでに発売されています。

新型カングーは2022年の後半には日本へも上陸する予定ですが、それに伴い――かどうかはさておき――2代目カングーの中古車相場が今、じりじりと上昇中です。

下のグラフをご覧ください。

ルノー カングー

2代目ルノー カングーは、もともと相場が大きく下がるタイプの車ではありませんでしたが、2020年秋に次期型のビジュアルと詳細が発表された頃から若干の上昇傾向に転じ、2021年11月に最終限定車「リミテッド ディーゼル」が発売されると、翌12月には平均価格は急上昇。

直近は「おおむね小康状態」といえる状況ですが、「決して下がってはいない」というのが、このグラフの不気味なところ(?)です。

2代目カングーの平均価格が下がらず、むしろ微妙に上昇している理由は、今年後半に導入される次期型の「デザインとサイズ」にあるでしょう。

ルノー カングー▲ひと回り以上大きくなり、ややマッチョなデザインになった次期型カングー。本国ではすでに販売されており、日本にも2022年後半に上陸予定とアナウンスされている

次期型カングーのデザインも決して悪いとは思いませんが、次期型は今までのカングーとは路線が異なる「ややマッチョ系」で、さらにはボディサイズも現行型より20cm長く、約9cm幅広くなっています。

そのため「……自分的には2代目の方がいいかな?」と考える人の数もそれなりに多く、その結果として、2代目の中古車平均価格がじわじわ上がっているものと推測されます。

今後2代目カングーの平均価格がどこまで上がっていくかは未知数です。しかし、過去と現在のトレンドから考える限りでは「さらなる値上がり」もあり得ます。

そのため、もしも2代目カングーのことが気になっているのであれば“なる早”でアクションを起こすべきなのかもしれません。

そこで本稿では「ならば今、具体的にはどの2代目カングーを狙うべきか?」ということを、じっくり研究していきたいと思います。

ルノー カングー▲登場時は大きくなったと言われたが、より大柄な3代目が発表された今となっては可憐なサイズにも感じられるようになってきた2代目ルノー カングー

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ルノー カングー(2代目)×全国
 

2009年に発売され、2013年にフロントマスクを変更

まずは2代目ルノー カングーの概略をざっとおさらいします。 日本では2002年に発売された初代カングーは、その小ぶりなサイズと、にもかかわらず実用性においては大変優れていること、しかしそれでいて“走り”も相当気持ちいい車であったことからスマッシュヒットを記録。

その後を受けて、2009年に発売されたのが2代目のカングーです。

居住性と積載性を向上させるため、先代比で180mm長く、155mm幅広くなった2代目は「デカングー」と俗称され、それに伴って小ぶりな初代は「小カングー」と俗称されることになりました。

まぁそれはいいのですが、2代目は大きく重くなったにもかかわらず、エンジンは初代とほぼ同様となる最高出力105psの1.6L自然吸気エンジンを搭載したため、「遅くなった」「独特の軽快感がなくなった」と非難されたりもしました。

2013年8月にはマイナーチェンジを行い、フロントマスクを一新。結局は最後まで続くことになったこのフロントマスクのデザインは、ユーザー各位から好評をもって迎えられました。

ルノー カングー▲こちらが2009年から2013年までの初期型。なんというかこう「ファニーフェイス」といった体のフロントマスクを採用していた
ルノー カングー▲2013年8月のマイナーチェンジで、同世代のルノー各車と共通性のあるフロントマスクに変更された
ルノー カングー▲2代目ルノー カングーの運転席まわりはおおむねこのようなデザイン。写真はゼン(6MT)
ルノー カングー▲シートは2列で乗車定員は5名。初代と比べてボディサイズが大きくなったことで、後席の居住空間は前後方向に40mm拡大された

そして2014年5月には、「ゼン」という上級グレードに最高出力115psの1.2Lターボエンジン+6MTという仕様を追加。これにより、それまでの「遅くなった」「独特の軽快感がなくなった」との声は減少していくことになります。

そして2016年7月には再び一部改良を行い、それまでは4速ATまたは6MTのみだったゼンに、デュアルクラッチ式ATの「6速EDC(エフィシェントデュアルクラッチ)」を組み合わせた「ゼン(EDC)」を追加設定。

エンジンはそれまでと同じ最高出力115psの1.2Lガソリンターボですが、このタイミングで、最大トルクの発生回転数が2000rpmから1750rpmへと変更されています。

またこのとき、仕様を簡素化したベースグレード「アクティフ」にも、1.2Lターボエンジンと6MTを搭載した「アクティフ(6MT)」が登場しました。

その後も様々な限定車が発売された2代目ルノー カングーですが、6速EDCを投入した2016年7月の段階で「機械的には完成を見た」と言っていいでしょう。

そして2020年11月には次期型(3代目)カングーの詳細が発表され、2021年7月に最後の限定車、1.5Lディーゼルターボエンジンに6MTを組み合わせた「リミテッド ディーゼル」が400台限定で発売され、大人気となった――というのが、2代目ルノー カングーの大まかなヒストリーです。

以上を踏まえ、「では具体的には“どのカングー”が狙い目なのか?」ということを次章以降、ニーズ別に考えてまいります。

 

お金はある程度出すから「いいカングー」が欲しいなら、2016年式以降の「ゼンEDC」またはそれベースの限定車各種を

人気モデルの高年式車ゆえ若干お高くはなりますが、「納得のいくモノに長く乗りたい」と考えるなら、2016年7月に追加された1.2Lターボの6速DCTモデル「ゼン(EDC)」か、それをベースに作られた各種の限定車がいいでしょう。

ルノー カングー▲トルクフルな1.2L直噴ターボエンジンに6速EDC(デュアルクラッチ式AT)を組み合わせたゼン(EDC)。2016年7月に設定されたグレードだ

ルノーの場合は「EDC」と命名されるDCT(デュアルクラッチ式AT)は、素早い変速が可能である代償として「ちょっと変速ショックが大きい」という特徴もあったりするのですが、後期型の2代目カングーに搭載された6速EDCはスムーズさ重視のまったり系。

それでいて、このときから最大トルクを発生する回転数が1750rpmに下げられたため、普通に軽くアクセルペダルを踏んでいるだけでも、山坂道をグイグイ加速していくという特性になっています。

このときの一部改良は「トランスミッション以外は変更なし」とアナウンスされましたが、実際は足回りの動きなども、それ以前の世代よりずいぶんスムーズに感じられます。特別な改良はされていなかったとしても、いわゆる“熟成”が進んだ結果なのでしょう。

ゼンEDCの中古車価格は、走行5万km以内の物件だと総額230万~320万円といったところ。決して格安ではありませんが、そのクオリティから考えれば「高くはない!」と言えるはずです。

またこちらの世代では、ゼンEDCをベースとする限定車も多数販売されました。色がかわいい「クルール EDC」や、フランスの郵便車をイメージした「ラ・ポスト EDC」、コルシカ島の風景を思わせる「ペイザージュ EDC」等々がそれです。

ルノー カングー▲多種多様な限定車が存在するというのも2代目カングーの魅力で、特にクルール(Couleur=フランス語で色という意味)という限定車は何度も登場した。写真は2017年2月に発売された、地中海をイメージしたというブルー マルセイユメタリックのカングー クルール。EDC仕様が70台、6MT仕様が30台という限定車だった

こちらも、総額340万~390万円ぐらいとけっこうお高くはなってしまうのですが、「いいカングーが欲しい!」という場合にはかなりのオススメとなります。

2代目の方が好みで、今後しばらく乗り続けようと思っている方は特に、ぜひ一度チェックしてみてください。

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ルノー カングー(2代目)×ゼン EDC/EDC系限定車×2016年式以降×全国
 

とはいえもう少しお安めな予算で「いいカングー」が欲しいなら、狙い目は2014~2016年式の「ゼン(6MT)」

6速EDCが採用された時代のゼンは素晴らしい車ですが、比較的低走行な物件は前述のとおり総額230万~320万円ぐらいになります。

しかし、「いや、できれば総額100万円台で探したいのだが?」と考えている人も多いも少なくないはず。

その場合は、2014年5月に追加設定された「1.6L自然吸気ではなく1.2Lターボを積み、そこに6MTを組み合わせた『ゼン(6MT)』」がいいでしょう。

ルノー カングー▲2014年5月に追加された1.2L直噴ターボエンジン+6MTの「ゼン(6MT)」。エンジンとトランスミッションだけでなく、ストップ&スタート機能やエナジースマートマネジメント(減速エネルギー回生機構)、クルーズコントロール&スピードリミッターなども、6MTのゼンだけに与えられた

最高出力105psの直4自然吸気+4速ATですと正直ややかったるい部分もあるのですが、同115psの1.2Lターボ+6MTならばそういったかったるさはまったくありません。

高回転域まで回して楽しいタイプのエンジンではありませんが、低回転域で早め早めにシフトアップしていくと、望外にスムーズな力強さを感じることができます。

そんなゼン(6MT)は2017年式以降の中古車は総額250万円以上となるのが一般的ですが、2014~2016年式であれば、走行5万km台までの物件を総額190万円前後で狙うことができます。

もう少し走行距離が延びていてもOKなら総額150万円から狙えますので、そういったお手頃系物件の中から「整備履歴が充実していて、内外装のヤレが少ないもの」を探し出してみるのも面白いでしょう。

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ルノー カングー(2代目)×ゼン(MT)×2014~2016年式×全国

この他、さらなるお手頃系な選択肢としては、1.6L自然吸気エンジン+4速ATのゼンやアクティフ(やや簡素な装備と黒い樹脂バンパーが特徴の、それはそれでカッコいいグレード)を、総額150万円前後で探してみるのも悪くありません。

その場合は走行距離がけっこう延びていて、荷室や居室をガンガン使われまくった個体も多いのですが、探せば、しっかりメンテナンスされてきたキレイめな物件もなくはないはずです。

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ルノー カングー(2代目)×ゼン/アクティフ×AT×全国

中古車であっても様々なボディカラーや仕様を選べるというのが2代目ルノー カングーの特徴ですので、値上がりしてしまう前に(?)、ぜひともご自身のセンスにぴたりと合う1台を見つけていただければと思います。

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ルノー カングー(2代目)×全国
文/伊達軍曹、写真/ルノー・ジャポン
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。