Aクラスセダン ▲「FRスポーツの名作」として、日本のみならず北米でも大人気の80スープラこと2代目トヨタ スープラですが、最近は中古車流通量が激減して「絶滅危惧車」となっています。完全に絶滅してしまう前に今一度、80スープラという車の詳細をチェックしておきましょう!

今や中古車の数は全国で28台のみ……

80(ハチマル)スープラと呼ばれる場合が多い2代目の(グローバルで考える場合は4代目にあたる)トヨタ スープラは、ある種の車好きにとっては「永遠の憧れ」といえる1台だ。

筋肉質でありながらもグラマラスなフォルムと、2JZ-GTE型3L直6ツインターボエンジンを中心とする魅力的なパワーユニット。そして「FRレイアウトである」という点は現代の視点をもってしても、いや現代だからこそ、希少かつ魅力的な資質を備えているように思える。

だが、そんな80スープラも今や中古車流通量が激減。2023年4月から2025年3月現在までの期間に、約80台から28台にまで減少してしまった。

いよいよ本気で「絶滅危惧車」に足を踏み入れつつある80スープラとはどんな車だったのか、あらためて詳しく見ていくことにしよう。
 

Aクラスセダン

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トヨタ スープラ(2代目・A80型) × 全国
 

モデル概要:3L直6エンジンを搭載する本格的FRスポーツ

80スープラことA80型トヨタ スープラは1993年のデトロイトモーターショーで発表され、同年5月に販売開始となった本格的FRスポーツ。登場時のキャッチコピーは「THE SPORTS OF TOYOTA」で、エクステリアデザインは先代までの直線基調から、有機的な曲線と曲面を多用したグラマラスな造形へと変化した。
 

Aクラスセダン▲こちらが2代目トヨタ スープラ。ボディサイズは全長4520mm×全幅1810mm×全高1275mm
Aクラスセダン▲張り詰めた筋肉と骨格を思わせるダイナミックな低重心スタイルが魅力
 

サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式。前後重量配分はターボ車が54:46で、自然吸気車が52:48。わずかにフロントヘビーではあるが、これは高速直進性を向上させるための「あえてのややフロントヘビー」だったという。

パワーユニットは「3L直列6気筒」のみで、SZグレードなどが搭載する自然吸気の2JZ-GEは最高出力225ps、RZグレードなどが搭載した2ウェイツインターボの2JZ-GTEは同280psをマーク。トランスミッションは4速ATの他、自然吸気ユニット搭載車では5MT、ツインターボユニット搭載車では、当時の国産乗用車としては初の6MT(ゲトラグ社とトヨタの共同開発品)が用意された。
 

Aクラスセダン▲ドイツのゲトラグ社とトヨタが共同開発した6MTを搭載する「RZ」のコックピット
Aクラスセダン▲こちらもRZ(6MT)のインテリア。乗車定員はいちおう4名
Aクラスセダン▲最高出力280ps/5600rpm、最大トルク44.0kgm/3600rpmの2JZ-GTEエンジン。これを搭載する「RZ」の10・15モードによるカタログ燃費はMT車が8.2km/Lで、AT車が7.6km/L
 

発売当初のグレード構成は以下のとおりであった。

●SZ:自然吸気グレード|5MTまたは4速AT
●SZ エアロトップ:着脱式トップを備える自然吸気グレード|4速AT
●RZ:ツインターボグレード|6MTまたは4速AT
●GZ:装備充実のツインターボグレード|4速AT
●GZ エアロトップ:着脱式トップを備えるツインターボグレード|4速AT

その後は何度かのマイナーチェンジを行い、装備を簡略にすることで若干の軽量化を行った「RZ-S」や、4速ATの設定がないMTのみの自然吸気エンジン搭載グレード「SZ-R」を追加した。ちなみにSZ-Rのトランスミッションは前期型は5MTだが、1996年4月のマイナーチェンジ時、SZ-R専用のギア比を備えるゲトラグ製6MTに変更された。またこのとき、装備充実のツインターボグレードである「GZ」は廃止されている。
 

Aクラスセダン▲本革シートなど、充実した装備が特徴だった「GZ」のインテリア
 

1997年8月には最後のマイナーチェンジを行い、ツインターボエンジンへの可変バルブタイミング機構採用や、ヤマハとトヨタが共同開発した「REAS(Relative Absorber System=相互連携アブソーバーシステム)」を採用するなどの改変を実施。

そして2002年8月、「平成12年度自動車排ガス規制度」に対応できなかったことを理由に、80スープラは生産を終了。同年中に在庫も完売となり、惜しまれながらも新車は販売終了となった。
 

 

中古車状況:流通量はここ2年で激減。直近の平均価格は約830万円

2年ほど前までは約80台が流通していたA80型トヨタ スープラだが、2025年2月の中古車流通量はわずか28台。もちろん、この事実をもって「80スープラは近いタイミングで絶滅する!」と断言することはできない。しかし「近い将来、絶滅してもおかしくないトレンドではある」と言うことはできるだろう。
 

Aクラスセダン▲2023年1月~2025年3月10日時点の延べ平均台数

また、2025年2月の中古車平均価格は825.3万円で、モデル全体としての価格は総額570万~1050万円といったところ。カーセンサーnetに掲載中の物件23台をトランスミッション別で見ると、15台つまり6割強がMT車で、残る8台(4割弱)がAT車という状況(2025年3月10日時点)。
 

Aクラスセダン▲2023年1月~2025年3月10日時点の平均支払い総額

グレード別では自然吸気ユニットの標準グレードである「SZ」が最も多い8台で、次いでツインターボのメイングレードである「RZ」と、自然吸気のMTグレードである「SZ-R」の流通が目立つ(といってもそれぞれ4台と3台だが……)。そしてその他の各グレードは「超希少」あるいは「皆無」という状況だ。
 

Aクラスセダン▲脱着可能なルーフが採用された「SZ エアロトップ」
 

中古車を狙うなら:エンジンの種別ではなく「コンディション」にこだわりたい

本来であれば、A80型トヨタ スープラの王道である「3L直6ツインターボエンジン」にこだわりたいところだ。しかし、現在はモデル全体としての流通量があまりにも少ないがゆえに、そこに強くこだわってしまうと「いつまでたっても買うべき個体と出会えない」という状況が続く可能性が高い。

もちろん「欲しいモノが出てくるまで、自分はいつまでだって待つ!」というのも正解ではあるが、ある程度早いタイミングでA80型スープラを購入したいのであれば、パワーユニットについては「コンディションさえ良ければツインターボでも自然吸気でもOK」という姿勢で臨むべきだろう。
 

Aクラスセダン▲写真はツインターボの「RZ」だが、「自然吸気のSZでも良し」と考えながら探すべきだ
 

そして「こだわるべきポイント」はエンジンの種別ではなく、下記の各項目だ。

●フルノーマルか、フルノーマルに近い状態である。
●内外装から「荒れた雰囲気」を感じない物件である。
●これまでの整備履歴をおおむねすべて確認できる物件である。
●MT車である(※ここは意見が分かれるところかもしれないが、筆者は、せっかく世界文化遺産ともいえるA80スープラに乗るのであれば、やはりMTを選ぶべきだと考える)
 

Aクラスセダン▲写真はECT-iS(インテリジェントスポーツ オートマチックトランスミッション)のRZ。もちろんこのATも決して悪くはないのだが
 

●走行距離の多寡にはこだわらない(※こういった年式の車の走行距離にこだわるのは無意味。この場合、こだわるべきは距離ではなく「その個体が歴代オーナーに愛されてきたかどうか?」だ)。
●最終的には試乗し、明らかな違和感や不具合などは確認できない物件である。

以上の条件に合致する物件であれば、グレードにかかわらず「買い」であるはずだ。もちろん追加のメンテナンスは絶対に必要となるが、こういった物件を購入すれば、基本的には「素晴らしき80スープラ生活」を送ることができるだろう。

ただし上記のような物件の中古車価格は今、果てしなく高額だったりもするのが問題ではあるのだが……。
 

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トヨタ スープラ(2代目・A80型) × 全国
文/伊達軍曹 写真/トヨタ、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、さまざまな自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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