Aクラスセダン ▲筋肉質なフォルムに強力な直6エンジンと6MT、そして「FRレイアウト」を組み合わせた80スープラこと2代目トヨタ スープラは、ある種の車好きにとっては永遠の憧れです。しかしその中古車平均価格は一向に下がらないどころか上がり続け、直近では約800万円になっています。さすがに800万円は厳しいかも……ということで、その半額ぐらいで買える「80スープラの代わり」を探してみることにしましょう!

最高値の物件は今や1000万円オーバー

車好きからは「80(ハチマル)スープラ」と呼ばれることが多い、日本市場では2代目となったトヨタ スープラ。1993年から2002年まで販売されたそれは、グラマラスで筋肉質なフォルムと、2JZ-GTE型3L直6ツインターボエンジンを中心とする魅力的なパワーユニット、そして「FRレイアウトである」という点などから、スポーツカーを愛する者たちから熱烈に支持された。

そして80スープラに対しての「支持」はいまだ続いているようで、2025年3月上旬現在の中古車平均価格は約800万円。最高値圏の物件では1000万円を超えるケースもある――という状況が続いている。

歴史的な価値もある80スープラゆえ、「総額800万円を出してでも欲しい!」という気持ちはあるが、とはいえ「800万円はさすがに厳しい……」という問題もある。

そこでこの記事では、80スープラのおおむね半額といえる総額400万円前後の予算で狙える、「80スープラの代わり」になり得るモデルを探していきたい。
 

Aクラスセダン▲写真は「RZ」のインテリア。写っている6MTはドイツのゲトラグ社とトヨタが共同開発したもの

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80スープラの代わり①|ホンダ インテグラ タイプR(初代)
→想定予算:総額340万~420万円

80スープラの「歴史的な価値もあるハイパワーFRスポーツ」という属性とまったく同種の属性となるモデルを、その半額で見つけるのは正直難しい。だが「FR」という部分を無視したうえで探してみれば、80スープラとおおむね同レベルの魅力を持つ1台を、約半値で見つけることはできる。

例えばFF車の中から探すのであれば、初代ホンダ インテグラ タイプRだ。
 

Aクラスセダン▲1995年から2001年にかけて販売された初代ホンダ インテグラ タイプR
 

DC2(3ドア)またはDB8(4ドア)という型式で呼ばれることが多い初代ホンダ インテグラ タイプRは、3代目のホンダ インテグラをベースとするFFスポーツ。

搭載エンジンは「B18C Spec-R」と呼ばれる最高出力200ps/8000rpmの超高回転型2L直4DOHC。初期型においては手作業でポート研磨が行われ、高回転型であるエンジン特性に合わせて5MTはクロスレシオ化。そしてトラクション性能向上のためヘリカルLSD(ヘリカルギア=蓮場歯車)とサイドギアを噛み合わせる構造のリミテッド・スリップ・デフ)も採用された。

初代インテグラ タイプRは、トヨタの80スープラとは毛色も個性も、そして駆動方式も異なるが、「伝説級の国産スポーツ」という意味ではまったく同じ。こちらを手に入れれば、80スープラの不在を補って余りある日々を送ることができるのではないか。
 

Aクラスセダン▲クロスレシオの5MTを採用。シフトノブはチタン削り出しだ
 

修復歴ありの多走行車は総額100万円台から200万円台前半で見つけることもできるが、「80スープラの代わり」として入手するのであれば、もっと好条件な物件にこだわるべきだろう。

だがその場合でも総額340万~420万円付近にて、「00Spec」と呼ばれる後期型を見つけることができる。
 

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80スープラの代わり②|トヨタ MR2(2代目)
→想定予算:総額280万~420万円

FF車における「80スープラの代わりになり得る1台」が初代ホンダ インテグラ タイプRだとしたら、ミッドシップレイアウト(MR)におけるそれは「2代目トヨタ MR2」だろう。
 

Aクラスセダン▲こちらが2代目トヨタ MR2
 

ご承知のとおりSW20ことトヨタ MR2の第2世代は、1984年に国産車史上初の市販ミッドシップ車として登場した初代MR2の後継モデル。ミッドに搭載されるパワーユニットは最高出力245psの3S-GTE型2L直4ターボと、同200psの3S-GE型2L直4自然吸気の2種類。トランスミッションは5MTと4速ATが用意された。

最初期モデルの足回りはハッキリ言って最低レベルの評価だったが、1991年12月のマイナーチェンジで足回りの作りを見直し、以降は、最初期モデルのような「唐突にスピンしてしまう」というような車ではなくなった。ちなみに現在の中古車市場で流通している2代目MR2は、そのほとんどがII型(最初のマイナーチェンジを受けた世代)以降の世代である。
 

Aクラスセダン▲SW20こと2代目MR2のインテリア。ミッドシップゆえ乗車定員は2名となる
 

好条件な中古車の価格目安は、自然吸気エンジン搭載グレードのMT車が総額280万~380万円、ターボエンジン搭載グレード(こちらはMTのみの設定)総額270万~390万円といったところ。

エンジンパワーも個性も80スープラとは異なる2代目MR2だが、ミッドシップスポーツ特有の緊張感と、程よくコンパクトなサイズがもたらす軽快感は、80スープラに匹敵するレベルの「歓び」は与えてくれるはずだ。
 

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80スープラの代わり③|ホンダ S2000(初代)
→想定予算:総額300万~450万円

80スープラと同じFRレイアウトを採用するスポーツカーであっても、「固定屋根がなくてもOK!」と考えることができるならば、おおむね半額にて「同等の満足」が得られる1台を見つけることができる。

その1台とは「ホンダ S2000」だ。
 

Aクラスセダン▲「FRオープンスポーツの金字塔」ともいえるホンダ S2000
 

1999年に発売されたホンダ S2000は、本田技研工業の創立50周年を記念して開発されたFRレイアウトの2シーターオープンスポーツ。そして単なる2シーターオープンスポーツではなく、その多くの部品が「専用パーツ」として新たに設計され搭載された、きわめてスペシャルなFRオープンスポーツである。

縦置きされるエンジンは、リッターあたり125psというレーシングエンジン並みの出力を発生するする2L直4DOHC VTEC「F20C」で、こちらは市販量産車用エンジンであるにもかかわらず、レブリミットが9000rpmという超高回転型だった。そしてエンジンを構成する各部品にも、小型軽量化をしながらも強度を保つため、ほぼワンオフといえる様々な新技術を投入。当時は希少だった「6速MT」も、S2000のために自社開発された専用品だ。
 

Aクラスセダン▲前期型では9000rpmとなる超高回転を許容するため、6MTは専用開発された
 

2005年11月のマイナーチェンジでVTECエンジンは2Lから2.2Lに拡大され、それに伴って許容回転数は9000rpmから8000rpmに低下した。そのことについて新車当時は辛口な評価をする者もあったが、今となっては、2Lも2.2Lも「素晴らしい自然吸気ユニット!」というひと言でまとめてしまっていいだろう。どちらも、今や貴重な存在である。

そんなホンダ S2000の中古車は、S級レベルのコンディションにこだわりたい場合は総額500万円を超えるが、総額300万~450万円という「80スープラの半額もしくは半額以下」の価格帯でも、まずまず良好なフルノーマル系中古車を狙うことができる。
 

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80スープラの代わり④|ポルシェ 911(996型・後期型)
→想定予算:総額390万~480万円

FRレイアウトではなくRR、つまりリアエンジン・リアドライブの「80スープラに匹敵するサムシングを持ち合わせたスポーツカー」といえば、ドイツのポルシェ 911しかあるまい。そして「996型」と呼ばれる3世代前の911カレラであれば、総額400万円台の予算でまずまずな1台を見つけることができる。
 

Aクラスセダン▲こちらが996型ポルシェ 911。写真のグレードはカレラ4S
 

996型ポルシェ 911は、1964年に登場した初代911から数えて5代目のポルシェ 911であり、911史上初めて「水冷フラットシックス」を搭載したモデルでもある。

1997年に登場した初期世代は「すべてが乗用車っぽい(スポーツカーらしくない)」という評価も多かったが、2001年9月のマイナーチェンジで多くの部分を刷新。ヘッドライトの形状が同世代の「911ターボ」と同様の意匠に変更されるとともに、トレッドとボディ幅を拡大。そしてカレラの水平対向6気筒エンジンは3.4Lから3.6Lに拡大され、最高出力も300psから320psに増強された。

そんな996型ポルシェ 911カレラは、エンジン内部にあるインターミディエイトシャフトとベアリングが破損してしまうケースもあったが、現在ではポルシェ ジャパンのサービスキャンペーンによって「対策済み」となっている場合がほとんどだ。
 

Aクラスセダン▲空冷時代のデザインを基本的には踏襲している、996型911の運転席まわり
 

そして後期型カレラの中古車価格は、残念ながらMT車は総額500万円を超えるケースがほとんどだが、ティプトロニックS(5速AT)でも良しとするのであれば、総額390万~480万円でまずまず良質な1台を検討可能である。

「ポルシェ 911」という看板および実力をもってすれば、80スープラの不在も、ほぼ完璧に埋め合わせることができるだろう。
 

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80スープラの代わり⑤|トヨタ スープラ(現行型・3代目)
→想定予算:総額440万~490万円

これは「80スープラの代わり候補その5」というよりは番外編といえるチョイスになってしまうが、「あえて現行型スープラを選んでみる」というのも、決して悪くないアクションであるように思える。
 

Aクラスセダン▲BMW Z4の兄弟車として2019年に復活した現行型トヨタ スープラ。写真のグレードはSZ
 

80スープラの販売終了から17年の時を経て2019年に復活した現行型トヨタ スープラは、ご存じのとおり現行型BMW Z4(2018年9月~)と基本設計を共有している兄弟車。また当然ながらネオクラシックなスポーツカーではなく「バリバリの最新世代」でもあるため、味わいもデザインも80スープラとはまったく異なる。

しかし――もちろんこれは人それぞれの考え方や価値観次第だが――いつまでも過去に目を向けるのではなく「今」に注目してみるのも、車好きとしてのあるべき姿ではあるはずだ。
 

Aクラスセダン▲現行型スープラのコックピットはこのような世界観。写真のグレードはSZ-R
 

最高出力340psの3L直6ツインスクロールターボを搭載するRZはさすがにまだ総額540万円以上である場合がほとんどだが、2L直4ツインスクロールターボのSZ(197ps)またはSZ-R(258ps)であれば、「80スープラ平均価格の半額」を少し超えてしまうものの、総額400万円台後半で手に入れることができる。

そんな現行型トヨタ スープラSZまたはSZ-Rの、最新世代ならではのパフォーマンスと運転支援システムに感じ入りつつ、時おり、遠き空に浮かぶ80スープラの勇姿に思いを馳せる――というのも、なかなかオツで素敵なスポーツカーライフではないかと思うのだが、どうだろうか?
 

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文/伊達軍曹 写真/トヨタ、ホンダ、ポルシェ、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、さまざまな自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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