Aクラスセダン ▲フレンチテイストあふれるデザインと抜群の実用性で大人気となっている2代目ルノー カングー。しかし、その中古車平均価格はこの1年間で30万円近くダウンしている模様。お手頃価格になった2代目カングーに乗るなら、どんなグレードをいくらぐらいで探してみるべきなのか? 検討してみましょう!

2024年5月の平均価格は128.8万円までダウン

2009年から2022年までの長きにわたり販売された2代目ルノー カングー。ご承知のとおり愛らしいデザインと抜群に実用性が高いパッケージング、そして意外な(?)走行性能の高さで今なお大人気な1台なわけですが、そんな2代目カングーの中古車平均価格が今、そこそこ大きめにダウンしています。

Aクラスセダン

2023年5月は157万円を超えていた同車の平均価格ですが、今年5月は128.8万円と、実に28.7万円のダウンを記録しているのです。

お手頃価格になってきた2代目ルノー カングーを買うとしたら、何年式のどんなグレードを、いくらぐらいで狙うのが得策となるのでしょうか? 次章以降、モデル概要のふりかえりを含め、検討してみることにしましょう。
 

Aクラスセダン▲欧州でフルゴネット(ライトバン)として愛されているカングー。独特のかわいらしさで日本でも人気になっている。写真はこちらが2021年7月に登場した「リミテッド」

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ルノー カングー(2代目) × 全国
 

モデル概要:初代より大きくなった、使い勝手とデザイン性に優れるトールワゴン

2代目ルノー カングーは、フランス発のトールワゴンとして2002年に上陸した初代カングーの後を受け、2009年に発売された2列シート・5人乗りのトールワゴン。

ひと目でカングーとわかるユニークなデザインテイストの基本は初代を踏襲した一方、ボディサイズは大幅に拡大。具体的には、初代が全長4035mm×全幅1675mm×全高1810mmと、日本の5ナンバー枠に収まるサイズであったのに対し、2代目は全長4215mm×全幅1830mm×全高1830mmになりました。

とはいえ、カングーの特徴であるリア両側スライドドアは2代目でも継承され、スライドドアの開口部が20mm広がるなど、後席へのアクセスはさらに便利に。また、旧型ゆずりの観音開きのバックドアは、左右それぞれが2段階、最大180度まで開きます。ラゲージスペースはリアシートを起こした状態でも660Lの大容量で、分割可倒式リアシートと助手席を倒せば最大2866Lまで拡大可能です。
 

Aクラスセダン▲こちらが2代目ルノー カングーの前期型
Aクラスセダン▲シートは2列の5人乗り。細かな部分までいちいち気が利いているデザインなのが、いかにもフランス車的。トランスミッションはMTとATの両方が用意された
Aクラスセダン▲テールゲートはダブルバックドア(観音開き)方式。荷室に備わるトノボードは2段階に高さが選べ、50kgまでの荷物を載せることも可能
 

当初のパワーユニットは初代同様の1.6L直4 DOHCでしたが、最高出力は5psアップの105psに。トランスミッションは4速ATと5MTの2種類が用意されました。

デビューから4年後の2013年8月にはフロントまわりのデザインを一新するマイナーチェンジが行われ、2014年5月には最高出力115psの直噴直4ターボエンジン+6MTの仕様を追加。

さらに2016年7月には、ベーシックな「アクティフ」にも1.2Lターボエンジンを適用するとともに、上級グレードである「ゼン」に6速DCTを搭載した「ゼン(EDC)」を追加しました。
 

Aクラスセダン▲2013年8月以降はこのようなフロントマスクに
Aクラスセダン▲こちらは黒い樹脂性バンパーなどが特徴となるエントリーグレード「アクティフ」
 

この他、モデルライフを通じて数限りないほどの限定車が多数リリースされてきた2代目カングーは、2021年7月には最後の限定車「リミテッド ディーゼルMT」を発売。そして2023年3月、ややマッチョなイメージに生まれ変わった3代目カングーへとバトンを渡した――というのが、2代目ルノー カングーの大まかなモデル概要とヒストリーです。
 

 

価格状況&考察:平均価格ダウンの理由は「モデルライフが長かったから」?

そんな2代目ルノー カングーの中古車平均価格は、冒頭で申し上げたとおり、この1年間で30万円近くダウンするにいたりました。

中古車価格が安くなるというのはありがたい出来事である半面、疑心暗鬼になるものでもあります。ユーザーとしては「何らかの致命的な欠陥が発覚したから、相場が激落ちしたのか?」「……やっぱりボロボロになってきたから、高値が付かない状況になってしまったのだろうか?」などと、どうしても思ってしまうわけです。

とはいえ、2代目ルノー カングーの場合、そういった心配は基本的には不要です。2代目カングーの平均価格が1年間で比較的大きくダウンした理由は、単に「モデルライフがかなり長かったから」であると推測されます。
 

Aクラスセダン▲何らかのネガティブ要因によって平均価格が下がったわけではない?
 

通常、車というのは8年ぐらいごとにフルモデルチェンジを受けるものですが、2代目ルノー カングーは異例ともいえる14年間、新車として販売され続けました。そうなると、ひと言で「2代目カングー」と言っても、その中には14年ほど前のけっこう古い物件も、せいぜい1年落ち程度の新しい物件も、同時に含まれることになります。

そして、2代目ルノー カングーの初期モデルは非常によく売れたため、現在の中古車市場では2014年式以前の物件が、つまり「10年落ち以上の中古車」が、全体の約53%を占めています。そうなると、この53%が全体の平均価格をひっぱることになりますので、平均価格がどんどん安くなっていくのは「当たり前」となるわけです。

そのため、今回の「平均価格が30万円近くダウン!」という結果は市場経済の必然でしかなく、機械としての信頼性うんぬんとは直接の関係はない――ということが言えるはずです。

それでは、2代目ルノー カングー“全体”についての特別なネガ要因はないということを把握したうえで次章、具体的なオススメの検討に進んでみましょう。
 

 

中古車のオススメ①:「安さ重視!」なら総額70万~100万円付近をチェック

「とにかく安く」ということであれば、総額70万~100万円付近の2代目ルノー カングーが狙い目となるでしょう。これよりも安い、具体的には総額40万~60万円ほどの物件もそこそこの数が流通しており、中古車のコンディションというのは価格だけで判断できるものでもないのですが、一般的な傾向として「安すぎる物件」には慎重である必要があります。

その意味で、2代目カングーのお手頃物件は「総額70万~100万円付近」がおおむねの狙い目ゾーンとなり、その中から「内外装のコンディションが良いもの」「整備履歴が充実しているもの」を厳選していくというのが、この場合の正しい選び方となるでしょう。

そして狙うべき年式やグレードは、あらかじめ「これ!」という何かひとつに限定するのではなく、様々な年式およびグレードを広く検討対象としたうえで、先述した「内外装コンディション」と「整備履歴」が優秀な個体が見つかったならば、それを買う――という方策がベストであると考えます。

現在、総額70万~100万円のゾーンで狙える2代目カングー各車の年式とグレード、そしてそれぞれの特徴は下記のとおりです。

●前期型1.6

Aクラスセダン▲1.6L自然吸気エンジンに4速ATまたは5MTを組み合わせた初期型カングー
 

2011~2013年式付近のベースグレードを、この価格帯で探すことができます。年式的にやや古いため、コンディションのチェックは慎重に行う必要があることに加え、2013年8月に行われたマイナーチェンジ前の世代であるため、このデザインを気に入るかどうかもポイントとなります。

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ルノー カングー(2代目) × 前期型 × 1.6 × 全国

●前期型クルール

Aクラスセダン▲「Color(カラー)」を意味するフランス語「クルール」と名付けられた限定車の初期型。様々な色のクルールが発売された
 

2011年から2013年にかけて、数回に分けて発売された限定車「クルール」も、この価格帯で検討可能です。「クルール」というフランス語は、英語で言うカラーすなわち色のこと。その名のとおりのカラフルな物件が多数流通していますので、その中でもコンディションと整備履歴が良好な1台が見つかり、なおかつ「前期型のデザイン」が嫌いでないなら、狙い目となります。

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ルノー カングー(2代目) × 前期型 × クルール × 全国

●デザイン変更後の「ゼン」(1.6L自然吸気エンジン+4速AT)

Aクラスセダン▲2013年8月のデザイン変更時に登場した上級グレード「ゼン」
 

マイチェン前の顔つきがあまりお好きでない場合は、2013年8月以降の上級グレード「ゼン」が狙い目となります。ただし、総額70万~100万円で狙えるのは、後に登場する1.2Lターボエンジンを搭載したものではなく、ベーシックな1.6L自然吸気エンジンに4速ATを組み合わせた仕様が中心です。そのあたりがさほど気にならず、なおかつコンディションと整備履歴が優れている物件が見つかったならば、狙い目となります。

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ルノー カングー(2代目) × 後期型 × ゼン × 全国

●デザイン変更後の「アクティフ」(1.6L自然吸気エンジン)

Aクラスセダン▲あえてボディ同色ではないバンパーやドアミラーを採用することで「道具っぽいおしゃれ感」を演出しているエントリーグレード「アクティフ」
 

上記と同時期の「アクティフ」も、総額70万~100万円付近で狙うことができます。上級グレードである「ゼン」がボディ同色バンパーと3トーンファブリックシート、オートランプ、オートワイパー、オートエアコンなどを装備しているのに対し、ベーシックグレードである「アクティフ」は、ブラックバンパーとブラックドアハンドル、ダークカーボンファブリックシートなどを装備する「道具っぽいグレード」です。その道具っぽさが逆にお好みであれば、そしてコンディションと整備履歴が優れている物件が見つかったならば、狙い目となります。
 

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ルノー カングー(2代目) × 後期型 × アクティフ × 全国
 

中古車のオススメ②:「コスパ重視!」でいくなら総額140万~200万円付近に注目

2代目ルノー カングーは販売されたグレードの種類が多く、なおかつ様々な限定車も星の数ほど(?)リリースされたため、「コスパ重視」で選ぶ場合でも、何かひとつの「これ!」には限定しづらいものです。

しかし、パワーユニットに関しては、2014年5月から順次採用されていった「1.2Lターボエンジン」のコスパが高いと断言できます。初代と比べて大きく・重くなった2代目カングーは、1.6L自然吸気エンジンだと正直ややかったるいと感じることもあるのですが、1.2Lターボエンジンであれば(理想をいえば、さらに6MTであれば)、いわゆるかったるさを感じることはほとんどありません。

そんな1.2Lターボエンジンを搭載した2代目ルノー カングーは、高いモノだと総額350万円を超えるような物件も多数流通しています。しかし、今さら2代目カングーに300万円以上の予算を投じるのもどうかと思いますので、ちょうどいい納得感がある狙い目の価格帯は「総額140万~200万円ぐらい」なのではないかと思います。

その価格帯で狙うことができる1.2Lターボエンジン搭載グレードの概要は、おおむね下記のとおりです。

●ゼン(6MT)

Aクラスセダン▲高出力な1.2Lターボエンジンに6MTを組み合わせた2014年5月以降の「ゼン(6MT)」
 

2014年5月に追加された、1.2Lターボエンジンに6MTを組み合わせた上級グレード。この時期、4速ATのゼンやアクティフは1.6L自然吸気エンジンだったのですが、6MTのゼンだけは1.2Lターボエンジンが搭載されました。MTの運転が苦にならない人向けの選択肢ではありますが、走行フィールやパワー感は抜群です。

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ルノー カングー(2代目) × ゼン × 6MT × 全国

●ゼン EDC(6速DCT)

Aクラスセダン▲6速EDC(DCT)を採用した2016年7月以降の「ゼン(EDC)」
 

2016年7月に追加された、1.2Lターボエンジンに6MTではなく6速EDC(エフィシェントデュアルクラッチ=DCT)を組み合わせたグレードです。これであれば、MTに抵抗を覚える人でも対応可能で、なおかつ年式的にも比較的新しいため、より多くの人にオススメできます。総額180万円前後で、悪くないコンディションの1台が見つかるでしょう。

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ルノー カングー(2代目) × ゼン EDC × 全国

これらの他、デザイン変更後の「クルール」や「アクティフ ペイザージュ」「ラ・ポスト」などの色鮮やかな各種限定車も、もしもドンピシャで気に入ったものが見つかったならば「高コスパな2代目カングー」であるといえるでしょう。ただ、これらの限定車は発売時期により1.6L自然吸気エンジンと1.2Lターボエンジンが混在しているため、そこはあらかじめしっかり確認する必要があります。
 

Aクラスセダン▲こちらは2015年に発売されたクルールで、写真のボディカラーは「ヴェールロマラン」

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ルノー カングー(2代目) × 後期型 × クルール × 全国
Aクラスセダン▲こちらは2015年のアクティブ ペイザージュ。写真のボディカラーは「ヴェールメール」

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ルノー カングー(2代目) × 後期型 × アクティブ ペイザージュ × 全国
Aクラスセダン▲フランスの郵便車と同色となる「ラ・ポスト」
 

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ルノー カングー(2代目) × 後期型 × ラ・ポスト × 全国

というか、「ボディカラー命!」で高コスパな2代目カングーを探すのであれば、エンジンの種別にこだわる必要はさほどないのかもしれません。よく考えてみれば1.6L自然吸気エンジンでも普通によく走りますので、ぜひ「いい色のカングー」にこだわって探してみてください。
 

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ルノー カングー(2代目) × 全国
文/伊達軍曹 写真/ルノー・ジャポン、尾形和美
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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