フィアット 500が生産終了。約16年販売されたイタリアンコンパクトの中古車価格や流通量は今どうなってる? 買い方・選び方も解説
2024/06/27
▲「チンク」という短縮形の愛称でも長年親しまれてきたフィアット 500が、ついに生産終了! もはや新車は買えなくなったわけですが、まだまだたくさんある中古車の価格動向などは今、どうなっているのか紹介します日本でも累計13万台が販売された大ヒット作だったが……
2008年3月に上陸して以来、日本国内だけでも累計約13万台が販売される大ヒット作となったフィアット 500。言わずと知れたキュートなイタリアンコンパクトハッチですが、その日本向けの生産が2024年5月、惜しまれながら終了となりました。
正規販売店の在庫がなくなり次第、フィアット 500を新車で買うことは不可能になりますが、いまだ中古車の流通量はきわめて豊富で、選択肢も星の数ほど(?)存在しています。
ここではそんなフィアット 500の特徴を振り返りつつ、「目的別オススメの買い方」を検討してみることにしましょう。
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フィアット 500(3代目) × 全国モデル概要:大人4人が乗れる小ぶりで元気なイタリアンコンパクト
チンクエチェント(イタリア語で「500」の意味)という呼び名で親しまれているフィアット 500は、フィアットブランドの中で最もベーシックな部類に入るコンパクトカー。全長3545mm×全幅1625mm×全高1515mmという小ぶりなボディの中に、大人4人が座れる居住スペースを確保したうえで、抜群にキュートなデザインと活発な走行性能を組み合わせたモデルです。
ラゲージルームの容量は、リアシート使用時は185Lと狭めですが、2名乗車時なら後席を格納して最大550Lまで拡大可能。なお、乗車定員は4名で、5名乗車はNGとなっています。
▲こちらがフィアット 500。写真はマイナーチェンジ前の前期型
▲デザインのモチーフとなったのは、1957年にイタリアで発売されたフィアット ヌオーヴァ500
▲スピードとタコメーターが同軸に配された大径メーターや、パネルむき出しのダッシュボードなど、運転席まわりは往年のヌオーヴァ500のイメージが上手に再現されているパワーユニット:1.2Lおよび1.4L自然吸気に加えて0.9Lターボも
約16年間にわたって販売されてきたフィアット 500には、以下の3種類のエンジンが用意されてきました。
最初期から搭載された最もベーシックなエンジン。これを搭載している中古車は入手しやすい価格である場合が多いのですが、若干非力と感じる人もいるかも。
初上陸から2ヵ月後に追加されたエンジン。動力性能は十分で、これを搭載している中古車の数もまずまず豊富です。
「ツインエアエンジン」という名前の0.9L 2気筒ターボエンジンです。最高出力は1.4Lエンジンより低いのですが、トルク(車を前に進める力)はこちらの方が大きいため、車をきわめて活発に走らせることができるイチ推しエンジンです。
▲2種類の直4自然吸気エンジンの他、「ツインエア」という0.9Lの2気筒ターボエンジンも人気を集めたそしてフィアット 500に用意されたグレードはかなり多種多様であり、そのすべてを書き記すと、それだけでこの記事が終わってしまうことになります。そのため、グレードに関しては以下のようにざっくりと把握しておけばとりあえず十分です。
文字どおり1.2L 直4 SOHCエンジンが搭載されているグレードです。
こちらも文字どおり1.4L 直4 DOHCエンジンを搭載するグレード。
これまた文字どおり、0.9L 2気筒ターボのツインエアエンジンを搭載するグレードです。
これの数がめちゃめちゃ多いのですが、2010年までのこれは1.2Lまたは1.4Lエンジンで、2011年3月以降は0.9Lのツインエアエンジンまたは1.2Lエンジンが搭載されています。内外装の色や仕様、装備などはグレードによって様々です。
▲すべてのグレードや限定車を挙げていくとキリがなくなるのがフィアット 500という車。写真は2022年1月に185台限定で発売された「スポーツ」モデル変遷:2016年1月を境に「前期型」と「後期型」に分かれる
フィアット 500は16年間も販売されてきただけあって、モデル変遷のすべてを追おうとすると大変なことになりますし、すべてを追う意味もあまりありません。とりあえずは下記のポイントだけをざっくり押さえておけばOKでしょう。
・2008年3月~2015年12月=前期型
・2016年1月~2024年5月=後期型
2016年1月に行われたマイナーチェンジでは、フロントライトにエンジンONで点灯する「LEDデイライト」を追加。そして、室内ではオーディオが5インチのタッチスクリーン式に変更されるなどの変更が実施されました。
また、ステアリングホイールにオーディオおよびハンズフリーのコントロールが採用されるなど、後期型では利便性も向上しています。
▲LEDデイライトが追加された後期型のビジュアル。写真は2022年2月に発売された「Giallissima(ジアリッシマ)」という特別仕様車オススメ中古車①:程度優先で選ぶなら後期型・低走行の「ドルチェヴィータ」または「カルト」
なるべく程度の良いモノを買い、なるべく長く楽しみたいという場合は、目安としては「3年落ち以内(2021年式以降)で、走行距離2万km台までの物件」を狙うようにするといいでしょう。
▲写真は後期型の「500カルト」せいぜい初回車検を迎えるタイミングである3年落ちの中古車であれば、内外装のコンディションは上々である場合が一般的です。また、フィアット 500の「デュアロジック」という変速機は、走行距離が延びてくると信頼性がやや微妙になるケースもあるのですが、走行距離2万km台までの物件であれば、その心配もほとんどないはず。
具体的なグレードとしては、後期型の上級グレードである「ドルチェヴィータ」か、後期型の標準グレードである「カルト」のツインエアエンジン搭載グレードがオススメです。
両グレードともクルーズコントロールが標準装備で、ドルチェヴィータはイチ推しのツインエアエンジンを搭載。カルトはツインエアエンジンと1.2Lエンジンの2種類が存在しますが、0.9L 2気筒ターボであるツインエアの方が総合的な満足度は高いでしょう。
これを選択する場合の中古車価格の目安は下記のとおりです。
・ドルチェヴィータ:総額240万~300万円
・カルト(ツインエア):総額170万~280万円
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フィアット 500(3代目) × ツインエア ドルチェヴィータ & ツインエア カルト × 全国オススメ中古車②:リーズナブルに選ぶなら前期型の1.4Lまたはツインエア
なるべく手頃な予算でフィアット 500を入手したい場合は、前期型(2011~2015年式)の1.4Lエンジン搭載グレードまたはツインエアエンジン搭載グレードがオススメとなります。
▲写真はツインエアエンジンを搭載する前期型。総額90万円前後の予算で普通に探せるはず前期型の1.2Lエンジン搭載グレードであれば、この2つより若干お安く狙えるのですが、前述したとおり1.2LのSOHCエンジンは非力に感じる人もいそうなため、万人向けではありません(軽自動車と似たような感覚で「近所を走るだけ」という場合は1.2Lでも十分かもしれませんが)。
前期型1.4Lおよび前期型ツインエアの中古車価格は、おおむね下記が目安です。
・前期型1.4L:総額40万~80万円
・前期型ツインエア:総額50万~120万円
1.4Lにするか、それとも0.9Lターボのツインエアにするかは「好みとご縁」で決めれば良いと思いますが、どちらを選ぶにせよ、5速セミATのトランスミッションである「デュアロジック」のコンディションと整備履歴は要チェックです。
手頃な価格のフィアット 500を買う場合は、可能であれば試乗を行って「ギア抜けや異音の発生などがないか?」を確認するとともに、デュアロジック関係の整備履歴を十分確認するようにしてください。
▲5速セミATの「デュアロジック」はクラッチの摩耗により不具合が生じることも。それが原因のすべてではないのだが、走行距離が多い物件は、デュアロジックの状態と整備履歴をしっかり確認したい▼検索条件
フィアット 500(3代目) × 前期型 × 1.4L & 0.9L × 全国オススメの中古車③:ちょっと変わった限定車が欲しいなら、例えばこの3車
魅力的な限定車が星の数ほど(?)リリースされてきたフィアット 500であるため、なかなか「これ!」というのに絞るのは難しいのですが、例えば下記3種類の限定車は、様々な意味で魅力的かと思われます。
中古車価格:総額90万~190万円
▲イタリアのグッチとフィアット 500がコラボした、その名も「500 バイ グッチ」「フィアット 500 バイ グッチ(by Gucci)」は、イタリア統一150周年とグッチの創業90周年を記念して2011年9月に300台限定で発売された特別仕様。フィアットのデザインセンターが、グッチのクリエイティブディレクターであるフリーダ・ジャンニーニ氏とコラボしてデザインしたものです。
グッチ独自の赤×緑のシグネチャーウェブストライプがぐるりと車体の全周を取り囲んでおり、またセンターキャップにグッチのロゴが入ったホイールや、赤×緑のストライプがあしらわれたフラウレザーのツートーンシート、同じくストライプ柄のシートベルトが装着されているのも素敵。搭載エンジンは1.2L直4です。
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フィアット 500(3代目) × バイ グッチ × 全国
中古車価格:総額140万~170万円
▲500の設計者が黒板に描いたラフスケッチをそのままデザインに取り入れた「500 ジェニオ」
▲ダッシュボードにもロベルト・ジョリートのスケッチが!「500 ジェニオ」は、日本とイタリアの国交樹立150周年にあたることを記念して2016年に作られた、日本限定150台の特別仕様車。
ベースは0.9L 2気筒ターボを搭載する「ツインエア ラウンジ」で、ボディカラーは「グレイ ポンペイ」と名付けられたメタリックグレー。
インテリアはブラック基調に専用のポルトローナ・フラウ製レザーシートを組み合わせたもので、ダッシュボードやBピラーなどには、フィアット 500のデザイナーであるロベルト・ジョリートが黒板に描いたラフスケッチがプリントされています。
また、専用16インチホイールのセンターキャップに「円周率」が描かれているのもおしゃれポイントのひとつです。
流通量はかなり少なめですが、間違いなくユニークで素敵な「見つけたらマストバイ」な限定車だといえるでしょう。
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フィアット 500(3代目) × ジェニオ × 全国
中古車価格:総額150万~200万円
▲ツインエアエンジンにコンベンショナルな5MTを組み合わせた「500S Plus」こちらは、普通であれば5速セミATのデュアロジックが組み合わされるフィアット 500ツインエアに、シンプルな5MTを組み合わせた形の限定車。2017年6月に100台限定で発売されました。
前述してきたとおり、0.9L 2気筒ターボのツインエアエンジンはかなり素敵なイチ推しエンジンなのですが、「このエンジン+MTという組み合わせなら、さらに最高だったのに……」と思ってしまうこともしばしばでした。しかしこちらの限定車を買えば、そんな夢の夢の組み合わせ(?)が存分に堪能できてしまうということです。
この「ツインエア+5MT」というパッケージはやはり好評だったようで、その後も同様の組み合わせである「500S デチベル(※これはカーオーディオにもこだわった仕様)」や「500S マヌアーレ(※マヌアーレはイタリア語で「マニュアル」の意味)」などが限定発売されました。
いずれも流通量は少ないのですが、ぜひとも探してみたいレアな逸品です。
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フィアット 500(3代目) × S プラス & S デチベル & S マヌアーレ × 全国▼検索条件
フィアット 500(3代目) × 全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。
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支払総額139.8万円