ハイエースをキャンプ仕様にカスタムするなら、中古買い+LSD装着がオススメ【OS技研インタビュー】
2023/02/13
ハイエースをキャンプ仕様にカスタムしたいなら、LSDをおさえておこう!
ビジネスユースを前提とした現行型200系ハイエースを、キャンプやウインタースポーツの足として休日に使い倒すユーザーが増えている。自分好みな外観や内装にアレンジでき、キャンプ仕様に仕上がったハイエースを見て「欲しい!」と思った読者もいるだろう。
そんなハイエースだが、乗り味についてはどうしても「商用バンの域を出ない……」というのが正直なところ。アウトドアフィールドへの長距離移動だけでなく街中の走行でも不満を感じることがあるが、実は“とあるパーツ”を装着することで大幅な改善が期待できる。そのパーツの名は、LSDだ。
LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)はスポーツ走行を楽しむような車好きの間ではお馴染みのパーツだが、最近はハイエースをキャンプ仕様にカスタムして楽しむようなキャンパーの間でも「アウトドアシーンで活躍するから」という理由でLSDを装着するケースが増えているらしい(詳しくは記事の後半で解説しよう)。
ただ、新車価格は約239万~419万円とまずまず高額。カスタム代をプラスすると、手の届きにくい高級車の価格帯になってしまう。そこでオススメなのが「車両を中古車でリーズナブルに購入したうえでLSDを装着する」というメニューだ。この方法なら、新車で購入する以上の満足感を得られるはず!
そこでこの記事では、まずハイエースの概要と中古買いの狙いどころを紹介。続いてハイエースにLSD装着する“効能”について、日本の自動車アフターパーツ業界を代表するメーカーOS技研の社長に取材、メリットなどを解説していく。今、ハイエースを狙っている人は、ぜひ参考にしてほしい。
ハイエースのおさらいと中古車の狙いどころ
現行型で5代目となる200系ハイエース。ラインナップは大きくバン(貨物車登録)とワゴン(乗用車登録)に分かれ、さらにボディの長さによってロングとスーパーロング、ボディの幅によって標準とワイド、ボディの高さによって標準ルーフとミドルルーフ、ハイルーフに分けられる。ちなみにワゴンは全車ワイドボディで、標準ボディが選べるのはバンのみだ。
エンジンは2.0Lガソリンと2.7Lガソリン、ディーゼル(バンとコミューターのみに設定。年式によって排気量、型式が異なる)の3種類。駆動方式では2WD(後輪駆動)とフルタイム4WDがあり、これらボディの違い、パワーユニットの違いとグレードを掛け合わせて膨大なバリエーションとなった。
ハイエースの魅力といえば何といっても、広い車内空間だろう。もともとが積載を前提として作られているだけに荷役性は優秀。キャンプやウインタースポーツ、マリンスポーツなど多くのギアを車に積んで移動したい人たちの足として、もってこいの存在と言える。
新車人気を反映して、中古車市場でも流通量が豊富だ。バンなら4000台以上、ワゴンでも1000台以上がカーセンサーに掲載されている。バンにおけるガソリン、ディーゼルの割合は均等に近い(ワゴンはガソリンのみ)。
年式についてもデビュー直後から最近の物件までほぼ満遍なく分布しており、予算に応じて好きなモデルを選べる状況だ。
18年以上ものモデルライフを通じて何度もマイナーチェンジされているが、中古車を購入するうえで特に注目したいのは下記のとおり。中古車を選ぶ際にはしっかりチェックしておこう。
【2007年8月】
・フロントグリルの形状を変更
・ディーゼルエンジンの型式、排気量(2.5L 2KD-FTV型→3.0L 1KD-FTV型)を変更し、新長期規制に適合
【2010年7月】
・フロントマスク全体の形状を変更
・ディーゼルエンジンを大幅改良し、ポスト新長期規制に適合
【2012年4月】
・イモビライザーを標準装備
【2013年11月】
・フロントマスク全体の形状を変更。
【2017年11月】
・衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を標準装備(レス仕様もあり)
・ディーゼルエンジンの型式、排気量(3.0L 1KD-FTV型→2.8L 1GD-FTV型)を変更
・ディーゼル車のATを4速から6速に多段化
・オートアラームを標準装備
ハイエースは頑丈な作りゆえ、多少古い年式、走行距離多めの物件でも適切なメンテナンスさえされていれば大きな問題はない。ただし、2012年3月以前のモデルには盗難防止装置であるイモビライザーが装着されておらず、車両盗難の被害に遭いやすい点には注意しよう。
乗用ミニバンのような先進安全性を求めるなら、「Toyota Safety Sense P」やVSCが装備された2017年11月以降のモデルが安心。オートアラームが付いて防犯対策も強化されている。
ハイエースを安く手に入れたいなら、バンの2.0Lガソリン車が狙い目。価格帯は幅広いが、例えば2019年式・走行距離4万km・修復歴なしの「バン2.0 DXロング(標準幅・標準ルーフ)」といった物件なら総額180万円前後から狙える。
キャンプ道具や趣味のギアを満載するからトルクを重視したい……というなら、ディーゼルが適しているだろう。ディーゼル車の中古車相場は高くなり、上記と同様の年式、走行距離で「バン2.8 DXロング(標準幅・標準ルーフ)」でも総額260万円~といった状況。ただ、新車価格がガソリン車よりも67万円ほど高い322.7万円~であることを考えると、十分にお買い得感がある。
▼検索条件
トヨタ ハイエース(現行型)×全国▼検索条件
トヨタ ハイエースバン(現行型)×全国乗ってみてわかる「ハイエースならではのお悩み」とは?
さて、ここからがいよいよ本題。前半で「何でも積めちゃう積載性優先の作りこそハイエースの魅力。一方、それゆえ乗用車的な走りを求めると不満に感じるところもある」と書いたが、具体的にはどのようなシーンなのか? 乗用ミニバンやSUVからハイエースに乗り替えると、以下のような場面に出くわして困ることがある。
・高速走行でふらつく。横風や轍(わだち)に影響されやすい
・峠道のコーナリングなどで姿勢を乱しやすい
・急勾配の鋭角ターンでタイヤが空転してしまう
・キャンプ場の未舗装路や砂浜、雪道などで割と簡単にスタックしてしまう
実はこれらの問題、原因はほとんど同じ。ハイエース特有の高い重心と硬めのサスペンション、そしてディファレンシャルギア(以下デフ)の作用だ。
重心の高さ、サスの硬さによってタイヤが浮きやすくなり、さらにデフの作用によって駆動力が失われてしまうために、こうした不安定さを生じる。
デフの作用を説明すると長くなるので割愛するが、要約すると「カーブなどで各車輪の軌跡が異なるときでも、タイヤの抵抗に応じた回転差を生み出すことでスムーズに曲がれるようにする」機構のこと。
「抵抗に応じた回転差」というところポイントで、タイヤが接地している分には正しく働くが、段差などでタイヤが浮いたり、ぬかるみや雪に踏み入れたりすると空転して駆動力を伝えられなくなってしまうのだ。
そこでデフの作用をちょうど良く制限し、いつでもガッチリ駆動力を伝えられるようにしよう、という目的で作られているのがLSDだ。スポーツ走行好きやオフロード走行好きには必須と言っていいほど有効なパーツだが、OS技研によるとハイエースとも相性バッチリなのだと言う。
今回はより詳しい話を、OS技研社長の何森行治(いずもり・ゆきはる)さんにお伺いした。
LSDってなに?装着するとどう変わる?OS技研に聞いてみた!
OS技研社長
何森行治さん
レース用からストリート、旧車、商用バンまで、強化クラッチやLSD、クロスミッションなどの駆動系チューニングパーツを制作している岡山県岡山市のメーカーの社長。自身も車が大好きで、サーキットに出向くこともしばしば。実はOS技研の公式Twitter(@OS_Giken)の中の人なのだとか。
――そもそもどうしてハイエースにLSDがオススメなのでしょうか?
――具体的にはどんなメリットがあるのでしょう?
――正直、LSDはモータースポーツで活躍するパーツだと思っていました。
――その気になればスポーティにも走れて、運転も楽に……良いことづくめじゃないですか!
――しかしメリットがあるなら、デメリットもあるのがアフターパーツの常。LSD装着のデメリットは何かあるのでしょうか?
――なるほど。必要なときだけ作動するのはいいですね。走行中のノイズなどはいかがですか?
――デメリットというよりも、当たり前のことですね。LSDを装着した車の特性をしっかりと理解したうえで運転することが大切、と。
――だからこそ、今回は中古で安くハイエースを手に入れて、LSDを装着するということをオススメしたいですね。
――OS技研のLSDは寿命ってどれくらいなんですか?
――購入してから手放すまで使えるってことを考えれば、決して高い買い物ではなさそうですね。ちなみに、購入&装着したいと思ったときはどこに行けばいいのでしょうか?
――ディーラーでも対応してくれるんですね! OS技研さんのHPを拝見すると、LSDといってもいろいろな種類がありますね。
――2WDだけじゃなく4WD用のLSDもあるんですね?
外からは見えないところで、ハイエースの走りを一段も二段もレベルアップしてくれるLSD。キャンプなどの趣味で活用したい人はもちろん、長距離移動が多い人、街乗りメインの人、峠道をスポーティに走りたい人など、あらゆるハイエース・ユーザーにとって恩恵のあるパーツだ。
ちなみに、LSDについて何か疑問があれば、OS技研のTwitter(@OS_Giken)で問い合わせてみるのもオススメ。Twitterの中の人、実は何森社長本人(!)なのだとか。ユーザーからの素朴な疑問にも気さくに回答しているので、ぜひチェックしてみよう!
※記事内の情報は2023年1月27日時点のものです。
自動車ライター
田端邦彦
自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。