アウディ A3セダン▲全長4465mm×全幅1795mmと比較的コンパクトなサイズのA3セダンは、人気のハッチバックA3スポーツバックの派生車種として設定された「小さな高級車」だ

日本の道路事情にジャストサイズなプレミアムセダン

高品質がウリの一つであるアウディから、初代A3セダンが登場したのは2014年1月。

全長4.5mを切るコンパクトなセダンといえば、当時はトヨタ カローラアクシオやホンダ グレイスといった国産車しかなく、比較的近しいサイズの初代メルセデス・ベンツ CLAでも全長は4.6mを超えていた。

つまり、輸入車の「4.5m未満のセダン」はちょうど空白時代だったのだ。

一方で、「小さな高級車」は日本ではあまり成功しないといわれて久しいが、日本の道路事情を考えれば扱いやすく、それでいて他人とカブりにくい魅力的な車だと言って良いのでは?

ギュッと濃縮された塊感のあるフォルムや、アウディらしいハイクオリティなインテリアなど、目を見張る魅力の多い初代A3セダンだが、ここのところ中古車平均価格が200万円を切っており狙いやすくなっている。

この記事では、より詳しく中古車流通状況やモデル概要を見ていくとともに、今の狙い目物件を紹介していく。

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アウディ A3セダン(初代)×全国
 

【中古車状況】1.4TFSI系グレードが中心

原稿執筆時点での掲載台数は約190台。価格帯は約90万~390万円で、平均価格は193万円と200万円を切っている。

デビューから8年以上が経つものの平均走行距離は3.4万kmほどと、コンディション的にまだまだ期待できそうなのも特徴だ。

アウディといえば独自の4WDシステム「クワトロ」が名高いが、A3セダンの場合、掲載されている物件の9割近くが2WD(FF)。

ラリーカーのようにクワトロでコーナリングを駆け抜けたい人には、ハイパフォーマンス版のS3セダンがあるため、A3セダンは街乗り中心派から燃費のいい「セダン」として人気があったことがうかがえる。

そのためグレード別に見ると、最も多いのは最高出力122psの1.4Lターボエンジンを搭載する1.4 TFSI系で、全体の約5割を占める。

一方で、同じ1.4Lターボながら最高出力が140psで、気筒休止システムを備えて燃費もいい1.4 TFSI シリンダーオンデマンドはほとんど流通していない。

グレード体系の中では、いわゆるエントリーグレードとなる1.4 TFSI系。しかし、そもそもがプレミアムコンパクトセダンゆえ、エントリーグレードでも装備に十分満足できたということが、同グレードが最も選ばれた理由と言えそうだ。

なお、1.4Lターボ車の7速Sトロニックはリコールされているので、気に入った中古車がリコール対象かどうか、またリコール対策済みかなど、あらかじめ販売店に確認するようにしよう。

 

【モデル概要】クラスを超えた質感の高さがウリの「小さな高級車」

アウディ A3セダン▲同族のA3スポーツバック同様、ワイド&ローが強調されたエクステリアデザイン。全車にウオッシャー機能付きキセノンヘッドライトが標準装備された

では、改めて初代A3セダンがどんなモデルだったのか振り返ってみよう。

2014年1月に登場した初代A3セダンは、人気のハッチバックA3スポーツバックの派生車種として設定されたモデルだ。

その名のとおり、同社の中核を担うA4シリーズよりヒエラルキー的には下になるコンパクトモデルだが、そこはさすがのアウディ! 精緻なつくりと質感の高さをもつ内外装などは、まさに「プレミアム」といえる。

A3セダン(旧型)▲1.4 TFSIは4本スポークのステアリングで、他2グレードはパドルシフト付き3本スポークとなる。純正の「MMIナビゲーション」は全車オプション。1.4 TFSIは標準シート、他2グレードはスポーツシートが備わる

デビュー時に搭載されたパワートレインは3種類。最高出力122ps仕様と同140ps仕様という2種類の1.4Lターボと、180psの1.8Lターボだ。

1.4Lターボ車はどちらも2WD(FF)で、7速Sトロニック(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされる。

一方、1.8Lターボ車は同社自慢のクワトロ(4WDシステム)が搭載され、6速Sトロニック(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされた。

140ps仕様の1.4Lターボは、高速巡航時などエンジンに負荷があまりかからないときに、4気筒のうち2気筒が休止するシリンダーオンデマンド機構を備える。つまり高出力でも燃費が良く、122ps仕様のJC08モード燃費が19.5km/Lなのに対し、140ps仕様は20.0km/Lと若干上回る。

グレード名は、122ps仕様の1.4Lターボ車が「1.4 TFSI」、140ps仕様が「1.4 TFSI シリンダー・オン・デマンド」、1.8Lターボ車が「1.8 TFSI クワトロ」。

1.4 TFSI シリンダー・オン・デマンドと1.8 TFSI クワトロにはスポーツサスペンションが標準装備されるなど、エントリーグレードの1.4 TFSIに対してスポーティ仕様になっているが、快適機能では3グレードであまり変わりはない。

2014年8月には一部改良が行われ、1.4TFSIを除く2グレードに、先行車に自動追従するアダプティブクルーズコントロールが標準装備された点はチェックしておこう。

A3セダン(旧型)▲エンジンやトランスミッションなどの特性を変えられるアウディドライブセレクトは1.4 TFSI以外の2グレードに標準装備。トランク容量は通常425LでハッチバックのA3スポーツバックより大きい

2017年1月のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインが変更された他、インテリアではフルデジタルメーターの「バーチャルコックピット」がオプションで用意された。

さらに、アダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキを含む「アウディプレセンスフロント」が全車に標準装備された。

一方でグレード構成が変更され、パワートレインは122ps仕様の1.4Lターボ×7速Sトロニックを搭載した2WD(FF)の「1.4 TFSI」系と、新エンジンの2Lターボ×7速Sトロニックを搭載したクワトロ(4WD)の「2.0 TFSI」系の2種類となり、17インチホイールを履き車高が15mm下げられた「スポーツ」グレードも設定された。

なお、2018年9月には3分割リアシートが備わるなど商品改良が行われたのに合わせ、従来の1.4 TFSIは「30 TFSI」に、2.0 TFSIは「40 TFSI」とグレード名が変更された点には注意しよう。

A3セダン(旧型)▲写真のようにナビ画面を大きく表示することもできる「バーチャルコックピット」を採用

以上が初代アウディA3セダンのモデル変遷だが、これらを踏まえ今オススメとなる物件を紹介しよう。

 

とにかく手頃に狙うなら「前期型の1.4T FSI」がオススメ

原稿執筆時点の掲載台数は約180台。そのうち約4割を占めるのが、エントリーグレードでFF(2WD)の1.4 TFSIだ。

支払総額200万円以内で狙えるA3セダンのうち約7割を占めており、車両本体価格100万円を切る物件も存在するなど、手頃な価格で狙いやすくなっている。

1.4 TFSI系には、より燃費の良い1.4 TFSI シリンダー・オン・デマンドや、スポーティな1.4 TFSI スポーツもあるが、台数は圧倒的にノーマルの1.4TFSI系が多い。そのため予算に応じて選びやすいのはノーマルの方だ。

特に前期型(2014年1月~2016年12月生産)であれば支払総額100万円あたりから狙え、しかも走行距離5万km以下といった物件も多く、良コンディションも期待できるだろう。

また、前述のとおり実質的にはエントリーグレードとなるが、装備や質感の高さは十分プレミアムといえるため、購入後の満足感も高いはずだ。

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アウディ A3セダン(初代)×前期型(2014年1月~2016年12月生産)×1.4 TFSI×全国
 

装備充実でも手頃なもの狙いなら「後期型の1.4 TFSI(30 TFSI)系」がオススメ

装備が充実していて、かつなるべく手頃な価格で欲しいなら、後期型でFF(2WD)の1.4 TFSI系(名称変更後は30 TFSI系)がオススメだ。

2017年1月のマイナーチェンジで、衝突被害軽減ブレーキの「アウディプレセンスフロント」やアダプティブクルーズコントロールといった安全・快適装備が標準で装備され、フルデジタルメーターの「バーチャルコックピット」も選べるようになった。

マイナーチェンジ時の1.4 TFSIの車両価格は311万円であったが、それが今では支払総額でも160万円くらいからと、半額以下で狙うこともできるため、コスパが高いといえるだろう。

後期型でも1.4 TFSI系の中古車が最も多く、次いで名称変更後の30TFSI系が多いので、選びやすいのもオススメする理由のひとつだ。

前期型より少し価格は上がるが、装備を考えれば納得の価格といえるだろう。

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アウディ A3セダン(初代)×後期型(2017年1月~2021年4月生産)×1.4 TFSI系/30 TFSI系グレード×全国

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アウディ A3セダン(初代)×全国
文/ぴえいる、写真/アウディ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。