フィアット500C ▲普通の屋根あり車より開放感は断然強いものの、オープンカーほど特殊ではないというニュアンスで、程よい個性と程よい開放感が堪能できるのが「キャンバストップ付き」の車。普通のコンパクトカーではちょっと物足りないという場合は、そんな「キャンバストップ付き」を狙ってみてはどうでしょうか?

「普通の車」と「オープンカー」のいいとこ取り的存在

車だけでなくファッションや雑貨などでもそうですが、世の中は「多くの人が使っているのと同じモノを買うことで安心する人」と、「人とは違うモノを身につけたいと思っている人」の2種類に分けられるような気がします。

とはいえ、後者の中でも「他人とまっっっったく違うモノ」を求めるのは少数派で、多くの人は「人と“ちょっと違うモノ”が好き」というニュアンスではないかと推測します。

で、もしもあなたがそんな感じの人で、なおかつ今、何らかのコンパクトカーを探しているのであれば……超オススメのカテゴリーがあります。

それは「キャンバストップ付きのコンパクトカー」です。
 

トゥインゴ▲屋根が鉄ではなく、開閉可能なキャンバス地で出来ているのが「キャンバストップ付き」の車。写真はフランスのルノー トゥインゴ

普通、車の屋根というのは鉄かアルミの固定屋根になっているか、もしくは屋根がまったくない「オープンカー」かの2択なわけですが、キャンバストップというのは「その中間」といった感じのルーフ構造になっています。

いちおう屋根はあるのですが、鉄やアルミではなくキャンバス(厚手の布)で出来ていて、普段はそれをガチッと閉めておきます。が、なんとなく天気や気分がいいときは、そのキャンバスを蛇腹状にガーッとたたむことで「半ばオープンカー」として使うこともできる――というものなのです。

「普通のカタチの車じゃちょっとつまらないけど、完全なオープンカーだと大げさすぎるし……」と考えた場合に最適なレベルの個性と気持よさを備えているのが、キャンバストップ付きの車であるといえるでしょう。またキャンバストップを開け放った際に生まれるシワシワの後ろ姿(?)もかなり風流というか、カワイイものです。

その昔はけっこう流行っていたキャンバストップですが、最近はちょっと廃れ気味です。しかし「だからこそ個性的!」だと言えますし、輸入車であれば、今なおキャンバストップ付きのコンパクトカーを見つけることは可能です。

ここでは、そんな「キャンバストップ仕様がある輸入コンパクトカー」のオススメ3モデルをご紹介いたします。
 

フィアット500C▲これがキャンバストップを開けた際の、筆者が言うところの「シワシワの後ろ姿」。どことなくノスタルジックな感じで、なかなか素敵なシワシワだと思いませんか?
 

オススメ1:フィアット 500C(from ITALY)

フィアット 500というイタリア車は、劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』などで主人公たちが乗っていたことでもお馴染みの往年のイタリア製小型車を、現代のセンスと技術でもってリバイバルさせた車。その中の「フィアット 500C」というモデルが、鉄製の固定屋根ではなくキャンバストップを備えています。

キャンバストップの開閉は電動式ですから楽ちんですし、トップを開けた際に、車の後端におぶさるようにキャンバスが折りたたまれるビジュアルはどこかノスタルジックで、かなりいい感じです。そしてトップを開ける際は2段階、閉める際は3段階の開度調整が可能なのですが、なんとなく「尺取り虫」のように動くその様も、実はけっこうカワイイのです。
 

フィアット500C▲キャンバストップを閉めた状態のフィアット 500C。トップの色は他にも様々な種類がある
フィアット500C▲ルーフ部分のみをオープンするとこのような感じに
フィアット500C▲そして「全開」にするとこうなる。後ろは少々見えにくくなってしまうが

2022年11月中旬現在、中古車の流通量は134台と豊富で、価格は総額50万~340万円と上下に幅広い状況です。しかし「走行3万km台から4万km台のちょうどいい感じのやつ」を、おおむね総額130万円前後で探せるでしょう。

エンジン別で見ると「1.2」と「1.4」「ツインエア」に分かれるのですが、そこそこ速く、そこそこ遠くまで走りたい人は1.4またはツインエアがいいはずです。しかし「ご近所限定」という感じで使うのであれば、1.2でも問題はありません。また素敵なカラーリングの限定車もたくさんありましので、そちらにもぜひご注目ください。
 

フィアット500C▲フィアット 500Cの運転席まわりはおおむねこのようなデザイン。写真は左ハンドルの本国仕様

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フィアット 500C(現行型) × 全国
 

オススメ2:ルノー トゥインゴ キャンバストップ(from FRANCE)

ルノー トゥインゴは、フランスのパリ中心部のすぐ西側にあるブローニュ=ビヤンクールという街に本社を置くルノーという自動車メーカーが昔から作っているしゃれたコンパクトカー。現在は3代目のトゥインゴが製造販売されていて、それにも「キャンバストップ仕様」が用意されています。

こちらのキャンバストップもフィアット 500C同様に電動開閉式ですが、フィアット 500Cのキャンバストップが車の最後端までガーッと開くのに対し、トゥインゴのそれは「ルーフ部分だけがほぼ全開になる」といった感じの作りです。
 

トゥインゴ▲リアウインドウ部までは開かず、ルーフ上部の全面のみが開くことになるトゥインゴのキャンバストップ

そのため「オープン時の開放感」はフィアット 500Cの方が上ですが、車というのは開放感が強すぎると運転中にちょっと疲れたり、ちょっと怖く感じたりすることもなくはないため、「トゥインゴ キャンバストップぐらいの開放感がちょうどいい」と感じる人もいるでしょう。このあたりは優劣ではなく好き好きの問題です。

現行型ルノー トゥインゴ自体の中古車は前述日現在で約220台という豊富な数が流通していますが、「キャンバストップ付き」に絞った場合の流通量は32台とやや少なめで、中古車価格は総額140万~220万円と、新しめの世代だけあって、フィアット 500Cより少し高めです。

狙い目となる中古車は「総額170万円前後で、走行3万~4万km台のもの」ということになるでしょう。この価格帯で狙えるのはマイナーチェンジ前の“前期型”と呼ばれる世代ですが、走行性能自体は前期型も後期型も大差はないので、特に問題はないかと思います(ただし後期型のタッチスクリーン方式のインフォテイメントシステムはちょっと魅力的ですが……)。

そしてエンジンを車の前ではなく後ろに積む「RR」という方式を取っている関係で、現行型のルノー トゥインゴは前期型も後期型も最小回転半径4.3mという、驚異的なまでに小回り性能が高い車です。そのため、混み合った都市部でもかなり扱いやすい1台となるでしょう。
 

トゥインゴ▲ちなみに現行型トゥインゴの運転席まわりはこのようなイメージ。写真は前期型

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ルノー トゥインゴ キャンバストップ(現行型) × 全国
 

オススメ3:シトロエン DS3カブリオ(from FRANCE)

フィアット 500Cもルノー トゥインゴ キャンバストップもかなりおしゃれな車ですが、フランスの個性派ブランドであるシトロエンの「DS3カブリオ」も、負けず劣らず超絶おしゃれなキャンバストップ付きコンパクトカーです。

DS3という固定屋根のコンパクトカーがそもそもかなりおしゃれなのですが、カブリオはそれに電動開閉式のキャンバストップをプラス。開閉ボタンを押すとルーフ部分のみがオープンとなって停止するのですが、そこからもう一度ボタンを押すと、リアウインドウ部分までガッと折りたたまれます。そしてこのキャンバストップは「120km/hまでであれば走行中でも開閉可能」というのが、他のモデルとは違うちょっとスペシャルなポイントです。
 

DS3▲こちらがDS3カブリオのキャンバストップが閉まっている状態
DS3▲ボタンを1回押すとここまで開き……
DS3▲さらにボタンを押すとこのような形に。走行中も、120km/hまでなら操作可能

当初の搭載エンジンは1.6Lの直4ターボで、トランスミッションは6MTしか選べませんでしたが、シトロエンのDSシリーズが「DS」という独立ブランド扱いになった2015年11月以降の世代は、1.2L直3ターボ+6速ATに変わっています。

中古車価格はシトロエン時代の6MT車が総額110万~130万円ほどで、DSブランドとなった6速AT車が総額160万~270万円といったところ。どちらも流通量はフィアット 500Cやルノー トゥインゴ キャンバストップと比べるとかなり少ないのですが、その分だけ「おっ? 珍しいな!」というニュアンスの個性を発揮できる選択だといえるでしょう。そして乗ってみても、キビキビと走ることができるいい車です。

DS3▲運転席付近はこのようなデザインと世界観。写真は左ハンドル+6MTの本国仕様

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シトロエン/DSオートモビル DS3カブリオ(初代) × 全国

以上のとおり、キャンバストップ付きの輸入コンパクトカーは「とってもおしゃれで、価格もそんなにバカ高くはなくて」というナイスな選択肢であることがおわかりいただけたかと思います。

とはいえもちろん、キャンバストップ付きの車には「固定屋根の車と比べるとちょっとうるさい(車内にロードノイズが侵入する)」というデメリットもあるわけですが、どんな分野であっても「おしゃれ」に「やせ我慢」は付き物です。そしてこれまたどんな分野でも、おしゃれというのは、自分が行ったやせ我慢以上の歓びを本人に与えてくれるものでもあります。

ということで「ありがちな小型車にだけは乗りたくない!」とお考えの方は、ぜひともこの3モデルの存在にご注目いただけましたら幸いです
 

文/伊達軍曹 写真/フィアット、ルノー、シトロエン、DSオートモビル
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。