5シリーズ ▲人気の3シリーズもいいけれど、すべてにおいて「さらにイイ!」と言えるのがBMW 5シリーズ。その新車や現行・後期型中古車は正直かなりお高いわけですが、「前期型の中古車」であれば、実はそこそこ手頃な予算で狙えること、ご存じでしょうか?

新車より数百万円安い前期型だが、後期型との違いは少ない

BMWの売れ筋といえば3シリーズですが、ひとつ上の「5シリーズ」および「5シリーズ ツーリング」は、やはり各部のクオリティも存在感も(当たり前ですが)3シリーズを圧倒的に上回ります。
それゆえ「……欲しい!」と思うわけですが、現行型の5シリーズを新車で買うとなると、一番安いやつでも車両価格だけで768万円。普通はなかなか手が出ない値段ですし、「ならば中古車で!」と思っても、2020年9月に行われたマイナーチェンジ後の世代は、安めの部類でも総額600万円近く。こちらも、正直なかなか手が出ないプライスです。

しかし、同じ現行型5シリーズセダンおよびツーリングでも「マイナーチェンジ前の前期型で良し!」とするならば、比較的低走行の物件であっても総額300万円ぐらいから、つまり新車価格を買うより500万円ほどお安い予算で狙えたりもするのです。

もちろん前期型と後期型ではいろいろ異なる部分もありますが、両者の違いはざっくり言って下記程度のものです。

・前後のエクステリアデザインが少し違う
・最廉価グレードを除いて全車本革シートが標準に
・運転支援システムが強化され、ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能も採用
・「OK、BMW」と話しかける音声認識システムを採用

上記の中で「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」は正直ちょっとうらやましいですが、その他は「どちらでもいい」と言えるかもしれません。また肝心のパワーユニットも、前期型と後期型は同一です。

ということで、お安い割には後期型にもさほど引けは取らない「現行型5シリーズセダンおよびツーリングの前期型中古車」について、その選び方を中心にいろいろと検討してまいります。
 

5シリーズ▲4ドアセダンとステーションワゴンの双方が存在するBMW 5シリーズ。両者の中古車の“今”について確認し、検討してまいりましょう!

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ボディサイズ・見た目:サイズ感は「先代クラウンよりちょい大きい」といったところ

通算7代目となる現行型BMW 5シリーズは、日本では2017年2月に発売されたアッパーミドルクラスのセダンおよびステーションワゴン。セダンの車名はシンプルに「BMW 5シリーズ」で、ステーションワゴンの車名は「5シリーズ ツーリング」となります。

伸びやかなエンジンフードと短いフロントオーバーハング、長く取られたホイールベース、ボディサイドに走るキャラクターラインなどの基本デザインは、セダンもツーリングも従来型のテイストを踏襲。

そのうえで現行型はキドニーグリルとヘッドランプをつなげたり、リアコンビネーションランプをボディ側面に回り込ませるなどにより、ワイド感と「現代的な雰囲気」を強調しています。
 

5シリーズ▲先代からの基本フォルムを踏襲しつつも、各部のデザインを改めることでぐっと現代的な趣きとなった現行・前期型BMW 5シリーズ セダン
5シリーズ▲こちらはステーションワゴン版である「5シリーズツーリング」の現行・前期型
5シリーズ▲グレードによってステアリングホイールの形状などは異なるが、現行・前期型5シリーズの運転席まわりはおおむねこのようなデザイン、および世界観となっている

現行・前期型5シリーズのボディサイズは下記のとおりですが、数字を単体で並べてもイメージしにくいと思われるため、メジャーな競合車種である「現行型メルセデス・ベンツ Eクラス」および「先代トヨタ クラウン」の数値も併記してみましょう。

●BMW 5シリーズ(現行型):全長:4945mm × 全幅:1870mm × 全高:1480mm
●メルセデス・ベンツ Eクラス(現行型):全長:4930mm × 全幅:1850mm × 全高:1455mm
●トヨタ クラウン(先代):全長:4910mm × 全幅:1800mm × 全高:1455mm

多少の違いはありますが5シリーズとEクラスのサイズ感はおおむね同等で、先代のトヨタ クラウンと比べると「ちょっと長くて、ちょっと幅が広い」といったニュアンスになります。

また、上記は現行型5シリーズセダンの数値ですが、ステーションワゴンである現行型5シリーズ ツーリングは「セダンより5mm長く、20mm背が高い」というディメンションになります。車幅はセダンもツーリングも同一です。

そして、2020年9月のマイナーチェンジによって誕生した後期型5シリーズのビジュアルは写真下のとおりです。
 

5シリーズ▲つながっていないようにも見えるが、実は左右が一体になったキドニーグリルを採用した後期型。ヘッドランプは、現行型3シリーズ同様のL字型LEDが2つ並ぶデザインに変更された

左右2分割だったフロントグリルが一体化されるとともに、よりワイドで立体的な造形に。ランプ類のデザインも新しくなり、ヘッドランプにはL字型のLED光源を2つ並べた意匠を採用。

リアコンビランプも立体的な造形に変更し、L字型の光源以外をブラックアウト化することで、より精悍なイメージとしています。
 

 

エンジンタイプ・走行性能:大柄な車だが身のこなしの軽さは3シリーズ並み

現行型BMW 5シリーズに採用されているパワーユニットは下記の6種類です。

●523i系:最高出力184psの2L 直4ガソリンターボ
●530i系:同252psの2L 直4ガソリンターボ
●523d系:同190psの2L 直4ディーゼルターボ
●540i系:同340psの3L 直6ガソリンターボ
●550i系:同530psの4.4L V8ガソリンターボ(※ツーリングには設定なし)
●530e系:システム最高出力252psのプラグインハイブリッド(※ツーリングには設定なし)

トランスミッションは全車8速ATで、駆動方式はいわゆるFRが基本。ただし、523d系には2019年7月から4WD版が追加され、540i系は当初からFRと4WDの双方を用意。超強力な4.4L V8を搭載する550i系は4WDのみとなっています。

上記のうち中古車の流通量が最も多い523d系(2Lディーゼルターボエンジン搭載グレード)の走りは、「エンジン音がきわめて静か」という特徴があります。遮音がかなり利いているせいか、車内にいる限りはディーゼルエンジン特有の騒音のようなものはまったく聞こえず、身体に感じる振動もほぼ皆無。

そのうえで、自然吸気のガソリンエンジンでいうと4L級の極太トルクがわずか1750rpmから発生しますので、523dでの高速移動は「極楽にして超快適!」というひと言でまとめることができます。

そして、先代より約80kgも軽量化されたことが効いているのか、身のこなしはまるで3シリーズのように軽快です。先代のトヨタ クラウンよりも大ぶりなボディサイズなのに、その動きは3シリーズに酷似しているのです。

安楽で快速な高速長距離移動と、ちょっとした交差点や山坂道などでの俊敏な動きを両立させたいユーザーにとって、現行型5シリーズは世界規模で見てもきわめてベストに近い選択肢だと言えるでしょう。
 

5シリーズ▲高速道路を快適にクルーズするのと同時に、写真上のようなワインディングを軽快に走ることも大の得意としているのがこの車。ツーリングであれば、そこに「荷物もたくさん載せられる」という美点も加わる
 

機能・安全性能:前期型でも運転支援システムはひと通り全車標準装備

プレミアムブランドのアッパーミドルクラスですので、現行型5シリーズおよび5シリーズ ツーリングの安全装備などは当然ながら充実しています。

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やステアリング&レーン・コントロール・アシストなどを含む「ドライビング・アシスト・プラス」は最初期から全車標準装備で、PDC(パーク・ディスタンス・コントロール)などからなる「パーキング・アシスト・プラス」も、最廉価グレードであるセダンの523i スタンダード(素の523i)を除く全車に標準装備。

さらに、「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリング・システム)も、同じくセダンの523i スタンダードを除く全車に標準装備です。

2020年9月以降の後期型は、さらに高機能でハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能も含む「BMWドライビングアシスト・プロフェッショナル」が全車標準装備になったというのはありますが、先進安全装備の類は前期型であっても「おおむね十分」と言うことができるでしょう。
 

 

中古車のオススメ(セダン編):お手頃系の狙い目は総額300万~350万円の523d

現行・前期型のBMW 5シリーズセダンを探すにあたり、「なるべく手頃な予算で、しかしなるべく状態の良いモノが欲しい」と思う場合のオススメは、総額300万~350万円付近の「523d系」となるでしょう。

年式としては2017~2018年式で、走行距離は2万km台から4万km台ぐらいが目安となります。

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BMW 5シリーズ(現行・前期型) × 523d系

2L 直4ディーゼルターボを搭載する523d系より、2L 直4のガソリンターボエンジンを積む523i系の方が新車時価格は安かったのですが、両者の現在の中古車価格にさほど違いはありません。

ならばトルクフルなディーゼルターボエンジン搭載グレードを選んだ方が満足度はが上がるはずですし、そもそも流通量も523d系の方が圧倒的に多いため、「ディーゼルの方が探しやすい(選びやすい)」という単純な話でもあります。

前期型の523dは「スタンダード(素の523d)」と「ラグジュアリー」「Mスポーツ」の3種類に分かれています。

「スタンダード」は文字どおり標準的な仕様で、「ラグジュアリー」はウインドウモールがクローム仕上げとなり、シート表皮はダコタ・レザーが標準になるなどするラグジュアリー寄りの仕様です。

そして、「Mスポーツ」はMエアロダイナミクス・パッケージ(要するに純正エアロ)やMスポーツサスペンション、19インチの専用ホイール等々のスポーティなアイテムが多数装着されている仕様です。
 

5シリーズ▲こちらが文字どおりラグジュアリー寄りのデザインとなる「ラグジュアリー」
5シリーズ▲純正エアロパーツや19インチの軽量ホイール、スポーツサスペンション等々が装着される「Mスポーツ」。中古車の流通量も、523d系の中ではMスポーツが最多となっている

このうちのどれを選ぶかはあくまで好みの問題ですが、523dスタンダードの中古車流通量はきわめて少ないため、実質的にはMスポーツとラグジュアリーの二択になります。

その2つの中でも流通量が豊富なのは、やはりビジュアル的なカッコよさがあるMスポーツです。

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BMW 5シリーズ(現行・前期型) × 523d Mスポーツ

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BMW 5シリーズ(現行・前期型) × 523d ラグジュアリー

基本的には総額300万~350万円付近の523d Mスポーツまたはラグジュアリーで十分満足できるはずですが、中には「怒涛のモアパワー」を求めたい人もいらっしゃるでしょう。

その場合は、総額470万~520万円付近のレンジで2017~2018年式の540i Mスポーツまたは540i xドライブ Mスポーツを狙うことになります。

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BMW 5シリーズ(現行・前期型) × 540i xドライブ Mスポーツ

かなり値は張りますが、最高出力340psの3L 直6ターボには「これぞまさにビーエム!」といったニュアンスの素晴らしさがあり、鬼のように速い車であるにもかかわらず、乗り心地等は望外なまでに良好です。
 

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BMW 5シリーズ(現行・前期型) × 全国
 

中古車のオススメ(ツーリング編):こちらも狙い目は523dツーリング

現行型5シリーズのステーションワゴン版である「5シリーズ ツーリング」を探す場合も、考え方はセダンと同様です。

「なるべく手頃な予算で、しかしなるべく状態の良いモノが欲しい」というなら狙うべきは2Lガソリンターボの523i系または2Lディーゼルターボの523d系で、両車とも素敵な選択肢ではあるのですが、トルクの太さと流通量の多さから「イチ推しはディーゼルターボの523d系」という結論になります。
 

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BMW 5シリーズツーリング(現行・前期型) × 523d系
5シリーズ▲2Lガソリンターボの「523iツーリング」も捨てがたくはあるが、総合的に考えるとやはり523d系が狙い目となるはず。高出力な2Lガソリンターボを積む「530iツーリング」は流通量がやや少なめなのが難点

年式もセダンの場合と同じく2017~2018年式で、走行距離も2万km台から4万km台あたりの物件が狙い目となりますが、中古車価格はツーリングの方がセダンよりも若干高くなります。

具体的には、セダンの523dは総額300万~350万円付近で割といいものが狙えますが、523dツーリングでは380万~450万円付近が推奨価格レンジです。ガソリンターボの523iツーリングだともう少し安くイケるのですが、大差はありませんので、ここはディーゼルターボ狙いのままでも特に問題はありません。

怒涛のモアパワーを求める場合のオススメも540i系ということでセダンと同じ。

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BMW 5シリーズツーリング(現行・前期型) × 540i系

ですが、そこそこ豊富に流通しているセダンの540i系と違ってツーリングの540i系は流通量が少なく、支払総額も500万~530万円となかなか高額ですので、ちょっと大変な部分はあるかもしれません。

とはいえ、それを補って余りあるパフォーマンスを発揮するのが540iツーリング Mスポーツというステーションワゴンですので、金銭的な余裕がある人にとってはナイスな選択だと言えるでしょう。
 

5シリーズ▲各部のデザインはいちいちクールで上質。このあたりも、現行型BMW 5シリーズという車の大きな魅力だ

いずれにせよ現行前期型のBMW 5シリーズおよび5シリーズ ツーリングは、デザインとADAS(運転支援システム)は後期型と若干異なりますが、後期型と同じパワーユニットと同じシャシーによる「素晴らしい体験」を、比較的手頃な予算で味わえる選択肢です。

いわゆる「いい車」を探しているすべての人に、大いにオススメしたいと思います。
 

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文/伊達軍曹 写真/BMW
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。