マツダ CX-60▲4月に国内仕様が発表された、マツダの次世代を担うミドルクラスSUV。新たに開発したFR用プラットフォームを採用する「ラージ商品群」の第1弾として登場。ロングノーズ&ショートデッキのスタイリッシュなフォルムと4種類のパワーユニットを用意する

SUV離れしたドライビングファンの国産SUVは果たして効くのか?

CX-60はマツダが社運を賭けて発表したミドルサイズSUVだ。一見、これまでのマツダSUV路線を踏襲するモデルに見えるかもしれない。魂動デザインのDNAは健在だし、現ラインナップと並べてみても社運を賭けたほど存在感のあるモデルかというと、そうでもない。だから背の高い車嫌いの筆者としては、さほど注目もしていなかった(いや、ホント)。

事実、CX-60が狙うターゲットはCX-5あたりからのステップアップがメインとなるだろう。けれどももう一つ、彼らには狙いたい層があった。輸入車のユーザーやポテンシャルカスタマー、つまりはカーセンサーEDGE読者のような皆さんだ。

ここに“社運を賭けた”の意味が隠れている。どういうことか。
 

マツダ CX-60▲内外装をプレミアムに仕立てた上級グレードを用意するなど、パッケージに幅広い選択肢を揃えているのもポイントだ
マツダ CX-60▲ハイブリッド系グレードのほとんどは、ホイールアーチなどボディ下部の樹脂パーツをボディ同色に。重心を低く見せる効果があるという

マツダは電動戦略をあえて積極的に選ばず、内燃機関の効率化を用いたドライビングファンにより「小さなマーケット」の獲得を目指す、輸出型の中規模メーカーだ。要するに、プレミアムブランドのそれと本質的な立ち位置はさほど変わらない。ならば当然のことながら、ラインナップの上級化は避けて通ることはできない。台数を目指さないというのであれば、1台当たりの利益を確保しなければいけないことは明白だろう。

つまり、プレミアムブランドとは言わないまでも、ユーザーの上級指向に応えるブランドになりたい。そのためにマツダはここ何年にもわたってデザインに注力し、ディーラーのCI向上に力を入れてきた。以前のマツダとは違う強気の販売戦略もとった。ここにきてその成果も出始めたから、いよいよモデルラインナップの上級移行を、このCX-60から本格的に始めることとなったというわけだ。

そのために全く新しいFRベースのプラットフォームを開発し、今後は70、80、90と彼らが“ラージ商品群”と呼ぶ上級セグメントへ果敢に打って出る。社運を賭けた、という意味をわかっていただけただろうか。だからと言って筆者の興味を惹くかというと、また別の問題だが、それはさておき。

マツダのラージ戦略を占う試金石として、まずは好き嫌いではない評価を書いておく。乗り味は大いに個性的、それもSUV離れしたドライビングファンがあったと言えば、開発陣にとっても褒め言葉になるはずだ。思いどおりに操ることのできる車でありたい、ということが今もってマツダの車作りの根本にあると言っていい。
 

マツダ CX-60▲12.3インチの液晶メーターとセンターディスプレイを備え、スイッチ類の少ないすっきりしたインテリア。最適なドライビングポジションに合わせたペダルレイアウトなど、細部まで走りにこだわった仕立てに

実際に試乗したグレードは、マイルドハイブリッド+直6ディーゼルターボだった。低中速域におけるフロントアクスルまわりのぎこちなさを除けば、運転していてこれほど楽しいSUVはこのセグメントにおいて他にないと思う。

街中では思いどおりに動かせているという感覚が運転への自信につながるし、山道を走ればただただ視界の良いスポーティカーのようで、高速道路では人と車(シート)と道が三位一体となったかのような安定した走りさえ見せる。輸入車と比べても十分に個性が際立っていると言ってよく、ブランド力では今のところまるで及ばないにしても、そのドライブの楽しさは徐々に運転好きの知るところとなっていくに違いない。しばらくは“知る人ぞ知る”ドライビングファンなSUVという別の魅力も立つことだろう。

排気量を上げつつも燃焼技術の進化と摩擦抵抗を減らしたことで、燃費性能は1割程度改善した。ダウンサイジングが必ずしも正解でないことを、マツダは“スカイアクティブ技術”をアピールする中で言い続けてきたわけだが、このCX-60のディーゼルに乗るとそれをよく実感することができる。ガンガン攻め込んでも思った以上に燃費がいいので、車の走りを積極的に楽しむことに対する現代風の罪悪感を大いに減じてくれるからだ。

内外装のデザインはシンプル。質感も悪くない。特にマテリアルやカラーコーデにこだわって仕上げたあたり、この価格帯では際立って上等だと思う。もっと高価な輸入車ブランドと比較しても勝るとも劣らない。

マツダというブランドをどう捉えるかは別として、ハードとしての車はデザインも含め、すでに輸入車と肩を並べる存在になっていると思う。実を言うと、この値段でこの性能、そしてこのデザインならちょっと持ってみたいな、と思った。デザインや性能が流行り廃りに左右されない国産SUVの登場は、筆者にとっても「SUV嫌い病」を克服する有効な処方箋になりそうだ。
 

マツダ CX-60▲パワートレインにはガソリン(2.5L直4)とディーゼル(3.3L直6)エンジンに加え、48Vマイルドハイブリッドディーゼルとプラグインハイブリッドの4種類をラインナップ
マツダ CX-60▲前後左右の走行Gに対してバランスを取りやすいよう、シートには骨盤を立たせるサポート構造が用いられているという
マツダ CX-60▲リアシートは4:2:4分割可倒式を採用。150Wまで使えるAC電源もコンソールボックス後部に配置している
マツダ CX-60▲ラゲージは定員乗車時でもゴルフバッグが4つ入る。アウトドアなどで便利なAC電源(1500Wまで)も備える
マツダ CX-60▲ピアノブラックのグリルはバータイプに加え、ハニカムタイプがエクスクルーシブスポーツとプレミアムスポーツ(写真)に用意された
文/西川淳 写真/尾形和美

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

【試乗車 諸元・スペック表】
●3.3 XDハイブリッド プレミアム モダン ディーゼルターボ 4WD

型式 3CA-KH3R3P 最小回転半径 5.4m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.74m×1.89m×1.69m
ドア数 5 ホイールベース 2.87m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.64m/1.65m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 1.91m×1.55m×1.22m
4WS - 車両重量 1940kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.18m
マニュアルモード    
標準色

ソニックシルバーメタリック、プラチナクォーツメタリック、ジェットブラックマイカ、ディープクリスタルブルーマイカ

オプション色

ソウルレッドクリスタルメタリック、マシーングレープレミアムメタリック、ロジウムホワイトプレミアムメタリック

掲載コメント

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型式 3CA-KH3R3P
駆動方式 4WD
ドア数 5
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ソニックシルバーメタリック、プラチナクォーツメタリック、ジェットブラックマイカ、ディープクリスタルブルーマイカ
オプション色 ソウルレッドクリスタルメタリック、マシーングレープレミアムメタリック、ロジウムホワイトプレミアムメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.4m
全長×全幅×
全高
4.74m×1.89m×1.69m
ホイール
ベース
2.87m
前トレッド/
後トレッド
1.64m/1.65m
室内(全長×全幅×全高) 1.91m×1.55m×1.22m
車両重量 1940kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 0.18m
掲載用コメント -
エンジン型式 T3-VPTS 環境対策エンジン -
種類 直列6気筒DOHC 使用燃料 軽油
過給器 ターボ 燃料タンク容量 58リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 3283cc 燃費(WLTCモード) 21km/L
└市街地:18km/L
└郊外:21.2km/L
└高速:22.4km/L
燃費基準達成 R12年度燃費基準
95%達成車
最高出力 254ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
550(56.1)/2400
エンジン型式 T3-VPTS
種類 直列6気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 3283cc
最高出力 254ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
550(56.1)/2400
環境対策エンジン -
使用燃料 軽油
燃料タンク容量 58リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 21km/L
└市街地:18km/L
└郊外: 21.2km/L
└高速: 22.4km/L
燃費基準達成 R12年度燃費基準 95%達成車