セルシオ▲4L級のエンジンを搭載した高級セダンは、大排気量ならではのゆとりある走りが魅力。最上級グレードだけに豪華装備も手に入る

ダウンサイジングが進み、V8搭載車は激減

かつて『ビッグセダン』と呼ばれる高級セダンでは、大排気量のV8エンジンを搭載するグレードが用意され、ビッグセダンらしい力強さと優雅さを味わいたい人から人気を博していた。

しかし、カーボンニュートラルに向けた取り組みの中で車の電動化やターボ化が進み、欧州車ではビッグセダンでも直6ターボやV6ターボ、あるいは直4ターボエンジン、そして直4マイルドハイブリッドなどが主流になっている。

シーマ ▲日本では税制面から大排気量車は希少な存在だった

日本でもかつてレクサス、トヨタ、日産、そして三菱がV8エンジン搭載車を販売していた。しかし、日本では自動車税や自動車重量税があるため、排気量が大きく、車両重量もかさむV8エンジンはあまり人気がなく、6気筒エンジン搭載グレードが主流だった。

もはや消えゆく運命とも言える多気筒の大排気量車だが、V8エンジンには直6やV6では絶対に味わえないおおらかな乗り味とゆとりがある。これをセダンで堪能するには中古車という選択肢しか残されていない。

しかし、V8エンジン搭載グレードは高級セダンの中でもトップグレードだったから、「予算的に買えないのでは……」と思う人も少なくないだろう。

中古車の相場は需要と供給のバランスで決まる。そのため、新車では大排気量車の方が高かったが、中古車になるとその関係が逆転するケースは少なくない。よくあるのは4気筒と6気筒をラインナップするモデルで中古車になると6気筒の方が安くなるケースだが、6気筒と8気筒でも同じことが言えるのだ。

そのため、V8を搭載した国産ビッグセダンの中古車には総額100万円以内で買えるものもある。ただ、今後は中古車の流通が少なくなって乗ろうと思っても車を探すことが困難になるだろう。

今は大排気量ビッグセダンに気軽に乗れるラストチャンス。ここでは総額100万円以内で手に入る国産V8搭載セダンを4モデル紹介しよう。
 

 

トヨタ クラウンマジェスタ(4代目)
クラウンより大きなボディに4.3L V8を搭載したビッグクラウン

クラウンマジェスタ ▲4代目クラウンマジェスタはグリル内のエンブレムが王冠ではなくトヨタマークになる

初代クラウンマジェスタは、クラウンとトヨタのフラッグシップであるセルシオの間に位置するモデルとして登場。クラウンも高級セダンという立ち位置だったが、マジェスタはそこからさらにプレステージ性を高め、セルシオに匹敵する豪華な装備と優雅な乗り心地を実現した。

4代目クラウンマジェスタは2004年7月に発売。デビュー時にはまだセルシオが発売されていたが2006年にはセルシオがレクサス LSとして発売されることになったので、実質的なトヨタのフラッグシップモデルになる存在として開発されたモデルと言えるだろう。

フロントフェイスは当時のクラウン(ゼロクラウン)と共通性を感じるデザインを採用し、リアスタイルはマジェスタ伝統の縦型コンビランプを採用した。

クラウンマジェスタ ▲3代目セルシオにも搭載された4.3L V8エンジン

搭載エンジンは最高出力206kW(280ps)、最大トルク430N・m(43.8kg-m)を発揮する4.3L V8に。組み合わされるトランスミッションはシーケンシャルシフトマチック付きの6ATになる。サスペンションはノーマルモードとスポーツモードの切り替えが可能な電子制御のエアサスペンションだ。

トヨタのフラッグシップだが、乗り心地はスポーティ。ゼロクラウンのアスリートを感じさせる走りを体感できる。一方で高速道路を巡航するとき、車内はとても静かでラグジュアリーな時間を味わえるモデルだったのを覚えている。

クラウンマジェスタ ▲本木目が貼られたインテリア。オーディオはオプションでマークレビンソンプレミアムサウンドシステムが用意された

4代目クラウンマジェスタの中古車は80台ほど流通していて、価格帯は総額50万~160万円。このうち40台ほどが総額100万円以内で手に入る。年式が古いこともあり、この予算だと走行距離は10万kmを大きく超えているものが中心。総額120万円くらいまで予算を増やすと走行10万km未満のものも探しやすくなる。

流通している中古車は上級グレードのCタイプと後期型で追加されたCタイプFパッケージが多い。Cタイプは後席のオートエアコンや電動リアサンシェードなどが付く。V8搭載の上級セダンならではの満足感を得たい人にはCタイプがオススメ!

ただ、いわゆるVIP仕様のフルエアロが組まれたものも多いので、購入時はカスタムが好みに合うかだけでなく車両状態もしっかり確認するようにしたい。流通量は少ないがAタイプだとフルノーマルで乗られていたものも多いので、リアの豪華装備は必要ないという人はあえてそちらを探すのもアリだ。
 

▼検索条件

トヨタ クラウンマジェスタ(4代目・V8モデル)×総額100万円以下 ×全国

▼検索条件

トヨタ クラウンマジェスタ(4代目・V8モデル)×全国
 

日産 シーマ(4代目)
クラス最強を誇る4.5L V8エンジンを搭載

シーマ ▲「打倒セルシオ」が使命だったシーマ。大型のマルチプロジェクターキセノンヘッドランプが大迫力!

バブル期には『シーマ現象』という流行語を生み出すほど大ヒット。1991年に登場した2代目からエンジンがV8になり、フラッグシップモデルとしての威厳がより大きくなった。

2001年1月に登場した4代目は当時の日産が持つ最新技術が惜しみなく搭載され、グローバルプレミアムセダンにふさわしい風格をまとったモデルになった。

シーマ ▲走りの良さ、静粛性、燃費性能をバランスさせた4.5L V8エンジン

搭載エンジンは新開発された直噴4.5L V8のNEO Di「VK45DD」。このエンジンには可変吸気システムや連続可変バルブタイミングコントロール、電子制御スロットルなどにより、クラス最強のパワーと圧倒的な静粛性を誇った。この他、3L V6ターボを搭載するグレードも用意。どちらのエンジンが搭載されているかはグレード名の数字で確認できる(V8搭載車には450、V6搭載車は300という数字がグレード名に付く)。

V8(2WD)の最高出力は206kW(280ps)、最大トルクは451N・m(46.0kg-m)。4WDは最大トルクが402N・m(41.0kg-m)になる。トランスミッションは2WDが5AT、4WDは4ATだった。

シーマ ▲各種操作スイッチをセンタークラスターに集中させることで、運転時の視線移動を減らす工夫がなされている。トップグレードの450VIPは後席に150mmの電動スライドや大型ヘッドレストが装備される

4代目シーマはエンジン以外にも多くのトピックがあったモデルだ。高速道路でドライバーの運転負荷を軽減するレーンキープサポートシステム(直線路車線維持支援装置)を世界に先駆けて450VIPと450XVにオプション設定。また、車間自動制御システム、緊急時の停止距離短縮と衝突速度を低減するブレーキアシストも搭載されている。

4代目シーマの中古車は約90台流通。新車時は3L V6ターボの人気も高かったこともあり、V8搭載車の流通量は50台ほど。V8の価格帯は総額50万~180万円になる。低価格帯でも10万km前後の中古車は見つけやすく、総額100万円以下の中古車は30台ほど流通しており、走行5万km以下のものも存在している。

クラウンマジェスタ同様にシーマもVIP仕様になった中古車が流通しているが、V8モデルよりV6の方が多い。V8はノーマル(またはそれに近いもの)を探している人には狙い目だ。
 

▼検索条件

日産 シーマ(4代目・V8モデル)×総額100万円以下 ×全国

▼検索条件

日産 シーマ(4代目・V8モデル)×全国
 

トヨタ セルシオ(3代目)
日本が世界に誇るラグジュアリーセダン

セルシオ ▲曲面を多用したデザインを採用した3代目セルシオ

メルセデス・ベンツやBMWなどドイツのプレミアムブランドのラグジュアリーモデルに対抗するため、トヨタが威信をかけて開発したのが1989年に登場した初代セルシオだ。

セルシオは海外ではトヨタのプレミアムブランドであるレクサスからLSとして販売された。日本では3代目までセルシオとして販売され、日本でのレクサスブランドの展開がスタートしたことにより次の世代からレクサス LSとして販売されるようになった。

セルシオ ▲3代目セルシオ発売に合わせて新開発された4.3L V8エンジン

2000年8月に発売された3代目セルシオに搭載されるエンジンは先代までの4Lから新開発の4.3L V8に変更された。最高出力は206kW(280ps)、最大トルクは430N・m(43.8kg-m)を発揮する。組み合わされるのは5ATになる。2003年8月のマイナーチェンジではATが6速に変更された。

足回りはグレードにより異なり、A仕様とB仕様のeRバージョンにはヨーロッパで走行試験を繰り返してチューニングしたコイルサスペンション、C仕様には電子制御エアサスペンションが搭載された。

セルシオ ▲インテリアセレクションは上級本革セミアニリンのシートを採用

3代目セルシオの中古車は約210台流通していて、価格帯は総額60万~240万円。総額100万円以内で買えるものは50台ほどになる。

総額100万円以下でもエアサス搭載のC仕様が多めだが、スポーティなB仕様eRバージョンや後期型のeR仕様も見つけられなくはない。ただ、この価格帯だと走行距離は10万kmを大きく超えるものが中心になる。

総額100万円前後からはエアロパーツが組まれたものが多くなるがノーマルの中古車も見つけられなくはないので、ノーマルにこだわる人は根気よく探してみよう。
 

▼検索条件

トヨタ セルシオ(3代目・V8モデル)×総額100万円以下 ×全国

▼検索条件

トヨタ セルシオ(3代目・V8モデル)×全国
 

レクサス GS(初代)
スポーツセダンのアリストがレクサスブランドから登場

GS ▲レクサスブランド開業に合わせて導入された初代GS

2005年8月からスタートした日本でのレクサスブランド展開。そこにまず投入されたのがGSとSC、そして9月にはISが発売された。

GSはもともとトヨタブランドで「アリスト」として販売されていたもの。アリストは海外でレクサス GSとして販売されていて、それがレクサス開業によりGSとして販売されるようになった形になる。

GS ▲上級グレードに搭載された4.3L V8と3.5L V6を用意

搭載エンジンは3.5L V6と4.3L V8の2種類。V8エンジンを搭載するGS430の最高出力は206kW(280ps)、最大トルクは430N・m(43.8kg-m)になる。トランスミッションは6ATだ。

2007年10月のマイナーチェンジでは、GS430に代わり、4.6L V8エンジンに8ATを組み合わせたGS460が新設定された。

文字どおりエンジンの排気量は4.6Lに拡大。最高出力は347ps、トルクは460N・m(46.9kg-m)まで引き上げられており、よりV8のパワーを感じたい人にオススメだ。

また、GS430には安定した旋回性能を支える電動式のアクティブスタビライザ-サスペンションシステムを世界初搭載(オプション設定)。他にもハンドルの操作量とタイヤの切れ角の関係をフレキシブルに変化させることができるVGRSが標準装備されている。

GS ▲シンプルなデザインの中にもてなしの心を感じさせる演出が盛り込まれたインテリア

初代GSの中古車は約150台流通していて、価格帯は総額50万~160万円。このうち、V8エンジンを搭載車は20台ほど。総額100万円以内で買えるものは15台弱見つかる。圧倒的に多いのはGS430になり、GS460はほとんど流通していない。

GSの中古車は今回紹介した他のモデルよりもノーマルのものが見つけやすい。ただ、総額100万円以内だと走行距離は10万kmを超えたものが多くなる。
 

▼検索条件

レクサス GS(初代・V8モデル)×総額100万円以下 ×全国

▼検索条件

レクサス GS(初代・V8モデル)×全国

※記事内の情報は2022年10月4日時点のものです。
 

文/高橋満 写真/トヨタ、日産、レクサス

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL