ジャガー XJ▲X350型の後継モデルとして登場したX351型XJ。デビューから12年経過し、グレードによっては新車時より1000万円以上安いものが見つかるようになっている

ジャガーのフラッグシップモデルが大幅値下げ

50年以上にわたり生産されたジャガーのフラッグシップモデル、XJ。2010年5月に日本デビューしたX351型の中古車相場が大きく下がっています。

下のグラフをご覧ください。

ジャガーXJ

2022年7月末時点でXJの中古車の平均価格は322.8万円でした。1年ちょっと前の2021年5月は463.6万円。つまりこの1年で平均価格が100万円以上も下がっているのです。

XJは、なぜここまで値段が下がっているのか。これから中古車を買うならどんなものを狙うべきか、そもそも買っても大丈夫なのか? モデル概要を振り返りながらチェックしていきましょう。

ジャガーXJ ▲XJの50周年記念モデルと歴代XJ

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ジャガー XJ(X351系)× 全国
 

モデル概要
伝統を脱ぎ捨て、新たな世界観を提示

ジャガーXJ ▲ロングホイールベース(LWB)はスタンダード(SWB)よりホイールベースを長くし後席の居住性を高めている

2003年5月以来、7年ぶりのフルモデルチェンジで登場したX351型のXJ。XJといえば1968年以来、丸目4灯のスタイルが伝統でしたが、本モデルではそのイメージを刷新。また、ボディラインもノーズ・トランク部分ともに長い(ロングノーズロングデッキ)スタイルと決別し、流線的でスポーティなイメージを強調したスタイルに生まれ変わりました。

それを象徴するのがボディサイド。細長いティアドロップ形状のサイドウインドウと厚みのあるドアパネルにより美しさとスポーティさが表現されています。このデザインはアストンマーティン V12ヴァンキッシュやDB9などをデザインしたことで知られるイアン・カラム氏の指揮によるものです。

ボディはスタンダードホイールベース(SWB)とロングホイールベース(LWB)の2種類を用意。SWBのサイズは全長5135mm×全幅1900mm×全高1455mmで、LWBは全長が5260mm になります。ホイールベースはSWBが3030mm、LWBが3155mmです。

ジャガーXJ ▲イグニッションに連動してせり上がるシフトセレクターダイヤルはこのXJから採用されたシステム。トランスミッションは6AT

インテリアはイギリスのプレミアムブランドであるジャガーのフラッグシップモデルにふさわしい、贅を尽くした仕上げになっています。

シートはもちろん、インストルメントパネルやセンターコンソール、アームレストなどインテリアの主要部位には上質なレザーを採用。上級グレードとなるポートフォリオとスーパースポーツには、イギリスの高級オーディオブランドであるBowers&Wilkinsの1200Wプレミアムサラウンドサウンドシステムが標準装備されました。

コックピットにシフトレバーはなく、センターコンソールにあるダイヤル式のセレクターでシフトポジションをセレクトします。

ジャガーXJ ▲5L V8エンジンは3タイプ用意された

パワーユニットは5L V8で、XJ ラグジュアリー、XJ プレミアムラグジュアリー、XJ ポートフォリオのSWBには最高出力385psのNA、XJ ポートフォリオのLWBには最高出力470psを発揮するスーパーチャージドエンジン、XJ スーパースポーツのSWBとLWBには最高出力510psを発揮するスーパーチャージドエンジンが搭載されました。

デビュー時の新車価格は1000万~1755万円でした。
 

ジャガーXJ ▲多様なニーズに応えるため、ダウンサイジングエンジン搭載モデルも用意

デビュー時はXJに搭載されるエンジンは5L V8のみでしたが、2012年12月に導入された2013年モデルで最高出力240psを発揮する2L直4ターボと、最高出力340psを発揮する3L V6スーパーチャージドエンジン搭載モデルをラインナップに加えました。そして、このタイミングでトランスミッションが新開発の8ATに変更されています。

5L V8エンジンは燃費性能を高めるためにアイドリングストップ機構を搭載。アイドリングストップは新規導入されたV6エンジンにも搭載されています。そして、オーディオはメリディアンのものに変更となりました。

新車時価格は2L直4ターボが900.0万円、3L V6が1090.0万~1290.0万円でした。

また、アイドリングストップが付いていなかった2L直4ターボも2013年9月にはアイドリングストップが搭載されました。

ジャガーXJ ▲フロントバンパーのエアインテークとバンパー下のスポイラーがXJRの特徴
ジャガーXJ ▲赤いロフトレーザー仕様のスポーツシートにはRのロゴが入る

2013年10月。ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、XJにジャガー史上最速のフラッグシップ・サルーンとしてXJRを導入することを発表。

搭載エンジンは専用チューニングを施した5L V8スーパーチャージャー。最高出力は550psに達し、0-100km/h加速4.6秒、最高速度280km/hとアナウンスされました。

フロントグリル内のエンブレムは赤いジャガーのバッジになり、その右側にはRのバッジが付けられています。

ジャガーXJ ▲フロントマスクに改良が施され、洗練されたイメージを強調した後期型
ジャガーXJ ▲ダイヤモンド形状のステッチで上品なイメージを演出

2015年11月に発表された2016年モデルでマイナーチェンジを実施。フロントグリルとテールランプのデザインが変わり、ダブルJデザインのヘッドライトがLEDタイプに変更されました。レザーシートはダイヤモンド形状のステッチが施され、これまで以上にラグジュアリーな雰囲気になりました。

インフォテインメントシステムには新開発の8インチ静電式タッチスクリーンを採用。アダプティブクルーズコントロール、自動緊急ブレーキ、車線逸脱防止機能、縦列駐車や並列駐車のアシスト機能もこのタイミングで搭載されています。

グレードは2Lと3Lのラグジュアリー、3Lのプレミアムラグジュアリー、3Lのポートフォリオ、5LのXJR、そして5Lロングホイールベースのオートバイオグラフィーの6種類が導入されました。

ジャガーXJ ▲2016年9月に導入されたXJ Rスポーツ

2016年9月に発表された2017年モデルでは、新グレードとしてRスポーツを導入。サイドシルやリアスポイラー、スポーツシートによってスポーティさが高められたグレードで、Rスポーツ専用のパッケージオプションも用意されました。

そして、2017年モデルからスマートフォンのアプリを車載画面で操作できるようになっています。

ジャガーXJ ▲最高出力575psを発揮する5L V8スーパーチャージドエンジンを搭載したXJR575

2017年10月に発表された2018年モデルでは、XJ史上最もパワフルなモデルとしてXJR575を導入。

「575」は最高出力575psを意味し、専用のエアロパーツ、レッドキャリパー、トレッドプレートとダッシュボードに付けられたXJR575バッジ、フロントとリアのシートに施された575の刺しゅうなどで特別な雰囲気を醸し出しています。
 

 

大幅価格低下の理由にネガティブな要素はない

理由はいくつもありますが、大きな理由としてもともとの流通台数が少ないうえ、高年式車より低年式車の流通台数がかなり多くなっていることが挙げられます。

X351型のXJが日本デビューしたのは2010年5月。すでに日本に導入されてから12年経過していることもあり、中古車の価格帯が総額140万~1170万円と幅広くなっています。そのうち半数は車両本体価格300万円以下で買えるようになってきているのです。

約1年で100万円以上値落ちと聞くとお得感がある反面、「そんなに安くなって大丈夫?」と感じる人もいるはず。しかし、これは中古車相場の正常な動きの中で起こっている現象なので、心配する必要はないでしょう。
 

 

狙い方1|総額250万円の予算で贅を尽くした中古車を狙う!

ジャガーXJ ▲前期型はほとんどの中古車が300万円以下で見つかるXJR575

X351型XJは新車の販売台数が多いモデルではないこともあり、流通している中古車はざっくりと車両本体価格が300万円以下のゾーンと、車両本体価格500万円以上のゾーンに分かれていて、その間の価格帯は数えるほどしか中古車が流通していません。

このような状況で中古車のうまみを堪能するなら、300万円以下のゾーンから選んでみるのがオススメ! この価格帯だと2015年10月までの前期型で5L V8エンジンを搭載したものが中心になります。

流通している中古車の多くはベースグレードであるXJ ラグジュアリーですが、XJ ポートフォリオも数台見つかります。XJ ポートフォリオだと新車時価格より1000万円以上安いことに。かなり夢のある選択です。

XJ ラグジュアリーは385psのNAエンジンで、2012年式までは6ATに。スーパーチャージャー搭載車や2013年以降のモデルに比べるとスペック的には見劣りするものの、ジャガーのフラッグシップモデルらしい装備や新世代ジャガーのスポーティなデザインは今見ても古さを感じさせません。所有する満足度は相当高いはず。

例えば、総額219万円で買える2012年式で走行5.6万kmのXJ ラグジュアリーなど、かなりいい条件ではないでしょうか。なのでお安く狙うのであれば、いったん予算を250万円として探すのも良案です。

低価格帯のXJを狙う場合、注意してほしいことがいくつかあります。ひとつは排気量が大きいので毎年の自動車税が高額になること。しかも、初度登録から13年経つと自動車税が重課されるため、毎年の負担がさらに大きくなります。また、中古車価格が安くなったとはいえ車に何かあった際の部品代などは新車と変わらないことも忘れないでください。
 

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ジャガー XJ(X351系)×総額250万円以下×全国
 

狙い方2|「R」の称号が付けられたスポーツグレードを中古車で狙うには?

ジャガーXJ ▲XJRの流通量は極めて少ない。ジャガーのラグジュアリースポーツに憧れるなら、中古車を見つけたら迷わず購入を

XJに設定されたスポーツグレードは最高出力550psのXJR、XJ史上最強のパワーを誇るXJ575、そしてスポーティな内外装が与えられたRスポーツが存在します。現在流通している中古車を見るとRスポーツが3台(総額690万~770万円)、XJRが2台(総額560万~640万円)でした。

どちらも流通台数が極めて少ないため、条件に合うものを吟味できる状況ではありません。中でもXJRは新車時価格が1695万円した特別なモデルなので今後流通台数が増えることもないはず。

Rの称号が付いたXJに憧れるなら、中古車を見つけたら即買いすることをオススメします。

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ジャガー XJ Rグレード(X351系)× 全国

XJは、ドイツのプレミアムブランドのフラッグシップモデルに比べると注目度がそこまで高くない分、中古車がかなり安い価格で見つかります。

今はまだ初度登録から10年以内の中古車も見つけやすいですが、今後はどんどん探しにくくなっていくはず。それとともに走行距離が多い中古車も増えていくでしょう。

今ならまだ比較的条件のいい中古車が探しやすいので、憧れの車に一度乗ってみたいと考えているなら早めに行動することをオススメします。
 

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ジャガー XJ(X351系)× 全国

※記事内の情報は2022年7月31日時点のものです。

文/高橋満 写真/ジャガー・ランドローバー・ジャパン

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL