ポルシェ パナメーラ ▲世界を代表するスポーツカーメーカーであるドイツのポルシェが初めて作った「4ドアで4シーターの車」である初代パナメーラ。その中古車平均価格がこのところずいぶん安くなったが、何か問題があるのか? それとも、そのまま普通に買ってしまって問題ないのか?

この2年半で100万円以上の大型下落を記録

ポルシェとしては初の4ドア4シーターモデルとして2009年に登場した「初代パナメーラ」の中古車平均価格が今、大きく下がっています。

具体的には、2020年1月の平均価格は551.2万円だったのですが、2022年5月には447.6万円に。つまり、この2年半で100万円以上の値下がりを記録したということです。

ポルシェ パナメーラの中古車平均価格推移グラフ

そしてこの447.6万円というのはあくまで“平均”ですので、実際の市場には総額300万円台の値札を付けた初代ポルシェ パナメーラも多数存在しています。

これはもうスーパー4ドア車であるパナメーラが、手の届く存在になってきたということであり、「欲しい!」と強烈に思うわけですが、同時に不安のようなものもあります。

その不安とは「……これだけ安くなった高級車を買っても大丈夫なのだろうか?」ということと、「安くなったのには、何かネガティブな“ワケ”があるんじゃないか?」という主に2点です。

実際はどうなんでしょうか? つまり、お手頃価格になった初代ポルシェ パナメーラは「買ってもOK!」な中古車なのか、それとも「やめといた方が……」という中古車なのでしょうか?

かなり気になりますので、いろいろ検討してみることにしましょう。

ポルシェ パナメーラ▲こちらが初代ポルシェ パナメーラ。全長5m近くとなるファストバックスタイルのリアゲート付きセダンだが、その走りは「ほぼスポーツカー」と言えるものだ

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ポルシェ パナメーラ(初代)×全国
 

ポルシェはこの車を「セダン」とは呼ばない

まずは初代ポルシェ パナメーラという車の概要についてのおさらいから。

日本では2009年3月に予約受注がスタートした初代ポルシェ パナメーラは、5m近い全長と1.9mを超える全幅をもつ、テールゲート付きの4ドア車。

フォルム的には「ファストバックスタイルの4ドアセダン」といったニュアンスですが、当のポルシェはパナメーラのことをセダンとは呼ばず、「4ドアグランツーリスモ」「4シータースポーツカー」「4ドア4シータースポーツクーペ」等々と呼び表しています。

たしかに初代パナメーラの走りは、ポルシェAGが「セダンではなく4ドアのスポーツカーですよ!」と念を押したくなるのがよくわかる、まさに「4枚の大きなドアと、ゆったりとした4つの座席を備えたスポーツカー」といったニュアンスです。

ポルシェ パナメーラ▲4ドアセダンではなく「4枚のドアを備えたスポーツカーである」とポルシェが主張する初代パナメーラ
ポルシェ パナメーラ▲リアビューはこんな感じ。写真のグレードは前期型の「パナメーラ ターボ」
ポルシェ パナメーラ▲グレードやオプションによって微妙な違いはあるが、初代ポルシェ パナメーラの運転席まわりはおおむねこのようなデザイン。ひたすらゴージャスな空間だ

前述のとおり2009年3月に受注が始まった初代ポルシェ パナメーラは、まずは最高出力400psの4.8L V8自然吸気エンジンを搭載する「パナメーラS」と、その4WD版である「パナメーラ4S」、そして最高出力500psの4.8L V8ターボを積む「パナメーラ ターボ」の3グレードでスタート。

そして翌2010年10月に、最高出力300psの3.6L V6エンジンを搭載するベーシックグレード「パナメーラ」と「パナメーラ4」を追加しました。トランスミッションはいずれも7速PDKが基本ですが、「パナメーラ」では6MTを選択することもできました。

その後はハイブリッド車を追加したり、最高出力430psの4.8L V8自然吸気エンジンを積む「パナメーラGTS」を追加するなどしながら販売を続け、2013年4月にマイナーチェンジを実施。ここからがいわゆる後期型です。

ポルシェ パナメーラ▲写真は2011年11月に追加された、自然吸気エンジン搭載の初代パナメーラの中では最強スペックを誇る「パナメーラGTS」。研ぎ澄まされた4.8L V8エンジンは最高出力430psを発揮する

後期型では内外装デザインが少々変更するとともに、パナメーラSと同4Sのエンジンを刷新。それまでは4.8LのV8自然吸気でしたが、後期型では新開発の3L V6ツインターボになりました。排気量はずいぶん小さくなりましたが、最高出力は逆に420psと、20ps増強されています。

その他にも、前期型のハイブリッド車であるパナメーラS ハイブリッドに代わってプラグインハイブリッドの「パナメーラS eハイブリッド」を投入するなどして後期型の販売を続け、2016年7月に現行モデル(971型)へとフルモデルチェンジされた――というのが、970型こと初代ポルシェ パナメーラの大まかなヒストリーです。

 

大幅値落ちに見えるのは、もともとの価格が高いから?

さて、そのような初代ポルシェ パナメーラの新車時価格は、3.6L V6の2WDモデルでも1096万円、4.8L V8ツインターボのパナメーラ ターボに至っては2061万円というド級のプライスでした。

しかし、それらをひっくるめた中古車平均価格がこの2年半で100万円以上安くなって447.6万円になり、市場には総額300万円台の物件も多数存在しているという状況です。

そもそも、なぜ初代パナメーラの中古車平均価格は大きく下がったのでしょうか?

その理由は、大きく分けて3つあると考えられます。

ひとつは「自然落下」です。

ごく希に「値上がりする中古車」というのもありますが、基本的には、中古車の価格というのは時間の経過とともに下がっていきます。

一概には言えませんが、おおむね「1年間で1割ぐらい下がる」というのが基本となります。1年前に平均200万円だった車種は、1年後には平均180万円ぐらいになっている――ということです。

それを踏まえますと、2020年5月に519.8万円だった初代パナメーラの平均価格が、2年後に447.6万円になったというのは「519.8万円×0.9×0.9=421.0万円」という計算式で簡単に説明できてしまいます。

つまり、初代パナメーラの平均価格は「おおむね一般的なペースで下がっている」というだけのことなのです。

しかし、それが「大きな下落」に見えるのは、新車時価格がそもそも高額だったからです。これが、「初代パナメーラの中古車平均価格は大きく下がった(ように見える)」ことの第2の理由です。

200万円の車の価格が約1割下がっても「20万円ぐらい下がるだけ」ですが、パナメーラの場合は新車価格が約1100万~約2000万円で、中古車となってからも平均価格500万円以上をキープしていました。

そのような高額車であるがために、普通に年に1割ほど下がったとしても「数字上のインパクト」はやたらとデカく見えるのです。

ポルシェ パナメーラ▲4枚のドアを開け放った状態の初代パナメーラ。ドライバーズカーとして自分で運転するのももちろん気持ちいい車だが、ゴージャスで広大なリアシートに座りたくなる車でもある
ポルシェ パナメーラ▲初代ポルシェ パナメーラのリアシートはこのような左右独立タイプ。したがって乗車定員は4名となる

そして第3の理由として、「ポルシェ パナメーラの中古車相場は“熱心なファン”に支えられているわけではないから」というのがあるでしょう。

同じポルシェの車でも「911」の中古車平均価格は年に1割も下がりません。いや、空冷エンジンを搭載していた時代の911はむしろ値上がりすらしています。

ポルシェ 911という車は「絶対にこの車じゃないとダメなんだ!」というニュアンスの“熱心なファン”に支えられているため、年月の経過と平均価格の推移の間にさほどの相関がないのです。

そんなポルシェ 911に対して4ドアモデルのパナメーラは――もちろん例外もあるでしょうが――基本的には「便利で速い足グルマとしてパナメーラを買おうかな? それともベントレーにしようかな?」的な選び方をする人から人気を博している、超プレミアムな4ドア車です。

そういったモデルは、なんだかんだで代替可能な選択肢ですので、どうしたって時間の経過とともに平均価格は徐々に下がっていきます。

以上のとおり、「初代ポルシェ パナメーラの平均価格がこの2年半で大きく下がった!」というのはある意味“誤報”であることがわかったわけですが、とはいえ「もともと超高級車だったものが安くなった」という事実には変わりはありません。

そのため、初代パナメーラの中古車を買うにあたってはいくつかの注意点もあります。そういった注意点を交えつつ、次章にてニーズ別のオススメ初代パナメーラを具体的に示してまいりましょう。

ポルシェ パナメーラ▲シフトノブのまわりにご覧のとおりの様々な物理スイッチが付いているのも、初代パナメーラのデザイン面での特徴のひとつ
 

なるべくお安い予算で買いたいなら、総額300万円台後半の「ベースグレード」を

3.6LのV6エンジンを搭載する「ベースグレード」であれば、その気になれば総額200万円台でも探すことはできます。

しかし、その価格帯のベースグレードは走行距離が延びている物件が多いため、そうなると「エアサスの寿命」という点で不安が残ります。

初代ポルシェ パナメーラのエアマティックサスペンションは素晴らしい乗り心地を提供してくれますが、走行距離が延びてくるとどうしたって物理的な寿命を迎え、部品交換を行う必要が生じてきます。

まぁ交換するのはいいのですが、初代パナメーラのエアサスは部品代だけで1本20万円以上するシロモノですので、仮に4本全部交換するとなると、工賃込みで100万円級の出費になるでしょう。

そうなると、いくら車両を安く買ったところで「まったく意味なし!」という結果になってしまいます。

しかし、予算イメージを「総額300万円台の後半」に設定すれば、比較的低走行な3.6L V6エンジン搭載車を見つけ出すことが可能になります。

「なるべくお安い予算で初代ポルシェ パナメーラを買いたい!」という場合には、総額350万~400万円未満くらいのゾーンでベースグレードを検索し、「その中でも内外装の状態と整備履歴が充実している個体に決める」というのが得策となるでしょう。

初代パナメーラの整備でお金がかかりがちなのは、何もエアサスだけではありません。そのため、お手頃価格の初代パナメーラを探す際はくれぐれも「整備履歴が充実していること」を重視してください。

ポルシェ パナメーラ▲決して鬼のように速いわけではないベースグレードだが、余裕たっぷりなシャシーの上で程良いパワーのエンジンを回す行為からは、超高出力なエンジンを積む車を走らせるのとはまた違った種類の快感を覚えるはず

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ポルシェ パナメーラ(初代)×総額350万~400万円未満×ベースグレード×全国
 

お安い予算でもモアパワーを望むなら、総額300万円台後半~400万円台の「S」か「4S」を

最高出力300psのベースグレードも普通に速くて気持ちいい車だと思いますが、「せっかくだから400ps以上のエンジンを豪快に楽しみたい!」という人も少なくないはず。

その場合は、総額550万円以上を出して後期型のパナメーラSまたは同4Sを買うのがいいと思いますが、「……もう少し安くいけないものか?」というのが人情ではあるでしょう。

ということで、もう少しお安い総額で探すとしたら、総額300万円台後半~400万円台の「S」または「4S」がちょうどいいチョイスになりそうです。

ポルシェ パナメーラ▲ベースグレードが最高出力300psの3.6L V6であるのに対し、こちら前期型のパナメーラSおよび同4Sは最高出力400psの4.8L V8エンジンを搭載する。写真は4WDのパナメーラ4S

最高出力400psの4.8L V8自然吸気エンジンは、後期型のダウンサイジングV6ターボエンジンとはまた違う豪快にして繊細な魅力があり、「これぞポルシェ!」といった世界観を堪能することができます。

500psの「パナメーラ ターボ」でもいいのですが、普通に乗る分にはややトゥーマッチですし、そもそもターボは流通量が少ないため、限られた予算の範囲内で納得のいくコンディションの1台を見つけ出すのは決して簡単ではありません。

それゆえ、ここは流通量豊富なパナメーラSまたは同4Sの中から、コンディション的にも整備履歴の面でも「これぞ!」と思える1台をじっくり探すのが得策となるでしょう。

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ポルシェ パナメーラ(初代)×総額350万~500万円未満×S/4S×全国

いずれにしましても、初代ポルシェ パナメーラは「当たりの1台」と巡り合うことさえできたならば、「超上質な日々の足」を求めている人にとっては最高レベルの1台になり得る存在です。

もともとは超高級車だけあって部品代も高額であるため、車両価格の安さだけにつられて買うのは厳禁と言えます。

しかし、もしもあなたが購入後のメンテナンスフィーも普通にまかなえる人であるならば――総額300万円台後半から400万円台あたりの初代ポルシェ パナメーラは、ぜひ一度チェックしてみるだけの価値はある存在です。

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ポルシェ パナメーラ(初代)×全国
文/伊達軍曹、写真/ポルシェ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。