ランドローバー レンジローバースポーツ▲取材車両は2022年1月に発表された、日本のみで販売される25台限定のレンジローバースポーツ SVR ジャパンSVエディション。新車価格は2165万円となる

すべてが剛直な最終熟成版ハイパフォーマンスバージョンは効きそうだが……

“SUV嫌い”とはいえ、乗って「良いな」と思うモデルはたくさんあって、例えば英国の雄レンジローバーなどはその際たるものだ。高級SUV の元祖的存在で、しかもそれは見かけの単なるラグジュアリー化ではなく、まずはクロカン4WDとしての機能性を世界ナンバーワンに高めたうえで、そこから高級な装いをするようになった。つまり、本物だ。そんなランドローバーも最新世代へとバトンタッチし、さらに大型化とデジタル化が進んだ。期待のもてる1台だが、以前に予想したとおり、かなりの高額車両になってしまった。

もっとも筆者が以前より憎からず思っているレンジは、よりスポーティなルックスのスポーツの方だった。特に現行世代からは本家レンジローバーに遜色ない仕上がりだったから、嫌いなSUVの中でも気になる存在ではあった。

当然のことながら新型レンジローバーベースのスポーツも早く見てみたい。リアのデザインがどんなふうになるのか、楽しみでならない。とはいえ、新型レンジそのものもまだ試せてない状況で、さらにレンジローバースポーツの新型を待つ、と思うのはさすがに気が早すぎる。

絶版になるその前に、現行レンジローバースポーツの最終熟成版を試してみようじゃないか。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲ボディカラーはロランジュ(写真)、SV BESPOKEグレイ、アボカドの3色を用意

SUVが選択肢としてフツウになればなるほど自分では所有したくないとあまのじゃくになっていく。みんなが“高い”からこっちは逆に背の低い車に乗り続けるんだ、と言い張っているだけのハナシ。それに、仕事でもSUVだらけになってくると、「そろそろ(SUV嫌いを)やめてもいいか」、と思ってしまう機会だって必然的に多くなってくるもの。

つい先日も、レクサスの新型SUVにしばらく乗っていたのだけれど、あまりの使い勝手の良さに一瞬だったとはいえ「もうこれでいいや」、などと思ってしまったのだ。周りからは明らかに羨望の目で見られていて、単に気分が良かったからだけかもしれないが。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲限定モデルはグロスブラックの22インチホール、カーボンのボンネットとエンジンカバーなどを装着。Bピラーにエンブレムも備わった

そんなタイミングでの“レンスポ”だ。もとより嫌いじゃない、というか積極的に好ましいと思う数少ないSUV の1台。しかも、取材車両は最もハイパフォーマンスなSVR で、これまた大好物。さらにさらに、発表されたばかりの日本限定25台、ジャパンSV エディションというから、もう乗る前からとっても好ましい。もっとも価格だけはやっぱりおそれ多くて、車両本体2165万円。レンジローバー50(50周年記念特別仕様車)のときと同様に、この価格だとポルシェ 911 GT3の影がちらついてしまう。

GT3の残像を振り払い、オレンジメタリック(ロランジュ)のSVR ONE OF 25(シルにそう記されている!)に対面した。22インチの大径ブラックホイールからは真っ赤で巨大なブレーキキャリパーが顔をのぞかせている。走らせられる気たっぷり、こちらもヤル気満々で乗り込んだ(乗り上がった?)。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲インテリアはエボニー/シーラスのツートンカラーを採用。センターコンソールにはクーラーボックスが備わる
ランドローバー レンジローバースポーツ▲ヘッドレストにSVRのロゴが入るウィンザーレザーSVRパフォーマンスシートを標準装備

白と黒のモノトーンコーデ。いい雰囲気だ。見栄え質感は高い。ええ、悪くない、悪くないのだけれど、皮脂の多い自分には白いハンドル恐怖症がある。以前、白いステアリングのプジョーに乗っていて、すぐに汚してしまった。以来、白い内装恐怖症だ。もっとも最近のレザーは汚れにくくなったし、汚れても魔法のようなクリーニング材もある。コーティングするという手もあるし……。

気を取り直して走り出す。がっちりと引き締まった体躯をすぐに感じた。レンジスポーツのデカさを感じさせないというあたり、さすがSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)が作ったマシンだ。

そして、すべてが剛直。特にステアリング系のしっかり感はほとんどスポーツカー並みで、以前、SVRでオフロードを走った後、そのまま下まわりだけを洗車してサーキットもこなしたことを思い出す。オールマイティさではランボルギーニ ウルスやベンテイガ スピード、BMW X6 Mなどと遜色ない。5L V8スーパーチャージエンジンは、おそらくこれが最後。最新レンジはBMW製4.4L V8ツインターボを積んでいる。

“つける薬”としては、最も効きそうだが、やっぱり価格がきつい。新型もまもなく登場となればいっそうしんどい。 SUV嫌いを治すことはできるかも、だけど、財布の元気がなくなりそうだ。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲最高出力575ps/最大トルク700N・mを発生する5L V8スーパーチャージャーを搭載

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レンジローバースポーツSVR(現行型)× 全国
文/西川淳 写真/阿部昌也

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。