スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲3代目に対しエンジンの搭載位置を下げるなど、さらに水平対向エンジン+シンメトリカルAWD技術に磨きがかけられた4代目

最後の日本ジャストサイズ・レガシィツーリングワゴンの価格がジワリと上昇!?

長らく日本のステーションワゴン界をけん引してきたレガシィツーリングワゴン。

2003年5月に登場した4代目は、全幅が1730mmとなり3ナンバーサイズになったが、全長は3代目と同じ4680mmにとどめられ、歴代同様に日本にジャストサイズなスポーツワゴンとして人気を博した。

2009年5月の生産終了から10年以上が経ち、ここ数年は車両本体価格50万円でも十分狙える手頃な中古車が多く、定評を得ていた。

しかし、4代目レガシィツーリングワゴンの中古車相場に異変が起き始めている。底値を迎えたように見えていた平均価格が、ここ1年ジワジワと上がり続けているのだ。

なぜ価格が上昇しているのか? 気になる相場をまずは確認してみよう。
 

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値上がりの要因は「EJ20生産終了」か!?

2019年から2020年11月まで約2年間、ずっと40万円前後で推移してきた中古車の平均価格。

ところが、2020年12月に約46万円まで上がると、その後もジリジリ上昇を続け、2021年10月には2019~2021年の3年間で最高値となる55.3万円を記録、11月も53.0万円と1年で10万円以上もアップしているのだ。
 

スバル レガシィツーリングワゴンの価格推移グラフ

掲載されている物件を見てみても、低走行車などのコンデイションが良いものが一気に増えた様子はなく、むしろ10万km超が全体の約3割を占めている。

前期型(2003年5月~2006年4月)より後期型(2006年5月~2009年4月)の方が若干多いが、19年落ち(2003年式)か16年落ち(2006年式)という差は、価格に大きな影響が出るほどではない。

では、今このタイミングで値上りしている理由は何だろうか?

それは、スバルが約30年積んできた2LのEJ20型水平対向エンジンが2019年に生産が終了したことだろう。

2019年末に販売されたEJ20搭載モデルの最後の特別仕様車「EJ20 Final Edition」は、WRX STIがベース。EJ20というと一般的にインプレッサやWRXのイメージが強いが、EJ20は初代レガシィから始まった名機だ。

そして、この4代目レガシィツーリングワゴンにも当然搭載されていた。

一方で、5代目ではEJ20ではなくEJ25やFB25、FA20といったエンジンが採用されたため、EJ20を搭載した最後のレガシィツーリングワゴンといえばこの4代目になる。

そのため、先述のとおりお手頃になっていたEJ20搭載車である4代目に人気が飛び火したと言えそうだ。

ともあれ、2020年6月~2021年10月の間はずっと上昇し続けていた4代目だが、2021年11月以降は徐々に落ち着き始め、原稿執筆時点(2022年1月5日)では平均価格が50万円を切っていた。

しかし、2020年前半までと比べたら、やはりまだ高値傾向で、値落ちがいつまで続くのかも不透明。ましてや、上記で述べたように10万km超が約3割を占めるようになってきた。

つまり、「狙うなら早めにアクションした方がよさそう」ということだ。では、どの4代目を狙えばいいのか。下記でモデルレンジや特別仕様車を振り返っていこう。
 

EJ20型を軸に、DOHCやSOHC、ターボなどエンジンのバリエーションが豊富

スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲トレッドの拡大により全幅1730mmと3ナンバー化したが、最小回転半径は全車(デビュー時)5.4mと、3代目のGT系の5.6mより小さくなり、小回りが利く

2003年5月に登場した4代目は、スポーツワゴンとしての走行性能や使い勝手の熟成が図られた。もちろん、全車スバルお得意の4WDだ。

当初搭載されたエンジンは3種類。2L DOHCターボ(2.0GT系)に2L DOHC(2.0R系)、2L SOHC(2.0i系)で、いずれも水平対向4気筒のEJ20だ。

2.0i系は4速ATのみとなり、2.0R系は4速ATと5速MT、2.0GT系は5速ATと5速MTが用意された。デビュー時の車両本体価格は205万~310万円。
 

スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲2.0GT系には回頭性の高い前45:後55の不等・可変トルク配分電子制御AWD(VTD-AWD)が、それ以外は通常は前輪で走行し、走行状況に応じて後輪を駆動させるアクティブトルクスプリットAWD(AT車)か、前50:後50のビスカスLSD付きセンターデフ方式AWD(MT車)が組み合わされる
スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲2.0GTと2.0GTスペックBには視認性の高いエレクトロルミネセントメーター、MOMO社製本革巻きステアリングが備わる。2.0GTと2.0GTスペックB、2.0Rにはオプションでマッキントッシュサウンドシステムがオプションで用意されていた
スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲シート地は全車ファブリックが標準。2.0GTと2.0GTスペックBにはオプションで本革も選べた。リアシートにはリクライニング機能も備わる(2.0GTカスタマイズエディションと2.0iカジュアルエディションを除く)
スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲ラゲージからリアシートを倒して簡単にラゲージを拡大できる電磁式スイッチや、サブトランクが備わる(いずれも2.0GTカスタマイズエディションと2.0iカジュアルエディションを除く)

以降、下記のように一部改良&マイナーチェンジが行われた。

2003年9月:3Lの水平対向6気筒DOHC(EZ30)を積む3.0Rが追加された。トランスミッションは5速ATとなる。3.0Rはレガシィツーリングワゴンのグランドツアラーとしての性能を高めたモデルだが、2004年10月には2.0GTのスペックB同様に、ビルシュタイン社製サスペンションなどを装着した3.0RスペックB(6速MT)が追加されている。

2005年5月:2L SOHCの2.0i系にも5速MT車が、3.0RスペックBに5速AT車が追加された。

2006年5月:マイナーチェンジ。内外装のデザインが変更された他、エンジンや足回り、快適装備などに改良が施された。また、2L DOHCターボの2.0GT系と3L DOHCの3.0R系に「SI-DRIVE」が採用された。これは、3つのモード(インテリジェント/スポーツ/スポーツシャープ)から任意に走行モードが選べるという機能だ。併せてSI-DRIVE搭載車のAT車にはパドルシフトが備えられた。


スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲前期型とパッと見はあまり変わらないが、フロントグリルにメッキが施されて6角形が鮮明になり、グリル内の6連星から左右に伸びるバーもウイング型になっている。写真は2.0GT
スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲左右のテールライトをつなぐようにメッキが施され、コンビランプがクリアタイプに変更された

2006年11月:2.0GTと3.0Rをベースとした特別仕様車「SIクルーズ」が発売された。レーザーレーダーを用いたSIクルーズは「ほぼ0~100km/hまでの速度域」において先行車を追従する、後のEyeSightに通じる機能だ。

2007年11月:2.5L自然吸気の水平対向4気筒SOHCエンジン(EJ25)×4速ATを搭載した2.5iアーバンセレクションが追加された。

2008年5月:内外装の質感向上など一部改良が行われるとともに、2.0GTと3.0RにEyeSight搭載車が設定された(3.0RはEyeSight搭載モデルのみとなる)。搭載されたEyeSightはステレオカメラ方式で、ver.1と呼ばれるもの。当時の法規上の問題で完全停止までは行えないが、衝突の危険を検知すると自動的にブレーキが働く。


スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲EyeSight(ver.1)は衝突被害軽減ブレーキの他、全車速追従機能付きクルーズコントロール機能やAT誤発進抑制機能、車線逸脱警報、先行車発進お知らせ機能などが備わる

限定600台×3回のチューンドバイSTIや、究極のモデルS402

デビューから約6年の間に、いくつも特別仕様車が登場しているのも特徴だ。

例えば2004年7月と2005年8月には、WRCで活躍していたインプレッサと同じWRブルーをまとった2.0GT WRリミテッド2004と2005が、2005年12月にはポルシェがデザイン監修した3代目の特別仕様車ブリッツェンの流れを汲む、ブリッツェン2005と2006などがある。

中でも同社のモータースポーツ部門「STI」が手がけたモデルは今も人気が高い。そこで下記ではSTI系の特別仕様車について、詳しく見ていこう。
 

スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲STIによって操縦安定性の向上や、乗り心地のしなやかさ、高い制動力が与えられた「チューンドバイSTI」。デュアルマフラーやアルカンターラ/レザーシートなどが備わる。写真は2007年8月に登場したチューンドバイSTI

4代目レガシィツーリングワゴン初のSTIによる特別仕様車は、2005年8月に販売された2.0GTスペックBをベースとしたチューンドバイSTIだ。

セダンと合わせて限定600台の販売で、STIによるエアロパーツをはじめ、アルミホイール、ローダウンスプリング、フロントタワーバー、ピロボールブッシュリヤサスリンク、ブレンボ社製ブレーキ、専用シートなどが備えられた。

翌2006年8月にも、やはりセダンと合わせて限定600台でチューンドバイSTIが販売された。2005年8月の装備に加えて専用チューニングされたビルシュタイン社製ダンパーやフロントロアアームバー、専用ステンレスメッシュブレーキホースなどが与えられている。

さらに、2007年8月にも600台限定で販売された。フロントタワーバーがフレキシブルタワーバーとなり、専用チューニングされたECUやTCU(AT車)が加えられるなど、2005年・2006年モデルより進化している。

モデル末期となる2008年5月には、「究極のグランドツーリングカー」を目指して開発されたS402も限定402台(セダン含む)で販売された。

同時期のアウトバックに採用されていた2.5Lの水平対向4気筒DOHC(EJ25)ターボを専用チューニングして搭載。6速MTが組み合わされ、フレキシブルターバーやフレキシブルロアアームバー、ステアリングギアレシオの変更、車両制御システムのVDCの介入タイミングの変更など、快適な乗り心地とスポーティな走りを両立させるためにSTIの技術を結集したようなマシンだ。


スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)▲「大人の感性を満たす高い質感」が走りや内外装で追求されたS402。4代目レガシィツーリングワゴンで唯一EJ25型の2.5Lターボを搭載したモデルでもある

以上が4代目レガシィツーリングワゴンの概要となる。

では、今現在中古で狙うならどんな物件がオススメなのか、以下紹介していこう。
 

「速いレガシィ」なら2.0GT系、「使いやすいレガシィ」なら2.0iBスポーツ系

速くて使いやすい4代目レガシィツーリングワゴン。そのため、求めるものが「速さ」か「使いやすさ」かによって、当然選ぶグレードは変わってくる。

「速さ」を求めるのであれば、やはりターボが備わる2.0GT系だろう。2.0GTをベースにしているチューンドバイSTIを含め、全体の6割近くを占めるほど台数が多く、支払総額で約40万~240万円と価格帯も広いため、予算に応じて選びやすい。

速さを突き詰めるならチューンドバイSTIやS402だが、いずれも台数が1ケタしかなく、修復歴ありや10万km超でも約70万~220万円と、他の2.0GT系よりも価格が高くて価格帯も広いため、ある程度の選択眼が必要になる。

「STIじゃなきゃ!」という人以外は、他の2.0GT系がオススメだ。走行距離5万km未満で絞っても、支払総額約60万円から見つけることができるのもうれしい。

なお2.0GTには、ビルシュタイン社製ダンパーや17インチではなく18インチアルミホイールを履くスペックBがあるが、ノーマルの2.0GTと価格差はほとんどない。年式相応に足回りもやれてきていると思われるので、スペックBにこだわらず、購入後にスペックB同等の足回りにリフレッシュするという方法もアリだ。
 

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スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)×2.0GT系グレード×全国

一方で、今や希少になった「ほど良いサイズのステーションワゴン」という面に惹かれているなら、2.0i系がオススメだ。

掲載される物件は全体の約2割だが、他の2.0Rや3.0R、2.5iよりも台数は多くて選びやすく、価格も支払総額で約30万円から選べる。走行距離5万km未満で絞っても支払総額約40万円の物件がヒットし、2.0GT系よりもさらにお手頃だ。

中でもオススメは「Bスポーツ」をベースにした特別仕様車だ。Bスポーツはベースの2.0iにはない運転席電動パワーシートや視認性の高いメーター(エレクトロルミネセントメーター)、MOMO社製本革巻きステアリングなどが備わっていてお買い得感がある。

このBスポーツをベースにした「ブラックインテリアセレクション」は、その名のとおりインテリアがブラックで統一されただけでなく、クルーズコントロールやヒーテッドドアミラー、フロントLEDリアフォグランプなどが備わる。

また、「Bスポーツリミテッド」はステアリングにオーディオコントロールスイッチやパドルシフトなどが備わる。

他にも運転席だけでなく助手席も電動シートが備わり、フルオートエアコンが左右独立式になる「ブライトン」など装備が充実しているので、2.0i系の特別仕様車も積極的にチェックしてみよう。
 

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スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)×2.0i系グレード×全国

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スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)×全国
文/ぴえいる、写真/スバル

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。