この2年で平均価格が約90万円も下がった先代アウディ A8。魅力的だが……買っちゃっても大丈夫なのか?
2021/12/02
「安くなったフラッグシップ」は買いなのか?
アウディのフラッグシップサルーンであった3代目(先代)A8の平均価格が大きく下がっています。具体的には、2019年の同時期と比べて約90万円、2020年の同時期との比較でも50万円ほど下がっているのです。
となれば、「この際だからアウディの“一番いいやつ”を買っちゃおうかな?」と思う人も――高い車ですからそう多くはないでしょうが――少なくはないと推測されます。
しかし、フラッグシップというのは要するに超高級車ですから、「買った後に整備代がめちゃめちゃかかるかも?」などの心配もあるはずです。
もしもこのタイミングで先代アウディA8を買うとしたら、どのぐらいの年式のどんなグレードを、いくらぐらいの予算感で狙えば、結果として「損のない買い物」になるのでしょうか?
そのあたりのモロモロを以下、集中的に考えてみましょう。
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アウディ A8(3代目)×全国メルセデス・ベンツ Sクラスなどのライバル
まずは3代目(先代)アウディ A8という車についての簡単なおさらいから。
ただ、先代A8にはいろいろと細かな年次改良が施された関係で、本章はどうしても「数字とカタカナの羅列」になってしまいます。
そういった部分を読むのが苦痛な人のために、この章は読み飛ばしても大丈夫なように全体を設計していますので、面倒に思う人はこの章をすっ飛ばし、次章まで進んじゃってください。それでもぜんぜんOKです。
さて、アウディ A8は、その初代モデルは1995年に登場したアウディのフラッグシップサルーン。メルセデス・ベンツ SクラスやBMW 7シリーズなどと競合する「Fセグメント」に属しています。
ASF(アウディスペースフレーム)と呼ばれるアルミボディとクワトロシステム(フルタイム4WD)を採用することが最大の特徴で、2003年には2代目に進化。そして2010年に再びフルモデルチェンジを受けて登場したのが、今回注目する3代目A8です。
当初の日本仕様に用意されたパワーユニットは4.2L V8自然吸気と、3L V6スーパーチャージャー付きの2種類。トランスミッションはいずれも8速ATで、駆動方式は全車クワトロ(フルタイム4WD)です。
2011年6月にはロングホイール版も追加され、2012年9月の一部改良で4.2L V8自然吸気エンジンに代わって最高出力420psの4L V8ツインターボを採用。翌2013年3月にはハイブリッド版も登場しています。
そして2014年3月にマイナーチェンジを行い、エクステリアデザインを変更するとともに「マトリクスLEDヘッドライト」をオプションとして採用。このタイミングで4L V8ツインターボエンジンは、最高出力420psから435psへとパワーアップされました。
同年8月には、アクティブレーンアシストやストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールなどがセットになった「Audiプレセンスパッケージ」が、ハイブリッドを除く全車に標準装備。その後も何回かの細かな変更を受けながら2018年9月まで販売された――というのが、先代アウディ A8のざっくりとしたヒストリーです。
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アウディ A8(3代目) ×全国オススメは後期型。運転支援システム付き世代ならさらに◎
では、前章で述べたような車である先代アウディ A8の中から「どれ」を選べば損のない買い物になるかということを、具体的に考えてまいりましょう。
ちなみに、前章でつらつら述べた詳細をシンプルに要約すると、おおむね以下のとおりとなります。
・先代A8は2010年から2018年まで販売されたアウディのフラッグシップ。
・エンジンは3L V6スーパーチャージャーと4L V8自然吸気でスタート。
・4.2L V8自然吸気は途中から4L V8ツインターボに変更。
・他にハイブリッドとW型12気筒があり、ロングホイール版もある。
・2014年3月に外装デザインを中心とするマイナーチェンジを実施。
・2015年8月に運転支援システムを標準装備化。
・2018年9月に販売終了。
で、「先代A8の損のない選び方」を結論から申し上げると、「なるべく新しい年式のモノを選ぶ」というのが基本的な方針となります。
「なるべく新しい年式のモノ」を選ぶべき理由は、アウディ A8の場合は下記の2つです。
●車というのは「完全に古くなったモノ」は味があっていいのだが、「中途半端に古いモノ」はビジュアル的にもハードウエア的にも文字どおり中途半端で、いささか魅力に欠けるから。
●アウディ A8のような高級車は交換部品の代金も“高級”である。そのため、徹底的にお金と手間をかけて納車前整備をする覚悟がないのであれば、大掛かりな部品交換はしないで済みそうな年式=なるべく新しい年式を選んだ方がラクでおトクだから。
以上のことから考えますと、先代アウディ A8の中古車を買う場合は「2014年3月以降の後期型に狙いをつける」というのが、まずは基本となります。
そのうえでさらに2015年以降の「運転支援システムが標準装備になった世代」を狙うのが、さしあたってのベストな方向性でしょう。
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アウディ A8(3代目)×2015年以降 ×全国イチ推しは車両本体価格300万円前後の4.0 TFSIクワトロ
それでは先代アウディ A8後期型の流通状況がどうなっているか、詳細に見てみましょう。
●流通量:34台
●中古車価格:250万~1300万円
流通量は「やや少なめ」といったところでしょうが、中古車価格は上下に幅が広すぎて、このままではちょっとイメージがつかめません。どうやら「グレード別」に分けて考えた方がよさそうですね。
●グレード別流通台数と中古車価格
・3.0 TFSIクワトロ|6台|250万~370万円
・4.2 FSIクワトロ|6台|130万~250万円
・4.0 TFSIクワトロ|23台|270万~440万円
・L 4.0 TFSIクワトロ|3台|360万~380万円
・L W12クワトロ|2台|600万~1300万円
・ハイブリッド|0台|――
L(ロングホイールベース版)とハイブリッドはかなり希少で、3.0 TFSIクワトロと、初期にのみ存在した4.2 FSIクワトロもやや希少。
となると、途中から登場した4L V8ツインターボの4.0 TFSIクワトロを探すというのが、実質的には唯一の選択肢となりそうです。その場合の予算感は上記のとおり車両価格270万~440万円ぐらいといったところでしょうか。
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アウディ A8(3代目)×車両本体価格270万~440万円 ×4.0 TFSIクワトロ ×全国では、さらにベターな選択である「運転支援システムが標準装備になった2015年8月以降の物件」はいくらぐらいで買えるのでしょうか?
●2015年8月以降の4.0 TFSIクワトロ
・流通台数|16台
・中古車価格|270万~440万円
上の後期型4.0 TFSIクワトロの相場と同じ数字になっていますが、運転支援システム付き車両の実際のボリュームゾーンは330万~400万円といったところです。ここが、さしあたっては「先代アウディ A8の中古車を買うならベストなゾーン」だと言えます。
それでは次章(最終章)にて、最終的な結論をあらためてサマリーいたします。
高額車だけに「整備履歴の良し悪し」を重視して選びたい
●先代アウディ A8、そのベストな狙い方は?
2015年8月以降の運転支援システムが標準装備された4.0 TFSIクワトロを、支払総額350万円前後で探す。走行2万km台から4万km台のステキな1台が見つかるでしょう。
●総額350万円前後はちょっと高い! と感じる場合は?
総額300万円前後で、年式&グレード不問にて「コンディションと整備履歴がなるべく良好な個体」をじっくり探す。焦らず探せば、悪くない1台が見つかるでしょう。
以上が、先代アウディ A8の中古車を探す場合の「基本的な考え方」となります。
さらに全体的な話としては、冒頭で申し上げた「ここ2年間で平均価格が約90万円も下がっている」という部分を不安に思う人もいるかもしれません。「そんなに安くなった中古車を買っても大丈夫なのか?」と。
ここについては、あまり気にする必要はありません。なぜならば、アウディA8というのはもともと1200万円ぐらいした超高額車だからです。
「2年で90万円下がった!」と聞くと、超大幅に下がったようにも感じます。しかし、新車価格から考えると「2年で7.5%下がった」にすぎず、中古車の2年間での下落幅としてはごく普通です。それゆえ、ここについては特に気にする必要がないのです。
ただし、アウディ A8は先ほど申し上げたとおり、もともとは1200万円級の超高額車。それゆえ補修部品や交換部品は、大衆車のそれよりもずいぶん高額です。特に標準装備のエアサスペンションは、普通に注文すると1本30万円ぐらいはします。
それゆえ先代A8の中古車を買うときは、「コンディションと整備履歴」だけは徹底的に気にするようにしてください。そこを怠ると、「いくら安く買ったところで意味がない」という結果にもなり得ますので、くれぐれもよろしくお願いいたします。
とはいえ、もしもコンディションと整備履歴に優れる1台を見つけることができたなら――あえて「たった」という表現を使いますが、たった350万円前後の予算で、世界でもトップクラスの超絶素晴らしい乗り味と存在感を、我がモノとすることができるわけです。
……トライしてみる価値は大いにあるでしょう!
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アウディ A8(3代目)×全国※記事内の情報は2021年11月25日時点のものです。
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。