BMW 1シリーズ ▲先代BMW 1シリーズのハイパフォーマンスグレードである「M135i」。写真はBUBU MITSUOKA横浜ショールームが販売する(※現在は売約済み)走行3.5万kmの2014年式で、車両価格は228万円

栄えある「格安名車」を探し出せ!

こちらは11月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 2022年1月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの新連載「EDGE Second Line」の、担当編集者から見た別側面である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「EDGE Second Line」というのは、「車両価格が手頃=エラい! 賢い! おしゃれ! と定義したうえで、栄えある格安名車を探し出そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

で、カーセンサーEDGE 1月号の同連載で取り上げた中古車は、2014年式の先代前期型BMW M135i。走行3.5万kmで車両価格228万円という個体であった。

こちらの個体は2021年11月下旬現在、すでに売約済みとなっているわけだが、この個体に限らず先代前期型のBMW M135iとは、比較的安価な予算で“いい車”を探している車好き/運転好きの各位にとっては「とてつもなく狙い目な選択肢なのでは?」というのが、B面担当者の結論だ。

そう結論づけた根拠について述べる前に、BMW M135iという車についての概要をざっくりご説明しておこう。
 

BMW 1シリーズ▲EDGE Second Lineで取材した2014年式BMW M135i。3L直6ターボエンジンを搭載し、専用チューンされたMアダプティブサスペンションなどが標準装備されている

ド級のエンジンを積むが足回りはしなやかな「毎日乗れるM」

M135iとは、まだFRレイアウトを採用していた先代BMW 1シリーズ(2011~2019年)のハイパフォーマンス版として、2012年8月に発売された5ドアハッチバック。

「M3」や「M5」といった超ハイパフォーマンスモデルの開発を手がけるBMW M社がチューニングしたスポーティモデルであり、「M Performance Automobiles(以下、本稿内ではMパフォーマンスと略して記載する)」と呼ばれるモデルラインの第1弾でもあった。

「Mパフォーマンス」は、サーキットスペックとも言える「Mモデル」と、通常のBMWのトップグレードとの中間に位置づけられるモデルラインで、BMWのプレスリリースによれば「比類なきスポーツ性と優れた効率に加え、日常走行における高い実用性を提供する」と説明されている。簡単に言うなら、Mパフォーマンスとは「毎日使えるM」ということだろう。

そんなMパフォーマンスの第1弾となったM135iが搭載するエンジンは、BMW M社がチューンした最高出力320psの3L直6ターボエンジン。トランスミッションは8速ATで、専用チューンされた「アダプティブMサスペンション」や、対向ピストン式ブレーキキャリパーを備えた「Mスポーツブレーキ」も特徴となる。

そして、そのブレーキを効率よく冷却するためのエアインテークを備えたフロントバンパーや、専用デザインの18インチアルミホイール、アルカンターラのスポーツシートなどもM135iのポイントだ。
 

BMW 1シリーズ▲先代1シリーズの中では当初最もパワフルだった最高出力320psの直6DOHCターボエンジン。0-100km/h加速はわずか4.9秒と公表されていた
BMW 1シリーズ▲強力なブレーキを効率よく冷却するため、大型のエアインテークを備えるフロントバンパーが装着された
BMW 1シリーズ▲トランスミッションは8速スポーツAT。8.8インチモニターのiDriveナビゲーションパッケージとHiFiスピーカーシステムなどが標準で装備された
 

前述のとおり2012年8月に追加されたM135iは、1シリーズ本体のマイナーチェンジに伴って2015年5月にフロントマスクのデザインを一新。さらに2016年9月には、同じ3L直6ターボながら最高出力が340psまで増強されたことで「M140i」という後期型へと進化した。

そして2019年8月、駆動方式をFRからFFに変更した新型(現行型)1シリーズが登場したことで、先代1シリーズをベースとするFRレイアウトのM135iおよびM140iはカタログから消えた――というのが、その大まかなヒストリーだ。
 

とんでもなくいい車なのに、相場は意外とお手頃

で、本稿の冒頭付近にて「先代前期型のBMW M135iとは、比較的安価な予算で“いい車”を探している車好き/運転好きの各位にとってはとてつもなく狙い目な選択肢なのでは?」と申し上げた理由をご説明しよう。

まぁ「理由をご説明しよう!」などとエラソーに構えるほどではない単純な話なのだが、先代BMW M135iの前期型中古車はとんでもなくいい車だが、その割に中古車相場はけっこう安いのだ。それゆえ、とてつもなく狙い目なのである。

まず第一に、M135iは――車好き、運転好きにとっては――本当に素晴らしい車である。

ボディ全体と車台全体には、鋼のような剛性感としなやかさとが見事に同居している。そして最高出力320psの直6ターボエンジンは当然ながらウルトラ強力だが、荒々しさのようなものは微塵もない。かといって「洗練されてるだけ」というわけでも決してない。

専用チューンされた「アダプティブMサスペンション」の感触はアルピナの足回りに勝るとも劣らずで、対向ピストンキャリパーを備える「Mスポーツブレーキ」の利きとタッチも文句なし。さらにFFではなくFRなので、前輪がトルクとエンジン重量に負けて暴れるなんてことは当然いっさいなく、8速ATのマナーと制御も素晴らしい。

要するに「気持ちよ~く走れる車が好きな人」にとって、これが最高の1台かどうかは知らないが、少なくとも「最高峰グループの一員」であることは間違いないのだ。
 

BMW 1シリーズ▲シート表皮はヘキサゴンクロス+アルカンターラが標準だったが、取材車両はオプションのレザーシートが装着されている

前期型特有の「おとぼけフェイス」が安値の理由か?

しかしそれでいて、先代BMW M135iの中古車相場は安い。いや「安い!」ってほど安くはないが、顔つきが変わった中期型や、エンジンが変わった後期型(M140i)との比較で言うならば、明確にお安いのだ。

具体的には、おおむね下記のイメージである。

●前期型:総額190万~270万円
●中期型:総額360万円(※流通量1台のみ)
●後期型(M140i):総額370万~460万円

例えば後期型のM140iが総額400万円ほどだったとすると、魅力的な車ではあるのだが、ド庶民である筆者などは金額の面で「うぐぐ……」と詰まってしまう。

しかし、例えば(売約済みではあるが)総額240万円ほどだった今回の撮影車両であれば「うむ、買いましょう! どこにハンコを押せばいいですか!」と即決することもできる(たぶん)。この「車としてはものすごくいいのに、相場は意外と安い(少なくともベラボーに高くはない)」というのが、先代BMW M135i前期型の大いなる魅力なのだ。

しかし――世の中うまい話には裏があり、安いモノにも理由があるのが普通である。

ならば、先代BMW M135iの前期型が意外とお安い理由は何なのだろうか?

答えは「デザイン」だ。

百聞は一見にしかずということで、下の写真を見ていただくのが一番わかりやすいだろう。
 

BMW 1シリーズ▲こちらが2012年8月から2015年5月までの前期型M135i
BMW 1シリーズ▲で、こちらが2015年5月にマイナーチェンジを受けた世代。ううむ……
 

……おとぼけフェイスの兄と、凛々しくも涼しげな目元を持って生まれてきた弟といった感じだろうか。

もちろんデザインに対する感じ方は人それぞれなわけだが、M135iに限らず先代BMW 1シリーズ(F20型)の前期型は、この「とぼけたお目々」が多くのモノを台無しにしていると、少なくとも筆者は思っている。

だが物事は考えようというか、先ほども申し上げたとおり、デザインの感じ方は人それぞれである。

「このフェイスもなかなかいいじゃないか」と思うか、もしくは「許せる!」と思う人にとっては、先代BMW M135iの前期型中古車は、本当にステキすぎる選択肢となるだろう。
 

文/伊達軍曹、写真/阿部昌也、BMW

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。