メルセデス・ベンツSクラス(旧型)▲旧型Sクラスはスタンダードホイールベース(3035mm)とロングホイールベース(3165mm)の2種類がある。デビュー時のサイズはスタンダードが全長5116mm×全幅1899mm×全高1496mm、ロングは全長5250mm×全幅1900mm×全高1495mm

世界トップクラスのセダンが、この1年間でグッとお手頃に

メルセデス・ベンツのフラッグシップサルーンであるSクラス。「いつの時代も世界の自動車の指標」と自負するモデルだけに、2013年8月に日本へ導入された旧型(W222型)は、「最高の自動車」として紹介されていた。

それだけの自慢の機能や性能がふんだんに盛り込まれたセダンなのだが、今年1月に新型が登場したことによって旧型となり、中古車価格がお手頃になってきた。

平均価格を見ると、この1年間でなんと120万円もダウンしているのだが、その背景とともに旧型Sクラスの魅力を見ていこう。

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メルセデス・ベンツSクラス(旧型・W222型)×全国

今年1月のフルモデルチェンジで、旧型の値落ちが加速した

昨年までゆるやかに値落ちを続けていた旧型Sクラスだが、今年4月あたりから下落の角度が大きくなり、10月の平均価格は前年より120万円も値落ちし、いよいよ500万円台となっている。

デビュー時の新車時価格は1090万~1545万円(AMGモデルを除く)だから、新車時の半額程度で狙えるようになってきたのだ。

要因としては、やはり今年1月のフルモデルチェンジによって、新型への乗り替えが進んだことが大きいだろう。

何しろ新車時1000万円超のセダンであり、メルセデス・ベンツのフラッグシップだ。社長クラスの送迎用や、富裕層の愛車といった用途を考えれば、新しいSクラスはいつの時代も魅力的。

だから、旧型オーナーが新型へ積極的に乗り替えることがSクラスでは多く、その結果が如実に表れていると言えよう。

メルセデス・ベンツ Sクラスの平均価格推移グラフ▲今年春ごろから平均価格の値落ちがぐんぐん進み、とうとう500万円台となった

実際、フルモデルチェンジ後の中古車台数は、昨年12月や今年1月が800台前後だったのに対し、2月以降はぐんぐんと伸び、今年7月は1155台と300台以上も増えた。

現在は再び800台前後に落ち着いているが、それでも平均価格の下降線はゆるまず、今年9月にはいよいよ500万円台に突入している。

実は現在の旧型Sクラスの中古車相場には特徴がある。中古車台数の多い価格帯が大きく2つに分かれていて、ひとつは400万円未満、もうひとつは660万円以上と両極端化しているのだ。

400万円未満の中古車は、2017年8月のマイナーチェンジ前の前期型が多く、一方の660万円以上はマイナーチェンジ後の後期型が中心。

走行距離は、当然前期型は年式相応に距離が伸びている個体もあるが、一方で5万km未満もたくさん見つかる。200万円以上の価格差は、走行距離の多さに直接結び付いているわけではない。

これは、常に最新機能が追加されたり改良が施される輸入車では、後期型に人気が集まりやすいことがまずひとつ。さらにSクラスのように、もともと新車時価格の高い車は万が一故障すると修理費用が高いというイメージから、熟成され比較的安心感が高まる後期型に人気が集まりやすいということも影響していそうだ。

もちろん、普通の車にはない高機能を備えた車ゆえ、故障した部位によっては修理費が思いのほか高く感じることもあるだろう。しかし、Sクラスは社用車や富裕層の愛車として購入されるケースが多いため、日々のメンテナンスには気もお金も使われていることが多い。もし故障があってもすでに前オーナーが対処してくれている可能性が高いのだ。

そう考えられる人なら、タダでさえお手頃になってきたSクラスだが、400万円未満から狙える前期型ならさらに“美味しい"と言えそうだ。

それでは、改めて旧型Sクラスはどんなモデルだったのか、詳しく見てみよう。

前期型と後期型でパワートレインが異なるので注意

メルセデス・ベンツSクラス▲カメラの検知機能を使いハイビームの照射範囲を自動で切り替える機能や、駐車時にステアリングとブレーキを自動制御して駐車の動作をアシストする機能などが備わる

2013年10月に日本デビューした旧型・W222型Sクラス。

「最高の自動車」を自負するだけあり、まず当時の最先端の先進運転支援機能「インテリジェントドライブ」が搭載された。同機能は安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」や「マジックボディコントロール機能」などを総称する名称だ。

まず「レーダーセーフティパッケージ」。衝突被害軽減ブレーキはもちろん、前後左右から迫る危険を知らせてくれる他、先行車に速度を合わせて追従する際はステアリング操作もアシストしてくれる。

また、「マジックボディコントロール機能」は、快適な乗り心地を得るために前方の路面の凹凸などをカメラで捉え、瞬時にサスペンションのダンピングを制御してくれる。

その他に、車内灯の色を任意に変えられるアンビエントライトや、空気清浄+パフューム機能を備えた「エアバランスパッケージ」など、快適な移動空間のための各種機能も用意されている。

メルセデス・ベンツSクラス▲すべてのライトにLEDが採用された。これは当時世界初。トランク容量はS400ハイブリッドは510L、S550ロングは500Lと微妙に違うがいずれにせよ、十分広い
メルセデス・ベンツSクラス▲ブルメスター社のサラウンドサウンドシステムがS400ハイブリッドを除く全車に標準装備。「ファーストクラスパッケージ」にはクーラーボックス付きの左右独立リアシートや温熱機能付きマッサージといった快適装備も用意された

旧型Sクラスは、パワートレインの入れ替わりが激しいのも特徴だった。下記に登場順にまとめるので選ぶ際の参考にしてほしい。なお、グレード名に「ロング」と付くのはロングホイールベースモデル、「4マチック」と付くのは4WDモデルだ。

■前期型

【2013年10月~2017年7月】
・S400ハイブリッド/3.5L V6エンジン+モーターのハイブリッド×7速AT:車両本体価格1090万~1270万円
・S550ロング/4.7L V8ツインターボ×7速AT:車両本体価格1545万円

【2014年6月~2017年7月】
・S600ロング/6L V12気筒ツインターボ×7速AT:車両本体価格2250万円

【2014年11月~2017年7月】
・S550プラグインハイブリッドロング(S550eロング)/3L V6ツインターボ+モーターのプラグインハイブリッド×7速AT:車両本体価格1590万円

【2015年8月~2017年7月】
・S300h/2.2Lディーゼルターボ+モーターのハイブリッド×7速AT:車両本体価格998万~1270万円
・S300hロング/同上:車両本体価格1340万円

■後期型

【2017年8月~2020年12月】
・S400/3L V6ツインターボ×9速AT:車両本体価格1128万円
・S560ロング/4L V8ツインターボ×9速AT:車両本体価格1646万円
・S560 4マチックロング/同上×9速AT:車両本体価格1681万円
・S600ロング/6L V12ツインターボ×9速AT:車両本体価格2331万円

【2018年3月~2020年12月】
・S450/3L直6ターボ+ISG+電動スーパーチャージャー×9速AT:車両本体価格1147万~1363万円
・S450ロング/同上:車両本体価格1473万円

【2018年9月~2020年12月】
・S400d/3L 直6ディーゼルターボ×9速AT:車両本体価格1116万円
・S400d 4マチック/同上:車両本体価格1160万円
・S400dロング/同上:車両本体価格1461万円
・S400d 4マチックロング/同上:車両本体価格1505万円

【2018年12月~2020年12月】
・S560eロング/3L V6ツインターボ+モーターのプラグインハイブリッド×9速AT:車両本体価格1697万円

メルセデス・ベンツSクラス(旧型)▲マイナーチェンジではヘッドライト内に3本のラインがハッキリと入ったことと、フロントグリル内のルーバーが二重になったことなど、小変更されている。また、「マジックボディコントロール機能」にコーナリングの際に車体を内側へ傾けることで、乗員の横加速度を低減する機能が加えられた
メルセデス・ベンツSクラス(旧型)▲マイナーチェンジでスマートフォンによる施錠解錠や、車庫入れ/車庫出し、並列/縦列駐車が可能になるなど、スマートフォンで操作できることが一気に増えた

2018年に同社としては約20年ぶりとなる直列6気筒エンジン搭載車が、ガソリン(S400)とディーゼル(S400d)のそれぞれで登場したことと、2017年8月のマイナーチェンジでATが7速から9速に切り替わったこと、またマイナーチェンジ以降はハイブリッドモデルが3L V6ツインターボ+モーター(S560eロング)だけとなり、代わりにマイルドハイブリッド(S450)が追加されたことが注目ポイントだ。

2017年8月のマイナーチェンジでは、内外装デザインが変更されるとともに、インテリジェントドライブはさらに進化。渋滞で停止しても30秒以内であれば自動的に再発進するようになった。

また、ウインカーを出すと車が自動で安全を確認して車線変更も行ってくれる機能も装備。その他にも、衝突被害軽減ブレーキが作動する際に回避スペースがあると判断すると、ステアリングをその方向へアシストする機能が備わるなど、全体的にバージョンアップされている。

特に最新技術の「インテリジェントドライブ」は順次機能が進化しているので、こだわるなら当然高年式車が望ましいが、とはいえ当時世界最先端の機能を備えていた前期型でも十分ではないだろうか。

前期型ならS550ロング、後期型はS400がオススメ

先述のとおり、前期型と後期型で価格帯が大きく分かれる旧型Sクラス。また前期型と後期型ではパワートレインも異なる。そこで、今回は前期型と後期型それぞれのオススメを紹介したいと思う。

まず前期型では、4.7Lツインターボ×7速ATでロングボディの「S550ロング系」がオススメだ。

デビュー時からマイナーチェンジするまで販売されていたモデルのため、原稿執筆時点で約130台と最も多く、しかも約半分が走行距離5万km未満と選びやすいのが理由の1つだ。

そして価格も、走行距離5万km未満かつディーラーの販売車でも支払総額約500万円から狙えるのもうれしいところ。新車時価格が1545万円だったことを考えると、約1/3から狙えるというわけだ。

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メルセデス・ベンツSクラス(旧型・W222型)×S550ロング系グレード×全国

一方、後期型のオススメは3L V6ツインターボ×9速ATの「S400系」グレード。

台数は約30台とあまり多くはないが、3~4年落ちとなる2017~2018年式で走行距離3万km未満でも支払総額約550万円で狙える。

S400は後期型の中ではエントリーグレードに位置するが、それでも新車時は車両本体価格1128万円を超え、装備も走りも十分すぎるものだ。

それが、新車時の半額以下から狙えるのだから、おトク感があると言えるはずだ。

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メルセデス・ベンツSクラス(旧型・W222型)×S400系グレード×全国

個人的にはメルセデス・ベンツ久々の直列6気筒エンジンを搭載した、S450やS400dあたりもそそられるが、S450は支払総額約630万円から、S400dは支払総額約700万円からと、いずれも新車時の半額にはもう一歩といったところ。

もちろん、これでも十分お手頃になっているから、筆者と同じように直6エンジンに興味がある人は積極的に探してみるといい。

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※記事内の情報は2021年11月18日時点のものです。

文/ぴえいる、写真/メルセデス・ベンツ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。