プジョーリフター▲写真のプジョー リフターやシトロエン ベルランゴはまだデビューして2年しか経っていないため中古車はまだ少ない

なぜかフランス車にしかない商用バンベースの広々ファミリーカー

ただでさえ人気が高かったことに加え、昨今のコロナ過では密を避けやすいレジャーとあってか、さらに加熱した感のあるキャンプ。そんな空前のキャンプブームの中で今回オススメするのは、フランスの商用バンベースのファミリーカー3台だ。

以前から一部のアウトドア好きに絶賛されていた人気モデルが、ルノー カングーだ。商用バン(日本未導入)と同じボディだけに見た目以上に荷物が積めて、後席は両側スライドドアで、しかも天井にも小物入れがあるから超便利。ミニバンベースのホンダ フリード+がそれに近いけれど、国産車にはミニバンがたくさんあるにもかかわらず、この類のモデルがないのが不思議なくらいだ。
 

プジョーリフター▲今回取り上げる3台はいずれもスライドドアを装備。全長は4.5m以下と国産5ナンバーミニバンより短いが、ラゲージは幅約1200mmのユーロパレット(ヨーロッパ貿易で使われる木製パレット)を載せられる広さが確保されている。後席も大人3人が並んで座れる広さが十分にある。(写真はリフター)

そんな日本車勢の隙をついてか、またはカングーの快進撃を放っておけなくなったのか、プジョー・シトロエンが2019年からカングーを競合とするモデルを投入したことで、選択肢が広がっている。

そこで、今回は家族でのお出かけにぴったりな便利なフレンチバン3台を紹介。パリの街の狭い道を走り回る商用車ベースゆえ、全長は4.5m以下と意外とコンパクトなのに車内は広々なのである。広いラゲージにはキャンプ道具だって載せっぱなしにしておくようなずぼらも許される!? そんな3台をさっそく見ていこう。
 

最低地上高がちょっぴり高いなど、悪路に実は強い
プジョー リフター(現行型)

プジョーリフター▲全長4405mm×全幅1850mm×全高1880mm。ラゲージの積載量は十分あるが、ルーフレールも標準で備わるのでロングボードやカヌーも載せやすい
プジョーリフター▲ラゲージ容量は597L。2列目を倒すと最大2126Lまで拡大でき、助手席背もたれを倒せば最長2.7mまでの長物を載せることも可能。トノボードは写真のように中断に取り付けて、上下で荷物を区分けすることもできる

2019年10月から日本に導入されたリフター。本国には同じボディの商用車「パートナー」がある。シトロエン ベルランゴとは兄弟車だが、最低地上高はベルランゴより20mm高い180mm確保され、路面状況に応じて駆動力を制御する「アドバンストグリップコントロール」も備わる。つまり、リフターの方がオフロード性能は高いってことなのだ。

「アドバンストグリップコントロール」についてもう少し説明すると、5つのモード(ノーマル/スノー/マッド/サンド/オフ)から路面状況に応じて選択することで、安定した走行が可能になる機能。例えば、降雪時にスノーモードを選ぶと、トルクの伝達を緩やかにして発進加速時のタイヤの空転を軽減するというもの。ぬかるみ(マッド)や砂地(サンド)での駆動輪の空転を防いでくれるので、路面のぬかるんだキャンプ場や砂地への侵入のときも安心できる(過信は禁物)。

搭載されるエンジンは1.5Lディーゼルターボ。これに8速ATが組み合わされる。衝突被害軽減ブレーキや、先行車と一定の距離を保ちながら走行するアクティブクルーズコントロールなど最新先進運転支援機能は標準装備されている。

新車時の車両本体価格は339万~361万円。原稿執筆時点の中古車流通量はわずか2台。いち早く乗りたい、という人はダッシュでチェックしてみよう。
 

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プジョー リフター×全国

インパクトの強めなルックス重視で選ぶなら
シトロエン ベルランゴ(現行型)

シトロエンベルランゴ▲全高が1850mmとなる以外は、上記リフターと同サイズ。ラゲージ容量や最小回転半径5.6mもリフターと同じだ。ただし、WLTCモード燃費はリフターが18.2km/Lに対し、ベルランゴは18.0km/Lとわずかに違いがある
シトロエンベルランゴ▲ベルランゴとリフターの特徴のひとつに、大型ガラスルーフとそれを縦断するように備わる半透明の収納スペースがあること。フタがないので出し入れしやすい。もちろん、ガラスルーフにはサンシェードが備わる

プジョー リフターの兄弟車となるシトロエン ベルランゴ。1.5Lディーゼルターボに8速ATを組み合わせたパワートレインはもちろん、ラゲージの使い勝手、容量、先進安全運転支援機能が標準装備(グレード「フィール」のみフロントとサイドのバックソナーと、2021年1月以前まではブラインドスポットモニターが非装備)はリフターと同じ。

最近のキャンプ場は、駐車スペースがきちんと整地されていることが多い。そもそも、レジャーシーンで悪路に侵入せざるを得ないということなどめったにないだろう。ということは、リフターと比べた悪路走破性の優劣など気にせずに、見た目重視で選んでいいということだ。個性的なフロントマスクによるインパクトでは、リフターよりも優位だろう。

収納がたっぷりあるのも両車の魅力。ダッシュボードや車内天井にも複数の収納を備えている。また、ラゲージルーム上部の収納ボックスは、前後双方から出し入れできる優れモノ。跳ね上げ式のバックドアは、ガラス部分だけ開閉することもできるなど、使い勝手が工夫されている。

新車時の車両本体価格は312万~343万円。原稿執筆時点の中古車流通量は15台と少ないながらも、登録済未使用車が多いため、まだ品質レベルを意識する必要なないだろう。つまり気になる仕様が見つかったら即決が吉ということだ。
 

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シトロエン ベルランゴ(現行型)×全国

フレンチバンを広めた功労者は、もうすぐモデルチェンジ
ルノーカングー(現行型)

ルノーカングー▲写真は1.5Lディーゼルターボ+6速MTの限定車「リミテッドディーゼルMT」。既存モデルとの見た目の違いはほぼない。全長4280mm×全幅1830mm×全高1810mm。ボディサイズはリフターやベルランゴより小さい
ルノーカングー▲バックドアが観音開きなのがライバルの2台との違い。トノボードを中段に設置して上下を仕切ることもできる

2009年9月のデビューから12年が経過した今年、本国フランスでは新型が登場。間もなく日本にも導入されることになるだろう。新型のボディサイズはライバルなみに大きくなる。本国仕様の情報によると、全長は現行型比で+206mmの4486mm、全幅は+89mmの1919mmに。さらにバックドアは観音開きではなく跳ね上げ式になっている。この変わりようを知って「現行の方がいいな」という人は今すぐ新車ディーラーに駆け込み相談するか、お手頃な中古車を狙ってはどうだろう。

現行型は、1.6L+5速MTか4速ATというモノグレードで登場したが、2016年7月に1.2Lターボ+6速EDC(2ペダルMT)と6速MTが加えられると、1.6Lのパワートレインは自然消滅した。

中古車流通量は200台強あり、限定ボディカラーを中心に、これまで20種類以上もの特別仕様車が登場していることから、中古車の品揃えは豊富。好みの1台を選びやすい状況は整っている。さらに、2021年7月には最新の1.5Lディーゼルターボに6速MTを組み合わせた「リミテッドディーゼルMT」が限定400台で販売され、すでに完売。さすがにまだ中古車はないが、正規輸入のフレンチバンをMTで走らせられる楽しみは現行型カングーの強味だ。

新車時本体価格は254万6000~264万7000円。そして、中古車なら支払額50万円の予算から狙うことができる。
 

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ルノー カングー 現行型(2代目)×全国
文/ぴえいる、写真/尾形和美、プジョー、シトロエン、ルノー
ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。