トヨタ マークX(2代目)▲祖先はバブル期に同社のカローラに次ぐ販売台数を誇った人気車マークII。2004年11月に10代目へフルモデルチェンジする際にマークX(10の意味)に車名を変更した

中古車でしか買えなくなった希少なアッパーミドルFRセダン

マークXはトヨタのアッパーミドルクラスセダン。2004年11月の初代デビューから2代にわたり販売されたが、セダン氷河期下で販売台数は伸び悩み、2019年12月に生産が終了した。後継のセダンも現在に至るまで登場していない。

つまり、今となっては中古車でしか買えないモデルになったわけだが、希少なFRセダンということもあり一部のファンから根強い人気を得ている。

それを受けてか、ここのところ2代目マークXの中古車平均価格がジワジワと上がり始めているようだ。その理由は? 購入するなら今のうち?

以下詳しく見ていこう。
 

▼検索条件

トヨタ マークX(2代目)×全国

今ならコンディションが良いものを選びやすいが、需要が高まっている

2019年12月に生産を終了してからしばらくは、中古車平均価格は横ばいを続けており、大きな相場変動はないものと思われていた。

しかし、2020年4月から一転、平均価格は一気に下落し、同年8月には直近3年間での最安値となる129.1万円を記録。このまま徐々に下がり続けていくものと思われた。

ところが、同年9月には上昇に転じ翌2021年5月まで130万円台で推移。さらに同年6月に再び上昇傾向となり、2021年8月には141.5万円まで上がっている。最安値だった1年前の129.1万円から約12万円高くなったことになる。
 

トヨタ マークXのグラフ

その理由は、やはり先述のとおりマークXは今となっては希少な、スポーティな走りを楽しみやすいFRセダンであることが大きいだろう。

生産が終了したことで、新車での購入を検討していた人などが、コンディションの良い高年式車や低走行車などに集中し、需要が上がったため平均価格が上昇した可能性が高い。

このことから、今後もコンディションの良いものからどんどんなくなっていくことが予想できる。

加えて、上質なスポーツグレードとして後期型に設定されていた「250RDS」や「350RDS」が中古車市場に出回るようになったことで、平均価格を押し上げたことも考えられる。

さらに、マークXには新車時販売価格が500万円超のハイパフォーマンスモデル「GRMN」があり、2015年に100台、2019年に350台限定で販売された。

まだまだ数は少ないものの、GRMNはすでにプレミア価格が付いていて新車時の車両本体価格より高く、中には600万円以上のプライスが掲げられている中古車もあるため、これらが平均価格上昇の一端となっているはずだ。

とはいえ、初期型の多くは支払総額100万円前後で狙えるなど、どのようなマークXを狙うかによって予算は大きく変わるので、希望条件を自分の中できちんと整理してから探すようにしたい。

以下、改めて2代目マークXはどんな車だったのか、振り返ってみよう。
 

スポーティな性格を年々高めていったプレミアムセダン

2009年10月に登場した2代目マークX。クラウン(12代目)と共用した初代のプラットフォームをそのままキャリーオーバーして、スポーティさと上質さがさらに追求された。

搭載されたエンジンは当時のレクサス ISと同じ3.5Lと2.5LのV6。なお、2.5LエンジンはISや初代のハイオク仕様ではなく、レギュラー仕様となっている。トランスミッションは全車6速ATを採用。

デビュー時のグレードはスタンダードタイプ/スポーツタイプ/プレミアムタイプに分けられ、それぞれのキャラクターを強調する装備が与えられた。

スタンダードタイプは「250G」「250G Four」「250G Fパッケージ」「250G Four Fパッケージ」「250G リラックスセレクション」の5グレード。マークII時代から続くアッパーミドルクラスセダンとしての最低限の装備や仕様を備えている。

スポーツタイプは「250G Sパッケージ」「250G Sパッケージリラックスセレクション」「350S」の3グレード。減衰力可変ダンパーのAVSが標準装備され、350Sには車速に応じて前輪の切れ角を制御してステアリング操作を支援するVDRSも備わるなど、スポーティな走りを楽しめるグレードだ。

一方、プレミアムタイプは「プレミアム」「プレミアム Lパッケージ」があり、全席パワーシートが標準装備され、完全停止はしないが衝突被害軽減ブレーキがプレミアムLパッケージに標準で、プレミアムにはオプションで用意されている。

デビュー時の車両本体価格は238万~380万円。


トヨタ マークX(2代目)▲初代と比べ全幅が20mm拡幅されて1975mmに。初代同様3連のヘッドライトを備え、前輪ホイールアーチを強調したデザインとなった
トヨタ マークX(2代目)▲横滑り防止装置のVSCやタイヤの空転を抑えるTRCが全車に標準装備されているトランク容量は480Lでゴルフバッグ4つを収められる
トヨタ マークX(2代目)▲プレミアムタイプには12個のスピーカーが備えられ、臨場感のある音響を楽しめる。また、駐車時にステアリング操作をアシストしてくれるインテリジェントパーキングアシストもプレミアムタイプのみオプションで用意された

2012年8月にはマイナーチェンジが行われ、フロントグリルやリアライトのデザインが大幅に変更された。

また、静粛性が一段と高められ、溶接のスポット点数が増えたことでボディ剛性も高められた。

併せてグレード構成が変更され、スポーツタイプが350Sと250G Sパッケージのみに、プレミアムが従来の3.5Lに加えて2.5Lエンジン搭載車と、2.5Lの4WD車である2.5プレミアム Fourも加えられ、プレミアム Lパッケージは廃止された。

プレミアムタイプには同時にきめ細かな制御で乗り心地と操縦性を安定させてくれる、FADショックアブソーバーが採用されている。
 

トヨタ マークX(2代目)▲2012年8月のマイナーチェンジで3連のヘッドライトを改め、シャープな顔つきに。リアコンビネーションランプのデザインも変更されている

さらに、他のマークXよりもボディ剛性がより高められ、専用チューニングされた足回りを備えたスポーティグレード「G's」も新たに加えられた。250G SパッケージG'sと 350S G'sの2車種で、車両本体価格は359万~420万円。


トヨタ マークX(2代目)▲写真は2013年2月に100台限定で販売された250G Sパッケージと 350S の「G'sカーボンルーフ」。その名のとおりルーフがカーボンファイバーとなる

2015年3月にはGAZOOレーシングが開発に携わったスポーツモデル「マークX GRMN」が限定100台販売された。350Sをベースに当時の国産FRセダンとしては唯一6速MTを搭載。サスペンションの専用チューニングやボディ剛性の更なる向上、カーボンルーフやスポイラーなどが備えられ、車両本体価格は540万円と高価であった。


トヨタ マークX(2代目)▲2015年3月に100台限定で販売された350S GRMN。専用のエアロパーツを備える他、インテリアでもペダル配置が変更され、手引き式のサイドブレーキが備わり、専用スポーツシートや小径ステアリングが与えられた

2016年11月のマイナーチェンジではフロントデザインが変更されるとともに、全車に衝突被害軽減ブレーキを含む先進安全運転支援機能の「トヨタセーフティセンスP」が標準装備された。

同時にグレード構成も変更され、従来の3タイプ構成はなくなったが、スポーツグレードとして「250S」と「250S Four」、さらに前席電動パワーシートなど高級装備が与えられた「250RDS」と「350RDS」が設定された。
 

トヨタ マークX(2代目)▲2016年11月のマイナーチェンジで溶接のスポット打点がさらに追加されるとともに、足回りも再チューニングされた。従来のプレミアムタイプに備えられていたFADショックアブソーバーが「250RDS」と「350RDS」を除く2WD全車に、「250RDS」と「350RDS」には従来のスポーティタイプに備えられていた減衰力可変ダンパーのAVSが備えられた

2017年9月にトヨタ車のスポーツコンバージョン車のブランド「GR」シリーズが発表されたが、この時マークXにも「GRスポーツ」が加えられた。専用の足回りやスポット溶接の打点追加などが施され、車両本体価格は250S GRスポーツが380万9160円、350RDS GRスポーツが442万8000円。

2019年1月にマークX GRMNが再び350台限定で販売された。2015年モデルより252ヵ所もスポット溶接打点が追加されてボディ剛性の向上が図られている。また、新開発のアブソーバーを用いた専用のサスペンションや電動パワーステアリングのチューニングも施されている。カーボンルーフはオプションとなり、車両本体価格は513万円。

このように、特に2012年8月のマイナーチェンジ以降はスポーティセダンの色を濃くしていった。

伝統のマークII味を最も味わえるプレミアムタイプがオススメ

GAZOOレーシングの手が加えられた「G's」や「GRスポーツ」は、台数が少なく人気も高いため、支払総額200万円以上は見ておきたい。

また、2度限定で販売された「GRMN」も台数は少なく、中には新車時より高いプレミア価格となっているものもあるため、よっぽどこだわりをもっている人以外は、基本的に選択肢から外れるだろう。

では、スポーツグレードはどうかというと、ハイパフォーマンスモデルよりは台数が多いが、やはり人気が高く、走行距離10万km前後でも支払総額200万円を超えるものもある。また、前オーナーがエアロパーツや足回りに手を加えた中古車も多い。

そこで、今回オススメしたいのは、プレミアムタイプだ。装備が充実しているのに走行距離5万km未満でも初期型なら支払総額120万円あたりから狙える。特に、ボディカラーが人気の白や黒「以外」なら、同年式・同走行距離で比べるとさらにお手頃感は高くなる。

もともとマークIIはコロナの上級モデルとして登場したモデル。販売が絶好調だったバブル期には「若旦那が乗る車」とも言われたくらい、プレミアム感と、クラウンにはない若々しさをウリにしたモデルだ。

その伝統に最も沿っているのが、プレミアムタイプじゃないだろうか。

しかも、プレミアムタイプには2012年8月のマイナーチェンジからFADショックアブソーバーが備わるので乗り心地も変にふわふわせず、快適なドライブを楽しめる。

スタンダードタイプなら同じ金額で「トヨタセーフティセンスP」を備えた2017年以降のモデルも狙えるが、安全装備で買うなら他のセダンやSUVなどでもいい。

トヨタが通算11代にわたって磨いてきたマークII&マークX味を、プレミアムタイプで味わってみてはどうだろうか。
 

▼検索条件

トヨタ マークX(2代目)×「プレミアムタイプ」グレード×全国

▼検索条件

トヨタ マークX(2代目)×全国
文/ぴえいる、写真/トヨタ、篠原晃一

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。