BMW 4シリーズクーペ ▲新型のBMW 4シリーズクーペは超巨大なキドニーグリルを採用したことで物議を醸していますが、アレの良し悪しはさておき、新型登場の影響を受けてグッと買いやすくなってきた(そして端正な顔立ちでもある)先代のBMW 4シリーズクーペに、今一度注目してみたいと思います!

新型登場により流通量がグッと増え、平均価格も200万円台に

2020年10月に発売された新型BMW 4シリーズクーペのキドニーグリル(フロントグリル)が、相変わらず賛否両論を呼んでいます。

このところの自動車デザインはフロントグリルのサイズを大きくするのがトレンドですが、新型4シリーズクーペのそれは「さすがにデカすぎるでしょ!」という感じで拒否反応も生んでいるのです。

写真ではなく生で実際に見る新型4シリーズクーペの顔つきは「……意外とイケるかも?」というのが個人的な感想ですが、アレを忌避したくなる気持ちもよくわかります。

そして新型に対する各位の評価がどうであれ、少なくとも確実に言えるのは「バカでかいキドニーグリルが登場したことにより、先代4シリーズクーペの端正な美しさがより際立つようになった」ということでしょう。

BMW 4シリーズクーペ▲ちなみにこちらが新型BMW 4シリーズクーペのフロントマスク。ううむ……

そして新型の登場は、先代のデザインに対する感じ方だけでなく「流通量」と「価格」にも大きな影響を及ぼしています。

下記のグラフをご覧ください。

BMW 4シリーズクーペのグラフ

2020年の途中までは微妙に流通量が減り続けていた先代BMW 4シリーズクーペの中古車ですが、2020年10月に新型が登場したタイミングで増加に転じ、その後もなだらかな上昇曲線を描いています(※モノが売れにくい8月は少し減っていますが)。

流通量の増加に伴い、先代4シリーズクーペの平均価格にも変化が生じました。下のグラフをご覧ください。

BMW 4シリーズクーペのグラフ

2019年と2020年はおおむね300万円前後で横ばい状態だった先代4シリーズクーペの平均価格ですが、2021年1月には「300万円の壁」を明確に突破し、直近の平均価格は264.8万円まで下がっているのです。

つまり、もしも先代のBMW 4シリーズクーペに今なおご興味をお持ちであるならば、「今」こそ、その中古車に大注目してみるべきタイミングである――ということです。

であるならば今、様々な種類がある先代4シリーズクーペの中で「どれ」を選ぶのが結局は得策なのでしょうか?

次章以降、詳しく調査してまいります。

BMW 4シリーズクーペ▲こちらが先代BMW 4シリーズクーペ。F30こと先代BMW 3シリーズセダンをベースとする4シーターの2ドアクーペ。端正な顔立ちとフォルム、そしてBMWらしい重厚かつ俊敏な乗り味が魅力の1台です

▼検索条件

BMW 4シリーズクーペ(初代・F32型)×全国 ※本体価格昇順

いろいろあるが、流通の大半は「Mスポーツ」

とはいえその前に、先代BMW 4シリーズクーペという車自体についての簡単なおさらいも済ませておきましょう。

BMW 4シリーズが初めて日本で発売されたのは2013年9月のこと。それ以前は「3シリーズクーペ」というのが代々続く車名でしたが、先代3シリーズ(F30)をベースとするクーペモデルを作る際に「4シリーズ」という独立したシリーズ名となり、初代4シリーズの中で最初に発売されたのが、2ドアクーペである4シリーズクーペ(F32)でした。

当初は2L直4ターボの「428i」と3L直6ターボの「435i」という2グレードのみでスタートし、2014年1月に、428iと同じ2Lターボながら出力を抑えたエントリーグレード「420i」を追加。

2016年4月には搭載エンジンの刷新が行われ、2L直4ターボは新エンジンになっても排気量も最高出力も変わりませんでしたが、2L直4ターボの高出力版である428iは「430i」という車名に変更。3L直6ターボで306psを発生した435iは、同じ3L直6ターボながら326psを発生する「440i」に車名が変わりました。

……このあたり、車名の数字が重複していたりいなかったりで少しややこしいのですが、2017年5月にはマイナーチェンジを実施して内外装デザインをリフレッシュ。このタイミング以降の世代が、俗に「後期型」と呼ばれています。

BMW 4シリーズクーペ▲写真は本国仕様のため左ハンドルですが、先代4シリーズクーペ Mスポーツの運転席まわりはおおむねこのようなデザインと雰囲気です

そして日本では2020年10月に、鼻(キドニーグリル)がデカい新型4シリーズクーペが登場したことで販売終了になった――というのが、F32こと先代BMW 4シリーズクーペのあらましです。

なおF32のそれぞれには、「スポーツ」「ラグジュアリー」「Mスポーツ」という3種類のデザインラインが存在します。それぞれの主な特徴は下記のとおりです。

「スポーツ」には文字どおりスポーティなイメージの19インチホイールが装着され、専用デザインの前後バンパーも採用。キドニーグリルは9本のワイドブラックバーとなり、インテリアも、ブラックとレッドを組み合わせたスポーティなイメージとなります。


BMW 4シリーズクーペ▲程よくスポーティなデザインラインである「スポーツ」

「ラグジュアリー」のキドニーグリルは11本のクロームバーで、その他の各部にもクロームパーツを多用してエレガントさを強調。

ホイールのサイズはスポーツ同様の19インチですが、デザインはエレガント系です。インテリアにもクロームとウッドを多用し、名称どおりのラグジュアリーなイメージになっています。


BMW 4シリーズクーペ▲キドニーグリル内のバーの数が多く、ホイールもエレガントなフィンタイプとなる「ラグジュアリー」

人気の「Mスポーツ」は大型エアインテーク付きのフロントバンパーとディフューザー付きリアバンパーを採用し、迫力あるスタイリングに。エアディフューザーはスポーティな印象を与えるハイグロス・ブラックに塗られています。

インテリアもブラックが基調で、メーターのスケールとリングはスポーティな赤になります。

またMスポーツの場合、サスペンションは標準で「Mスポーツ・サスペンション」となり、オプションとして「アダプティブMサスペンション」を選択することも可能でした。


BMW 4シリーズクーペ▲専用エアロとMスポーツサスペンションのほか、様々なスポーティ系の装備が付く「Mスポーツ」

……という具合に「スポーツ」と「ラグジュアリー」「Mスポーツ」の主な違いをつらつらと述べましたが、実際に市場で流通している先代4シリーズクーペは「ほとんどがMスポーツである」と言っても過言ではない状況です。

そのため、スポーツとラグジュアリーについては特に何も考えなくてもいいのかもしれません。

それでは次章以降、「ニーズ別」に先代4シリーズのベストバイを具体的に考えてみることにいたしましょう。

走り以上に「手頃な価格」であることを優先させたい
→2014~2015年式の420i Mスポーツ
予算目安:総額220万~300万円

BMW 4シリーズクーペ▲圧倒的な速さは特にないものの、普通に走る分には十分以上で、なおかつ相場的な安さと流通量の豊富さが魅力となるのが、184psの2L直4ターボを搭載する420i系

「さほど飛ばしたいわけではないのでパワーはほどほどで構わない。とにかく程よくお安い予算で、美しい4シリーズクーペが買いたい」という場合には、前期型の420i Mスポーツが最適でしょう。

2Lターボとはいえ最高出力184psですので、その速さは(BMWとしては)ほどほど程度です。しかし、「目を三角にして高速道路をぶっ飛ばす!」みたいなタイプの人でない限りは、さほどの不満は覚えないはずです。そして、他の高出力系と比べれば燃費が良いというのも、420iの美点となります。

流通量は先代4シリーズクーペの中では最も多く、総額220万~300万円の範囲内で、走行2万~5万kmぐらいの物件が容易に見つかるでしょう。

▼検索条件

BMW 4シリーズクーペ(初代・F32型)×総額220万~300万円×2014~2015年式×420i Mスポーツ×全国

「BMWらしい走り」を手頃な予算で味わいたいたい
→2013~2015年式の428i Mスポーツまたは435i Mスポーツ
予算目安:総額250万~350万円

BMW 4シリーズクーペ▲写真は最高出力306psの3L直6ターボを搭載する435i Mスポーツ

先ほど、最高出力184psの420iが「飛ばし屋さん以外はさほどの不満を覚えないはず」と申し上げたことに嘘はありません。

しかしBMWを好む人というのは、バカみたいには飛ばさない真面目なドライバーであっても「やはりそれなり以上のパワーや速さは常に感じていたい」という人が多いはず。そうであるならば、やや非力な420iだと、なんだかんだで若干の物足りなさを覚えてしまう可能性はあります。

そこを危惧する場合は、同じ前期型であっても428iまたは435iを選んだ方がいいでしょう。

428iは最高出力245psの2L直4ターボエンジンを搭載した前期モデルで、2016年3月までの435iは、直列6気筒の3Lターボエンジンを搭載した前期モデル。その最高出力は306psです。

「BMWといえばやっぱり直列6気筒だろ!」ということで435iをお選びになるのもいいですが、実際問題としては直4ターボである428iの「鼻先の軽さ」も、ワインディングなどでは特に魅力的です。

そのためここは――両モデルとも流通量がさほど多くはないというのもありますので――決め打ちではなく「428iか435iのどちらでもOKとして、グッとくる1台と巡り合ったらそれを買う」という方針で臨むのが得策でしょう。

その場合、予算的には総額250万~350万円ほどのゾーンで、走行2万km台から6万km台までの428iまたは435iが見つかるはずです(ただし流通量がやや少なめなので、若干苦労する可能性もありますが)。

▼検索条件

BMW 4シリーズクーペ(初代・F32型)×総額250万~350万円×2013~2015年式×428i Mスポーツ×435i Mスポーツ×全国

カネに糸目はつけない! とにかく最高のやつが欲しい!
→2016年式以降の440i Mスポーツ
予算目安|総額380万~500万円

BMW 4シリーズクーペ▲2016年4月のエンジン刷新時に誕生し、2017年5月にはマイナーチェンジも受けた440i。搭載エンジンは最高出力326psの3L直6ターボ

何をもって「最高のやつ」とするかは意見が分かれるところでしょうが、まぁ2016年4月のエンジン刷新時に435iに代わって登場した440iこそが、先代4シリーズクーペの中ではパフォーマンスも価格も最高ということになります。

最高出力326psの3L直6ターボを搭載するこちらは、同時期のM4クーペほどではないにしても「鬼のように速い」と言って間違いありませんので、BMW好きの方であれば必ずや満足できるでしょう。

価格はマイナーチェンジ前の世代が総額380万~400万円付近で、2017年5月に行われたマイナーチェンジ以降のものが総額500万円ほどですが、残念ながら両車とも流通量は激少です。

価格も決して安くはないので、「どうしても超ハイパフォーマンスなBMWじゃないと気が済まない!」という人が決め打ちで買う類のモデルだといえます。

そして、先ほど「高い」と言いましたが、現行型の440i xDriveクーペ(1038万円)と比べれば、“激安”といえるのかもしれませんね。

▼検索条件

BMW 4シリーズクーペ(初代・F32型)×総額380万~500万円×2016年式以降×440i Mスポーツ×全国

1つだけに決める作業は悩ましいが、どれを選んでもハズレなし!

この他、新エンジンに変わった世代の420i Mスポーツ(2016年4月~2017年4月/総額330万~360万円)とマイナーチェンジ後の420i Mスポーツ(2017 年5月~/総額320万~410万円)は、旧型となった2L車にそれだけのお金を投じることを良しとするのであれば、好バランスな買い物にはなるでしょう。

ただし430iは超希少で、440iも前述のとおり希少であるため、実際の選択肢には入りづらいものがあります。

これから先代BMW 4シリーズクーペを買うのであれば、「世代を問わず何かと程よい420i」と「直6が魅力の435i」「直4だが好フィールでハイパワーな428i」という3種類のなかで悩むことになるのでしょう。

どれを選んだとしても結論としてはステキな車ですので、ぜひ楽しく悩んでいただけましたら幸いです。

▼検索条件

BMW 4シリーズクーペ(初代・F32型)×全国

※記事内の情報は2021年9月21日時点のものです。

文/伊達軍曹 写真/BMW
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。