ホンダ S2000▲ホンダの創立50周年記念車として発表されたS2000。ホンダ車ではS800以来のFRモデルとなった

ホンダ S2000の中古車は今

ホンダの走りのDNAが存分に注ぎ込まれたS2000は、1999~2009年まで10年間にわたり製造された。

デビュー時は、レブリミットが9000rpmの2L 直列4気筒エンジンを搭載。最高出力は250ps。NA(自然吸気)でリッターあたり125psを達成した。

2005年11月には搭載エンジンを2.2Lに変更。目的は中低速のトルクを高めるための変更で、これにより、街中でも運転しやすくなっている。

生産終了から10年以上経過した現在、S2000の中古車相場は高値安定。走行距離10万km以下の物件は、予算300万円以上ないと見つけることができないという状況だ。

だが、代替がきくものがない車種だけに、狙っているならまだ選択肢があるうちに腹をくくって購入に踏み切ってほしい。

ここからはS2000の特徴や中古車相場について紹介する。
 

S2000(初代)の特徴と中古車相場

■S2000(初代)DATA
生産期間:1999年4月~2009年6月
中古車流通量:約190台
中古車価格帯:190万~900万円
全長:4135mm × 全幅:1750mm × 全高:1285mm
 

ホンダS2000 ▲幌は電動開閉式。スイッチを押して約6秒で開閉可能

■S2000(初代)の特徴
1995年10月から開催された第31回東京モーターショー。初代プリウスのコンセプトモデルが世界初公開されたこのショーで、ホンダは2シーターのライトウェイトFRオープンモデル「SSM」を出展。プリウスとともに大きな話題となった。

このコンセプトカーが3年の月日を経て、S2000として1998年10月に世界初公開。そして、1999年4月から発売が開始された。

“新世代リアルオープンスポーツ”というコンセプトで開発されたS2000は、ハイXボーンフレームと名付けられたボディ構造を採用し、オープンボディでありながらクローズドボディと同等の剛性や衝突安全性が与えられた。

これにより、オープンモデルならではの開放感ある走りだけでなく、鋭いハンドリングや強烈な加速感も味わえるマシンになっている。
 

ホンダS2000 ▲NAでリッター125psを達成。これは世界トップレベルの性能

搭載エンジンは2L 直列4気筒 DOHC VTECで、最高出力は250ps/8300rpm、最大トルクは22.2kg-m/7500rpmに達する。リッターあたり125psを発揮する自然吸気エンジンのレブリミットは9000rpmという、ホンダらしい高回転型エンジンになっている。

足回りは高い限界性能とレスポンスの良さを両立した、新開発のインホイール型ダブルウィッシュボーンサスペンションを搭載。

ステアリングのギア比もクイックな設定になっているため、少し切っただけでグッとボディの向きを変えていくレスポンスの鋭い設定になっている。

ホンダS2000 ▲世界初の機構となるVSGを搭載。それに合わせて専用ダンパーや専用スタビライザー、専用LSDを搭載した

S2000は10年のモデルライフの中で、マイナーチェンジやグレード追加などの改良が何度か行われている。

■2000年7月 追加グレードを設定
【追加グレード】
・「2.0 タイプV」:世界初のステアリング機構となるVSG(車速応動可変ギアレシオステアリング)を搭載

VSGにより、低中速走行時はステアリングを切る量を少なくしてワインディングロードなどコーナーが連続する場面でもスポーティに走れるようになった。高速走行時は低中速よりもレスポンスを弱めにすることで、安定感のある走りが実現されている。

ハンドルに大きな舵角を与えたときはハイレスポンスになるため、コーナリング中の切り増しの操作感が向上した。
【ボディカラー】
・ミッドナイトパープルを追加

【オプション設定】
・すべてのボディカラーに、レッドの本革シートをオプション設定

ホンダS2000 ▲スポーティで高級感のあるレッドの本革シートをオプション設定

■2001年9月 マイナーチェンジ & カスタムカラープランを設定
 

ホンダS2000 ▲カスタムカラープランを導入し、自分好みのS2000を選びやすくなった

【機能追加・変更】
・リアウインドウにタイマー付きの熱線入りガラスを採用。ガラスが曇りやすい冬や梅雨時期でも後方視界が確保しやすくなった
・サスペンションチューニングを変更し、しなやかな乗り心地を実現
・外装色13色、内装色5色、幌色2色を自由に組み合わせられるカスタムカラープランを導入

■2003年10月 マイナーチェンジ
 

ホンダS2000 ▲リアコンビランプはストップランプとテールランプにLEDが使われている

【デザイン変更】
・エクステリア:フロントライトとリアコンビネーションランプ、前後バンパーのデザインを変更
・インテリア:センターコンソールやオーディオリッド、メーター、ドアセンターパッド、ショルダー部のデザインを変更

【機能追加・変更】
・ボディ剛性を強化
・ブレーキパッドは耐フェード性に優れたものを採用
・サスペンションのセッティングを見直し、走行性能が向上


■2005年11月 マイナーチェンジ
 

ホンダS2000 ▲エンジンを2.2Lに変更。これにより車の性格が大きく変わった

【エンジン変更】
・2Lから2.2Lに変更。最高出力は8ps小さくなり、最大トルクは0.3kg-mアップ

ハードなスポーツドライビングが持ち味のS2000だが、一方で低回転域のトルクが薄いために街中で扱いづらいというネガティブな意見もあった。それを受けてエンジンを変更。中低速域のトルクを向上させ、街中などでの扱いやすさが高められた。

【機能追加・変更】
・ギアレシオをローレシオ化。街乗りの快適性が向上
・アクセルにドライブバイワイヤーを新採用
・シート形状を変更し、座ったときの剛性感をアップ
・デジタルメーターのデザインを一新。メーター内に外気温表示も追加
・車両の型式をAP1からAP2に変更

ホンダS2000 ▲変更されたデジタルメーター

■2007年10月 新グレードの設定
【グレード追加】
・「タイプS」:VSAとサテライトスピーカーを標準装備して安全性、快適性を向上。専用のエアロパーツ、専用のサスペンションチューニングを施し、空力性能とステアリング操作の応答性が高められた
 

ホンダS2000 ▲大型リアスポイラーや専用フロントスポイラーが備わる「タイプS」

■S2000(初代)の中古車相場
ここしばらくS2000の中古車相場は高騰傾向にあり、この流れは今後も続くと思われる。

2021年7月時点で、中古車平均価格は335万円、車両本体の価格帯は180万~900万円という状況。だが、これはあくまで価格が表記されているものを集計しており「価格応談」のものは含んでいない。

車両本体価格250万円以下の低価格帯は、走行距離が15万km近く、修復歴があるものもある。

S2000は本格的スポーツカーで、特に前期型は扱いが難しい車だったこともあり、修復歴がある車が多いのは致し方ないことかもしれない。購入を検討する際は、修復の箇所をしっかり確認しておきたい。

500万円以上の高価格帯は、後期型の走行距離5万km以下という低走行車やフルノーマル物件が中心となっている。

ちなみに前期型と、エンジンが2.2Lになった後期型の価格帯を比べると、前期型は190万~880万円、後期型は280万~900万円と、やはり前期型の方がやや安価だ。

しかし、グレードや年式によって特段価格が落ちているというゾーンはなく、個別のコンディションによって価格が大きく左右されるという相場状況だ。

新車時価格の378万円~を鑑みると、現在の相場はプレミアム価格と言える状態になっている。しかし、繰り返しにはなるが、S2000に代わるモデルは他にはなく、手に入れられる物件が流通している今が買い時とも考えられる。

価格帯も広く、物件の状態も個々別々なだけに、状態をしっかり見極め価格を含めて納得したうえで購入してもらいたい。
 

▼検索条件

ホンダ S2000(初代)× 全国

※記事内の情報は2021年7月17日時点のものです。
 

文/高橋満 写真/ホンダ

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL