フォルクスワーゲン ゴルフ2▲広大な店舗に無数のゴルフ2がひしめく。さらに別の場所にも部品取り用の車両などを保管しているという

専門店店主に聞くゴルフ2の魅力と令和の購入ガイド

電気自動車だ、自動運転だ、と新型車の進歩はどんどん加速しているが、一方で、よりオシャレで個性的なカーライフの相棒として、1990年前後に登場したちょっと古めの車(ネオクラシックやヤングタイマーと呼ばれる)も人気を集めている。

今回は、そんなヤングタイマーの中でも根強い人気のフォルクスワーゲン ゴルフ2に注目。20年以上ゴルフ2を専門に扱ってきたスペシャルショップ「スピニングガレージ」の代表、田中延和さんにその魅力と最新のゴルフ2事情について伺った。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ2▲ゴルフ2専門店「スピニングガレージ」の田中代表

ゴルフの“らしさ”を最も感じられるのはゴルフ2

――そもそも、なぜゴルフ2の専門店を始められたのですか?
もともとゴルフ2が好きで乗っていたんですが、3、4とゴルフが進化していくにつれて、だんだんゴルフらしさが薄くなっていくような気がして、なんとか2を残したいと1998年、24歳の時にスピニングガレージを始めたんです。

開業資金として300万円、バイク便で1年間働いて貯めました。ゴルフ2専門店なんて商売として成り立つのだろうかと不安もありましたけど、この車の価値をわかってくれる人は必ずいる、という信念みたいなものがありました。

結局のところは、自分が大好きなゴルフ2に乗り続けていたいから始めたようなものですね、ダメ元で(笑)。

――ダメ元だったのが20年以上続いていると! どんなところがゴルフ2の魅力なのでしょう?
あの有名なビートルの後継車として、ゴルフ1が1974年に発表されました。ビートル同様の質実で合理的な設計思想を受け継ぎながら、ボディは一転して直線的なデザインとなり、コンパクトなサイズ感と乗り心地のよさで83年に登場した2と併せて、まさに世界のスタンダードとして愛されました。

シンプルでありながら洗練されたデザイン、過不足のない使い勝手の良さ、高い耐久性・・・・・・。そんなゴルフの“らしさ”を最も感じられるのはゴルフ2までですね。3以降ももちろんいい車ではありますが、1、2と比べると時代とともにデザインやサイズ感が“フツー”になっていった気がします。

ジウジアーロデザインのゴルフ1は魅力的ですが、もはやクラシックカーの領域に入りつつあるので日常的に使うにはそれなりの覚悟が必要です。その点、ゴルフ2は趣味性と実用性の両方を兼ね備えています。ガレージに飾るならゴルフ1、走って楽しむならゴルフ2といった感じでしょうか。

唯一無二のゴルフらしい味わいを楽しみながら日常的に乗り回すという点では、新しすぎず古すぎない、まさにネオクラシックでヤングタイマーなゴルフ2が最適だと思いますね。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ2▲成約済み車両や極上コンディション車の保管庫

現実的な値段で手に入れるなら最後のチャンスかも

――どういう人がゴルフ2を購入されるのですか?
以前は車好きな人が多かったですね。車好きが外車の入門車としてゴルフ2を手に入れて、そのまま沼にはまる、みたいな。まさに僕自身がそうだったわけですけど(笑)。

ところが最近は、いわゆる“フツーの人”、例えば女性の方が初めてのマイカーにゴルフ2を選ぶ、といったケースが増えています。理由は、カワイイから。

昔ながらの車好きというタイプではないけど、だからといってゴルフ2のことを全然ご存じないわけではないんですよ。今の若い人は情報収集力に優れているから、きちんと自分なりにリサーチしたうえで、ゴルフ2に的を絞ってスピニングガレージにいらっしゃいます。

むしろ年配の方のほうが固定概念にとらわれがちかもしれませんね。ゴルフ2はGTIじゃなければ、とか。最近は「若者の車離れ」なんて言われますが、車の選び方や接し方が時代とともに変わってきただけじゃないのかな、と実感しています。

長く乗り続ける方が多いのもゴルフ2ならではかもしれません。「次に乗りたいと思う車が見当たらないから」と、よく言われます。

――現在のゴルフ2の流通量や相場は、どうでしょう?
さすがに最近はタマ数が減ってきました。それに、以前は仕入れてそのまま売りに出せるような程度のいい個体も多かったのですが、最近は整備に時間がかかるようになりましたね。逆に言えば、今はきちんと整備されたゴルフ2が店頭に並んでいるとも言えますけど。

ハイパフォーマンスのGTIやオープンタイプのカブリオ、MT車といった趣味性の高いモデルは、今も昔も指名買いが多いですね。実用的にゴルフ2を使い倒したいという方は、スタンダードなATのCLIやGLIといったグレードから選ばれます。実用車としてなら、グレードの違いにこだわるよりも程度の良し悪しで選んだ方 がいいと思います。

タマ数が減ってきたこともあって、この数年、相場は上がりつつあります。きちんと整備されたもので100万~150万円、GTIやカブリオといった人気モデルだと200万円くらいでしょうか。

以前は、整備を施す前の車両を1万円で販売する「1万円ゴルフ」というコーナーもあったんですが、今は、高くてもいいから最初から整備された車を選びたいというお客さんがほとんどです。そうしたことも相場の上昇に関係しているかもしれませんね。

だんだんパーツも手に入りにくくなってきていますから、現実的な値段で上物のゴルフ2を手に入れるなら、今が最後のチャンスかもしれません。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ2▲こちらは入庫中車両の一部。左手前がオープン仕様のゴルフカブリオ、右奥がハイパフォーマンスモデルのゴルフGTIだ

――ゴルフ2を手に入れたいと考えている人へのアドバイスをお願いします
ゴルフ2はサビに強く基本的に丈夫な車ですから、他の古い車に比べたら維持しやすいと思います。とはいえ、それでも30年前の車ですから今どきの車のようにメンテナンスフリーというわけにはいきません。しかし、だからといって怖がることはない。大事なのは壊れる前に気づいて対処してあげること。人間の身体と同じです。

そのためには車が発する普段とは異なる音とか振動とか、そうしたSOSをいち早く察することですね。耳を傾けていれば車の悲鳴が聞こえてくるはずです。もちろんマメな点検や整備も大事。整備と修理は違うということも理解しておいていただきたいですね。

また、古い車は個体差が大きいですから、できるだけたくさん実車を見た方がいいと思います。スピニングガレージには、実働車で約100台、不動車で約100台のストックがあります。たぶんゴルフ2の在庫数では日本一だと思います。

ボディカラーが豊富なのもゴルフ2の魅力のひとつですから、いろいろな個体を実際に見てお好みの1台を探し当ててください。そして末永く付き合って、世界の名車であるゴルフ2を次の世代へと引き継いでいっていただけたらと思います。

今なら、まだ間に合います(笑)。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ2▲スピニングガレージの整備工房
フォルクスワーゲン ゴルフ2▲個体のクセなどを把握して整備するため1台ごとに担当「主治医」が就く
フォルクスワーゲン ゴルフ2▲棚にはドイツ本国から取り寄せたパーツがズラリと並ぶ
フォルクスワーゲン ゴルフ2▲パーツ供給のなくなった部品は、国内の工場に発注して独自に作っている
フォルクスワーゲン ゴルフ2▲お宝保管庫で見つけたゴルフカントリー。ゴルフ2をベースにSUVライクに仕立てたレアなグレードだ。実は田中代表のTシャツに入っていたイラストもこちら

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フォルクスワーゲン ゴルフ2(1990年2月~1992年3月) 生産モデル×全国
文/夢野忠則 写真/阿部昌也
 
夢野忠則

ライター

夢野忠則

自他ともに認める車馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。 現在の愛車は2008年式トヨタ プロボックスのGT仕様と、数台の国産ヴィンテージバイク(自転車)。