新車時の半値以下ということで超お買い得に見える先代BMW 3シリーズの後期型って、実際どうなんだ?
2020/09/20

果たしてそれは「お買い得」なのか、そうでもないのか?
先代BMW 3シリーズの後期型が今、爆安化している。いや「爆安化」という表現はややオーバーかもしれないが、かなり手頃になっていることは確かだ。なにせ新車時価格554万円だった後期320i Mスポーツが車両価格200万円ぐらい、支払総額で見ても220万円前後からという、つまりは「新車の半値以下」で狙えてしまうのだから。
しかし世の中、光あるところには必ず影があり、過剰に安い中古車にもたいていの場合は「理由」がある。
そういった観点から言うと、新車時の半値か半値以下の先代後期型BMW 3シリーズというのは「お買い得」なのか、それとも「やめといた方がいい代物」なのか? 様々な角度から冷静に検討してみたいと思う。
だがその前にまずは先代BMW 3シリーズという車自体について、ごく簡単にだがご説明しておこう。
F30こと先代のBMW 3シリーズは、2012年1月に6代目の3シリーズとして発売された。全長は前身のE90型より100mmほど延長されたが、1800mmという全幅と1440mmの全高はE90型とほぼ同じ。本国仕様の全幅は1811mmだが、日本仕様のF30はドアハンドルを専用とすることで1800mmに抑えたのだ。
初期モデルの搭載エンジンは2L直4ガソリンターボで、その後2Lのディーゼルターボを追加。そして2015年9月にはマイナーチェンジを行い、俗に言う後期型へと進化。具体的にはLEDヘッドランプやリアコンビランプなどのデザインを変更し、エンジンも新世代のモジュラーエンジンへと刷新。先進安全装備もこのとき、さらに充実したものへとバージョンアップされている。
その後プラグインハイブリッドの330eを追加し、2016年9月には1.5Lの直3ターボを搭載したエントリーグレードの318iを追加。そして現行G20型が発表される2019年1月まで販売された――というのが、先代F30型BMW 3シリーズのざっくりとしたヒストリー。で、今回の検討対象は2015年9月以降の「後期型」と俗に呼ばれている世代のF30型BMW 3シリーズだ。


先代後期の3シリーズはボロくないし、ショボくもない?
まず最初に検討しなければならないのは「ボロさ」についてだ。「安いのはいいけど、その分だけボロいんじゃないの?」という懸念である。
これについては結論として、「まぁそんなにボロくはないでしょう」というのが検討結果となる。
新車時の半値か半値以下、つまり支払総額200万円ちょいから280万円ぐらいで買える先代3シリーズ後期型のなかには一部、確かにけっこうな過走行もあるが、たいていは走行1万km台から3万km台。そして2015年9月以降の後期型ゆえに、いちばん古くても約4年落ちである。
もちろん中古車のコンディションというのは走行距離と年式だけで測れるものでは決してないが、それでも「せいぜい3、4年落ちで、せいぜい走行3万kmぐらいの車」というのはたいていの場合、「そこまで劇的にヤレてはいないことが多い」とは断言できる。
いやもっと正確に言うなら、「激しくヤレてる個体もあるが、そうではない個体も多い」となるだろうか。まぁいずれにせよある程度時間をかけて探せば必ず、激しくヤレてはいない個体を見つけることができる。それゆえこの問題については、さほど心配する必要はないはずだ。
お次に湧いてくる懸念は「でも1コ前の型だから、もはやショボく感じられるんじゃないの?」ということだろうか。
これはまぁもっともな懸念で、車というのはたいていの場合、新型が登場して「先代」になってしまうと、実際の機能の面でもデザイン面でも妙にしょぼくれた感じに見えてくるものだ。
ならば、2019年1月に「1コ前の型」となったF30型BMW 3シリーズの場合はどうなのか?
まずデザインについて。外観のデザインと雰囲気は……意見が分かれる部分かもしれないが、筆者としては「どちらも似たようなもの」に見える。もちろん、現行G20型の方が微妙かつ確実に「今風のイケメン」になっていることは明らかだが、遠目に見る分には同じというか、少なくとも大差はないように思える。


では内装のデザインについてはどうだろうか?
……ここについては正直、現行型の方がキラキラしていてカッコいいというか、今っぽい。先代F30型はいかにも「2010年代初頭のデザイン」といった感じだ。しかし2010年代初頭系デザインのほうが「落ち着いていて好ましい」という見方もできるわけで、さらには「キラキラ系デザインが好きな人であっても、先代F30型の内装はたぶんギリギリ我慢できるはずのデザインでかも」ということで、ここは「許容範囲」ということにしたい。


走りも先進安全装備も特に大きな問題はなし
そして内外装デザインに続いては、「走り」について。先代の走りは、現行型と比べればやっぱりショボいのか? それとも「意外とそうでもない」なのか?
これについては、筆者の私見としては「先代であっても特に問題なし!」である。もちろん車の走行性能というのは、新しく開発されたやつの方が優れているのは当然すぎるほど当然で、特に現行G20型BMW 3シリーズの「アダプティブMサスペンション」は素晴らしい。
だがそれは、なんというか「100点だったものが120点になりました」みたいな話であって、なぜか満点超えの120点を取る猛者が現れたからといって、100点という立派な成績を取った者の価値が減じるわけではない。
というか、現行G20型はボディサイズがけっこう大きくなってしまったため(全長は70mm、全幅は25mm拡大している)、街中で普通に使う分には先代の方が実は扱いやすい――という側面もある。
ということで走りについては、「厳密な意味での最高を常に追い求めたい人は現行型を(高いお金を出して)買うべきだが、そうでもないのであれば、先代のコンディション良好な中古車でも普通に十分」というのが結論となるだろう。

お次は先進安全装備というか、運転支援システムについてである。
この分野も当然ながら「新しければ新しいほど優秀」となるわけだが、先代の3シリーズも決して悪くはない。
最初期モデルは衝突回避・被害軽減ブレーキシステム(単眼カメラにて制御)もアクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)もオプションだったが、2013年8月には、レーダーやカメラなどで車両の周囲を監視し、衝突事故を回避もしくはその被害を軽減する「ドライビングアシスト」が標準装備に。
2014年8月には、それまではオプション扱いだったアクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)が標準装備となり、今回注目している後期型(2015年9月以降)では、自動ブレーキがミリ波レーダー+単眼カメラでの制御に進化して、作動範囲も5km/h~ 210km/hに拡大し、完全停止まで行う。さらに2016年5月にはレーンチェンジ・ウォーニングも標準装備となっている。
要するに「現行型は3眼タイプのカメラになるなどしてさらに進化してますが、まぁ先代後期のこれでも十分ですよ」という話だ。

安い理由は「あまりにも数が多いから」
以上の各種検討によれば、先代よりも現行型の方が何かと勝っていることは当然だが、先代もそう捨てたものではないというか、むしろ「かなり健闘している」というのが実態に近い。
つまりそれの低走行車両が、新車時の半値以下であり、軽スーパーハイトワゴンの新車をフルオプションで買う予算とそう大差はない「総額200万円ちょい」から狙えるのであれば、それは大いにお買い得だと考えられる――というのが今回の結論である。
そしてなぜ、先代BMW 3シリーズの中古車相場がそんなにも安いのかといえば、理由は単純に「数が多いから」だ。
特に都内ではBMW 3シリーズというのは昭和の時代のカローラ並み(?)に保有台数が多く、筆者が住まう世田谷区においては「ワンブロックに1台」ぐらいの勢いで、白や黒のF30型BMW 3シリーズがちょこんと車庫に収まっている。

そういった状況では「希少価値」などというものが出るはずもなく、むしろ競争過多となり、中古車相場はどんどん安値の方向へ向かっていく。それこそが、好条件な物件であってもF30型3シリーズの相場が比較的安い理由であり、「壊れるから」とか「ボロいから」とかではないのだ。
ただ、唯一の問題はこれ、すなわち「あまりにも数が多くて没個性的である」ということなのかもしれない。
しかしそこさえ気にならないのであれば、先代BMW 3シリーズの後期型ほどお買い得な中古車はそうそうあるものではない。万人に近いほど多くの人に強くオススメしたい、非常にナイスな車種選択である。
▼検索条件
BMW 3シリーズ(F30型・後期モデル)×全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
この記事で紹介している物件
BMW
3シリーズ 320i Mスポーツ 後期型 1オ-ナ-禁煙車 追従ACC LEDライト 1オーナー車 アダプティブクルーズコントロール インテリセーフ レーンチェンジW LEDヘッドライトフォグ HDDナビ バックカメラ リアパークセンサー 前後ドライブレコーダー
本体価格128.0万円
支払総額137.1万円
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