▲もともとの価格帯が違う2台ですが、例えば中古のプリウスと新車のアクアなら十分に比較対象となります ▲もともとの価格帯が違う2台ですが、例えば中古のプリウスと新車のアクアなら十分に比較対象となります


世界的に見て日本はハイブリッド大国。多彩な選択肢があるのは、トヨタのプリウスがこの世界を切り開いたから。これは揺るがぬ事実でしょう。そんなプリウスに対し、下克上的に現れたアクアは燃費を気にする人とっては気になる存在。サイズも価格帯も違う2台ですが、「どちらにしようか」と迷っている方も中にはいるでしょう。

そこで、トヨタ渾身の自信作であるプリウス(4代目)とアクア(初代)をあらためて比べてみましょう。ひょっとしたら「プリウスを買うつもりだったけどアクアで十分」「アクアにしようと思ったけれどプリウスじゃないとダメだな」といった結論が出てくるかもしれませんよ。
 

 

【概要】プリウスとアクアの標準グレードは約70万円の価格差

まずはプリウスとアクアをおさらい。4代目プリウスは2015年にデビューしました。サイズは全長4575mm×全幅1760mm×全高1470mm。グレード構成は上から「Aプレミアム」「A」「S」「E」の4つで、いずれもハイブリッドシステムには1.8Lのガソリンエンジンが組み合わされています。

初代アクアは2011年にデビューしたロングセラーモデルです。全長4050mm×全幅1695mm×全高1455mm。グレード構成は上から「Crossover」「Gソフトレザーセレクション」「G」「S」「L」の5つ。ハイブリッドシステムのガソリンエンジンは、2代目プリウスと同じ排気量の1.6Lです。

ボディタイプは、トヨタの公式サイトではプリウスを「セダン」に分類。セダンは3ボックスとも呼ばれ、一般的にエンジンルーム、居住空間、荷室が完全に仕切られ、3つの空間に分けられます。しかし、実際のプリウスは居住空間と荷室が仕切られていない2ボックスで、リアはハッチバックスタイルです。

アクアのリアゲートはほぼ垂直ではあるものの、ボディのジャンルはプリウスと同じ2ボックスのハッチバックです。つまり、プリウスとアクアはともに5名乗車のハッチバックなんです。
 

▲初代プリウスのボディはセダンでしたが、現行ではハッチバックに。登録は3ナンバーです ▲初代プリウスのボディはセダンでしたが、現行ではハッチバックに。登録は3ナンバーです
▲アクアはプリウスよりも小ぶりなサイズ。高さは同じですが、長さが-525mm、幅が-65mmとなっていますい ▲アクアはプリウスよりも小ぶりなサイズ。高さは同じですが、長さが-525mm、幅が-65mmとなっています

両車の大きな違いは2点あります。ひとつは前述のとおり、ボディサイズ。もうひとつはハイブリッドシステムです。

プリウスとアクアは異なるパワーのハイブリッドシステムを搭載しています。プリウスは最高出力98ps、最大トルク142N・mの1.8L直4ガソリンエンジンに、最高出力72ps、最大トルク163N・mのフロントモーターと最高出力7.2ps、最大トルク55N・のリアモーターを組み合わせています。

対するアクアは最高出力74ps、最大トルク111N・mの1.5L直4ガソリンエンジンと、最高出力61ps、最大トルク169N・mの電気モーターの組み合わせとなっています。

このような違いから、両車はよく「車格が違う」といわれます。この車格が違いで重要なのは、スペックや機能・装備の有無だけではわからない“質感”の違いも生まれること。もちろんプリウスが格上ですので、インテリアを筆頭にプリウスはアクアより上質に仕上がっているんです。

「大は小を兼ねる」という観点からすれば、プリウスを買っておけば、ひとまず間違いはないでしょう。ただし、プリウスの標準グレード「S」は新車価格で256万5000円なのに対し、アクアの標準グレードである「S」グレードが188万6760円(ともに2019年6月現在)。なんと、約70万円も差があります。

あくまで新車の価格差ですが、この差額を払ってプリウスを買うのか、節約してアクアを買うのか。それとも中古のプリウスを買って、70万円の差を埋めるのか。これがプリウスとアクアを比較して購入するときのポイントなります。
 

 

【燃費】燃費の差でプリウスを選ぶのは得策ではない

プリウスもアクアも優秀なエコカー。燃費はグレードや前期型か後期型かなどで異なりますが、現行のモデルで最も低燃費なグレードで比較すると、プリウスがEグレードで39.0km/L、アクアがLグレードで38.0km/L(ともにJC08モード)。EもLも装備が簡素な法人向けですので、標準的なグレードである両車のSで比べるとプリウスが37.2km/L、アクアが34.4km/Lとなります。ザックリ言うと約1割ほどプリウスが優秀です。

さて、この燃費の差がどれくらい燃料代に影響するか確認してみましょう。年間に走行する距離はドライバーによって異なりますが、年間1万kmと仮定。その場合、プリウスが年間に消費するガソリンの量は約268L、アクアは約290Lです。その差は22Lですので、レギュラーガソリンの価格を約137.7円(2019年6月12日の平均値。「e燃費」調べ)とした場合、両車の差額は年間で約3029円です。

両車のSグレードでは新車価格で70万円の差がありましたから、燃料代でその価格差を埋めるにはプリウスの場合、約231年かかる計算になります。もちろん、実燃費はJC08モードより悪化するので、これは机上の計算。しかし、燃費の差だけをもってプリウスを選ぶのは得策でないとわかるでしょう。
 

▲プリウスのパワートレイン。アクアより車重が重いにもかかわらず、アクアを超える低燃費となっています ▲プリウスのパワートレイン。アクアより車重が重いにも関わらず、アクアを越える低燃費となっています
 

【バリエーション】4WDがあるプリウス、デザイン違いがあるアクア

プリウスにあって、アクアにないものがあります。それは「E-Four」と呼ばれる電気式4WDシステム。プリウスもアクアも基本はFF(前輪駆動)です。ちなみにプリウスも3代目までFFしか存在しませんでした。

このE-Fourは通常時はFFで、必要なときだけ後輪も駆動が伝わるオンデマンド4WDです。例えば、発進するとき、滑りやすい路面なのか坂道なのかも考慮して、後輪に適切なトルクを伝達。加速が終わるとFFに戻ります。もちろん、雪道などではスリップを感知すると4WDになって安定して走ります。

降雪地域の人はもちろん、ウインタースポーツ好きにとっては、さすがにE-Fourのあるプリウスに軍配が上がるはず。
 

▲プリウスのE-Fourはリアにも電動モーターを配置。リアトランスアクスル、リアインバーターと組み合わされる ▲プリウスのE-Fourはリアにも電動モーターを配置。リアトランスアクスル、リアインバーターと組み合わされる

ただ、E-Fourの設定はないものの、アクアにはSUVスタイルを意識したグレード「Crossover」が設定されています。これは、直径の大きな185/60R16サイズ(他のアクアは185/60R15)のタイヤを履き、最低地上高を170mmにまで拡大。最低地上高が高いため、オートキャンプ場などのちょっとした段差ではフロント下部をヒットさせずに済みます。その点ではキャンパーにとってはアクアも選択肢となるでしょう

また、「他の人とはまったく同じハイブリッドカーには乗りたくない」という人は、バリエーションの多いアクアを選ぶのも良いでしょう。プリウスもアクアも非常に売れている車です。どこに行っても他の人と“カブり”ます。しかし、アクアはルックスの異なるグレードがいくつか設定されているので、同じアクア同士であっても個性を演出することができます。
 

▲アクアのCrossover。フロントスポイラー部の高さとなる最低地上高は通常モデルの140mmから170mmまで拡大されています ▲アクアのCrossover。フロントスポイラー部の高さとなる最低地上高は通常モデルの140mmから170mmまで拡大されています
 

【外装】プリウスならアルミホイールが全車に装着される

デザインは好みの話ですので、どちらかがハッキリと好きな人は迷う余地がありません。仮に、プリウスを気に入っているのに安いからといってアクアを買えば、後悔してしまうでしょう。そんな可能性があるならプリウスを選ぶべきです。

ただし、違いはあるもの。例えばフォルム。両者とも同じハッチバックながら全長が50cm以上違うこともあり、横から見たシルエットは異なります。プリウスは先端から後端までなだらかなカーブを描いているのに対して、アクアは後端が切り立ったコンパクトハッチらしいスタイルになっています。
 

▲プリウスのフォルムは、フロントボンネットからフール、そしてリアハッチへとなだらかな曲線を描いています。これは空気抵抗を抑制するためのデザインです ▲プリウスのフォルムは、フロントボンネットからフール、そしてリアハッチへとなだらかな曲線を描いています。これは空気抵抗を抑制するためのデザインです
▲アクアは全長が短いためにプリウスと同じようなフォルムは採用できません。そのかわり、後端をストンと切り落とすようにして空気抵抗を抑えています ▲アクアは全長が短いためにプリウスと同じようなフォルムは採用できません。そのかわり、後端をストンと切り落とすようにして空気抵抗を抑えています

そういったデザインの話とは別に、プリウスとアクアの差を感じるのはホイールの仕様です。アクアはCrossover以外、すべてスチールホイールが標準。その上に樹脂製のホイールキャップを覆っています。

しかし、プリウスは全車アルミホイールを装着。こういったところは車格、もしくは価格差が如実に表れているところです。アルミホイール装着だけでプリウスを選ぶ方は少ないでしょうが、価格差を感じされる部分ではあります。

また、エクステリアのディテールについて酷評を受けることもあったプリウスですが、2018年12月のマイナーチェンジでやや保守的なものになりました。「これまで前衛的すぎるデザインさえなければ……」とこれまでプリウスを敬遠していた方には、マイナーチェンジ後のモデルが選択肢になるでしょう。
 

▲プリウスの初期モデル。ヘッドライトの形状がかなり個性的です ▲プリウスの前期モデル。ヘッドライトの形状がかなり個性的です
▲プリウスの後期モデル。前期モデルからホイールのデザインも変更されています ▲プリウスの後期モデル。前期モデルからホイールのデザインも変更されています

アクアも2011年12月~2014年11月の初期モデルは今とデザインが大きく異なるので注意。2014年12月~2017年5月の中期モデルも、以降に登場した後期モデルとルックスは異なっています。この変遷を頭に入れたうえで、好みのデザインを選ぶのもアリでしょう。
 

▲アクアの初期モデル。フロントバンパーが今とは異なっていて、少しマイルドな雰囲気です ▲アクアの初期モデル。フロントバンパーが今とは異なっていて、少しマイルドな雰囲気です
▲アクアの中期モデル。初期モデルよりワイドさを強調しています。現行となる後期モデルの面影が少しありますね ▲アクアの中期モデル。初期モデルよりワイドさを強調しています。現行となる後期モデルの面影が少しありますね
▲アクアの後期モデル。前後ランプユニットやフェンダー、バンパーなど中期モデルから変更されています ▲アクアの後期モデル。前後ランプユニットやフェンダー、バンパーなど中期モデルから変更されています
 

【内装】質感はプリウスに軍配が上がる

プリウスとアクアで留意しておきたい違いは、シフトレバーの位置の位置。プリウスは高い位置にレバーがあるインパネシフトで、アクアは一般的な車に見られるフロアシフトです。そのため、とっつきやすいのはアクアなはず。ただ、初めてプリウスに乗るときは違和感があるかもしれませんが、使ううちに慣れていくので大きな問題とはならないでしょう。

インテリアの「質感」も、車にとっては重要でしょう。プリウスとアクアの運転席に座ると、この違いを感じられます。上質に仕立てられたプリウスに比べて、アクアはコンパクトカーに標準的。よく言えばシンプルで、悪く言えば地味です。インテリアにはプリウスとアクアの隠せない車格の差があります。
 

▲プリウスのインテリア。シフトレバーは最初戸惑うかもしれませんが、慣れると使いやすく感じられます ▲プリウスのインテリア。シフトレバーは最初戸惑うかもしれませんが、慣れると使いやすく感じられます
▲アクアのインテリア。フロアシフトなので、一般的な車と同じような感覚で操作できます ▲アクアのインテリア。フロアシフトなので、一般的な車と同じような感覚で操作できます
 

【走り】走りに優れたプリウスと小回りの利くアクア

走りはアクアよりプリウスが格上です。この理由は単純で、2011年に登場したアクアより2015年に登場したプリウスは基本設計が新しいからです。

プリウスはトヨタが「もっと良い車をつくろう!」と打ち出した「TNGA(Toyota New Global Architecture) 」という新しい設計思想にもとづいています。ボディがガッチリしているため、サスペンションがしなやかに働きます。これは高速道路の車線変更などでハッキリとわかるレベル。また、走行中は騒音や振動が少なく、乗っていて疲れません。アクアも一部改良やマイナーチェンジのたびにレベルアップしているのですが、プリウスには及びません。

ただし、アクアは最小回転半径が4.8mで、プリウスは5.1m(ともにSグレード)。プリウスよりも小回りが利き、ボディサイズが小さいので取り回し良くなっています。運転に自信のない方にとっては、アクアは運転がラクに感じるかもしれません。
 

低重心でハンドリングもしっかりしているプリウス。「エコカーだから走りは期待できない……」という諦めとは無縁です ▲低重心でハンドリングもしっかりしているプリウス。「エコカーだから走りは期待できない……」という諦めとは無縁です
 

【居住性】後部座席に大人が乗るならプリウス

ボディサイズの違いから、プリウスの方が室内は広くなっています。その違いが歴然としているのは後部座席。プリウスもアクアも5人乗りですが、アクアの後部座席は天井が低くて、大人が乗るにはやや窮屈。プリウスはその点、十分以上です。

また、アクアは座席の下にバッテリーが収まっていることもあり、座面そのものが薄め。長時間座るには快適性が高いとは言えません。プリウスもリアシート下にバッテリーがあるものの、TNGAによって低床化。ハイブリッドカーの弱点を軽減しています。

普段から後部座席に大人が乗る機会が多いのであれば、アクアよりもプリウスがベター。とはいっても、主に使うのは運転席と助手席で後部座席にはバッグなどが置ければいい場合や、後部座席には主に小さな子供が乗る場合は、アクアを選択肢から外す必要はありません。
 

▲前席にも後席にもゆとりを感じるプリウス。後部座席は大人2人ならくつろげます ▲前席にも後席にもゆとりを感じるプリウス。後部座席は大人2人ならくつろげます
▲写真では広く見えるアクアですが、実際は天井が低めで大人が常用するにはやや我慢が必要 ▲写真では広く見えるアクアですが、実際は天井が低めで大人が常用するにはやや我慢が必要
 

【積載性】ラゲージスペースも実用的なプリウス

プリウスもアクアもリアシートが左右分割可倒式。荷物の形状や量によって荷室をアレンジできます。ただ、容量はかなり違います。アクアは305Lなのに対して、プリウスは502L! 約1.65倍の容量になっています(いずれもVGA法)。荷物をたくさん積む人にはプリウスがオススメです。
 

▲プリウスのラゲージスペース。後席を倒さなくても容量が502Lもあるので、かなり実用的です ▲プリウスのラゲージスペース。後席を倒さなくても容量が502Lもあるので、かなり実用的です
▲アクアもコンパクトカーとして健闘していますが、サイズの差から容量ではプリウスに劣ります ▲アクアもコンパクトカーとして健闘していますが、サイズの差から容量ではプリウスに劣ります
 

【先進装備】高度な運転支援装備を求めるならプリウス

事故を回避し、被害を軽減するための予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」をプリウスは標準装備しています。対するアクアは上位グレードにのみ標準装備。それ以外はオプション設定になっています。

トヨタセーフティセンスの内容もプリウスとアクアでは異なります。アクアは「プリクラッシュセーフティ」「レーンディパーチャーアラート」「オートマチックハイビーム」ですが、プリウスはさらに「レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)」も加わります。

さらに「プリクラッシュセーフティ」もアクアがレーザーレーダーと単眼カメラを利用しているのに対して、プリウスはミリ波レーダーと単眼カメラを利用。これによって、歩行者を認識する速度範囲がプリウスの方が広く、予防安全に性能差があります。
 

 

【安全性能】プリウスは6つのエアバッグが標準装備

プリウスとアクアでは、衝突安全性能にも差があります。プリウスが6つのSRSエアバッグを標準で装備しているのに対し、アクアは運転席と助手席のみ標準装備。アクアにも運転席・助手席サイドエアバッグ、前後カーテンシールドエアバッグを装備できますが、オプション扱いとなります。
 

▲プリウスのSRSエアバッグ。SRSエアバッグ(運転席・助手席)、SRSサイドエアバッグ(運転席・助手席)、SRSカーテンシールドエアバッグ(運転席・助手席)で計6種類を装備しています ▲プリウスのSRSエアバッグ。SRSエアバッグ(運転席・助手席)、SRSサイドエアバッグ(運転席・助手席)、SRSカーテンシールドエアバッグ(運転席・助手席)で計6種類を装備しています
 

【中古車価格】アクアの予算でプリウスが狙える

装備や性能の違いを知って「アクアとの差額約70万円を払ってでもプリウス」という人もいれば、「アクアで十分なので約70万円も節約できる!」という人もいるでしょう。しかし、「プリウスが最適解ではあるものの差額約70万円は予算外……」と頭を悩ませる方もいるはず。そんな人はプリウスの中古車を検討してみては。

プリウスの中古車平均価格を見ると、2018年12月以降のモデルは約290万円。2017年11月から2018年11月までが約243万円(2019年6月12日現在)。デビューの2015年12月から2017年10月までが約210万円となっています。アクアの新車価格帯は178万5240円~206万2800円。同じ予算枠で考えるなら、2015年12月から2017年10月までに生産されたプリウスが選択肢に入りますよ!

一方で、さらなる節約を求めてアクアの中古車を狙うのもひとつの手。アクアはロングセラーですから2011年12月~2013年4月の最初期モデルともなると中古車平均価格は約68万円とリーズナブル。デザインが変わってトヨタセーフティセンスを備えるようになった2015年11月~2017年5月のモデルも約134万円とお手頃です。最新のルックスを備える2017年6月以降の後期モデルは169万円以上と高めを維持。しかし、車両本体価格で100万円前後の物件もあるので一度チェックしてみるとよいでしょう。

ぜひ自分のライフスタイルや経済状況などを踏まえて比較・検討し、ベストなチョイスをしてください。
 

text/グラブ
photo/トヨタ
 

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トヨタ プリウス(4代目) × トヨタ アクア(初代) × 修復歴なし