Q.試乗中に起きた事故は誰が責任をとるの?

試乗ができる車だったので、実際に乗ってみて車をチェック。しかし、あろうことか試乗中に事故を起こしました。試乗車は保険に未加入で、修理代の支払いを求められています。

でも、不特定多数が試乗することを前提に、販売店として保険に加入しておく必要があったのでは?これって支払う必要はありますか?

A.過失割合に応じて、運転手にも責任が発生します

まず、試乗車が保険に加入されているべきかどうかですが、新車ディーラーで試乗車が準備してある場合には、常識的に店側は任意保険に加入しておく必要があると考えられます。また、実際に加入しているケースがほとんどでしょう。

ただし、中古車の場合、1台1台すべての商品の加入は大変なので、自賠責保険にしか加入していないケースも考えられます(試乗ができるということは車検が残っているということなので、自賠責保険に加入していなければ、法律違反になります)。この場合は、誰が自賠責でまかなえない部分を負担するかが争点になります。

ちなみに、自賠責だけでどうにかなると思われるかも知れませんが、自賠責は、修理代、代車費用などの物損分は対象になりません。人身損害についても、自賠責だけでは被害者が納得せず、示談できないケースが多数あります。

現実問題として、無保険の試乗車で他車と事故を起こした場合は、運転していたあなたの過失割合に応じて、ある程度の賠償責任が発生すると思われます。ちなみに、被害者がいない自損事故の場合でも、プレミアムな価値の車の場合は、修理代だけではなく、価値の下落分まで請求されることも考えられます。

いずれにしろ、試乗の際には、細心の注意が必要です。もしも運転に自信がない場合には、店員さんに運転してもらい、助手席でチェックすることをオススメします。
法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

自賠責保険(じばいせきほけん)
一般的に強制保険などといわれ、公道を走行する自動車やオートバイは加入する義務がある。ただし補償対象は対人賠償のみで、補償限度額は死亡事故に対してでも3000万円。実際事故を起こした場合には、自賠責保険ではカバーしきれないことが多い
過失割合(かしつわりあい)
交通事故は加害者と被害者双方に過失がある場合がほとんど。この過失による損害を公平に分担するためには双方の責任割合を決定する必要がある。そこで、当事者や保険会社が過去の事故の判例に基づいて算出するのが過失割合