Q.欲しかった車を先に売られた
     ちゃんと「手付金」を払ったのに!

気に入った車があったので、とりあえず手付金を払っておきました。その後、仕事が忙しくなり、なかなか販売店と連絡が取れない状態に。

やっと仕事が落ち着いたので連絡を取ると、なんと車はもう売れたとのこと。手付を払ってたった2週間だったのに納得がいきません。

A.この場合は「申込証拠金」扱いになってしまう
     よって本来の「証約手付」の意味は成さない

そもそも「手付金」とはなにかを説明しておきましょう。
相談のケースでは、売買契約が成立する前の預け金なので、正式には「手付金」ではなく「申込証拠金」と呼ばれるものになります。これは、買い手がひやかしではない証明として預かり優先権を確保するために支払うお金です。将来は売買契約の内金として充当しますといった旨の預り証を出してもらえるはずです。

では、本来の「手付金」とは何かそれは「証約手付」の性質をもつ金銭です。これは契約成立を証明する目的で支払われるものです。

さて、相談の「申込証拠金」の効果ですが、法的に何日間と決まっているわけではなく、あくまで、常識の範囲内としかお答えができません。そういった観点では、2週間連絡を取らないというのは、やや常識外れのような気がします。

ただし、申込証拠金を払っているにもかかわらず、販売店から売却時に連絡がなければ、ある程度の慰謝料の請求は可能でしょう。ただ、店側が客側の留守電に伝言を入れたのに、忙しいといった客側の理由で連絡が取れなかったという場合は、請求は難しいと思われます。

今回のようなケースで、慰謝料を請求できない場合でも、そもそも払った申込証拠金は、当然ですが返却されます。
illustration/もりいくすお


■ワンポイント法律用語■

■証約手付(しょうやくてつけ)
売買契約は「意思表示の合致」により成立するが、言った言わないで争われることも多いので、契約の成立を証明する目的で支払われる。この手付けは支払いの一部に充当される場合が多く、契約手付ともいわれる
■申込証拠金(もうしこみしょうこきん)
購入申し込みの意思表示をする際に、優先して購入するための権利を確保する目的で売り主に対して預ける金銭。ただし、この時点では契約が成立したわけではないので、意思表示が撤回された場合は必ず全額返還される