Q.展示車を破損。買い取る必要はありますか?

販売店で中古車のチェックをしているときに、誤って車の一部を破損させてしまいました店側としては、価値が下がるので買い取ってほしいとのことなのですが、そこまでする必要があるのか疑問です。

確かに、破損は私の不注意もあったと思いますが、そもそも不特定多数の人間が触っている車です。いろいろな人が触り、金属疲労が蓄積したところに、たまたま私が触り壊れた可能性もあります。私だけが責任を取るべきなのでしょうか?

A.買い取る義務はありませんが
    弁償の義務はあるでしょう

この場合、常識的に考えて修理代分の実費を弁償することは必要でしょう。また、その故障により決まっていた商談が破談になるなどした場合は、損害賠償も発生するかもしれません。

ただし、壊したことにより走行に致命的な欠陥が発生し、商品としての価値がなくなるなどの場合以外は、買い取る義務はないと思われます。ご相談のケースのように、自分のミスと言うよりも、不特定多数の人間の行為の累積による破損が考えられる場合は、店側に特定の人間が壊したことを立証する責任があります。

そのほかに店舗側の管理責任を問われる事例とは、「車のボンネットを開けっぱなしにしていて、エンジンルームをのぞき込んだお客様が挟まれた」「試乗後、熱くなっているマフラーにお客様が触ってしまいやけどした」「お客様がバッテリーで感電した」などが考えられます。これらは、客側に対して注意を促す必要がありますし、バッテリーなどは電極を露出しないように処理しておかなくてはいけません

ただし、店側に断りなく客側が勝手にボンネットを開けて挟まれたり、勝手にバッテリーをいじるなどして感電した場合は、自己責任になってしまうのでご注意を。

ちなみに、子供が遊んでいて展示してある車両を壊した場合はどうなるかというと、「壊したのは店舗の車両管理がなっていないからで、子供に責任はない」という理由で弁償を回避することはできません。親には子供の管理責任があることを忘れないでください
法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

立証責任(りっしょうせきにん)
民事訴訟法上は、原則として権利関係の発生、変更、消滅等の法律効果を主張する当事者が証明責任を負い、裁判において事実の真偽がわからない場合、その当事者が不利益を被る。買い主が販売店に対して損害賠償を請求する場合は、買い主が立証責任を負担することになる。