3.車いすごと乗せる福祉車両の選び方

車いすごと車に乗るのは、介護者には便利ですが、選ぶときのポイントがあります。

車いすごと乗せられるタイプの福祉車両は、車いすから車のシートに乗り換える必要がないところが便利です。しかし、乗車中の安全性や快適性を保つには3つのポイントがあります。
まず、車いすで乗車した際に、3点式シートベルトが装備され、確実に装着することができるか。次に、車いすにヘッドレストが付いているか。最後に、車いすを確実に固定できるかがポイントになります。購入時また購入後は、これらに注意してください。
また、車いすは、背もたれが短く、リクライニングができないことが多いため、長時間のドライブにはあまり向いていません。

なお、車によって乗り込むことができる車いすの大きさが示されていますので、それに合ったものを使用してください。また、大きさが適切であっても、乗降の際に頭がつかえる場合がありますので、実際に乗り降りできるか、空間は保たれているか、介護者が車いすをきちんと固定できるか、実車で確認するようにしてください。

購入時のチェックポイント

このタイプには大きく分けて2種類あります。一つはスロープタイプ、もう一つはリフトタイプです。
ともに、スロープ長(リフト長)+乗り込みスペースが必要ですから、そのスペースが自宅などで確保できるか確認してください。
また、運転中ドライバーからは目が届かないので、コミュニケーションが取りづらい点も注意が必要です。

さらに安全面から、シートベルトが適切に使用できるか確認しましょう。腰ベルトを骨盤に巻くことができず、ヒジ台の上を通して腹部に装着すると、衝突時に腹部や胸部圧迫によって身体に大きなダメージを受けることがあります。このタイプに合った車いすの選び方は下記の「車いすの選び方」を参考にしてください。

そのほか、それぞれのメリットや購入時のチェックポイントは下記のとおりです。

1:スロープタイプ

1:スロープタイプ|3.車いすごと乗せる福祉車両の選び方
写真はトヨタヴォクシー(旧型)のウェルキャブ車いす仕様車(スロープタイプ)
乗車する場所が、リフトに比べて低いので、リフトタイプに比べて揺れが少なく、また周囲の景色も見やすいので高齢者や障がい者に安心感を与えやすいです。
その反面、乗車時にスロープを上る強い力が必要となります。

2.リフトタイプ

2.リフトタイプ|3.車いすごと乗せる福祉車両の選び方
写真は日産キャラバン(現行)のチェアキャブ
乗下車はリフトで行うので便利です。
その反面、その動作中、高齢者や障がい者が宙に浮いている感じを不安に感じないか、確認する必要があります。
また、坂道で乗下車をするとリフトが作動中、車いすが前後に動くことがありますので注意が必要です。
スロープタイプより座面が高くなりますから、視界の確保ができているか、頭上の空間は十分あるか、購入時に確認してください。

いずれの場合も、購入時に車いすの固定フックの取り付けがきちんとできるか、販売店から教えてもらったり、取扱説明書を熟読したりして、実際に確認するとよいでしょう。正しく固定できるか、不安定ではないかチェックしてください。

車いすの選び方

車いすごと乗せる場合、その車に合う大きさの車いすが必要となりますが、その際、下記の点に注意してください。
(1) 体の大きさに合った車いすを選ぶようにしてください。車いすの幅が合わないと、車いすをきちんと車に固定しても体が揺られて安定しません。また、座面の角度が平らすぎると急停車の時に体が滑り落ちる可能性があります。
(2) 車のシートベルトが装着しやすい車いすを選びましょう。
(3) 車いすにはヘッドレストが付いていませんので、必要に応じて取り付けられるタイプが望ましいです。
(4) 市販されている多くの車いすは、車に乗せて使うことを前提に作られていません。衝突時の車いすの強度を満たしたISO7176-19自動車衝突時の安全性テストに適合した車いすを選択するのも一つの方法です。
監修/国立障害者リハビリテーションセンター熊倉良雄氏